国家ファンド利権:民より官が賢いとの前提に立つからこうなります | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

国家ファンド利権:民より官が賢いとの前提に立つからこうなります

秘書です。
菅総理は、民間が内部留保して投資しないから税金や国債ですいあげて新しい需要のあるところにおカネを投ずるといっています。
これは「民よりも官が賢い判断ができる」との前提です。
そして、投資も官ならうまくいく、と考えるんですね。
「国家ファンド構想」がそれです。
郵政改悪、増税するほど景気は良くなるという民主党らしい政策ですね。
リスクとリターンの判断が官にできるのでしょうか?
次々に裏下りか現役出向して、投資の結果が出るころには担当者が入れ替わり誰も責任をとらないのではないでしょか?
官が投資するようなおカネが余っているなら、民に返したらいいのでは?



■年金、日本郵政で失敗した「国家ファンド利権」第三の狙いは外為特会 マーケットのカモにされ、政治家の利権になるだけの愚策/山崎 元
現代ビジネス 10月13日(水)6時30分配信
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1361
 民主党が10月6日に発表した経済対策の中に、外国為替資金特別会計(以下、外為特会)の資金の有効活用が盛り込まれていた。対策は、玄葉光一郎政調会長から、海江田万里経済財政担当相に提言された。

 詳細はまだ明らかではないが、運用資産が100兆円に及ぶ外為特会が保有するドル資産の一部を、国際協力銀行(JBIC)を経由させるなどして海外の大型資源プロジェクトなどに資金拠出することを考えているようだ。「資金規模は数兆円を想定しており、今後財務省と調整を進める」(『日本経済新聞』10月6日朝刊)とある。「外貨準備を活用した国家ファンド(政府系ファンド、SWF)」(ロイター、10月6日)と報ずる向きもある。

 いわゆる日本版国家ファンドの創設は、自民党が政権にあった頃から、一部の議員によって熱心に唱えられていたが、どの資金を使って国家ファンドを作るかについては、狙い筋が二転三転してきた。

 当初の狙いは、公的年金の積立金だった。

 厚生年金、国民年金の積立金は、合計で約120兆円に及ぶ。GPIFこと年金積立金管理運用独立行政法人が、主に外部の運用会社を使う形で運用している。

 国家が市場で運用するファンドという意味では、GPIFは既に世界最大級の「国家ファンド」であり、日本版国家ファンド推進論者から見ると、この運用を積極化することが最も手軽な国家ファンド創設に映ったようだ。

 舛添要一氏が厚労相時代に、年金積立金のうち10兆円程度について、積極運用にチャレンジしてみてもいいのではないかと述べたこともあった。しかし、その後、長妻昭氏に大臣が交代して、この構想は実現しなかった。

 GPIFについては、その運用のあり方について厚生労働省の審議会で議論されている。同審議会の議事は、市場に与える影響を考慮して非公開となっており、筆者(議事に参加している委員の一人である)が直接コメントすることはできないが、一般論として、年金運用の場合、運用の内容は、計画・実行・評価の各段階でかなり堅苦しいチェックの対象となり、発展途上国の国家ファンドのような良くも悪くも大胆な投資を行うには向いていない(国家ファンドは、基本的に先進国のものではない)。

 国家ファンド創設論者たちは、ある時点でこの点に気がついたようで、公的年金積立金をSWFのターゲットにすることに対して熱意を失ったかに見える。年金運用を監督する厚労省も、独立行政法人としてのGPIFを監督する立場の総務省も、先般大臣が交代したので、方針が変わる可能性も若干はあるが、公的年金運用のSWF化は避けられそうに思う。

 日本の公的年金は、将来の保険料引き上げ、給付の調整(要は削減)、積立金の運用の三点を都合よく想定して「100年安心」と謳っているが、楽観できる財政状態にはなく、積立金運用で大きなリスクを取ることには馴染まない。

 現在のような年金積立金を市場運用する仕組みを続ける場合、ポートフォリオの一部に新興国の株式・債券を加えるような運用方針の改定は十分に考えられるし、運用の改善点は他にもあると思われる。



 しかし、ヘッジファンドに運用を委託したり、日本の新幹線などを外に売り込む際のファイナンスに年金積立金を使ったりといった、大型の金融利権につながるような積立金の流用は現実的ではない。

 公的年金積立金に関して大きな変更を行うなら、ここで運用リスクを取って高いリターンを目指すよりも、むしろ積立金の額を大幅に縮小して国民に積立金を返し、国全体としては、民間で行う資金運用を増やす形にする方が効率的になるだろう。

 将来の年金給付に、心許ない資産運用が影響するかもしれない中途半端な現行の形よりも、国と国民との間の契約を明確にする方が国民は安心できるし、こうした安心は、経済にとってもプラスの効果をもたらすはずだ。

