多国間外交と日中関係:菅総理が道筋をつけた「非公式ソファー路線」? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

多国間外交と日中関係:菅総理が道筋をつけた「非公式ソファー路線」?

秘書です。
多国間会合の「軽視」と「非公式ソファー路線」重視。国際環境の変化をとらえることなく、首脳会談を開くこと自体を優先して本来主張すべきことを自制する。手段と目的が逆転してしまいませんか。


■【主張】日中防衛相会談 核心の議論なぜ回避した
2010.10.13 04:17産経新聞

 北沢俊美防衛相はハノイで梁光烈・中国国防相と会談し、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件を念頭に日中間の海上連絡体制を早期に確立する重要性を再確認し、戦略的互恵関係を進めることで一致した。

 事件を機に現場海域の緊張は高まっており、誤解や誤算による偶発衝突を防ぐ相互連絡体制の早急な整備は当然といえる。だが、その大前提は尖閣諸島とその周辺が日本固有の領土・領海である事実を繰り返し明示することではないか。防衛トップの北沢氏が核心の議論を回避したのは到底理解し難い

 南シナ海、東シナ海で独善的な海洋権益拡大を続ける中国の行動は地域共通の重大懸念である。これを抑制するには、日米同盟を軸とする毅然(きぜん)たる対応が不可欠だ。周辺諸国も注視している。北沢氏は共同防衛を強化するとともに、守るべき国益を中国に正面から伝えるよう認識を改めるべきだ。

 北沢氏は、初めて開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)と域外8カ国の拡大国防相会議の機会をとらえて現地入りした。

 ゲーツ米国防長官との日米防衛首脳会談で、尖閣有事の際には日米安保条約の共同防衛義務が適用されるとの認識を再確認したのは妥当である。またベトナム、豪州などとの個別会談では、尖閣に関する日本の立場を説明した。

 にもかかわらず、北沢氏が梁国防相に対し、尖閣に関する立場は「既に伝達ずみで、ここで議論するのは生産的でない」と問題の核心を論じなかったのは極めて残念だ。主権を守る政治的意思は常に表明すべきである。現地入りしながら、拡大国防相会議には安住淳副大臣を代理出席させたことにも首をかしげざるを得ない

 中国側が尖閣を「中国固有の領土」と国際社会に繰り返し宣伝しているのに比べて、日本の発信力の弱さが指摘されている。ベトナムが今回の拡大会議を主催した背景にも、多国間の枠組みを通じて中国の力ずくの海洋進出を牽制(けんせい)する狙いがあるとされる。

 18カ国の国防相が一堂に会する場で、日本と周辺諸国が共有する懸念を率直に指摘してこそ防衛トップの重責が果たされ、各国の共感も得られたのではないか。

 日中防衛交流も戦略的互恵関係も、日本が譲ることのできない領土主権や国益を堂々と展開しなければ始まらない。


→問題の核心を論じない会談の意味というものは、日本的美徳で「大人の対応」とかいっていると、国際社会では相手側の論理の容認につながっていくのではないでしょうか。

→なぜ、北沢防衛相が最後まで会議にいなかったのか。まるで、日中国防相「交談」(?)のために行ったような感じになってませんか。国会対応などという理屈は日本でしか通用しないでしょう。一部報道では野党が予算委員会出席をもとめたから、とありますが?民主党側はどこまで、拡大国防相会議に最後まで北沢防衛相を出席させてほしいと野党に求めたのでしょうか。多国間外交への首相、閣僚出席と国会質問の関係こそ、早急に熟議して合意を形成しなければならないように思います。


■日本、東シナ海に言及 ASEAN拡大国防相会議
2010/10/13 1:59 日経新聞
【ハノイ=小嶋誠治】「南シナ海のみならず東シナ海で、海洋問題が各国間の懸念を呼んでいる」。安住淳防衛副大臣は12日の拡大国防相会議で、尖閣諸島を巡る中国との確執を念頭に「東シナ海」に触れた

 会議前に帰国した北沢俊美防衛相は11日、ASEAN諸国との2国間会談で「尖閣諸島は日本固有の領土で有効に支配している」と訴えたが、対中関係も考慮する各国は明確な賛同を回避。ベトナムのタイン国防相は「自制し国際法に基づき平和、友好的に解決するよう望む」としただけだ

 このため翌日の多国間協議の演説文に「南シナ海」と「東シナ海」を並べ、南沙・西沙と尖閣の関連性をにじませた。

 尖閣沖の衝突事件後、初の閣僚級協議となった11日の日中防衛相会談を前に中国側は「2人が会うロビーに記者団を近づけないように」と日本側に注文を付けた。正式会談ではなく、非公式な「面会」としたい中国は神経質になっていた

 日本の外務省幹部は「中国は拳を下ろしたいが、日本が悪いとしてきた手前、すぐに下ろせない。会談と大きく報じられるのを嫌った」と見る。

 結局、北沢氏と中国の梁光烈国防相は手を握り合って歩き、報道陣の目が届くロビーのソファに腰かけた。会談は約20分間。中国が「言葉を交わしただけ」と位置付けたブリュッセルでの日中首相会談と同じ形式だ

