菅総理ASEM出発:「日本のチェンバレン」NO!、ドミノ倒しが起きたら次は沖縄です | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

菅総理ASEM出発:「日本のチェンバレン」NO!、ドミノ倒しが起きたら次は沖縄です

秘書です。
今日午後、菅総理はASEM首脳会談出席に向けて羽田空港を出発されるようですが、機中でよく世界史的な大局の中で、これから行う会議での発言がどういう歴史的意味を持つのか黙考してください。


■菅首相、ベルギー出発へ=ASEM首脳会議
時事通信 10月3日(日)6時6分配信
 菅直人首相は3日午後、ベルギーのブリュッセルで開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席するため、羽田発の政府専用機で出発する。沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐる中国との対立が国際社会の関心を集めたことを受け、首相は日本の立場について理解を求める考えだ。
 首相は4日に韓国の李明博大統領、ベトナムのズン首相、フランスのサルコジ大統領らと個別に会談。尖閣諸島は日本固有の領土であり、同諸島に関して領土問題は存在しないとの立場を説明する方針。一時模索した中国の温家宝首相との会談は見送られる方向だ。
 首相は、温首相も出席する首脳会議で発言する予定だが、中国側を刺激しかねないことを考慮し、尖閣問題には触れない見通し。5日夜に帰国する。


→もしも、中国側が首脳会議で「自己主張」したらどうなりますか。お互いに「自己主張」しない「裏取引」はできているのでしょうか。その「裏取引」は、中国側には首脳会談で指導者が非難されないメリットがありますが、日本側にはどんなメリットがあるのでしょうか。

昨日、民主党幹事長代理は、「日本と中国は明らかに政治体制などが異なっており、両国で信頼関係をもって、協力して物事を前に進めていこうということを期待する方がおかしい。中国は法治主義の通らない国であり、経済的なパートナーシップを期待する企業はよほどのお人よしであり、そういう国だという大前提でおつきあいしなければならない」と述べましたが、ASEM首脳会談で「中国側を刺激しかねないことを考慮し、尖閣問題には触れない見通し」というのは、よほどの「お人よし」ではないでしょうか。世界はそれを、「弱腰」とみるのではないでしょうか。

欧州の目をみてみましょう。まずは仏ル・モンド紙。


■粗暴な大国の顔さらした…仏紙が中国の対応批判
(2010年10月2日19時28分 読売新聞)
 【パリ=林路郎】1日発行の仏紙ル・モンドは、中国が、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件をめぐる一連の対応で、「粗暴な大国の顔をさらした」と批判する社説を1面に掲げた。
 「中国の海(東シナ海と南シナ海)に暴風警報が出た」と題する社説は、19世紀末以来、日本の実効支配下にある尖閣諸島の領有を中国も主張していることを紹介したうえで、漁船衝突事件の経緯に言及。日本の丹羽宇一郎駐中国大使に対する度重なる呼び出しや対日交流の打ち切りなど、中国政府の一方的な対抗措置について、「その攻撃的姿勢は、沿岸に恐怖を呼び起こした」と指摘した。
 同紙は、中国が、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどとも領有権をめぐって対立していることに触れ、「中国自身のイメージと国益に反する行動」の結果として、「沿岸諸国は米国との戦略的関係を緊密にする」と予測した。

→中国の攻撃的姿勢に、日本は宥和政策で対応しようとしている、米国との関係も悪化させている、と世界に印象づけることのないように。

なお、昨日のフィナンシャルタイムズ紙は、仏と中国が為替調整目指して秘密協議か、という記事が出ています。くれぐれも、多国間外交で「欧州情勢は複雑怪奇」との感想をもらさないように。

次に、フィナンシャルタイムズ日本語HPより。


■横行闊歩し始めた中国を警戒せよ
2010.10.01(Fri) Financial Times

まず、沖縄と台湾からほぼ等距離にある無人島をいくつか用意する。次に、中国の領海(だと当人が考える海)で漁をすると決意した中国人のトロール漁船船長を加える。そこへ、日本政府による諸島の支配を維持しようとする巡視船を混ぜ合わせる。

