通貨安戦争?:金融緩和>為替介入 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

通貨安戦争?:金融緩和>為替介入

秘書です。
みんな昼飯代を節約して日々をしのいでいる中、なんで円高なんでしょう?
為替介入と金融緩和について学習しましょう。



■菅首相:為替政策、中韓は責任ある行動を-国会答弁(Update1)
  10月13日(ブルームバーグ):菅直人は13日午前の衆院予算委員会で、通貨安競争に関し、自分の国だけ低いところに人為的に誘導していることは国際社会全体の協調から外れているとして、中国だけでなく、韓国に対しても自国通貨安に対して責任ある行動を取るよう求めた。西村康稔氏(自民)に対する答弁。

  首相は韓国について「いろんな意味での競争力は日本との関係では大きなものがある」と述べた。その上で、為替政策については「自分の国だけ低いところに人為的に誘導していることは全体の協調からすれば外れている」と指摘、「韓国にも中国にも共通ルールの中できちんとした責任ある行動を取ってもらいたい」と20カ国・地域(G20)首脳会議参加国としての国際社会への協調を求めた。

  首相は、来年度税制改正の焦点となっている法人税減税については「政府税制調査会や党における議論で引き下げの方向での検討を指示している」とあらためて意欲を示した。ただ、引き下げ幅については「率について数字を言う段階ではない」と明言を避けた。


→通貨安競争ではなく金融緩和競争でしょう?


■白川日銀総裁:必要と判断すれば資産買入基金をさらに活用(Update1)
10月13日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は13日午前、衆院予算委員会で、必要な場合は資産買い入れ基金をさらに拡大する考えを示した。自民党の西村康稔氏の質問に答えた。

  日銀は5日開いた金融政策決定会合で、国債、コマーシャル・ペーパー(CP)、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)などの金融資産を買い入れる5兆円規模の基金を創設することを検討すると表明した。

  白川総裁は「仮に将来必要なときは、こうした基金をさらに活用して、金融政策を行っていくことも有力な選択肢の1つとして考えている」と言明。さらに、「総合的に勘案して必要だという場合は、こうした基金のさらなる活用も考えていきたい」と述べた。

  為替相場については「円高は輸出企業の採算や企業のマインドに大きな影響を与え得る。日銀も為替相場の動向とその影響については重大な関心を持って注視している」と述べた。

→金融資産買い入れは「不言実行」でどんどんやればいいんじゃないでしょうか。

■先進国、異例の金融緩和継続が必要=白川日銀総裁
2010年 10月 11日 12:51 JST
[ワシントン 10日 ロイター] 7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)などに出席するため訪米中の白川方明日銀総裁は10日、国際金融協会(IIF)で講演し、日本のバブル崩壊以降の経験を踏まえ、金融緩和だけでは問題は解決できず景気の本格回復にはバブル期に蓄積された過剰を一掃する構造改革が不可欠との持論を述べた。
 先進国各国は「異例の緩和的な金融政策」を継続する必要があるとする一方、副作用として新たなバブルが発生する可能性に懸念を示した。

 白川総裁は「消費者物価上昇率について、バブル崩壊後の日本と2007年以降の米国のグラフを重ねると、両者は驚くほど似ている」とし、米国経済がデフレ傾向を強めつつある点を指摘。そして、「様々な異例の政策努力にもかかわらず、バブルを経験した国がバブル崩壊後の落ち込みから立ち上がり、景気が本格的に回復するまでには、かなり長い時間を要することを冷静に認識する必要がある」とし、「バブル期に蓄積された『過剰』の整理にメドがつかない限り、力強い経済成長を取り戻すには至らないことは、冷厳な事実」と指摘した

 先進国に共通する経済政策運営上の主要課題の一つとして、「現在の経済状況を踏まえると、異例の緩和的な金融政策を継続する必要がある」とし、日銀が5日に発表した国債や指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J─REIT)などの買入れを含む包括的な金融緩和策を紹介。

その上で「緩和的な金融政策は必要な政策措置だが、それだけでは問題を解決することはできない。構造改革が不可欠」とも強調した。

 一方、「緩和的な金融政策が新たなバブル発生の一因となる可能性も否定できない」と指摘。「危機は毎回、違った姿で表面化する」とし、「現在、先進国の景気回復は新興国の力強い成長に支えられているが、新興国の力強い成長がバブル的な景気拡大である場合には、新興国はもとより、先進国も大きな影響を受けることになる」と先進国の金融緩和が新興国への資本流入という形で新たなバブルを形成する可能性について警鐘を鳴らした

→日本は景気回復にかなり長い時間を要した、だから、欧米の中央銀行は日本を反面教師としているのではないですか。日銀が5日に発表した政策は欧米ではやっていない革命的な政策ですか?それとも後追いですか?

