所信表明とデフレ脱却:菅ノミクスではデフレは解消できないでしょう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

所信表明とデフレ脱却:菅ノミクスではデフレは解消できないでしょう

秘書です。
総理が国会で所信表明をしています。
デフレの認識がやっぱり違っていると思います。
まず、雇用論。下記のレポートの最後をみてください。
菅ノミクスは失敗するでしょう。



■【肥田美佐子のNYリポート】米投資家が日銀に提言:円高克服のカギはデフレ脱却にあり
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_112777
【日本版コラム】
2010年 10月 1日 9:53 JST
9月15日、日本の財務省と日銀は、2004年以来のドル買い・円売りの為替介入を決行した。14日、ニューヨーク市場で、ドルが82円台にまで落ち込み、6月あたりから加速してきた円高が警戒ポイントを超えたとみなされたためだ。輸出倍増計画を掲げるオバマ政権や、ユーロ安による輸出好調で自動車業界などが収益大幅増のドイツなど、欧米が、金融緩和の「恩恵」ともいえる自国の通貨安を容認するなかでの単独介入である。

 この15年ぶりの円高の背景に、中国の積極的な円買いがあることは周知の事実だ。ミッドタウン5番街にオフィスを構える投資バンク、クレイグ・ドリル・キャピタルの首席エコノミストで、ニューヨーク大学の教壇にも立つアルバート・M・ウォジニロワー氏は、中国が外貨準備高をドル建て資産から円建てなどに「多角化」していることが円高の主因だ、と分析する。本紙(8 月10日付ダウ・ジョーンズ)によれば、6月の中国の円買いは、53億ドル(約4500億円)に達するという。中国は、今年に入って、国債など円建て金融資産をすでに200億ドル購入している。これは、過去5年間に同国が買った円建て資産合計の約5倍に相当する数字だ。

 「日本が直面している円高という問題は、(沖縄県・尖閣諸島沖での漁船衝突事件をはじめとする)日中対立のもう一つの断面だ」と、ニューヨーク連銀の国内研究責任者も務めたウォジニロワー氏は言う。

 中国が、円だけでなく韓国・ウォンなども買い増やしているところを見ると、日本を狙い撃ちして円高を加速させ、日本の輸出産業にダメージを与えようとしているかどうかは不明だ。しかし、円高に拍車がかかった結果、日本の企業が、中国など、海外に生産拠点を移さざるをえない状況に追い込まれているのは確かである。

 だが、日本政府が中国政府に対して不満を募らせるなか、ウォール街では、円高問題の本質は日本の通貨政策にある、という厳しい声も根強い。中国の存在が円高に弾みをつけているのは事実だが、通貨市場の規模を考えると、1国の為替政策だけで、長期間、これほどの円高が続くとは考えにくい。中国の円買いという短期的・技術的ファクターが、日本の金融政策という「構造的な問題」を悪化させている、というわけだ。

「デフレ容認」が投資・消費意欲を奪い、不況を長引かせる

 いったい日本の何が問題なのか。東京にもオフィスを構えるニューヨーク本拠のヘッジファンド、インダス・キャピタル・パートナーズに勤務するイーサン・デバイン氏(インダス・ジャパンファンド株式部門責任者兼インダス・アジアン・リカバリーファンドのポートフォリオマネジャー)は、10年以上にわたるデフレ不況にもかかわらず、インフレ期待を高めることを含めた大胆な金融緩和策に訴えない日銀の通貨政策が、円高を招くべくして招いていると指摘する。円が買われているのは、「safe-haven(投資の避難地、安全通貨)」だからではなく、米連邦準備理事会(FRB)の追加量的緩和策の可能性を受け、ドル資産の利回りが低下するなか、邦銀や生保などがドルを手放し、資本を円にシフトさせているからだという。

