反日デモ:官製学生デモへの「蟻族」参加で質的転換点? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

反日デモ:官製学生デモへの「蟻族」参加で質的転換点?

秘書です。
今朝の読売新聞3面の「若者、反日で不満発散 大規模デモ 中国の就職難背景 胡政権、体制批判を警戒」や、下記の記事からは、反日デモについて以下のようなストーリーが浮かび上がってきます。

①主要都市のデモは禁止されていたが、地方都市のデモは容認された。
②学生デモは当局の制御可能であった(周到に準備された横断幕など)。
③しかし、デモには大学を卒業しても就職できない「蟻族」と呼ばれる人々が参加し、制御不能となり、一部暴徒化した。

読売新聞は成都のデモに参加した蟻族の以下のコメントをのせています。

「大学を卒業してもコネがないと就職できない。党幹部や資産家の子どもは優遇され、能力がなくてもエリートコースに乗れる。全く不公平な社会だ」

学生による「反日」官製デモが、「蟻族」を含む社会問題への不満を爆発させるデモの転化するのか。そこが中国政府が最も警戒するところでしょう。

反日をいっていれば当局も弾圧できないという「愛国無罪」の運動に、工場労働者、農民、ホワイトカラーはどう反応するのか。中央の抗争はかかわるのか。反日の看板が書きかえられる時がくるのか。民主化運動に発展するのか。外交問題から内政問題になるのか。



■中国外務省、反日デモに「理解」と談話
(2010年10月17日02時40分 読売新聞)
 【北京=大木聖馬】中国外務省の馬朝旭(まちょうきょく)・報道局長は16日深夜(日本時間17日未明)、同日国内中国各地で発生した反日デモについて、「一部の群衆が日本側の一連の誤った言行に義憤を示すことは理解できる」との談話を発表した。
 ただ、「法に基づいて理性的に国を愛する熱情を表現しなければならず、非理性的で法規に違反する行為には賛成しない」とも述べ、一部のデモ参加者が日系スーパーなどを破壊した行為には不快感を表明。自制を促した。


■綿陽でも反日デモ 「3万人」一部暴徒化
毎日新聞 2010年10月18日 東京朝刊
 <追跡>
 【北京・成沢健一】中国四川省綿陽市で17日午後、沖縄県・尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件に抗議する大規模な反日デモが起き、参加者の一部が暴徒化して日本料理店などを襲撃した。前日に3都市で起きた反日デモは「官製デモ」との指摘も出ているが、参加者の暴徒化や他都市への飛び火は当局も想定していなかったとみられ、事態の沈静化を急いでいる模様だ。

 香港メディアなどによると、綿陽市のデモ参加者は1万人以上とみられ、3万人に膨れ上がったとの情報もある。インターネット上での呼び掛けで集まった若者らが「日本製品ボイコット」などと叫びながらデモ行進、日本料理店やパナソニックの販売店などに投石し、店舗のガラスを割ったほか、路上に止まっていた日系メーカーの乗用車のガラスを割るなどした。前日の大規模デモと異なり、周到な準備をうかがわせる横断幕を掲げる参加者は少なく、警官隊と小競り合いになる場面もあったという。

 目撃者によるネット上での書き込みによると、「学生はましだが、一般人が紛れ込み、不満を発散している」と警官が話したという。綿陽市は16日に大規模デモがあった四川省成都市の北東約100キロに位置し、08年の四川大地震で大きな被害を受けた。貧富の格差や住宅価格の高騰といった全国共通の問題に加え、震災後から続く生活難による不満が破壊行為につながった可能性もありそうだ。

 成都市と陝西省西安市、河南省鄭州市で起きた16日の反日デモは、東京の中国大使館前で行われた中国への抗議デモに対抗したもので、中国指導部も日本の対中強硬論に不満を表明するために内陸部でのみ実施を容認したとの見方が強い17日付の中国系香港紙「文匯報(ぶんわいほう)」は、成都でのデモは各大学の学生会が1カ月前から準備を進めてきたと報じた。学生会は共産党や政府の指導下にある団体で、ネット上の呼び掛けで規模は膨らんだものの、実態は官製デモだったと言えそうだ

 国営新華社通信は、16日のデモについては英語版のみで報じ、暴徒化した事実には触れなかった。綿陽市でのデモは中国メディアで報じられていない。

 中国外務省の馬朝旭報道局長は17日未明、「合法的、理性的に愛国の熱情を表現すべきで、理性を欠いた違法な行為には賛成しない」として、冷静な対応を呼びかける談話を発表した。また、北京の日本大使館周辺は17日、前日よりも多くの警察車両や警官が配置された。今月下旬にはハノイでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に合わせて日中首脳会談が行われる見通しで、中国側も早期収拾を迫られているようだ。

 一方、北京の日本大使館は17日、鄭州市で22日から予定していた日中文化交流行事「河南日本週間」について河南省政府の申し入れを受けて延期することを決めた。反日デモの暴徒化と広がりが、修復に向けて動き始めた日中関係に冷や水を浴びせた形となっている。


■中国の反日デモ、17日も発生
< 2010年10月18日 1:56 >日テレニュース24
 沖縄・尖閣諸島の問題をめぐり、中国では17日も日本に抗議するデモが起きた。大規模なデモが起きた陝西省西安にカメラが入った。藤田和昭記者が報告。

 兵馬俑(へいばよう)で有名な観光地・陝西省西安市では、日本のスポーツ用品を扱う店の前に人だかりができた。学生とみられる若者の姿が多く見られる。店のガラスは割られ、ロゴも棒でたたき落とされ、店の外にジャージーや靴が投げ上げられた。現場に居合わせた日本人は「スポーツウエアを持ち出して上に投げた。『燃やせ燃やせ』とかけ声を上げていた」と話す。また、車体やガラスがボコボコになり、ひっくり返された乗用車も見かけられた。車は「トヨタ自動車」製で、標的になったとみられている。中国国営・新華社は「7000人以上の学生らが平和的に行進した」と報じたが、一部が暴徒化したことは明らかだ。

 一方、四川省成都の繁華街では17日、前日に起きた反日デモで窓ガラスを割られた「イトーヨーカドー」が予定通り開店した。武装警官らが周辺を巡回して集まろうとする人を排除するなど、周辺は緊迫した雰囲気に包まれた。

 今回のデモは、共産党の最高幹部らが人事や政策を話し合う年に一度の重要会議の真っ最中に起きた。中国政府関係者は「会議のため、主要都市では厳しく取り締まったようだが、内陸部では反日デモが認められた」と述べ、尖閣諸島沖の漁船衝突事件で高まった「反日感情のガス抜き」であることを認めている。ただ、一部参加者の暴徒化を見てもわかる通り、中国当局がすべてをコントロールできているわけではないようだ

 反日デモを放置すれば、その矛先が自分たちに向けられる恐れもあり、全土に飛び火するような事態は中国当局も絶対に認めないとみられる。