→15年もデフレが続いている国の総裁が、「緩和的な金融政策が新たなバブル発生の一因となる可能性も否定できない」とはどういうことか。この認識こそが、2006年、2007年の金融政策転換の大失敗の原因でしょう。構造改革が不可欠といいながら、小泉構造改革の成果をゼロにしてしまった原因でしょう。


■メディアが書き立てる「通貨安戦争」悪者論を鵜呑みにするな
G7で為替介入に理解を求めた政府のお粗末

2010年10月11日(月) 現代ビジネス 高橋 洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1351

国際通貨を巡る戦いは熾烈になっている。

ワシントンで開催されたG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)は10月8日、各国の協調姿勢を確認した。会合では、「通貨安戦争」を回避するため、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に悪影響を与え望ましくない、為替はファンダメンタルズを反映すべき、為替市場をよく注視し、適切に協力することで一致したと報道された。

欧米の中では、一部で「通貨戦争(currency wars )」という言葉さえ出始めている。日本のマスコミも安易に「通貨安戦争」を使っている。こうした「言葉」を鵜呑みにしてはいけない。

国際通貨は、国際交渉の駆け引きが行われる国際政治と冷徹な経済原理が貫徹する国際経済が錯綜する場である。実際には、国際経済のロジックをベースにしながら、国際世論を引き込みながら、自国が有利になるような仕組みに導いている。

まず、国際経済の現状をみよう。まず、マスコミが好む「通貨安戦争」という言葉はミスリーディングだ。この言葉を使う人は、1930年代の大恐慌は各国の通貨切り下げ競争で激化したという「神話」を信じている。実は、この考え方は経済理論的には間違っていたことが、最近の国際経済学研究で示されている。

バリー・アイケングリーン・カリフォルニア大学教授とジェフリー・サックス・コロンビア大学教授が戦間期の為替切り下げ競争が壊滅的な結果でなく各国とも好ましい結果になったことを示している。浜田宏一エール大学教授と故岡田靖内閣府経済社会総合研究所主任研究官も、各国が金融緩和競争によって通貨を下げても、世界各国の経済はよくなることを示している。

それは以下のような理由からだ。どこかの国が通貨引き下げをすると、短期的には外国はマイナスの影響を受けるが、外国も金融緩和する。そうすると両国ともにインフレ率が高くなるが、両国ともに許容できるインフレ率に限界があるので際限のないインフレにはならないように、金融緩和競争はいつまでも続かない。世界の先進国では2%程度のインフレ目標があるので、4、5%のインフレにはならないだろう。

要するに、各国ともに、自国経済を一定のインフレ率と失業率に抑えようと経済運営すれば、自ずと為替切り下げ競争にはならないのだ。その結果、一時的な通貨切り下げによる「近隣窮乏化」は、実は各国経済がよくなるために、逆に「近隣富裕化」になって、世界経済全体のためになる。

 さらに、具体的にブラジルの例で考えてみよう。実は、「通貨戦争」を使い出したのはブラジルのマンテガ財務相であり、同氏は、この言葉を使って、自国通貨安政策をとる先進国を非難したのだ。

確かに、米や欧州で金融緩和が行われ、結果としてブラジル・レアルが高くなった。8日、1ドルが1.667レアルとなって2年ぶりの高値だ。これは、本コラムで示した「為替レートはそれぞれの通貨の相対的な存在量で決まり、相対的に希少な通貨ほと為替レートが上昇する」に従った結果だ。もしリアル安にしたければ、ブラジルが金融緩和を行えばいい。

 しかし、ブラジルは4.5%というインフレ目標を採用しており、現時点のインフレ率は4.7%なので、とても金融緩和できる状態でない。一方、欧米では、リーマンショック以降、インフレ率が低下したために、今の金融緩和が正当化できる状態なのだ。