 「民間でできることは、民間で」というのは、小泉内閣時代によく唱えられた(唱えられるだけで、実現したものは少ないが)キャッチフレーズだが、資金の運用こそ、民間にできて、民間でやった方が上手くいく仕事の筆頭だ。

 政府部門が巨額の資金を運用すると、

(1) 意志決定の大きさと責任がアンバランスな巨額資金が存在してしまう、

(2) 積立金運用が政治的に歪められるリスクを負う(かつての、株価維持を目的とした公的年金の株式買いは概ね大損につながった)、

(3) 民間会社の大株主となることで政府の民間への過剰介入ないし議決権行使が不十分になって企業統治の空洞化が起こる、

(4) 運用方針に説明責任が伴う大資金なので市場で利用されて運用上の不利を負う、

 といった不利益がある。

 日本版国家ファンド創設論者が公的年金積立金の次に狙ったのは、日本郵政の資金だった。

 詳細は、4月28日付の本連載の拙稿「あまりに危ない原口大臣『郵政10兆円投資構想』のお粗末」をご一読いただきたいが、民主党に政権が交代して、郵政民営化の部分的逆回しのような事態が起こったが、ここで、運用に困っている巨大資金として、郵貯・簡保の資金が狙われた。

 大きな資金を見つけるたびに「とりあえず、10兆円! 」と言ってみるのが、日本版国家ファンドの創設を狙う連中の常套手段で、他人のカネだと思っていい気なものだ、と言わざるを得ない。

 一企業である日本郵政なら、公益年金積立金ほど外部のチェックはうるさく入らないので、この会社に政治的影響力が及ぶ時期に、10兆円ほど別枠で切り取ってしまおうと目論んだのだろう。

 しかし、天下り官僚を含むとはいえ、日本郵政の経営者の立場に立つと、いい加減な資金運用で大失敗すると、背任罪に問われかねないし、将来、民間に株式が売り出されると株主代表訴訟のターゲットにされかねない。

 また、海外のインフラ事業などへの融資が想定されていたが、そもそも有利な条件で貸し出しができるなら、日本郵政でなくても融資を行いたいところだ。しかし、プロジェクトのリスクもあるし、プロジェクトの売り込みのために低利で融資するとなると収益性が損なわれる。



 政府がリスクについて保証するなり、利益を補填するなりするとすれば、政府の不公平あるいは(準)官業による民業圧迫との批判を浴びることが確実だ。

 民営化された段階での日本郵政の経営方針として、プロジェクト・ファイナンスや資金運用のノウハウを持った金融機関を買収して、資金運用の拡充を図ることは、経営戦略として十分考えられてもいいと思うが、郵貯・簡保の資金の一部国家ファンド化は、結局のところ困難だろう。

 そこで、今回登場した第三のターゲットが、外為特会だ。外為特会の資金の大半は米国財務省証券(米国債)で運用されており、この効率改善を図るというのが、今回の触れ込みだ。資金の使途については、先般の中国のレアアース禁輸騒動を意識したものか、海外資源の確保を海外のインフラ投資事業と共に謳っている。

 相手が財務省であることから遠慮したものか、「とりあえず、10兆円! 」ではなく、「数兆円の規模で検討」と要求をダウン・グレードしてきた。

 外為特会が運用する外貨準備は政府が債務を負って調達した介入資金によって得られた背後に負債が対応したもので、この運用対象はリスクの小さな堅実なものでなければならないという財務省側の守備の論理は強固だ。米国債の売却にもつながる話なので、表だって推進することは難しいと考えるのが常識的だろう。

 提言を受ける側の海江田万里経済財政担当相も、日本版SWFを「(政府の対策案の)具体策に盛り込むかどうかは、よく議論する必要がある」と述べており、慎重な姿勢を見せているのは案外頼もしい。

 外貨準備はもともと円売りの為替介入で積み上がった(プラス利息などの運用益で)資金だが、これをたとえばJBICなどを経由して海外への日本の新幹線の売り込みのようなプロジェクトのファイナンスに使うと、日本企業が代金を受け取り円転することになるので、為替需給上は、介入の逆をやることになる。

 また、米国債を売らずに運用を効率化するためには、米国債を担保として借り入れを起こして、リスク資産に投資するような方法が考えられるが、いわば外為特会をヘッジファンド化することになる。いったい誰が運用するというのだろうか。

 一つのアイデアとしては、外為特会に情報非公開の「SWF勘定」を作って、米ドルに偏ったポートフォリオの修正をカモフラージュすることが考えられるが、米国を相手に秘密を持つ胆力のある人物が霞ヶ関にいるとは思えないし、正攻法から外れている感は否めない。

 外為特会の国家ファンド化も、結局、実現はしないのではないだろうか。

 国家ファンド推進論者たちの執念には恐れ入る。また政治家にとっても、ヘッジファンドでの運用にしても、プロジェクトのファイナンスに使うにしても、自らが口利きで関わることのできる利権としては魅力的に映るのだろう。

