仮説的分析レポート②:菅総理は戦略的環境変化の好機をつかめるか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

仮説的分析レポート②:菅総理は戦略的環境変化の好機をつかめるか?

秘書です。

日中関係にとっての国際戦線の戦略的環境が大きく変化しました。
官邸-民主党主導の連戦・連敗外交を断絶して、戦略的劣勢をばん回するチャンスです。
菅総理はこの変化をチャンスとしてつかむことができるでしょうか?

戦略的環境の変化とは、日中関係が主要矛盾ではなくなり従要矛盾となることであり、むしろ統一戦線の提携先に位置付けられるかもしれないということ。ある意味、89年天安門事件以後の国際環境に似てくるかもしれません。89年から93年頃まで日中関係は劇的に改善しています。しかし、今日、より鮮明になるのは、普遍的価値の擁護する国際戦線に踏みとどまるのか、経済的利益を重視して国際戦線から離脱するのか、ということです。


民主党政権は、普遍的価値としての人権に敏感とみられていますが、それよりも、政権の延命に敏感かもしれません。政権の延命という非公共的な欲心こそ、全ての判断ミスの原因です。(これが民主党政権の内政外交にわたる失政の原因でしょう。まだ、一人ひとりの国会議員は頭もよさそうだし庶民的だと思われていますが、それにもかかわらず、集団として判断ミスを続けることの原因がいずれ探究されるたとき、この結論に至ることでしょう。そしてイメージと違い、自民党は、非公共的な欲心で政権の延命を図ろうとすると党内から引きずり降ろされるメカニズムがあったことが再評価されるでしょう)

さて、この局面の変化、せめて、菅総理の「バルカン政治家」としての本能と直感と外交プロのアドバイスで対応していただきたいものです。連戦連敗の官邸-民主党外交の延長で意図せざる衛星国化路線・傀儡政権化路線でやったら、今度は国会で苦しい答弁なんてことではすまされない世界史的な大失態となることでしょう。


ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏は、以下のように述べているそうです。

「歴代の独裁者が最も関心を寄せるのは手中にある権力である。最も無関心なのは人の命だ」

なぜ、昨日の参院本会議で自民党議員が日中首脳の廊下懇談で、フジタ社員の拘束問題に言及したかどうか、再質問をしてこだわるのか、民主党政権が、国会対策のためにとにかく日中首脳が接触した形をとることを最優先し、フジタ社員の命のことを劣位に置いたのではないか、という疑念があるからです。答弁ではこの疑念が一切晴れていません。外交上の機密というのは政権の失態を隠すためにあるのではありません。菅総理が官邸-民主党主導の連戦連敗路線に乗ることは二度とないように!

では、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞について、菅総理は世界にどんなメッセージを、中国にどんなメッセージを送ったのか。


■平和賞は「普遍的価値である人権評価」…菅首相
読売新聞 10月8日(金)21時42分配信
 菅首相は8日夜、中国の民主活動家・劉暁波氏のノーベル平和賞受賞について、「普遍的な価値である人権について、ノーベル賞委員会が評価されたと受け止めている」と述べた。
 今回の受賞で同委員会が中国に人権問題の改善を促しているとの見方については、「そういうメッセージも込めて賞を出されたわけだから、そのことをしっかりと受け止めておきたい」と語った。
 首相官邸で記者団の質問に答えた。

→中国に「受け止めるように」と要望し釈放を求めるのではなく、菅総理が「受け止める」?単なる分析評価で、中国や世界へのメッセージはなし。では、欧米指導者はどんなメッセージなのでしょうか?

■【劉氏に平和賞】オバマ米大統領「一刻も早い釈放を」
2010.10.9 00:47 産経新聞
 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米大統領は8日、「劉暁波氏のノーベル賞受賞を歓迎する」との声明を発表した。大統領は、劉氏について「(民主主義や人権など)万国共通の価値を平和的に推進する勇気あるスポークスマンだ」と称賛し、劉氏の一刻も早い釈放を中国政府に訴えた。

 また、劉氏の受賞は、中国がこの30年で目覚ましい経済発展を遂げる一方で、「政治的な改革」が追いついていないことの表れとも指摘。中国政府に対し、「基本的な人権は尊重されなければならない」と注文をつけた。


→オバマメッセージと菅メッセージとの落差!!