 最後に、中国人船長を2週間(できれば日本製の焦げつかない鍋=留置場=で)とろとろ煮込んで苛立たせる。さあ、これで、大半のアジア諸国にショックを与え、米国政府さえをも慌てさせる外交問題の出来上がりだ。

 人々が身構えたこの一件の直接の原因は、件の船長が問題の尖閣諸島(中国名は釣魚島)の近海で逮捕された後に、中国政府が大騒ぎする戦術を取ったことにある。中国政府は船長の即時釈放を要求しただけでなく(これには最終的に日本政府が折れた)、問題をさらにエスカレートさせた

 日本人4人を拘束し、日本の電子機器メーカーが使用するレアアース(希土類)の輸出を停止し、外交交流をキャンセルした。中国の街頭での反日デモも容認した(SMAPのコンサートツアーさえをも中止に追い込んだ)。船長が釈放された後も中国政府は態度を軟化させず、謝罪と賠償を求めている。

日本が中国に対抗できなければ、アジアの小国はどうなるのか?
 この事件の根底にある懸念はもっと根深い。外交官たちは、中国のより強腰な(攻撃的と評する向きもある)行動パターンを感じ取っている。まだ強い経済力を誇り、高度な防衛力を保持している日本が中国政府に対抗できないとなれば、中国との間に領有権問題を抱える数多くの小さな国々には一体どんな希望があるのだろうか? 

 そうした問題の大半は何十年もの間、休止状態が続いていた。中国政府はこれまで、これらの問題を進んで棚上げし、中国が台頭しても脅威が及ぶことはない、と周辺諸国を安心させる魅力攻勢を優先させてきた

 だが、そういう時代は終わったのかもしれない。中国は地域での利益をこれまでより強く追求し始めている。例えば、中国海軍は大がかりな演習を行った。中国政府はエクソンモービルをはじめ、ベトナムと組んだ西側企業に対し、中国も領有権を主張している海域での事業から手を引くよう警告している

→総理、ASEM首脳会談でアジアや欧州の指導者の目の前で菅総理が「KOWTOW」したら、ドミノ倒しが始まります。

退役した軍の幹部たちは、南シナ海(英エコノミスト誌が「だらりと垂れ下がった中国主権の大きな舌」と評した海域)のことを核心的利益と呼び始めた。

→そして、昨日の香港のSCMP紙が報道しているように、尖閣諸島も核心的利益とみなされている可能性があります。

 まだ公式用語にはなっていないが、こうした状況から、中国はマラッカ海峡に通じる航路とともに南シナ海全域をチベットや台湾と同列に扱うようになるとの見方が強まっている

→尖閣諸島はチベットや台湾と同列の可能性があるわけです。鄧小平方針は放棄された可能性があります。漁船襲来は深い背景があるかもしれません。

強硬姿勢に転じ、南シナ海を「核心的利益」と呼び始めた中国

 実際にそうなれば、この主権を巡る問題は交渉の余地のないものになる。中国との間に領有権問題を抱える近隣諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)にとっては由々しき事態だ。

 これは大国として台頭しつつあった時期の米国が中南米の裏庭に対する権利を主張した「モンロー主義」の中国版のようなものだ。

 このように中国が横行闊歩する兆しを見せたことで、一部ではパニックが生じている。口角泡を飛ばす議論で知られる石原慎太郎・東京都知事は中国のことを、縄張りを広げようとする暴力団になぞらえた。

 ワシントンで発行されているニューズレターの編集長、クリス・ネルソン氏は、「プーチン化」なる無骨な(しかし便利な)用語を生み出した。ウラジーミル・プーチン政権下のロシアのように、中国は国内のナショナリズムに調子を合わせ、それまで友好的だった近隣諸国への態度を硬化させているというわけだ。

 また、ハワイ大学東西センターのシニアフェロー、デニー・ロイ氏は、中国がアジア太平洋に対して抱く展望には、究極的に「米国が今日及ぼしているような影響力を受け入れる余地がない」と指摘する。このため、米中両国が「衝突進路」に乗ってしまう恐れもあるという。

 中国が態度を硬化させている理由の一端は、南シナ海は米国の国益の一部だと断じ、領有権紛争の仲介を申し出たヒラリー・クリントン米国務長官の最近のスピーチにあるのかもしれない。

