処分前の証拠提示:本来は政治決断すべきテーマというのが大原則では | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

処分前の証拠提示:本来は政治決断すべきテーマというのが大原則では

秘書です。
処分前の証拠の国会提出例なし、とのことですが、
①尖閣漁船衝突事件-逮捕-釈放とそれ以後の一連の動きも、前例なし。
②そもそも刑事処分はいつ決めるのか?
③そもそも尖閣ビデオの扱いは、仙谷長官に一任されていたのではないか?


■処分前の証拠、国会提出例なし=過去には要求拒否も-法務・検察当局
(2010/11/01-05:17)時事通信
 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で法務・検察当局は、証拠として保管していたビデオ映像を衆院に提出したが、法務省によると、刑事処分前の証拠を国会に提出した前例はないという。
 国会法は、委員会が資料などの提出要求を議決した場合、提出できない理由を説明して委員会が認めるなどしない限り、内閣や官公署などは応じなければならないと規定している。一方、刑事訴訟法は、訴訟に関する書類などの公判開始前の公表を禁じているが、公益上必要と認められる場合は例外としている。
 2003年には、名古屋刑務所暴行事件をめぐり、名古屋地検が保管していた監視カメラの映像が衆院法務委員会の理事懇談会で再生された例があるが、このケースは公判での証拠採用後だった。
 1994年、東京佐川急便事件に絡む細川護熙首相(当時)の1億円借り入れ問題で、衆院予算委員会は東京地検などに関係書類の提出を求めたが、地検は公判中などを理由に拒んだ。
 76年の衆院ロッキード問題調査特別委員会では、法務省が東京地検から報告を受け、時効で不起訴になるなどしたいわゆる「灰色高官リスト」を秘密会で口頭説明。この際も、資料自体は提出されなかった。


→下記の河北新報社説は、その通り!と叫んでしまいます。

■漁船衝突ビデオ/捜査はもう終わったのに 
2010年10月29日河北新報社説
 物事は何であれ本音をさらけ出してばかりでは、まとまるものもまとまらなくなる。それは確かにそうで、外交交渉が絡むとなればなおさらだ。
 それにしても、ちょっとひどすぎないか。沖縄県・尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件のビデオ映像の扱いをめぐる政府の対応は、そう思わせる。
 「まだ捜査中だから」と公開を渋る政府が論拠にしてきたのは、刑事訴訟法の「公判の開廷前には訴訟書類を公にしてはならない」という一項である。
 容疑者を釈放して帰国させ、捜査はもう終わっている。起訴か不起訴かの刑事処分を決めていないのは確かでも、これから起訴して公判を開く見通しが一体どこにあるのか。そう感じている者にとって、政府の論法はあまりにも説得力がない
 ビデオはようやく那覇地検から国会に提出され、衆院予算委員会で取り扱いを協議している。刑事手続きをめぐる議論はもうやめにしてほしい。
 全面公開が原則だと考えたい。中国を刺激しないという配慮が今、なぜ、どの程度必要なのか。論点を絞るべきだ。
(以下、略)


■【尖閣衝突事件】ビデオの扱いを官房長官に一任
2010.10.1 18:37産経新聞
 仙谷由人官房長官、前原誠司外相、柳田稔法相、馬淵澄夫国土交通相が1日、首相官邸で中国漁船衝突事件のビデオ映像の扱いについて協議し、国会への提出に関する対応を仙谷氏に一任することで合意した。
 仙谷氏は1日の記者会見で「刑事事件の証拠であり、捜査当局が責任を持って判断する」と述べるにとどめた。

→本来、官房長官に一任されていたのでしょう?そこから検察判断になっていくところが・・・


→検察が処分するかしないかの決定をしないことがビデオ非公開の口実になり続けること自体が、公益に反するのでは。そして、検察は「国際関係への影響等についても、犯罪後の情況として考慮する」ことで処分しないという決定をする可能性がある。


2010年10月19日
「那覇地検の記者会見と検察官の権限と責任、及び刑事訴訟法の規定等に関する質問主意書」と、内閣総理大臣からの答弁書
http://rep.sanae.gr.jp/boukoku_details42.html

