国家戦略室:官房長官との「分担」で大丈夫? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

国家戦略室:官房長官との「分担」で大丈夫?

秘書です。
「総合調整」というのは縦割りを超えようというもの。それを日本の歴代政府は戦前も含めてなかなか克服できなかった。「総合調整」は各省の権限を侵すものだからです。


■国家戦略室、2チーム制に=「総合調整」官房長官と分担
(2010/10/19-05:37)
 玄葉光一郎国家戦略担当相は19日午前の閣議後の記者会見で、国家戦略室の新体制について発表する。予算編成の基本方針など重要政策の企画立案・総合調整と、首相への政策提言をそれぞれ担当する2チーム制を導入することが柱だ。
 重要政策の総合調整は、これまでは官房長官を中心に行ってきたが、戦略室と分担することで、内閣全体の政策遂行能力を強化するのが狙い。同時に、首相が幅広い観点から政策判断できるようにするため「シンクタンク」としての役割も与える。
 総合調整チームは、予算編成の基本方針のほか、中長期の税財政や経済運営、新成長戦略、経済連携協定(EPA)、環太平洋連携協定(TPP)、地球温暖化対策などへの対応を担当。子育て支援策の調整も行う
 一方、これまで戦略室が担っていた社会保障と税の共通番号制度に関する検討作業は、今後内閣官房が所管する。提言チームは、当面は外交問題に重点を置き、首相に助言する。
 現在約30人の戦略室スタッフも、50人程度に増員していく方針。財務、経済産業両省の審議官級の職員2人を19日付で調整チームの取りまとめ役として配置。提言チームでは民間人のスタッフの起用を進める。

→各省から派遣されるスタッフは、いずれは各省に戻る人であるとすると国家戦略室でどれだけ権限を守れたかが省での人事評価になりますから、まず第一に、自分の省の権限を侵すような総合調整が行われるかどかを各省の情報提供し、第二に、自分の省の権限を侵さない範囲内での総合調整に協力する、ということになり、非常に小ぶりな総合調整になる、ということがこれまでの総合調整の歴史です。

→だからこそ、国家公務員法の体系から、各省庁のゼッケンを外すために政府一括採用にしようとしたけど、基本法についての与野党協議の際に民主党の反対でできませんでした。あのとき、どんな理由で改革の骨抜きを民主党がしたのか、誰にいわれてやったのか自己総括と自己批判をしてほしいものです。

→官邸に優秀な官僚を集めれば政治主導ができる、という発想は官僚主導型政治の典型的発想です。一人一人は優秀な改革派なんだけれども、自分の省の権限がからむと守旧派になるというのはシステムがおかしいからです。このシステムを変えて優秀な人材に省益を超えて国益のために貢献してもらうことが本人の幸福のためであり、また、何よりも国民の幸福のためです。ところがこれを「役人たたきだ」と矮小化する議論があって改革が進まない。その結果、「総合調整」の分担と。

→「総合調整」を分担したらどうなるか。たぶん、国家戦略室である省に厳しい調整が行われたら、官房長官に泣きつくでしょう。法律上は官房長官に総合調整の最終権限があるはずですから。官邸が崩壊していくのは、この別の政治家への泣きつきからはじまり、政治家同士の疑心暗鬼と対立にあるのでは?だからこそ、政治主導法案の審議では「それは運用でなんとかなります」「わたしは官房長官とは仲良しです」ではすまないのです。たとえ初代はいい運用ができても二代目以降からは法律にのっとった運用に切り替わるのです。「運用論」=「要は人だ」というのは法治ではなく人治です。人治は世代交代するとできなくなります。