中国政府としては、米国政府への反撃を狙っているだけでなく、中国は大きく成長し、「能力を隠して好機を待つ」という鄧小平の訓戒が合わなくなったと考えている可能性がある。ロイ氏の言葉を借りるなら、中国は、今こそ「体制を中国の好みにもっと合う形に変えるべき時だ」と感じているのかもしれない。

→日中経済力逆転は、少なくとも対日政策では「能力を顕わにして好機をつかむ」に方針転換する一つの理由にはなるでしょう。好機とは何か?日米同盟弱体化、日米中正三角形論の民主党政権の誕生でしょう。

 中国の経済発展が続く中、同国が地域でより大きな影響力を得ようとすることは、明白に望ましいとは言えないまでも、ごく自然なことだ。

米国と比べると中国の野心は控えめに見えるが・・・

 米国は前世紀に強国として台頭して以来、恥ずることなく国外で利益を追求してきた。パナマに運河を建設して管理下に置き、イランやチリなどでクーデターに資金援助を行い、インドシナ半島と中東で戦争を始めた。今日に至るまで、米国海軍は太平洋を米国の湖として扱っている。

 こうした基準からすれば、地域での影響力を求める中国の野心は、断然控えめに見える。

 米国には、夢を売れる魅力的な民主主義国だという優位性がある。おかげで同国の領土外での活動は、常に快諾されたとは言えないまでも、是認されてきた。

 「米国の強さには多くの疑問符がついてきたが、それは我々が慣れている力だ」。アジアにおける米国の影響力低下に関する著書を持つシンガポール人のサイモン・テイ氏はこう言う。「米国は現行体制の基盤を成している」

 今まさに不安を呼んでいるのは、アジアが新たな権力分有体制に向けた移行期にあるのかもしれないという感覚だ。まだ貧しく、権威主義的な国家である中国は、依然、地域の大半で米国ほど信頼されていない

 米国政府が長年謳歌してきたような権力を手にした時、中国政府がどんな行動を取るかは誰にも分からない。中国が日本との間で繰り広げる外交上の論争のような出来事をアジアが注視しているのは、このためだ。将来に何が待ち受けているのか、その手がかりを求めて目を凝らしているのである

→ASEM首脳会談で各国首脳が菅総理を見る視線は、これです。

By David Pilling


→フィナンシャルタイムズの日本語HPの下記の記事も総理には是非ベルギーへの機中で読んでいただきたいものです。

■尖閣諸島の次は、沖縄領有に照準合わす中国上海万博後に軍事行動に出る危険性も
2010.09.27(Mon) 織田 邦男
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4537

那覇地検は、9月7日の海上保安庁巡視船との衝突事件で拘束していた中国人船長を24日、急遽釈放した。船長逮捕以降、中国政府は即時無条件釈放を求め、ヒステリックなまでに次々と報復カードを切ってきた。

実に情けない! ベタ下りの日本外交

 日本大使に対する非礼な深夜の呼び出し、官製と思われるデモ、閣僚級交流停止、ガス田開発交渉延期、スポーツや旅行など民間交流停止、レアアースの輸出停止、挙句の果てには日本のゼネコン社員を軍事施設撮影容疑で拘束するに至った。

 日本政府は当初、法的手続きに従い粛々と対応するとしていたが、ここに至って脅しに屈し、腰砕けの格好だ。まさにマージャンでいう「ベタ下り」である。

 那覇地検が総合的に判断し船長釈放を決定したのであって、政府はこの決定を了としただけだと、政府はメンツを保つために責任回避に躍起であるが、誰も信じていない。政府の狼狽ぶりは見苦しい限りである。

 中国は日本の決定に対し、これまでの日本の「司法プロセスは、すべて違法で無効だ」とし、謝罪と賠償を要求するとさらに追い打ちをかけている。

 強硬措置で脅せば日本は原則を曲げてでも必ず下りるとの確信を中国に与えてしまったことは、今後の日中外交に大きな禍根を残した。

ポーランド侵攻を誘引したチェンバレンの宥和政策
 中国との領有権問題を抱える東南アジア諸国も、日本の対応には失望したであろう。日本は法治国家としての矜持の欠片もなく、およそ主権を死守するという気概もないという印象を全世界に与えたことも大きな痛手だ

 今後、尖閣にとどまらず、沖ノ鳥島など日本周辺海域において、中国海軍の無頼漢的傾向に拍車をかけることは間違いない。チェンバレンの宥和政策がヒトラーのポーランド侵攻の誘因となったように、このつけは大きく日本に跳ね返ってくるはずだ

→ASEM首脳会議次第では、菅総理は21世紀東アジアの混乱の引き金をひく宥和政策を行った「日本のチェンバレン」として世界史に残る可能性もあります。日本国民と東アジアの犠牲は甚大なものになります。それだけは避けてください。

 そもそも今回の強硬な中国の態度に隠されたものは何であったのか。中国の真の意図が理解できない限り、今回のような戦略なき「その場しのぎ」の対応にならざるを得ない。

 今回の事件は決して偶発事案ではない。南シナ海での中国の動きと見比べてみると、中国の深謀遠慮が見えてくる。実は典型的な中国の領有権獲得パターンの1フェーズなのである

 1970年から80年代にかけて、中国は南沙諸島、西沙諸島を実効支配して南シナ海の支配権を獲得していった。そのパターンはだいたい4つの段階に分けられる。

中国の領土拡大、4つの法則

 第1段階として、領有権を主張し巧みな外交交渉に努める。

 第2段階は、調査船による海洋調査や資源開発等を実施する。

 第3段階は、周辺海域で海軍艦艇を活動させ軍事的プレゼンスを増大させる。

 最終段階の第4段階として、漁民に違法操業をさせたり文民を上陸させて主権碑等を設置させたりする。そして漁民、民間人保護の大義名分の下、最後は武力を背景に支配権を獲得する

 中国は一党独裁の国であり、党の定めたパターン通りに行動する。ある意味、中国は分かりやすい国である。パターンさえつかめれば、次の一手が読める。今回の尖閣についてもまさにパターン通りの行動なのである。第1段階から振り返ってみよう。

 中国は1969年、東シナ海の海洋調査によって尖閣付近の石油埋蔵の可能性が取りざたされるまでは、全く尖閣諸島の領有権を問題にしていなかった。

1978年、甘すぎた日本外交が火種残した

 1970年12月30日、中国外交部は突如次のように声明を出している。

 「中華人民共和国外交部は、おごそかに次のように声明するものである。釣魚島、黄尾嶼、赤尾嶼、南小島、北小島などの島嶼は台湾の付属島嶼である。これらの島嶼は台湾と同様、昔から中国領土の不可分の一部である」

 日中平和友好条約交渉時、中国は尖閣諸島の領有権を主張したが、日本は領土問題は存在しないと一貫して門前払いしていた。

 だが、条約締結直前の1978年8月10日、鄧小平は園田直外相との会見で「われわれの世代で解決方法を探し出せなくても、次の世代、次の次の世代が解決方法を探し出せるだろう」と述べた。

これに対し、日本側は「さすがは懐の深い鄧小平」と肯定的に受け入れてしまった。この瞬間から「次世代で解決すべき問題」の存在、つまり領土問題が存在するのを認めたことになってしまった。

50年、100年先を見越して着実に手を打ってくる中国

 まさに50年先、100年先を見通した鄧小平の巧みな外交交渉にやられてしまったわけだ。

 その後、断続的に調査船による海洋調査を実施し、周辺海域で海軍艦艇を活動させ軍事的プレゼンスを増大させるなどして、既成事実を積み重ねているのは報道の通りである。

 この支配権確保パターンからすると、尖閣領有権問題は第3段階まで終わり、第4段階に入りつつある

 今後、漁民の不法操業がますます増加し、同時に中国海軍の行動がさらに活発になり、民間人、漁民が上陸して主権碑を設置するといったことが予想される。尖閣領有権問題での中国の次の一手を読むため、南シナ海での第4段階を参考に見てみよう。

 中国は南シナ海を支配するためには南沙諸島を確保しなければならないと考えた。南沙諸島には多量の石油資源、豊富な漁場が存在し、中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア及びブルネイの6カ国が領有権を主張している。