 現在、米国の政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標は、0-0.25%。対する日本は0.1%で、名目金利は大差がない。だが、デフレ期待下での実質金利は、日本のほうが、はるかに高くなる。『デフレ不況』(田中秀臣著、朝日新聞出版)によれば、日銀は、06年にゼロ金利と量的緩和策を解除し、金融引き締めを開始。リーマンショック後の先進各国による協調利下げに参加しなかったため、円が独歩高の様相を帯び始めた。経済危機を境に超金融緩和策を取る米国と今後も据え置きが予想される日本の政策金利との「金利差」が、円相場を過熱させていると見る米市場関係者は多い。本紙8月25日付社説も、円高は「デフレという基本的な病の象徴にすぎない」と論じている。

 日銀いわく、通貨政策によるデフレ脱却は難しいというが、デバイン氏は納得できない様子だ。01年3月から06年3月まで行った量的緩和策が景気に限定的な効果しか及ぼさなかったという日銀の主張についても、インフレ誘導努力はしていない、と手厳しい。そのデフレ容認ともいえる姿勢が、金融関係者や企業、国民の間に「デフレのマインドセット(潜在意識としてすり込まれた習慣的な思考)」を植え付け、投資意欲や消費マインドを冷え込ませたことで、日本はデフレスパイラルに陥ったという指摘には、うなずけるものがある

まずはデフレスパイラルの脱却ありき

 「では、なぜ日銀はデフレ退治に立ち上がらないのか。楽観的に見れば、通貨政策に訴える前に、政府に対して何らかの構造改革や財政改革を促している、と考えられなくもない」(デバイン氏)

 実際、今回の円高介入について、本紙をはじめ、『ビジネスウィーク誌』の「日本の問題は円高だけにあらず」(9月2日付電子版)など欧米メディアの報道を見ると、ポスト工業化の日本が依然として輸出に頼る産業構造は得策でない、と指摘する声が多い。また、少子高齢化で労働人口が減り続けるなか、女性などの活用にいまだ二の足を踏む政府への批判も聞かれる。

 だが、シニカルな見方をすれば、量的緩和策を抑えることで、バランスシートの拡大というリスクを最小化してきたともいえる。通貨政策の変更なしの円高介入は、限定的な効果しか上げないばかりか、デフレ脱却努力に対する日銀のプレッシャーを緩和するという「逆効果」につながりかねないと、デバイン氏は警鐘を鳴らす。強い円を武器にM&A(合併・買収)で攻勢を掛ける日系企業が増えるなど、円高は必ずしも悪いことばかりではないという声もあるが、「円高を招いている(デフレ期待という)原因」が危険なのだ。

 対GDP(国内総生産)比で190%を超える巨額財政赤字とデフレのコンビネーションは、非常に厄介である。もちろん、国債の95%強をメガバンクや生保・損保などの国内機関投資家が買い支えている日本では、ソブリンリスクは予想以上に低く、日本が今日明日にも破たん国家になる可能性は皆無だ、と断言する米国人投資家は多い。だが、このままデフレを放置すれば、いずれはデフォルトに陥り、取り返しがつかなくなる。インフレ率1-2%の緩やかな物価上昇を引き起こすことが景気回復につながり、賃下げに歯止めをかけ、正社員になれない若者を救う、という声は少なくない。

 米国で失業や貧困が急増しているという記事を書くと、読者から、日本もデフレ不況による過労や賃下げで苦労しているというメールをもらうことが多い。日米ともに「働けど働けど、わが暮らし、楽にならざり」が現実なのだと、思わず切なくなる。円高を乗り切るために海外に出る企業が増えれば、日本経済の空洞化が進み、さらに雇用が失われるのは必至だ。

 ロイター通信によれば、10月4-5日の金融政策決定会合を前に、日銀の白川方明総裁は、ある金融関係の集まりで、「常に新たな感覚と中央銀行としての責任意識を持って」金融や経済の状況をチェックし、適切な行動をとると述べたという。会議では、短期国債買い入れ額の拡大など、追加緩和策が検討される見通しだ。

 菅首相は「1に雇用、2に雇用」と力説するが、まずはデフレスパイラルという負の連鎖を断ち切ること、だろう。

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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト