確信犯的円高路線:民主党は去年何をいっていたか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

確信犯的円高路線:民主党は去年何をいっていたか

秘書です。

去年の衆院選で、当時の民主党幹事長円高路線を主張していました。
だから、投機的な急激な円高はよくないが円高のベクトルは正しい、というのが去年の衆院選で明らかになった民主党のマクロ経済運営の基本指針のはずです。

輸出主導はだめだ、内需拡大だ、子ども手当とガソリンの暫定税率廃止で日本経済復活の狼煙(鳩山首相の昨年9月24日の国連演説(下記参照))!
この基本指針を修正するのでしょうか?

修正するならば、小泉政権期の景気回復を「円安・低金利依存」「輸出依存」と批判する誤った歴史観をしっかりと自己批判しなければなりません。この誤った歴史観をもっているかぎり、民主党には景気回復も成長回復も不可能でしょう。誤った歴史認識からは誤った政策しか生まれません。

下記は、去年の「秘書ひしょ」と、昨年の民主党の確信犯的円高路線の関連記事です。ご参考まで。



■円高を誘う民主党のマニフェスト・日銀尊重-小泉政権の円安が示唆
  7月30日(ブルームバーグ):1カ月後の総選挙に向けたマニフェスト(政権公約)を発表した民主党が中心となる政権ができた場合、円安が進んだ小泉純一郎内閣とは対照的に、積極財政による金利上昇と日本銀行の独立性尊重が円相場の上昇をもたらす可能性がある。

  バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジストは、マニフェストの実行に伴う2010年度の国債増発額は最大5兆円に達すると推計。同社は国内総生産(GDP)の実質成長率が年内は前期比年率3%台を維持、日経平均株価は今秋1万1000円超えを試し、長期金利は9月末に1.55%程度と予想している。

  野村証券の田中泰輔外国為替ストラテジストは、来年前半の円・ドル相場を1ドル=87円前後と予想。民主党は自民党に比べ、日銀が将来、前例のない金融緩和の是正に動いた場合に寛容だと読む。

  民主党の鳩山由紀夫代表らは27日午後、衆院選のマニフェストを発表。誕生から中学卒業まで1人当たり月2万6000円を支給する「子ども手当」や農家の戸別所得補償、ガソリン税などの暫定税率の廃止、高速道路の無料化といった家計支援策や、事務次官会議の廃止など政治主導の政策決定を強調した。必要な財源は10年度に7兆1000億円、13年度は16兆8000億円と算定。国の総予算207兆円の組み替えや「埋蔵金」などでねん出すると明示した。

  麻生太郎首相は21日、衆院を解散。約4年ぶりとなる総選挙の投開票を8月30日とした。読売新聞社が21-23日に実施した世論調査では、衆院選の比例代表選で民主党に投票するとの回答が42%、自民党は23%にとどまった。小選挙区選も民主39%、自民25%。自民党は55年の結党以来、野に下ったのは93年8月からの約10カ月間のみ。98年4月に結成した現在の民主党は政権を担ったことがない。

         株高・金利上昇・円高

  日経平均株価は麻生首相が解散を明言した翌日の14日から上昇。民主党がマニフェストを発表する27日には年初来高値を更新した。長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りも14日に急上昇。国内メディアによる世論調査で民主党優位が報じられ始めた先週以降は、6月下旬以来の1.395%に達する場面が増えている。

  三菱東京UFJ銀行の高島修チーフアナリストは、財政・金融政策の緩和・引き締めの組み合わせと為替相場の関係を論じた「マンデル・フレミング」理論に基づくと、景気をテコ入れする積極財政と物価を抑制する金融引き締め組み合わせは通貨高要因になると指摘。内需を抑制する緊縮財政と金利を押し下げる金融緩和の選択は通貨安の可能性を高めると語った

        小泉内閣、緊縮財政・金融緩和

  「聖域なき構造改革」を旗印に財政再建を進めた小泉純一郎政権下では、日銀による金融緩和もあり、5年5カ月の任期中に円安が進行。円の総合的な強弱を示す実質実効為替レート(日銀算出)は、小泉内閣が発足した01年4月から06年9月の退任時までに22%下落した。