南沙諸島を巡りベトナムとは軍事衝突に発展

 1980年代、まず海洋調査船による海洋調査を開始した。87年には海軍艦艇を行動させ、翌88年には南沙諸島の西方のある永暑礁に漁民を上陸させて、中国の領土の証拠になる主権碑を設置した。

 これに抗議したベトナムと軍事衝突になり、ベトナム海軍は3隻のボートを撃沈され、75人が戦死をして敗退に至った。

 中国政府は「自衛の行動であった」と声明を出し、永暑礁をはじめ付近の島を占領して永久施設を構築し、以後海軍部隊を駐留させている。

 1992年米軍がフィリピンから撤退したのを見届けたように、95年には南沙諸島東方に所在するミスチーフ礁に漁民避難目的と称して施設を構築

 フィリピン政府は主権の侵害であると抗議したものの、中国海軍の方が優勢であり、中国は抗議を無視して中国艦艇や海洋調査船を派遣。強引に建設作業を行い、鉄筋コンクリートの建物、大型船舶が停泊可能な岸壁及びヘリポート等を建設して実効支配を確立している。

西沙群島については1974年、中国は海軍部隊を派遣し難なく実効支配を確保した

尖閣諸島には次々と中国の漁船が入り込む

 特に紛争にならなかったのは、前年のベトナム戦争終結に伴う米軍の撤退により同海域に生じた力の空白に乗じたという中国の巧みな戦略が功を奏したこと、そして領有権を主張するベトナムも戦後の混乱で中国に抗議する余力がなかったことが挙げられる。

 日本は南シナ海の手口を教訓として中国の次の一手を予測し、対応準備をしておかねばならない。

 中国政府は今回、尖閣の領有権を主張し続けた結果として日本が折れたという事実を大いなる成果として、さらにこれにつけ込むはずである。

 まず、大量の中国漁船が尖閣の領海内に堂々と入り、違法操業をすることが予想される。報道を見ても帰国した船長は英雄扱いである。「彼に続け」そして「みんなで渡れば怖くない」的な民衆心理を中国政府は利用にかかるだろう

 その際、中国漁船を守るという理由で中国海軍が尖閣周辺に接近してくることも予想しておかねばならない。時には尖閣の領海に入ったりして、日本の態度を瀬踏みすることも考えられる。

 また、民間人が尖閣に上陸し、主権碑を設置したり、灯台や見張り台などの設置を試みたりするかもしれない。これを海上保安庁が阻止し逮捕したりすると、今回以上の強硬な報復カードを持ち出すに違いない。その後はいよいよ中国海軍の出番となる

日本は決して力の空白をつくってはいけない

 日本は何を準備し、どう対応すべきか。先ずはパワーバランスに留意し、力の空白をつくらぬことである

 中国は力の信奉者である。力の空白には躊躇なく入り込むのが力の信奉者の常套手段である。今回の事件も政権交代以降、日米関係がギクシャクし、日米同盟が漂流寸前なのを見透かしたうえでの中国の確信犯的行動と言える。

 領有権に関しては冷静かつ毅然とした態度で臨み、力には力をというファイティングポーズを崩さず、隙を見せぬことが大事である

 次回また起こったら厳しい対応で臨むと警告を発し、揺るぎない姿勢を表明しておくとともに、挑発的行動をさせない対処力、抑止力を保持しておかねばならない。

 問題は、日本は現在、独力で中国に対峙できるだけの外交力、軍事力に乏しいことである。自衛隊はあっても平時の領域警備の法的根拠は与えられておらず、外交の後ろ盾としての軍事力の役割は果たし得ない。

尖閣諸島について日米で早急な共同作戦計画を練れ

 菅直人政権も日本の弱さをつくづく思い知ったことと思う。今こそ、領域警備に係わる自衛隊行動の法的基盤を整備するとともに、日米同盟の再生に全力を傾注しなければならない。

 幸いにも、ヒラリー・クリントン米国務長官は「尖閣諸島には安保条約5条が適用される」と明言した。バラク・オバマ大統領も南シナ海における中国海軍の挑発的行動に対し懸念を表明したところである。