☆平成22年10月5日 高市早苗衆議院議員→内閣 質問主意書提出
☆平成22年10月19日 菅直人内閣総理大臣→衆議院議長 答弁書送付


【高市早苗衆議院議員 質問前文】

平成22年9月7日に日本領海内で発生した中国漁船による公務執行妨害等被疑事件については、去る10月1日に提出した質問主意書において、外国人による日本領海内での漁業等を禁じた「外国人漁業の規制に関する法律」を適用しなかった理由などについて質したところである。

また、9月24日に那覇地検が行った記者会見で鈴木亨次席検事が「今後の日中関係も考慮すると、身柄を拘束して捜査を続けることは相当でない」と述べたことについても、検察官の権限と責任、今後の公訴提起に向けての検察官の裁量権の範囲等について、様々な疑問を感じている。

従って、次の事項について質問する。


【高市早苗衆議院議員 質問1】

そもそも検察官には、「今後の日中関係も考慮すると、身柄を拘束して捜査を続けることは相当でない」という外交に関わる政治的判断を行う権限や責任があるのか。
権限や責任があるとしたら、根拠となる法律名と条文を示されたい。

《菅直人内閣総理大臣 答弁1》

 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と規定しているところ、検察官は、法と証拠に基づき、被疑者の身柄拘束を含む刑事事件の処分を判断するに当たって、当該処分をし、又はしないことによる国際関係への影響等についても、犯罪後の情況として考慮することができるものと考える


【高市早苗衆議院議員 質問2―①】
 
刑事訴訟法第247条は「公訴は、検察官がこれを行う」と規定しており、この規定によって、検察官は公訴を提起する権限を独占するとともに、「公訴を提起しない」権限も与えられていると解される。
 そして、刑事訴訟法第248条は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と規定している。
 これらの規定は、「検察官の裁量権の範囲」を示したものだと解釈してよいか。

《菅直人内閣総理大臣 答弁2―①》

 刑事訴訟法第247条は、公訴の権限が検察官に属することを規定しており、また、同法第248条は、犯罪の嫌疑が十分であると認められる事案であっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、検察官において公訴を提起しないことができることを規定しているものと考える。


【高市早苗衆議院議員 質問2―②】

刑事訴訟法第248条が公訴を提起しなくても良い理由として列挙している「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」には、例えば「今後の日中関係」も該当し得るのか。
該当するとしたら、条文中のどの文言がそれに当たるのか。本事件については、公訴提起の有無は現時点では不明であるから、一般論として問う。

《菅直人内閣総理大臣 答弁2―②》

 刑事訴訟法第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と規定しているところ、検察官は、法と証拠に基づき、被疑者の身柄拘束を含む刑事事件の処分を判断するに当たって、当該処分をし、又はしないことによる国際関係への影響等についても、犯罪後の情況として考慮することができるものと考える


【高市早苗衆議院議員 質問3―①】

検察庁法第4条は「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」と規定している。
国法上、検察官以外に公訴権を認められた者はない。よって、「公訴権こそは、検察官に与えられた権限の中でも極めて重要なもの」だと考えるが、見解を伺う。

《菅直人内閣総理大臣 答弁3―①》

 検察庁法(昭和22年法律第61号)において、検察官は、公益の代表者として、同法及び刑事訴訟法を含む他の政令がその権限に属させた事務を行うものとされており、刑事について公訴を行うことは、検察官の権限に属するものである。


【高市早苗衆議院議員 質問3―②】

検察庁法第4条に、「公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」と規定されているが、検察官が「公益の代表者」として行う事務の中に「外国艦船乗組員の逮捕留置に関する援助法」第1条から第11条に規定された「外国艦船乗組員の逮捕、留置、引渡しに関する諸権限」は含まれるか。

【高市早苗衆議院議員 質問3―③】

前問につき仮に含まれるとしたら、本事件については「公益の代表者」として如何なる公益を守ったのか。

《菅直人内閣総理大臣 答弁3―②~③》

 お尋ねの外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関スル援助法(明治32年法律第68号)は、中央省庁等改革関係法施行法(平成11年法律第160号)第77条第2号の規定により平成13年1月6日に廃止されている。