■釈放要求に徹底対抗へ=劉氏の平和賞、欧米が圧力―中国
時事通信 10月9日(土)6時30分配信

 【北京時事】中国の獄中にいる民主活動家、劉暁波氏(54)へのノーベル平和賞授与決定を受け、オバマ米大統領をはじめ、フランスやドイツなどが劉氏の早期釈放を相次いで求めた。民主化・人権問題で対中包囲網を形成しようとする欧米諸国に対し、中国は「内政干渉」と取り合わぬ姿勢を示し、徹底的に対抗する構えだ。
 中国が世界第2位の経済大国となり、発言力を強める今、国際社会では「中国はごう慢、強硬だ」といった批判が充満。尖閣諸島沖での漁船衝突事件や南シナ海の領有権問題など、腕ずくで海洋権益拡大を進める中国と周辺国との摩擦も先鋭化している
 このため中国には、「(平和賞発表は)中国外交上、最悪のタイミング。西側には格好の攻撃材料となった」(政府関係者)との思いが強い。さらに、胡錦濤国家主席の後継内定が焦点となる共産党の第17期中央委員会第5回総会(5中総会)が15日に開幕。「党内の権力闘争に微妙な影響を与える」とみる者もいる。
 中国は、民主化と人権改善を求める声が一気に強まれば、「共産党体制の安定を揺るがしかねない」(中国筋)と懸念。劉氏の平和賞決定を歓迎する米国などの動きを断固けん制する方針だ。 


■<劉氏ノーベル平和賞>中国に人権圧力…胡指導部は引き締め
毎日新聞 10月9日(土)2時12分配信

 獄中にいる民主活動家の劉暁波氏(54)へのノーベル平和賞授与が決まったことは、中国に衝撃を与えた。中国は人権問題に対する国際的な批判を経済カードで封じ込める戦略を取ってきたが、欧米諸国から劉氏釈放や天安門事件(89年)の再評価を求められるなど圧力が強まることは必至だ。貧富の格差拡大や汚職の深刻化に対する庶民の不満も高まっており、安定を最優先してきた胡錦濤指導部は授賞決定を機に内憂外患に直面している。【藤田祐子、北京・成沢健一、ロンドン会川晴之】

 中国の国内総生産(GDP)は10年に日本を抜き、世界2位となるのは確実だ。しかし、中国は気候変動問題をはじめ国際会議では「途上国」の立場を主張し続け「責任ある役割を果たしていない」との批判も強い。劉氏への平和賞授与は、人権問題を含め、中国が大人の国になるよう求めたものとも言える

 欧米諸国から人民元の切り上げを求められながらも、応じていない中国へのくすぶる不満や、領海問題で周辺国とたびたび衝突している中国に対する脅威論の台頭も、授賞決定の背景にありそうだ。

 「経済的発展や力による安定だけで評価されるのではないことを、国際社会が中国に突きつけた」。劉氏の弟子のような存在で、9月30日まで開かれた「第76回国際ペン東京大会」に出席した広東省広州在住の作家、野渡さん(40)は授賞の意義について語る。

 劉氏が指導的役割を果たした天安門事件は、中国指導部に重くのしかかっている。その最大のものが、欧州諸国による対中武器禁輸だ。中国の温家宝首相は欧州歴訪でギリシャ国債を買い増す方針を表明した。ギリシャの財政再建を支援するだけでなく、ユーロ防衛にも貢献することになる。人権批判を経済力で封じ込め武器禁輸解除を目指したものであることは明らかだ。

 中国の人権状況については、米国の歴代政権からもたびたび改善要求があり、中国側も米中首脳会談を前に獄中の民主活動家を病気療養の名目で釈放するなどして批判をかわすことがあった。

 しかし、近年の経済発展で中国国内ではナショナリズムが高まっており、08年にチベット自治区などで起きた大規模暴動の武力鎮圧をフランスから厳しく批判された際、仏系スーパー「カルフール」に対する不買運動が起きた。また同年秋のリーマン・ショック以降、世界の景気回復に中国の高成長が貢献しているとの自負が強まっており、中国側が人権問題で軟化する可能性は低いとみられる。

 中国関係者に対するノーベル賞授与は、インド亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世に対する89年の平和賞や中国出身の作家、高行健氏(フランス国籍)に対する00年の文学賞がある。この時も中国政府は授与決定に激しく反発した。今回は初めて中国国内にいる人物に対する授与で難しい対応を迫られる。

 こうした中、中国共産党は15~18日、第17期中央委員会第5回総会(5中全会)を開催する予定で、2年後の党大会に向けて現指導部の後継人事を視野に入れた話し合いも行われる見通しだ。権力闘争の激化を防ぐ意味でも、不安定要因をできるだけ取り除く必要に迫られており、中国指導部は今後、民主活動家への監視強化など体制引き締めを図るとみられる。

→世界が中国に大人になるよう求める中で、日本はどうする?