  小泉政権は国債の新規発行額を毎年度30兆円以下に抑える方針を掲げ、06年度予算で実現。公共事業費を削減し、社会保障費の伸びを抑制した。日銀は01年3月、金融機関への資金供給量を操作目標とする量的緩和政策を導入。06年3月に解除したが、小泉首相退任までの利上げは同年7月の1回だけだった。

  福井俊彦総裁(当時)による量的緩和政策の解除観測が高まった05年11月には、自民党の中川秀直政調会長(同)が日銀の独立性にまで言及する形でけん制。安倍晋三官房長官(同)や小泉首相も時期尚早との認識を示し、市場の解除観測が一時後退した経緯がある。

        日銀を尊重、円高要因に

  民主党は、低金利政策が家計から金融機関や企業への所得移転をもたらしたと批判。日銀の独立性を尊重する姿勢を示してきた。大久保勉「次の内閣」金融副大臣は13日のインタビューで「金融政策は日銀の判断に任せる」「追加的な政策は必要ない。少なくとも緩和方向では何もしなくてもよい」と述べた。

  日銀は政策金利を0.1%前後に据え置き、年21兆6000億円の長期国債買い入れを実施。コマーシャルペーパー(CP)・社債の買い入れと企業金融支援特別オペは年末まで延長した。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相(当時)は先月、国内景気は「1-3月が底」との認識を示したが、白川方明総裁は記者会見などの場で「底入れ」といった表現を控えている。

  ただ、日銀が21日公表した6月の金融政策決定会合の議事要旨によると、ある委員は「臨時・異例の措置の解除に向けて具体的な検討を行っていくべき」と述べていた。

  ドイツ証券の深谷幸司シニア通貨ストラテジストは、日銀が将来、金融緩和の是正に動く場合には「過去に圧力をかけてきた自民党よりは民主党のほうが容認を期待できるだろう」と予想した。

  民主党の中川正春「次の内閣」財務相は9日のインタビューで、中長期的に外貨準備の運用多様化と円の国際化を進めるため、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)建て債券の引き受けや米国に円建て外債(サムライ債)の発行を要請するなどの考えを示した。

  しかし、岡田克也幹事長は24日、ブルームバーグ・ニュースに対し、同党の中川氏が提唱する外貨準備の運用多様化などの改革案について「党として公式に是認したことはない」と言明した。


■岡田民主幹事長発言こうみる:輸出主導是正は円高甘受、実勢逸脱の円高には警戒スタンスか=三菱東京UFJ銀 高島氏
2009年 08月 10日 20:23 JST
 <三菱東京UFJ銀行 金融市場部チーフアナリスト 高島修氏>
 

 輸出主導型から経済構造を変えるとの岡田幹事長発言を為替市場から見ると、ある程度の円高を甘受するとのスタンスを示していると読める。結果として内需主導の経済に踏み込むなら物価を抑制したほうがいいので、若干円高のほうが居心地がいいという判断もあるのだろう。為替相場は日本の政治だけで動くものではないし、長い目で見て日本が内需中心の経済にかじをきることによって発生する円安圧力は目立ちにくい。ただ、為替市場にドル安円高圧力が加わりやすい環境下、それを阻害する政権ではないということにはなる。 

 為替介入はその可能性を完全に否定したわけでなく、ファンダメンタルズから逸脱する動きなら少しは必要との主旨だ。財務相に誰が就任するかによって、ある程度は左右されるだろうが、円の実質実効レートは現在、これ以上円高が進むとデフレ圧力を高めかねない水準にある。デフレ圧力の高まりはスパイラル的な円高につながるので、海外の金利水準が低い中、デフレスパイラルに陥ったときに円高圧力を止めるのは難しくなる。次期選挙で政権を担う可能性がある党の幹事長が、積極的に円安を誘導するわけではないが、ファンダメンタルズから逸脱した円高はモデレートにしたいという考えを持っていることは重要だ。


2009-08-11 09:47:08
なぜ民主党は「改革なくして内需型成長なし」の事実を認めないのか?