【高市早苗衆議院議員 質問4―①】

検察庁法第6条は「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる」と規定している。
刑事訴訟法第191条第1項は「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる」と規定している。
 これらの規定について、『新版 検察庁法 逐条解説』には、「他の捜査機関の捜査活動が不活発であるときや、他の捜査機関の能力が不十分であるため完全な捜査が期し得ないようなときに、いかなる犯罪についても捜査をすることができる検察官が自ら捜査に乗り出すことは、国家刑罰権の適正な実現のうえからきわめて重要なことであって(後略)」と記されている。
この見解については正しいと考えるか。

《菅直人内閣総理大臣 答弁4―①》

 特定の書籍における個別の記述について、政府として答弁することは差し控える。


【高市早苗衆議院議員 質問4―②】

本事件について、検察官は、「刑法(公務執行妨害)」、「外国人漁業の規制に関する法律
(外国人による日本領海内での漁業禁止)」について、それぞれ捜査を行ったか。
行ったとしたら、その理由は何か。行わなかったとしたら、その理由は何か。

【高市早苗衆議院議員 質問4―③】

本事件について、検察官は、前問に記した法律以外の法律についての抵触の可能性について、捜査をしたか。
したとしたら、具体的に被疑者が抵触した可能性があると考えられた法律名を回答されたい。

《菅直人内閣総理大臣 答弁4―②~③》

 検察当局においては、ご指摘の平成22年9月7日に発生した中国漁船船長による公務執行妨害被疑事件について、司法警察員から送致をうけたことから、同事件の捜査を行っているものと承知している。
また、検察当局において、御指摘の外国人漁業の規制に関する法律(昭和42年法律第60号)違反の罪その他の犯罪の捜査を行ったか否かについては、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であり、答弁は差し控えたい。


【高市早苗衆議院議員 質問5―①】

本主意書で紹介した法律が認めた検察官の「起訴独占主義」や「起訴便宜主義」の「意義」については、『ジュリスト増刊 刑事訴訟法の争点 第3版』に、高松高等検察庁の宗像紀夫検事長(当時)が、「訴追の公正性や全国的な統一性を確保するとともに、検察官が有罪判決を得られる見込みがないと判断した場合や、情状等にかんがみ訴追を必要としないと判断した場合に訴追裁量権を適正に行使することにより不必要な訴追を避け、被疑者・被告人の権利・利益の保護やその改善更生を図ることにある」と書いている。
この点につき、前記の高松高等検察庁検事長の見解は、適切なものと考えるか。

【高市早苗衆議院議員 質問5―②】

現段階では、本事件の公訴提起の有無は不明だが、今後、「訴追の公正性」や「全国的な統一性」が確保されるべきだと考えるか。

《菅直人内閣総理大臣 答弁5―①~②》

 特定の書籍における個別の記述について、政府として答弁することは差し控えるが、一般に、刑事訴訟法における、起訴独占主義とは、公訴の権限が検察官に属すること(同法第247条)をいい、起訴便宜主義とは、犯罪の嫌疑が十分であると認められる事案であっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、検察官において公訴を提起しないことができること(同法第248条)をいうものと考える。
一般論として、検察官は、常に法と証拠に基づき、適切に事件を処理しているものと承知している。


【高市早苗衆議院議員 質問5―③】

「処分保留の上、釈放」された被疑者である中国人船長は、既に出国したが、同被疑者について、今後、その「改善更生」を図ることは可能か。
具体的な手段があれば、回答されたい。

《菅直人内閣総理大臣 答弁5―③》

 個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄については、答弁を差し控えたい。


→本来ならば政治決断すべきこと、というのが原則です。


■【正論】弁護士、衆院議員・稲田朋美 尖閣守る意思と覚悟が保守政党
2010.10.26 03:17産経新聞

 ≪釈放を検察のせいにするな≫

 今回の尖閣事件が政治に突き付けたものは何だったのか。菅直人首相は国会で「中国人船長の釈放については検察当局が国内法に基づいて事件の性質などを総合的に考慮し最終的な判断を行ったところであり、その判断は適切なものであったと認識しております」と繰り返す。国内法とは刑事訴訟法248条「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」を指す。この「犯罪後の情況」に当たるというのが検察の説明のようだが、誰も納得しない。たとえそうだとしても、否(いな)、そうだとすれば大問題だ。

 まず、那覇地検が釈放の際に示した「わが国国民への影響や日中関係」という政治判断を検察が独自でしたとすれば、検察の越権行為である。柳田稔法相は予算委員会で「その(釈放)報告を聞いて私は指揮権を発動しなかった」と答えている。釈放を事前に知って指揮権を発動しないのは、越権行為を了承し、結果として検察による超法規的な釈放を認めたことになるが、これは、法治国家の法務大臣としてはあるまじき行為であり、その責任は重大である。

 さらに、そうした高度な政治判断を政府がしなかったとすれば、民主党の政権交代の大義であった「政治主導」の自殺行為である。いずれにしても、本来なら当然政府が行うべき義務のある政治判断を検察が行ったこと自体に政府は責任を負わなければならない

 ≪誤った国際印象与えた重大性≫

 判断の中身も間違っていた。事件当初に政府が示した「国内法に基づき厳正に対応していく」との方針で逮捕、勾留(こうりゅう)し、勾留延長までしながら、突如、釈放したことは、日本が中国の不当な圧力に屈したというだけでなく、尖閣諸島領有について中国の言い分にも何らかの根拠があるという印象を世界に与える結果になった

 菅首相は、ASEM(アジア欧州会議)会場で温家宝首相と25分間話したのに、中国漁船事件に抗議せず、当時まだ拘束されていた日本人の解放も要求しなかった。直接会って話をしながら、抗議も要求もしないのは、会わないよりもなお悪い。各国に日本の立場を説明したというが、竹島を不法占拠する韓国に中国の非を訴えてどれほどの意味があったのか。

 しかし、今回のぶざまな外交的敗北を、菅政権を責めるだけで終わらせてはならない。これはまさしく、自民党政権下の戦後日本の事なかれ外交のなれの果てと見ることができるからである。

 「尖閣諸島は日本固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しない」という認識の下に尖閣諸島を「実効支配」してきたというのが政府見解だ。具体的には、政府は尖閣諸島のうち民間人所有の3島を借り上げて賃借権を登記し、維持管理している。ただし、予算委員会で自民党の石原伸晃幹事長の質問に、仙谷由人官房長官が自民党政権下の方針を踏襲して答弁したように、政府は日本人の尖閣上陸を禁じたままである

 今回の事件で、中国は尖閣諸島を実効支配しようとの意思を世界に示したが、日本は、それに対抗できない、すなわち自国領土である尖閣を守る意思と覚悟のない国であるかのような国際発信をしてしまった。中国の東シナ海での行動はますます勢いづくだろう。

 ≪戦後自民外交の責任も問え≫

 こうした状況下では、今の法制度の中でできることをまず行うことだ。自民党政権下の方針を変更して、理由次第では日本人の上陸を許し、普通の国が管理する土地として使用していく。さらには、多くの識者が指摘するように自衛隊を配備し、領土を守る意思を世界に対して鮮明にする。国防上必要な時は外国人の土地取得を制限できる外国人土地法(大正14年制定)を適用できるように政令で尖閣諸島を指定し、外国人が取得できなくすることも可能だ。集団的自衛権行使を可能にする解釈変更も必要だ。

 現行法に不備があれば、法整備も急がねばならない。外国人土地法では「なりすまし」外国人の土地取得は防げないので、国防上必要な土地は収用などで国有化できるよう立法措置を講じる。さらに、日本の実効支配の及ぶ範囲で外国人が違法操業すれば罪に問えるようにすることが必要ではないか。共同防衛をうたう日米安保条約5条はあくまで武力攻撃があった場合に発動されるわけで、漁船群が接岸し漁民が大挙、尖閣諸島に上陸するような場合には国内法で対処するしかないのだから。

 そして今、自民党がなすべきことは、菅内閣の対応への批判だけでなく、積極的な提言だ。今回の外交的敗北を招いた原因が戦後、自民党政治の事なかれ主義にあった点を真摯(しんし)に反省し、そのうえで自らの領土は自ら守る意思と覚悟を示し、そのための法整備を含めた対策について与野党の議論を呼びかける。まさに、この問題で自民党が保守政党の意思と覚悟をみせることこそ、日本の「保守再生」につながると信じている。(いなだ ともみ)

→なんでも検察の責任にしてはいけないでしょう。尖閣を守る意思と覚悟を行動で示す、菅民主党政権にできるか。自民党ならこうする、ということも示さなければいけませんね。