■「大国にひるまず」全会一致…ノーベル賞委員長
(2010年10月9日00時45分 読売新聞)

 【オスロ=大内佐紀】ノルウェー・ノーベル賞委員会のトールビョルン・ヤーグラン委員長は8日、オスロ市内の同委で読売新聞と単独会見し、ノーベル平和賞を中国の民主活動家・劉暁波氏に授与することは、同氏の有罪判決が確定した段階(今年2月)で「不可避の状況になっていた」と述べた。さらに、委員会が全会一致で劉氏への授与を決めたことを明らかにした。
 委員長は「相手が大国だから、委員会がひるんだと見られることは許されなかった」と述べた。また、「中国は大国となった。米国がそうであるように、大国は議論と批判の対象になることを知るべきだ」と注文をつけた
 民主活動家が平和賞を受賞すると、当該国の政府がかえって抑圧を強める「負の影響」も指摘されるが、「そのことはいつも考えている。だが、平和賞があるからこそ、(活動家が)守られている側面もある」と訴え、賞の意義を強調した。

→日本人のノーベル賞受賞にあれだけ喜んだ菅総理。ノーベル平和賞について「ひるんだ」とみられていませんか。批判を遠慮していませんか。

■中国 ノルウェー大使呼び抗議
10月9日 4時12分 NHK
ことしのノーベル平和賞に、中国の民主化を訴え、共産党の1党支配を批判する文書を発表したことで有罪判決を受け、服役中の中国人作家、劉暁波氏が選ばれました。中国外務省は北京駐在のノルウェー大使を呼び正式に抗議するなど、反発を強めています。
ノルウェーのオスロにあるノーベル平和賞の選考委員会は、8日、ことしのノーベル平和賞に、1989年の天安門事件の際の民主活動家で、作家の劉暁波氏(54)が選ばれたと発表しました。劉氏は、中国の民主化の必要性を訴え、共産党の1党支配を批判する「08憲章」と呼ばれる文書を起草して、おととし、インターネット上に発表したことが、中国で国家と政権の転覆をあおる罪に問われ、懲役11年の判決を受けて、現在、中国東北部、遼寧省の刑務所で服役しています。劉氏を選んだ理由について、ノーベル平和賞の選考委員会は「言論や集会の自由が明らかに制限されている中国で、劉氏は過酷な弾圧にもかかわらず、人権を確立するための世界規模の取り組みの先頭に立つシンボルとなってきた」と説明しています。これに対して、中国外務省は直ちに談話を発表し、「劉氏は中国の法律を犯し刑罰を科された人物で、ノーベル平和賞の権威を傷つけるものだ」と強く反発しました。さらに、ノルウェー外務省によりますと、中国外務省は、8日夜、北京駐在のノルウェーの大使を呼び、「今回の受賞の決定は両国関係を損なうだろう」などと述べ、正式に抗議しました。これに対して、ノルウェーの大使は「ノーベル平和賞の選考委員会は、政府から独立した組織であり、その決定に政府は関与しない」と述べ、抗議はあたらないと答えたということです。しかし、中国政府はノルウェーに対する報復措置も示唆しており、抗議の姿勢をさらに強めていくものとみられます。

■中国 一方的に会見取りやめ
10月9日 5時0分 NHK
今月6日、ブリュッセルでEU=ヨーロッパ連合との首脳会議を行った中国が、首脳会議のあとの共同記者会見に中国政府に批判的な一部のメディアが出席することに強く反発し、一方的に記者会見を取りやめていたことが明らかになりました。
EUと中国は、今月6日、ブリュッセルで首脳会議を行いましたが、当初予定されていた温家宝首相やEUの対外的な代表を務めるファンロンパイ大統領らによる共同記者会見が、突然、中止されました。これについて、ブリュッセルに駐在する各国のメディアで作る国際プレス連盟は、8日、声明を出し、人権問題などで中国政府に批判的な一部のメディアの記者ら4人が記者会見の会場に入ろうとしたところ、中国側が治安上の理由をあげて出席に難色を示したとしています。そのうえで、EU側の許可で4人が会場に入ると、中国政府は記者会見に参加しないと一方的に通告してきたということで、国際プレス連盟は、メディアを検閲する行為で許されないと中国政府を強く非難しています。この問題について、EUの関係者も中国側の要求で記者会見が中止されたことを認めており、中国政府の対応にヨーロッパのメディア関係者の間で批判が強まっています。


2010-10-07 17:14:58
レアアース問題:規制を正当化!日本狙い撃ち?WTO提訴は?