再び、昨日のロイター電より、民主党の岡田幹事長の発言の引用です。

■最初の300日重要、政治主導で内需主導型経済を実現=岡田民主党幹事長
(2009年 08月 10日 22:44 ロイター)

「民主党の公約からは成長戦略が読み取れないとの指摘があることに対して「従来の日本の成長戦略は輸出主導型」とした上で、これまでの成長は「改革の成果ではなく、輸出主導型企業が頑張った結果だ。その背景は円安であり、金利安」と指摘した」

→「これまでの成長は改革の成果ではない」「輸出主導であり、その背景は円安・金利安」という指摘、これは小泉政権下のことも意味しているのでしょうか。

小泉政権時代(2001年4月―2006年9月)の経済成長をふりかえってみましょう。

小泉政権期には、実質GDPは39兆円増加し、
その内訳は外需は45%、内需は55%です(2001.1-3と2006.7-9の比較)。

具体的な数字をあげてみましょう。
小泉政権期には、実質GDPは年率39兆円増加し、
その内訳は外需は45%、内需は55%です(2001.1-3と2006.7-9の比較)。

小泉政権期の実質成長率の内訳(下記の数字)をみても明らかなように、
「改革なくして内需型成長なし」です。

2001年 実質成長率=-0.8%(うち、外需-0.3・内需-0.5)
2002年 実質成長率= 1.1%(うち、外需 0.4・内需 0.7)
2003年 実質成長率= 2.1%(うち、外需 1.3・内需 0.8)
2004年 実質成長率= 2 %(うち、外需 1.5・内需 0.5)
2005年 実質成長率= 2.3%(うち、外需 1.8・内需 0.5)
2006年 実質成長率= 2.3%(うち、外需 1.5・内需 0.8)


実質経済成長に対する内需と外需の寄与度をみると、

小泉政権前(1996-2000年) 内需-外需の平均 0.46
小泉政権期(2001-2006年) 内需-外需の平均  0.58
小泉政権後(2007年)      内需-外需   -0.07

外需依存になったとすれば、小泉政権以後のことです。

ポスト小泉でリーマンショック前まで(2006.7-9 2008.4-6)、
政権でいえば安倍、福田政権でGDPは13兆円増加し、
その増加の内訳は外需は76.9%、内需23.1%でした。
この時期は、民主党が格差論争をしかけて、世の中に急速に反改革ムードが高まった時期と一致しています。


民主党は、以上のような小泉政権期の「改革なくして内需成長なし」の事実を認めないで、どうして内需型成長ができるのでしょうか。民主党の方針は、

 「改革しない」「円高で輸出を抑制する」「金利高で弱い者を切り捨てる」「直接給付でばらまく」

そんな「ばらまきなくして内需型成長なし」は持続可能なのでしょうか。


エコノミストのみなさんはこの民主党の経済路線を持続可能と認めるのでしょうか。
マスコミのみなさんはこの民主党の経済路線が雇用拡大と格差是正につながると認めるのでしょうか。


■第64回国連総会における鳩山総理大臣一般討論演説
平成21年9月24日
ニューヨーク

第一は、世界的な経済危機への対処です。
 世界経済は、最悪期を脱したかに見えるものの、雇用問題をはじめ、予断を許さない状態が続いています。
 そこでまず、日本がやるべきことは、自身の経済再生です。新しい日本にはそのためのプランがあります。
 年間5.5兆円の子ども手当は、教育への投資であると同時に、消費刺激策であり、少子化対策となります。
 自動車の暫定税率の廃止は、年2.5兆円の減税策であるとともに、流通インフラの活性化によって日本産業のコスト競争力を改善することが期待されます。
 後で述べるように、我々は極めて高い気候変動対策の目標を掲げていますが、そのことによって電気自動車、太陽光発電、クリーンエネルギー事業など、新しい市場が生まれるでしょう。また、海洋・宇宙・次世代ITなどの分野でも、新産業・新技術の創造を通じて安定的な成長力を確保します。
 政権交代を通じた経済政策の見直しにより、日本経済は復活の狼煙を上げるに違いありません。