 日米の利害は一致している。早急に日米協議を開始し、尖閣諸島周辺における対応について共同作戦計画を詰め、島嶼防衛に関する日米共同訓練を実施することが求められる。

 その際、日本自身が犠牲を出してでも自国の領土、領海、主権を守るという揺るぎない意志と強い覚悟がなければならない。いかなる同盟であっても、自国を守ろうとしない国との同盟は成り立たない。

 再び事が起きた場合、まずは日本があらゆる手段を講じて初動対応しなければならない。国際法に照らし冷静かつ粛々と対応し、法治国家、民主主義国家としての威厳を示し、国際社会に対し成熟した民主主義国家日本をアピールできるよう行動することが大切である


「国交断絶もありえた」と怯えては、戦争すら招く危険性がある

 他力本願では米国は決して尊い若者の血を流してまで日本を守ろうとはしない。安保条約5条は自動参戦を義務づけたものではないことを理解しておかなければならない。

 「戦争になるよりはいい。このまま行けば駐日大使の引き上げ、国交断絶もありえた」と首相に近い政府筋が語ったとの報道があるが、これでは中国が戦争をちらつかせた途端、すべて譲歩しなければならなくなる。まさに中国の思うつぼである。 

こういう敗北主義は極めて危険であり、戦争を抑止するどころか、むしろ戦争を誘発する結果となることは多くの歴史が証明している

→民主党は、戦争の歴史をしっかり学習していなかったようですね。残念。

 今回、国際社会はいかに中国が理不尽な国かということを自覚したと思う。長期的には中国を国際ルールや国際法を守らせるように誘導し、国際ルールを守る方が結果的に国益にかなうことを思い知らせなければならない。関与政策の絶好のチャンスでもある。

 これを契機に中国を誘導する関与政策で国際社会を一致させ、外交、金融、貿易、軍事など、あらゆる手段をリンケージさせた対中国カードを国際社会として切れるよう巧みな外交が日本に求められる。

 関与政策には、関与する側が軍事力や経済力で圧倒されないことが重要である。1国では台頭する中国に圧倒される危険性がある。今こそ、自由民主主義国家による連携が試されている。

北京五輪、上海万博が終わり、中国には自重する必要がなくなった

 北京オリンピックも終わり、上海万博もあと少しで終了する。中国は当面国家的イベントは計画されておらず、国際的に自重した行動をする必要性はなくなった

→上海万博終了は10月31日です。菅民主党政権がチェンバレン的宥和政策を続けると、次の大攻勢は11月1日以降の可能性があります。

 20年にわたる大軍拡で自信をつけた中国が、今後国益をむき出しにして行動し始めることは十分に考えられる。台湾とチベットに対してしか使ってこなかった「核心的利益」という言葉を南シナ海に適用し始めたのもその兆候だろう。

→そして、尖閣諸島も「核心的利益」に指定した可能性あり(香港SCMP紙)

 尖閣諸島も「台湾の付属島嶼」ゆえに中国領土だと主張するように、尖閣領有権問題は台湾問題でもあるのだ。

尖閣諸島の実効支配が中国の手に落ちると、次は台湾であり沖縄である

→沖縄のみなさん!フィリピンの米軍撤退後に南シナ海で起きたことを共に学習しましょう!民主党政権が尖閣諸島を守りきれないようなことがあれば、ドミノ倒しで、次は沖縄が核心的利益に指定されるリスクがあります。

 今後、北東アジアに著しい不安定化を招来するか、日本が中華帝国の軍門に下るか、あるいは現状維持で平和を維持できるのか、今が分水嶺なのかもしれない。「寸土を失うものは全土を失う」の箴言を今一度思い出す時であろう。

→菅総理は所信表明で「歴史の分水嶺における外交」という表現を使っています。民主党政権の政治的判断による船長釈放から、歴史の分水嶺がはじまっています。そして、ASEM首脳会談が決定的な歴史の分水嶺、POINT OF NO RETURNとなるかもしれません。上海万博終了は10月31日。11月から新たな攻勢が始まるかもしれません。欧州戦線での日本外交の勝利と東アジアでの平和維持をお祈りいたします。