http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10669979382.html

→中国の視点から見た場合、89年以来の天安門事件以来の国際包囲網に見えることでしょう。普遍的価値の国際戦線は中国の異質性を際立たせることになり、だから、緊張しています。中国は間もなく対日緩和戦術に転換する可能性が高いでしょう。菅総理、そのとき日本は合従策をとるのか?連衡策をとるのか?選択を迫られることでしょう。国際戦線の中での国益を考えてください。国会内の政権延命の視点での官邸-民主党外交には乗らないでください。

→最も下策は、国際戦線の変化を全く無視して、戦略環境の変化をつかむことなく、菅民主党政権が従順路線を突き進んでいくことです。劉暁波氏の釈放を求めるメッセージを出せないところに、その危険性を感じます。

→政権内の一部の人は、劉暁波氏の釈放を求めないほうがフジタ社員解放につながるのではないか、と考え始めているのかもしれません。それは本当でしょうか。どんどん人質効果を高めて、本当に解放できなくなってくるのではないでしょうか。そして、日本人のことしか考えない、普遍的価値を重んじない、経済的利益しか考えない国との異質性とマイナスイメージを国際社会にもたれ、いずれ米中、欧中が和解したときに、日本の異質性のイメージが残り、またしても米欧中ロの対日戦勝利の共通の記憶の基盤が持ち出され・・・。菅民主党政権にこの国際的戦略環境の変化をチャンスとしてつかむだけの覚悟と素養と見識があるのか、世界から見られています。大人の対応という名の卑屈な大人をとり、それが世論の非難をあびると突然左翼小児病患者のようになる醜態をさらさないことを願っています。


■中国軍艦、ガス田に展開 尖閣事件後初 海自護衛艦と米艦船が監視
産経新聞 10月9日(土)1時39分配信

 中国海軍艦艇が東シナ海のガス田付近に展開していることが8日、分かった。複数の日本政府高官が明らかにした。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後に、ガス田付近で中国海軍艦艇の活動が確認されたのは初めてで、平成17年9月以来。海洋権益確保に向けた示威活動で、日米の軍事的対抗策を確認する狙いもあるとみられる。
 海上自衛隊は、中国海軍艦艇が監視対象海域に入ったとして、護衛艦を周辺海域に派遣した。また米海軍はこの周辺海域で展開することの多い音響測定艦を投入した。日米で連携して中国海軍艦艇の動向や、中国海軍潜水艦の動きなどを監視している。日本側は、中国海軍艦艇が現場海域から離脱するかどうかは不透明としており、ガス田周辺で日米と中国の艦艇が牽制(けんせい)し合う構図が常態化する懸念もある。
 中国海軍艦艇はフリゲート艦1隻で、少なくとも1週間前から「平湖(中国名)」ガス田周辺を航行している。排他的経済水域(EEZ)の境界線「日中中間線」の日本側には入っていない。
 「平湖」は、ガス田の中で日中中間線から最も離れており、日中共同開発の協議対象でもない。そのため日本側は、中国海軍艦艇が日米両国を必要以上に刺激しないよう、巧妙に抑制した運用を行っている可能性があるとしている。
 中国側は、米軍普天間飛行場の移設問題で日米同盟がきしんでいるとみており、今回の中国海軍艦艇の展開でも「この海域で自衛隊と米軍が連携して艦艇を派遣するかどうかを見極めようとした」(政府高官)との指摘もある。
 中国海軍艦艇は、尖閣諸島近海で中国の漁業監視船と海上保安庁の巡視船がにらみ合っていた時期に活動を開始。ガス田周辺には約10隻の海洋調査船も航行していた。
 漁業監視船は日中首脳会談後には尖閣諸島沖を離れ、海洋調査船も2隻程度に減ったが、海軍艦艇は活動を継続している。監視船の活動終息で、中国国内で「弱腰」批判が高まるのを抑える措置との見方がある。
 「フリゲート艦」は大型の巡洋艦と小型の駆逐艦の中間的な水上艦。中国のフリゲート艦は20年10月、戦闘艦艇として初めて津軽海峡を通過している。

■仙谷氏:長期金利がどう変動したか含め分析する-中国の日本国債売り
 10月8日(ブルームバーグ):仙谷由人官房長官は8日午後の会見で、中国が8月、日本国債を8カ月ぶりに売り越したことについて、詳細は承知していないが、外国人投資家が日本の国債を売買するのは避けられない話だ、と述べた。そういう時代に入っていることを前提に国債管理政策を行っていく、とも語った。また、財務省ともそれによって長期金利がどういうふうに変動したのか含めて分析したい、との考えを示した。
更新日時: 2010/10/08 16:24 JST