 こうした状況で、ブラジルが金融緩和し「通貨安競争」に加わるのは、インフレ率が目標より高くなってブラジル経済にとって好ましくない。このジレンマに、マンテガ財務相は苛立ちを覚えているだろうが、ブラジル経済は悪い状態ではない。

先進国は、この「通貨安戦争」は悪くないという最近の国際経済学の考え方で、自国経済優先の金融緩和を行っている。このコラムで指摘したように、通貨の高安は通貨の相対的な存在量による。相対的に多ければ希少性が薄れて通貨安になるのだ。だから、あくまで国内問題として金融緩和をして通貨増にすれば自国の通貨安になる。

一方、国際政治の場であるG7では、建前が優先される。日本は、欧米諸国とともに変動相場制であり、為替は自由に市場で決まる。ところが、中国は、欧米通貨に連動するというものの、事実上は固定相場制である。

もちろん、どちらの制度を選択するかは、国際金融のトリレンマ(金融政策の自由、固定相場制、自由な資本移動ののうち、二つしか採用できない)から、国際的な配慮から資本移動の自由を選べば、国内のインフレ管理を重視し金融政策の自由か、輸出企業に配慮して為替介入をして国内金融政策を犠牲にする固定相場制のどちらを選択するかの問題だ。

こうした中で、G7は、政治的に中国の為替レートを問題にするために、中国の為替が自由に決まっていないことを批判する。

今のところ、このような国際経済と国際政治の常識から導かれる「新たな国際通貨の方便」(必ずしも経済学的に正しいとは限らない)は、国内対策として金融政策によって結果として通貨安になるのはいいが、為替介入によって通貨安にしてはいけないという話だ

ところが、日本は変動相場制で自由な金融政策ができるにも関わらず、不十分な金融緩和しかやらなかった。そこで、国際通貨の方便から見ても、G7で浮いてしまった。日本は為替介入で各国の理解を求めたようだが、そんな理解を求めてはいけない

5日の日銀の金融政策は惨めだ。マスコミは「実質ゼロ金利」と日銀発表をそのまま書いている。そころが、公表文書の脚注2では、「補完当座預金制度の適用金利、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの貸付金利および成長基盤強化を支援するために資金供給の貸付利率は、引き続き、0・1%である」と書かれている。こうした主要なところを0・1%としているのであるから、実質ゼロのはずない

35兆円規模の「資産買い入れ等の基金」の創設は、量的緩和と事実上同じなので一定の評価ができるが、増加分を見ると10兆円を超えるレベルだ。しかも、公表文書の別添2をみると、5兆円の「買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に…」と書かれている。量的緩和については、他国に対抗するためには基金規模の増加分が少なくとも40兆兆円以上ないと効果がでてこないのに。日銀では、GDP比で見て日銀の資産はすでに大きいとかいうが、重要なのはGDP比の水準ではなく変化率だ。日本の水準が高いのは、日本が現金社会というだけだ。

金融政策は「大砲」、為替介入は「ピストル」

しかも、財務省も間抜けだった。財務省の櫻井副大臣は、7日の記者会見で、「日銀の政策決定会合で我々が想定している以上の政策を打ち出していただきました。この点については、日銀の皆さんのご努力に対して心から感謝を申し上げたいと思っております」と述べた。これでは、G7の前にもう為替介入がないと宣言したのに等しい。

こうした政府・日銀の失態の結果、円高が進展してしまった。そもそも通貨量の相対的な動きで通貨の価値が決まるという事実は、変動相場制での為替介入の効果は限定的ということだ。金融政策が不十分な中で、財務省副大臣の不用意な発言もあり、野田佳彦財務相がいくら介入すると言っても無力だった。

しかも、通貨安戦争が悪いと思い込んで、日銀のように金融緩和を怠り円高になっても、外国は助けてくれない。金融緩和競争が当たり前で、悪いことでない以上、それに日本が参加しないのは、外国の利益だからだ

たとえていうと、金融政策は大砲だが、為替介入はピストルだ。先進国のルールでは、大砲を撃つのはいいが、ピストルはダメだ。しかし、日本は、このルールを知らずに、大砲を撃たずにピストルで対応しようとする。

国際通貨の交渉の場も為替市場でも、今の日本はおいしいカモだろう。