米国政権からみた日中関係は?:この重大な過渡期に必要な「対話」とは | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

米国政権からみた日中関係は?:この重大な過渡期に必要な「対話」とは

秘書です。

米国政権の対アジア政策担当者や民間の専門家は、いまの日中関係をどうみているのでしょう?


■キャンベル米国務次官補:日中対話進展の環境整備に協力
2010年10月7日 毎日新聞
 来日したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は6日、東京・赤坂の米国大使館で日米の記者団と会見し、尖閣諸島沖の漁船衝突事件で緊張した日中関係に対話の動きが出てきたことに期待感を示し、「米国としても手助けをしたい」との考えを強調した。キャンベル氏は「現状で最も重要なのは冷静な外交」と指摘。日中の対話促進のため「環境づくり」を支援したいとの考えを示した。【佐藤千矢子】

→日本国内の一部には、船長釈放の背景には米国の圧力があったのではないかという、表には出てこない憶測があります。この憶測は日米同盟を深いところで傷つけていきます。中国の専門家でもそういう分析をしている人がいるかもしれません。日本はどれだけ反発しても、米国から圧力をかければ黙る・・・。そう思われない環境をつくってもらうことが何よりの「米国としての手助け」になります。

→両国の関心事項はすべて対話できる環境が必要です。


■衆院代表質問:詳報
毎日新聞 2010年10月7日
 菅直人首相の所信表明演説に対する代表質問が6日、衆院本会議で行われた。質疑の詳報は次の通り。
・・・

(菅首相の答弁)

◆尖閣衝突

 検察当局が、被害が軽微で犯行の計画性がなく、初犯であることなど事件の性質に加え、我が国国民への影響や日中関係などを総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断した結果だ。検察当局の判断は適切だった。中国に対し間違った教訓を与えたとの指摘はまったく当たらない。尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いなく、解決すべき領有権の問題はそもそも存在していない。

 那覇地検次席検事と検事総長の証人喚問は、国会で検討されるべき問題だ。検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官の証人喚問は独立性に悪影響を及ぼす恐れがある。衝突時のビデオの公開は、現在の捜査状況や国会の要望を踏まえ、捜査当局において適切な判断がなされると考える。

 日中両国間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要。大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠だ。私と温家宝首相との懇談でも、戦略的互恵関係の推進について改めて確認した。

 ◆日本人拘束

 温首相との懇談に並行して、中国側に対し、いまだ釈放されていない1人の方の身柄の安全確保と、人道的観点からの迅速な処理を求めている。


→前原外相は9月30日の衆議院予算委員会で、「中国漁船が海保の船に体当たりし、ともすれば海保の船が沈没しかねない悪質な事案だったので、公務執行妨害で逮捕した」と述べています。この「悪質な事案」がなぜ、「被害が軽微」ということになっていくのか、ここが理解できないわけです。そこに米国の対話圧力があったとの憶測を生まないように気をつけてください。

→日本人の拘束問題は、「温首相との懇談に並行して」行われたということは、温首相との懇談では話題にしなかった、ということです。もっとも敏感な問題を議論できない懇談を「対話」が進んでいると評価していいのでしょうか。

→両国関係においては、双方が関心のあるテーマをすべて議論するのが正常な対話でしょう。一方だけが議論するテーマについて決定権がある、アジェンダ設定の権利があるような対話は対話とはいえません。


■中国、日本との会談拒否=レアアースでしこり-列国議会同盟
(2010/10/07-01:41)時事通信
 【ジュネーブ時事】世界各国の議会で組織する列国議会同盟(IPU、本部ジュネーブ)総会に合わせ予定されていた日中代表団の会談が6日、中国側の申し出により直前になってキャンセルされた。日本側が前日に中国によるレアアース(希土類)の輸出問題を取り上げたことに遺憾の意を表明、「会談できない」と6日回答してきたという。
 日本の議会代表団(団長・北神圭朗衆議院議員)関係者によると、中国との会談がセットされたのは3日。しかし、6日の会談開催予定を再確認した際、中国側が「日本による5日の発言は残念」と指摘。団長の都合がつかないため会談を開けないと回答した。 
 関係者によると、日本側は5日の討論会で、中国がレアアースの輸出制限を講じれば「輸入している国の需給は逼迫(ひっぱく)する」と懸念を表明。中国による東シナ海のガス田開発についても、資源の吸い上げを問題視した。
 これに対して中国側は、「IPUで2国間問題を持ち込むのは不適切」と反発。レアアース輸出やガス田開発は適切な国家政策の下で進められていると説明した