 「まだ中国全体で前向きになりきっていない。少し時間が必要」。会談後、北沢氏は振り返った。ただ関係修復への道筋は見えた。双方は11月の横浜APECへの胡錦濤国家主席の出席に向け、まず月末の東アジアサミット(ハノイ)の際、正式な日中首相会談を実現したい意向だ。

→菅首相がブリュッセルで道筋をつけた「非公式ソファー路線」。これを中国国内では軽く扱い、日本国内では関係改善と大々的にとりあげ、日中首脳会談実現が目的化されて、日本側は言うべきことは言わないという自制が「双方の努力」の名のもとに積み上げられていく。

→下記の防衛交流も「非公式ソファー路線」の延長ではないのですか。

→「非公式ソファー路線」は中国国内事情というよりも、国際社会の環境変化の中で日本の強硬姿勢を緩和する、と位置付けるべきでしょう。しかも、中国側はほとんど何も譲歩していない。


■海自艦の非公式寄港を打診 「延期」転じ、中国譲歩か
2010/10/12 22:55 共同通信
 今月15日に予定されていた海上自衛隊練習艦隊の中国・青島への寄港について「延期」を通告した中国側がその後、防衛省に対し、交流行事などを行わない「非公式寄港」とするよう水面下で打診してきたことが12日までに、日中外交筋の話で分かった。

 10日の延期通告を受けて、北沢俊美防衛相が11日の日中防衛首脳会談で再考を求めた際には、梁光烈国防相は難色を示していた。寄港を認める姿勢に転じたのは、中国側の一定の譲歩ともとれるが、非公式寄港では、艦艇の相互訪問による防衛交流という本来の目的にそぐわないため、防衛省は対応に苦慮している。

 同筋によると、中国側は「(尖閣諸島沖の漁船衝突事件で)対日感情が悪化しており、不測の事態を考慮すると公式では困難だが、非公式なら受け入れる」と伝達。歓迎セレモニーや交流行事などは一切行わないが(1)乗組員の上陸(2)燃料や水などの補給(3)私服での市内視察・観光―などを認めるとしている。

→こういうのを譲歩ととらえるのは間違え。防衛交流は国家を代表する交流で他国との間で行うセレモニーや行事がないのはありえないでしょう。日本側が迎えるときは他国と同様に最大限のもてなしをすべきだし、中国側も同様でしょう。いかなる国も二流国家扱いにしてはいけませんし、されてもいけません。非公式ソファー路線が日中関係は正式な国家関係でなくてもいい、非公式交流を続けていれば日本側は自己主張を抑制するということが定着してはいけません。対日感情が悪化し、「フジタ」の問題についての解明も進んでいない中で、自衛官の私服での市内視察・観光は適切ではありません。そこで何かの「トラブル」になったときには、取り返しのつかないことになります。そんなリスクを背負わせてはいけません。


■中国国家海洋局、巡視船増強…5年で30隻
(2010年10月12日19時50分 読売新聞)
 【北京=佐伯聡士】中国国家海洋局の幹部は11日、パトロール部隊の「海監総隊」が、今後5年で巡視船を新たに30隻建造する計画であることを明らかにした。

 華僑向け通信社「中国新聞社」(電子版)が伝えた。

 今年末から来年初めにかけて6隻が新たに加わるという。

 幹部は、「中国が保有している巡視船は規模も小さく、保有隻数も日本の半分にも満たない」と指摘している。

 国家海洋局は、2020年までに巡視船や航空機など装備を増強する「中長期発展計画」を先に制定しているが、具体的な数値目標は伝えられていなかった。巡視船を展開する海域は、尖閣諸島周辺も念頭に置いているとみられる。


■中国対日輸出「4割程度改善」
2010.10.13 05:00産経新聞
 尖閣問題をきっかけに、中国の対日輸出が滞っている問題で、大畠章宏経済産業相は12日の閣議後会見で、「4割ぐらいは改善の傾向がある」と述べ、レアアース(希土類)以外の製品は、通関申請の受付などで事態が改善しつつあるとの認識を示した。中国の国慶節明けの8~11日の状況をもとに判断。レアアースについては、「好転したという状況にない」と指摘。今週の状況をみたうえで正常化されないようであれば、「改めて改善要請をする」との考えを明らかにした。政務官や副大臣級を中国に派遣し、直接改善を求めることも検討している

→なぜ、民主党政権はASEM首脳会合や日中首脳「交談」で話題にしなかったのか。なぜ、政務官・副大臣級なのか。温首相のブリュッセルでの規制正当化発言はどう受け止めるのか。この問題は政務官・副大臣程度の話なのか。会社を選んで、「友好度」をみて、選別的に、事態を改善しているのではないか。WTO提訴はどうなったのか。