 しかし、彼らの多くは、一方では、法人税引き下げや規制緩和などを成長戦略として推進すべし、と言っている市場原理を重んじる議論に立つ人たちだ。国家ファンドは市場原理の対極にある存在なのに、自分たちの手柄や利権になる可能性があると矛盾に気が付かなくなるのだろうか。

 彼らが、国家ファンドに絡む利権を、官僚の権限の増加と天下り先の創出に結びつけることができる悪知恵を持ってバージョンアップした時には、「国家ファンド」なる不細工で汚い巨額資金を国民の財産から切り取られてしまう可能性があるので、これからも十分に注意したい


■政府系ファンド通じた資源獲得競争、日本も外貨準備で参入の動き
2010年 10月 13日 15:02 JST
[ロンドン 12日 ロイター] 日本が、保有する巨額の外貨準備の一部を活用し、海外における天然資源の権益獲得を進める案を提示したことで、世界の資源獲得競争に拍車がかかるとの見方が強まっている。
 世界2位の外貨準備保有国である日本が実際に外貨準備を用いて世界の希少資源を買い集めれば、資源価格の高騰を招き、世界的なインフレに火がつきかねない。そうなれば、資源産出国は資本流入の規制策を強化し、自由貿易を阻害する恐れもある。 

 日本の与党民主党は先週、円高を生かし、エレクトロニクス産業に欠かせないレアアース(希土類)を含む、海外の資源開発に投資するという予想外の提案を行った。そればかりか、中国やシンガポールと同じような政府系ファンドの設立も提案した。

 政府系ファンドの設立が実現すれば、日本は先進国として初めて、中国やカタールのように多額の外貨準備を戦略投資に投じる国となる。 

 ジュネーブのコンサルティング会社ジオエコノミカのマネジングディレクターで政府系ファンドの専門家でもあるSven Behrendt氏は「国家キャピタリズムのアイディアは自己増殖する。中国や中東諸国がそのような行動をとり、それに日本も加わった。外貨準備はパワーリソースと化した」と述べる。

<グローバルな資源獲得競争>

 日本の動きは、尖閣諸島をめぐる中国とのいざこざで、中国からレアアースの輸出を停止されたことを受けたものだ。日本は中国が生産するレアアースの約半分を輸入しており、世界のレアアースの97%を生産する中国が輸出を停止すれば、日本の産業は大きな痛手を被ることになる。

 一方、日本では円高阻止に向けた市場介入を実施したことも加わって、外貨準備が過去最高水準に積み上がっている。日本による為替介入は、世界の当局者の間で「通貨戦争」に発展しかねないとの懸念を呼んでいる。

 世界各国の政府系ファンドの規模は約3兆ドルに膨らんでいる。これは世界の株式市場の時価総額の約10分の1に相当する。
 金融コンサルティングのモニター社がまとめたデータによると、2009年には石炭、原油、天然ガスへの投資額が112億ドルに上り、2008年の13億ドルから急増した。天然資源や農地への投資は民間ベースで行われるケースが多いため、実際の数字はこれをさらに上回るとみられる。 

 公の市場を通じた資源取得を問題視する向きは少ないが、それに「国家的」な要素が入り込めば、資源産出国では、安全保障上あるいは戦略的に重要な資源が他国に支配されるとの懸念が高まる。

 カナダ政府はすでに、中国国有企業による肥料大手ポタッシュ(POT.TO: 株価, 企業情報, レポート)への買収提案に対し、海外の国有企業は政府の代理として行動せずに、市場原理に基づいて投資すべきだとして懸念を表明している。

 ポタッシュをめぐっては、中国の政府系ファンドである中国投資有限責任公司(CIC)とシンガポールの政府系ファンド、テマセクも関心を示している。

 日本が政府系ファンドのモデルとする可能性がある中国のCICは、エネルギーや農業、電力セクターへの関心を公に表明しており、ロシアやインドネシアへの投資を計画している。

 一部報道によると、ベネズエラやインドも海外のエネルギー資産を取得するため、数十ドル規模の政府系ファンド設立を検討しているもよう。

 中東の湾岸諸国は食糧確保のため、東欧やオーストラリアで農地取得に奔走している。

 それに対し国連は、裕福な国々が発展途上国で農地を買いあされば、現地の農民の権利が脅かされると懸念を示している。
 インベステック・アセットマネジメントのグローバルストラテジスト、マイケル・パワー氏は、日本は戦前、国家主導でエネルギーや資源を略奪した前科があるとした上で、「資源獲得競争は国家レベルの地理経済問題だ。日本は供給を確保しようとする姿勢に戻りつつある」と述べている。

  (Natsuko Waki 記者;翻訳 長谷部正敬:編集 宮崎亜巳)