→このように、中国側がアジェンダを決める対話でも、日本は参加せよ、ということが米国の国益に合致するとは思えません。アジェンダ設定権は中国側にあるという対話を米国も支持している、ということは他のアジア諸国にも深刻なメッセージとなるでしょう。船長釈放の決定が米国-ASEANの関係に影響したであろうことのように、です。

■27日に日米外相会談 ハワイで、両政府調整
2010/10/07 02:02 【共同通信
 日米両政府は6日、前原誠司外相とクリントン米国務長官による外相会談を27日にハワイで開催する方向で最終調整に入った。11月に予定されるオバマ大統領来日に向けた地ならしで、懸案の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題や対中国政策、北朝鮮問題で日米間の溝を埋める狙いとみられる。日米関係筋が明らかにした。

 日米外相会談は9月23日にニューヨークで行われた。日中関係は菅直人首相と温家宝中国首相の会談実現で改善の方向へ動きだしたが、頻繁な外相会談で日米間の緊密な関係を中国にアピールする思惑も日本側にはありそうだ。

 会談では普天間問題について、両外相は沖縄県名護市辺野古崎と隣接水域への移設を明記した5月の日米合意を着実に履行する方針を再確認する見通し。ただ、11月下旬に沖縄県知事選が控えていることを踏まえ、踏み込んだやりとりは避けるとみられる。

 日本側は、沖縄の負担軽減に向けた日米両政府の取り組みを強調したい考えだ。米側は在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)増額に言及する可能性がある。

→昨日の仮説的分析レポートのように、外務省を外す「官邸-民主党外交」が存在していたら、どうでしょうか。日中・日米二元外交が存在することになります。

■<日中首脳会談>仙谷官房長官と戴委員が事前調整
毎日新聞 10月7日(木)2時30分配信

 4日にブリュッセルで行われた日中首脳会談を控え、仙谷由人官房長官と中国外交を取り仕切る戴秉国(たい・へいこく)・国務委員が1日、電話で協議し、首脳会談に向けた事前調整をしていたことが6日、明らかになった。

 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡り、悪化した日中関係の改善を図ろうと、民主党の細野豪志前幹事長代理も9月29日に訪中し、戴氏と会談。仙谷氏との電話協議では日中間で重視されてきた「戦略的互恵関係」の重要性などを改めて確認したとみられ、4日の首脳会談につながった。


■中国国務委員と1日に電話会談=仙谷長官、首脳会談へ環境整備
時事通信 10月7日(木)1時1分配信

 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で悪化した日中関係を修復するため、仙谷由人官房長官が1日、中国で外交を統括する戴秉国国務委員と電話で極秘に会談していたことが分かった。政府関係者が6日夜、明らかにした。菅直人首相と温家宝中国首相によるブリュッセルでの4日の会談に向け、事前に環境整備を図ったとみられる。
 これに関し、仙谷長官は6日の記者会見で「外交にかかわるこの種の話は、10年、20年後に明らかになるのか分からないが、現時点ではノーコメントだ」と述べ、電話会談に関する事実関係の確認を避けた。 

→米国が昨日の仮説分析レポートのような「官邸-民主党外交」を支持していた、となると、二元外交ではないけどこれはこれでまた大きな問題になっていきます。90年代のクリントン政権のときの対アジア政策が頭をよぎってくることになります。あのときの対アジア政策の担当者もいますし。しかし、官邸-民主党外交路線の容認は、短期的にはともかく、結果的に日米同盟にとって不幸なことになることでしょう。

■【幕末から学ぶ現在(いま)】(80)東大教授・山内昌之 西郷隆盛(下)
2010.9.23 08:46 産経新聞

 「正義」「正道」信じ生きた

 菅直人首相を支える新たな顔ぶれはまことに味わい深い。留任した仙谷由人官房長官に加え、新任の岡田克也民主党幹事長と前原誠司外相は、“小沢一郎何するものぞ”という気概に溢(あふ)れた政治家たちである。この3人が時に揺れ動いた菅首相を叱咤(しった)激励しなければ、小沢陣営の気迫に菅陣営はたじろぎ苦杯を嘗(な)めていたかもしれなかった。

 このトリオで、民主党代表選のさなかに尖閣諸島沖を侵犯した中国漁船による海上保安庁巡視船への不法行為を原理と原則に基づいて処理してもらいたい。もし鳩山由紀夫前首相と小沢一郎元幹事長のコンビであれば、法律に照らして正当な中国人船長の逮捕や起訴に踏み切るか否か、疑問も残ったのである。

