デフレ:デフレ脱却はいつでしょう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

デフレ:デフレ脱却はいつでしょう

秘書です。
デフレ脱却は?
機関投資家の多数説は2013年?


■再送:COLUMN-〔インサイト〕デフレ懸念の日米格差=モルガン・スタンレーMUFG証 フェルドマン氏
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK044935820100929
2010年 09月 29日 16:35 JST
 今月初めから2週間程、海外の投資家や政策当局者などと会った結果、一番印象に残ったのは日米のデフレ懸念についての格差であった。為替、株価、債券利回りの行方に関して、かなり強いコンセンサスが日本の投資家の間に出来上がっており、経済指標がこのコンセンサスに沿って動けば、日本でも緩やかな長期金利上昇になるが、日米の金利差は広がり、緩やかな円安、日本株高になると予想できる。

  

  <デフレ格差論>

 

 先日、小生は、「欧米は日本のデフレの道を歩むのか」という内容のリポートを発表した。その当時、このリポートは多くの米国エコノミストに疑問視された。米国の金融改革の失敗、財政の行方などがあまりにも1990年代の日本に類似しているので「米国もデフレになる」という見方が多勢だったためだ。ただ、その後の雇用統計などの景気指標は予想より良い結果であった。さらに、9月17日に発表された米国の消費者物価は、決定的な内容ではなくても非常に示唆に富んだものであった。

 

 米国の消費者物価は、変動の大きいエネルギーや食料品価格を除く「コア」インフレ率が相変わらず1%足らずであり、コア消費者物価の中の住居は前年同期比0.7%減という数字であった。これは2007年1月の同4.3%増に比べて激しい下落だ。一方、住居以外のコア項目は2007年1月の前年同月比1.5%増から今年8月に同2.0%増になった。概ね、住居以外の項目はデフレになっていないだけではなく、多少上昇している。住居の今後についても、ホテルが上昇に転じた兆しがある。賃貸もはっきりした上昇傾向に転じている。一番大きな小項目である帰属家賃は、賃貸料をもとにした方程式によって算出されるので、この項目も近いうちに上昇にシフトするはずである。即ち、弊社の予想通りに帰属家賃が上昇すれば、年末にかけて米国の消費者物価のデフレ懸念が払しょくされる可能性は高い。
 

 この考え方は、弊社主催の国内投資家会議で明確になった。65人の機関投資家にアンケートをとった結果、投資家の約7割近くが、「米国が二番底に陥ると思わず、デフレに陥らない」という答だった。

 

 一方、日本の経済指標は同じストーリーとは言い難い。確かに、消費者物価の全国総合指数は最悪期の前年同月比2.5%減(2009年10月)から、直近の同0.9%減(2010年7月)に回復したが、エネルギー及び食料品を除くコアは相変わらず同1.5%減であり、ほとんど改善とは言えない。加えて、最近の円高の影響は物価にほとんど織り込まれていない。輸入品からの圧迫を感じる企業は値下げをし、賃金カットするしかない。つまり、デフレは相変わらずである。

 

  <為替介入は救い主か>

 

 民主党代表選後、財務省は為替介入の引き金を引くことが出来た。まずは戦術的な成功となったが、中長期的な円安傾向が続くと判断するのは時期尚早である。2000年代前半の為替介入を見ると、4回にわたる介入期間があった。日銀が大幅にベースマネーを拡大し始めたのは2001年半ばだが、これは為替介入によって加速したと思われる。
 

 ただ、為替介入だけで、日銀がベースマネーを増やしたわけではない。実は、為替介入がほとんど行われなかった2001年11月から2002年3月までの間、日銀は9・11事件の影響を恐れ、大きくベースマネーを増やした。即ち、当時の日銀は為替介入を待たずに、各経済動向や日銀に批判的な竹中経済財政相との関係を勘案してデフレを止めようとする金融政策を行っていた。興味深いことに、最大規模の為替介入が起きた2003年9月から2004年3月の間、日銀のベースマネーは縮小した。同時にデフレは多少和らいだ。

 

 今回も「為替介入をしたから日銀が金融政策を変えざるを得ないだろう」という見方が広がっている。ただ、現実を見る限り、明確になったことがある。つまり、為替介入は金融政策変更の必要条件でもないし、十分条件でもない。日銀のデフレ脱却政策は財務省が決めるわけではなく、日銀が決めるということだ。

 

 現時点では、日銀に対する期待はそれほど高くはない。上記の弊社セミナーでは、出席した日本の機関投資家の約7割が2013年までに日本のデフレは終息しない、という意見だった。

  

  <先行きシナリオ、確信はできず>
 

 現在のコンセンサスは「今後の米国は、緩やかな景気回復でありデフレはない。日本は、弱い景気回復でありデフレ脱却はない」というものである。景気回復し、デフレがない米国は当然、長期金利が上昇する。景気回復が弱くデフレが続く日本は、多少、米国債利回り上昇による利回りの上昇があっても、大きな上昇にはならないだろう。その結果、金利差が開き、円安がすすむ。これはおそらく日本株にとって良いシナリオとなろう。このシナリオがいわゆるコンセンサスである。

 

 小生も基本的にこのコンセンサスに概ね賛成だが、確信しているとは言えない。世界中の投資家も確信はしていないだろう。特に確信がもてない点は景気指標と政策協力である。

 

 たった1カ月の指標発表で「米国はデフレだ」という懸念から簡単に「デフレはない」という結果にシフトしたと言うことは、投資家の意見は指標と一緒にぶれ易いといえる。事実、日米の経済指標からは目が離せない。

 

 政策協力も同様である。日本の為替介入に対する欧米の批判は微々たるものであったのであまり心配はない。問題は政府と日銀である。ここ2年の間、「指標悪化→日銀への政治圧力→議論→市場の乱れ→疑問視される日銀の行動」という悪循環に陥っていた。市場の政策当局に対する信頼性を阻むこうした悪循環が終わったと思う投資家はまだ少ない。日銀と政府が一体となって迅速に政策を実行するということは、非不胎化介入を行い、財務省が介入を行って日銀が同額のベースマネーを増やすことを意味する。そのうえで、デフレ脱却への道を進むことと言えるだろう。
 

 ロバート フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG証券 経済調査部長

 

 (29日 東京)