後期高齢者医療制度廃止:廃止後の詰めた議論はしていなかった民主党、議論は官僚主導で進んだ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

後期高齢者医療制度廃止:廃止後の詰めた議論はしていなかった民主党、議論は官僚主導で進んだ

秘書です。
帰りの電車、週刊朝日のつり革広告にこう書いてありました。

菅政権、高齢者医療“改革”の実態
最大不幸社会がやってくる!
医療制度改革の「まやかし」
悪名高い「後期高齢者」のほうがマシだった!
 
 

一体、なんのための政権交代だったんでしょうね?


■高齢者医療制度/負担見直しは長期的視野で
 2010年11月01日河北新報
新たな財源を生み出さない限り、課題は解決しないことは分かっているのに、制度を変えて対処しようとして負担の押し付け合いとなる。75歳以上の人を対象にした後期高齢者医療制度に代わる新制度案のことである。厚生労働省は高齢者と現役世代が負担する保険料などの見通しを示した。
 大企業の社員が加入する健康保険組合(健保)と公務員加入の共済組合の負担を増やし、新制度によって75歳以上の人の8割が移る国民健康保険(国保)の負担増を抑制するというのが主眼だ。
 70~74歳の医療費の窓口負担を1割から2割に段階的に引き上げる内容も盛り込んだ。税金の投入も増やす。急速な高齢化に対応するには、広く薄く負担した上で、どこかに泣いてもらうという苦肉の策と言えよう。
 しかし、将来的に財源が見込めない以上、いずれ行き詰まる。企業健保に多くを求めることは若年層の負担を重くし、経済の活力をそぐ。制度をいじって問題を先送りする手法は限界だ。末代まで耐えられる制度構築へと転換してもらいたい。
 新制度では、75歳以上の高齢者約1400万人のうち、1200万人を国保に移す。
 75歳以上の場合、2010年度の平均年間保険料は6万3千円(1人当たり)。国保加入者は、団塊の世代が75歳になる25年度に9万5千円まで増えるが、健保から支援金を受け、現行制度を続けるよりも6千円負担が軽くなる。
 逆に健保加入者の保険料は19万5千円から28万9千円(労使計)と上昇し、現行より2千円高くなる。支援金の算出も、加入者数を基準とした方式を見直す。年収の高い社員が多い組合ほど多額の金を出す仕組みとし、約1500ある健保のうち540組合が負担増となる。
 企業健保は体力があると見られたのだろう。しかし、09年度決算で健保の8割が赤字に陥る中、解散する事例も少なくない。産業界などには過大な負担になる。政府は13年度から新制度を実施、同時に公費負担割合(現行47%)を50%に引き上げたいという。財布の中身は出し尽くした感がある。
 このほか、国保の運営を将来的に市町村から都道府県に変更する案も打ち出した。赤字が恒常化している国保の救済は長年の懸案である。だが、自治体と十分な協議もなく、運営主体を切り替えると言われても、地方は困惑し、混乱を招くだけだ。
 厚労省は、介護保険改革と年金改革も進めている。やはり、高齢化率が高まる25年度を想定してのことだ。三つの分野を社会保障全体でとらえ、財源問題や地方の役割などを一体的に議論すべきではないか。その場しのぎの施策は終わりにしたい。


■【主張】高齢者医療 強引な見直しは混乱招く
2010.11.1 03:13産経新聞

このニュースのトピックス:主張
 厚生労働省が後期高齢者医療制度を廃止した後の新制度案について、高齢者と現役世代の負担の将来試算をまとめた。75歳以上の負担軽減を優先する結果、大企業の健康保険組合や公務員らの共済組合の負担が増える。これでは単なる負担の押し付け合いだ

 75歳以上の高齢者はさらに増える。一部に過度の負担を求める制度は続かない。低所得層などへの配慮は必要だが、高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めるのは当然だ。政府・民主党はなぜ75歳以上の負担を軽減するのか、説得力ある説明をしなければ現役世代の理解は得られまい。

 政府・民主党は平成25年度からの新制度スタートという公約に固執し、「廃止ありき」で議論を進めるべきではない。

 そもそも、現行制度を導入したのは、かつての「老人保健制度」では現役世代の負担額が分かりづらく、「負担が青天井になる」懸念があったからだ。高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めたのは、限られた財源でやりくりする知恵だった。現行制度の廃止が、現役世代の負担増につながるのでは理屈が通らない

 新制度案では、健保組合は37年度の保険料が28万9千円と、現在に比べて年額9万4千円の増となる。それでも追いつかないため税投入を47%から50%にする。70~74歳についても窓口負担を段階的に2割に引き上げるというが、現役世代の懐具合も楽ではない。年金や介護保険の負担も大きい。健保組合も8割以上が赤字だ

 消費税の議論を棚上げして制度設計を行おうということにも無理がある。現役世代の保険料引き上げは限界に近づいている。消費税で、どこまで高齢者医療の財源が確保できるかで制度の形は大きく変わる。負担の在り方だけではなく、医療費の伸びを抑える工夫、医療の質をどう確保するかの視点も欠かせない

 結論を急ぐ強引な進め方は混乱を招くだけだ。世代間対立にもつながりかねず、国民の理解取り付けは難しかろう。

 現行制度は定着してきており、見直すにせよ時間がないわけではない。政府・与党は「社会保障改革検討本部」を設置し、税制と社会保障の一体改革の議論を始めたばかりだ。与野党協議も必要である。年金や介護を含め、掘り下げた議論が求められる



■社説:論調観測=高齢者医療 財源なき改革の迷走
毎日新聞 2010年11月1日 2時30分
 そんなに簡単に解決案がひねり出せるわけがないことはわかっている。ただ、「後期高齢者医療制度廃止」をマニフェストに掲げて政権交代を果たしたのだ。民主党にとって代替案を国民に示すのは義務である。その内容は次のようなものだった。

 75歳以上のほとんどを国民健康保険(国保)へ移す。国保の運営を市町村から都道府県単位に広げて安定させる。75歳以上の負担を軽減する一方で健保組合や共済組合の負担を増やす。

 まず27日に毎日と日経が社説で取り上げた。「企業健保の負担を重くするのは、産業界の活力を低下させる要因になる」「『とりあえず取れるところから』という発想はやめるべきだ」という日経は、診療報酬請求の完全電子化や重複受診・投薬の解消など徹底した効率化策を求め、医療給付費そのものを抑えるべきだと強調する。

 毎日は「制度改革のたびに負担が重くなる側が反発しその声を政権批判に利用する、という泥仕合をしても際限がない……ここは与野党が虚心坦懐(たんかい)に話し合い、負担増をめぐる議論に決着をつけるべきだ」と提案した。医療の中身こそが肝心で「負担の押し付け合いをしてもむなしい」という主張だ。

 読売も「負担を押しつけ合っても、『新しい高齢者医療制度』は国民に受け入れられないだろう」と28日社説で取り上げた。「公費の投入を増やすしかない。そのためには消費税で社会保障財源を確保し、どこまで公費を拡大できるか、併せて検討することが不可欠だ」という。何ごとも最近は消費税に解決を求めざるを得ないと思えてくるが、やっぱり高齢者医療もここにたどり着くしかないか。

 「こんな改革はいらない」ときり捨てたのが29日の朝日である。「新制度案はきわめて複雑で、誰の負担にどう影響するのか、理解することすら容易ではない」「『うば捨て山』と批判された構造自体は温存されるのだ」 と手厳しい。そして「むしろ増税の必要について議論を深める契機と考えたい」「新規の財源という要素が入れば、『年齢で差別し、負担を押し付け合う』現状を脱する道も見えてくる」という。やっぱりそうか。

 保険料も消費税も国民にとっては負担にほかならない。医療費のかかる高齢者が増え、支える現役世代が減っていく以上、負担の伴わない解決策などあり得ない。負担増を強いられる人々の怒りをあおるのはたやすいが、それではまた時間が無駄になるということも肝に銘じておきたい。【論説委員・野沢和弘】

■高齢者医療:「舛添案」に回帰 官僚主導、成立も見通せず
毎日新聞 2010年10月25日 21時44分(最終更新 10月25日 21時56分)
 「うば捨て山」などの批判を浴び、民主党が「廃止」を公約した後期高齢者医療制度に代わる新制度案の概要が25日、固まった。だが、75歳以上を市町村の国民健康保険(国保)に移し、国保を都道府県単位に広域化する案は、自公政権最後の厚生労働相、舛添要一参院議員が08年9月に公表した「見直し私案」にウリ二つだ。議論に1年近く費やした揚げ句「舛添案」に回帰したうえ、法案成立のメドも立っていない。【鈴木直、山田夢留】

 09年衆院選マニフェスト(政権公約)で民主党は、現行制度の廃止を掲げた。しかし、公約作りにかかわった藤村修副厚労相は、9月27日の高齢者医療制度改革会議で「廃止後の詰めた議論はしていなかった」と述べ、後期医療の「廃止」を与党攻撃の材料にしていたことを告白した

 民主党は「腹案」を持たず、議論は官僚主導で進んだ。このため改革案は厚労省が過去に導入を狙いながら、自民党などの反対で進まなかった案を総ざらいした様相だ。「国保広域化」は、国保の財政基盤強化に向けた厚労省の長年の悲願。「70~74歳の窓口負担2割」は08年度からの予定だったが、選挙前の負担増を嫌った自公政権が凍結したため、厚労省は原則に戻す機会をうかがっていた。

 改革案の柱の一つは、現役の支援金額の算定方法を、各保険の加入者数を基準とする仕組みから、給与水準に応じた「総報酬割り」に変えることだ。給与の高いサラリーマンの負担を増やし、高齢者や給与水準の低い全国健康保険協会(協会けんぽ)の下支えをすることを意図している。これもかつて、厚労省が検討しながら果たせなかった構想だ。

 ◇「総報酬割り」導入
 現行制度の理念は、高齢者にも一定の負担を求め、現役世代の負担を軽減することだった。しかし「総報酬割り」の全面導入で高齢者の負担は抑えられる半面、健保組合は全体の6割、872組合が負担増となり、全体の保険料率も10年度の7.6%から25年度には10.4%にアップする。

 20年度、健保組合加入者の年間負担は今より6万1000円増の25万6000円(事業主負担含む)となる。団塊の世代が75歳以上になる25年度は28万9000円で、現行制度を維持するより2000円増える。33万円となる公務員は、現行制度を続けるより1万3000円の負担増だ。

 とはいえ、09年度に赤字の健保組合は全体の8割を超えた。どこまで負担増に耐えられるかは不透明だ。

 一方、75歳以上で国保に移る人は、20年度の保険料が8万5000円と今年度より2万2000円増えるものの、現行制度を維持するよりは2000円減る。ただ、厚労省幹部は「25年度は乗り切れない」と、将来の一層の負担増を示唆する。

 政府は新制度の関連法案を来年の通常国会で成立させたい考えだ。しかし、ねじれ国会の下、厚労省内からも「成立は厳しい」との声が漏れる。

 改革案が現行制度の修正にとどまり、頼みの綱の公明党は「変える意味がない」(幹部)と冷ややか。「70~74歳の窓口負担2割」も公明党が凍結を主導しただけに、党内には根強い反発がある。新制度案の原形「舛添私案」を巡っては、当時自民党が「パフォーマンスだ」と突っぱねた経緯があり、同党がすんなり受け入れる機運はない。


→公約作りにかかわった藤村修副厚労相は、9月27日の高齢者医療制度改革会議で「廃止後の詰めた議論はしていなかった」と述べ、後期医療の「廃止」を与党攻撃の材料にしていたことを告白した、とのことです。正直で大変結構なことです。国会論戦で、是非、菅総理はじめ閣僚のみなさんに同様の「自己批判」をしていただきたいものです。

→要するに、権力をとるためなら、なんでも公約していたということですね。本来、公約が目的で権力は手段なのに、権力が目的で公約は手段なんですね。民主党はマニフェストを見直してもいい、なんて寛大なことをいっているから、いつのまにか、官僚主導で自民党時代より悪くなるかもしれません。