 ◆主権や国威を忘れず

 「友愛の海」で中国の勝手な跳梁(ちょうりょう)を許し抗議もしなかった鳩山氏や、多数の民主党議員を嬉々(きき)と胡錦濤国家主席との記念写真に応じさせた小沢氏と異なり、菅新政権の核の3人には、どの国が相手であろうと日本の主権と国民の安全を犯す行為に厳しく対処することを内外に闡明(せんめい)してもらいたいものだ。ここでも西郷隆盛の言葉を思い出さざるをえない。

 「正道を踏み国を以(もっ)て斃(たお)るるの精神無くば、外国交際は全(まった)かる可(べ)からず。彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、好親却(かえっ)て破れ、終に彼の制を受るに至らん」(岩波文庫『西郷南洲遺訓』一七)

 西郷隆盛の遺(のこ)した文章のなかでも、この言葉ほど日本の外交環境を憂える者に勇気を与える表現はない。西郷の言葉は、国土交通相だった前原氏も高く評価した海上保安官たちの毅然(きぜん)とした対応や司法当局の自律性とさながら重なるかのようであり、日本人の耳朶(じだ)を打ってやまない。現代語に訳しても、西郷発言の格調の高さは変わらない。

 正義のために正道を歩み、国家と一緒に倒れてもよい精神がなければ、外国との交際は満足にできない。その強大さに畏(かしこ)まって小さくなり、揉(も)めずに形だけすらすらと進めばよいと考えるあまり、主権や国威を忘れてみじめにも外国の意に従うならば、ただちに外国からあなどりを招く。その結果、かえって友好的な関係は終わりを告げ、最後には外国による命令を受けることになる

◆外国に対し毅然と

 小沢氏が好きな人物として西郷を挙げるのは心強い限りだが、西郷からは外国に対する毅然とした精神と姿勢も学んでほしいものだ。鳩山・小沢コンビにはアメリカにはことさら厳しく、中国には訳もなく甘いところがあった。ことに鳩山前首相は、その在任中に中国海軍が沖縄近辺海域を何度も示威航行し、日本の排他的経済水域で挑発行為を繰り返しても、抗議もせず不快感を表明するでもなかった。今度の事案でも自分の首相在任中には日中関係が良くなっていたと呑気(のんき)なことを語っている。

 鳩山氏の姿勢は、「彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する」典型と言われても仕方がない。氏に「正道を踏み国を以て斃るるの精神」がないのを今更あげつらうつもりもない。しかし、アメリカから自立するポーズをどれほど取ろうとも、国益を毀損(きそん)し中国の「制を受るに至らん」危険を生むなら、何のための自主自立外交なのかという疑念が湧(わ)かないのだろうか。

 対米外交で失敗した氏は対露外交で復権を狙っているという観測もある。しかし首相を退いた氏の最優先事項は、米軍普天間問題解決の下支えのために粘り強く働き、県民の素意と日米同盟の重要性を両立させる方策を探り名誉挽回(ばんかい)に努めることではないのか。氏の姿勢ではアメリカや中国に加えて、ロシアからも「軽侮」を招くことは必至であろう。

 西郷は、「正義」や「正道」を人間の守るべき大事な価値と信じて生き抜いた。彼は、この2つを国際関係でも実現されるべき要素と確信していたからだ。この信念のためなら、自分の命も天にささげる覚悟をもっていたがために、その発言に気迫がみなぎっていたのである。ここにこそ現代の政治家と国民が西郷に学ぶべき点があるといえよう。(やまうち まさゆき)

→アジアにおいて独占的な国家が出現することは米国の国益に反するはず。門戸開放維持のためにも日中間の対話を望んでいるのでしょうが、日中経済力逆転下の対話の前例づくりが進んでいる。日中間の細かなやりとりは理解できないかもしれませんが、ベクトルがどっちに向かっているのか、対話があればいい、というわけではない。もちろん、中国も中長期的にみれば民主的で平和的な国家になる可能性があります。人口要因から低成長圧力がかかることもあります。そのころには日中は仲睦ましく共存できることでしょう。しかし問題は、過渡期・勃興期の今です。今ベクトルを誤ると・・・。是非、しっかりとご検証ください。

→「菅新政権の核の3人」が「彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、好親却(かえっ)て破れ、終に彼の制を受るに至らん」の精神で結束し、米国政権の対アジア政策責任者がこれを支持していることを祈ります。