参加型民主主義?:利益集積型民主主義から熟議型民主主義への転換の覚悟如何? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

参加型民主主義?:利益集積型民主主義から熟議型民主主義への転換の覚悟如何?

秘書です。
参加型民主主義と熟議型民主主義、新しい時代のはじまりとなりますか?



■「国民参加でねじれ克服?」夏休み明けの首相、国会運営に意欲
8月15日23時39分配信 産経新聞

 菅直人首相は15日夜、都内で仙谷由人官房長官ら政府高官と会食し、「ねじれ国会」の打開策について「新たに国民に参加してもらうことで、超えられる可能性がある」との考えを示した。具体策には踏み込まなかったが、政府筋は、首相が4日間の夏休みでこうした考えを持つようになったと解説した。

 会食で首相は「ねじれているが、自民党政権でも、乗り越えられなかった問題はたくさんある」と前置き。「新しく国民の皆さんに参加していただける民主主義の形が模索できないか。市民派としてやってきた首相として、国民的な課題を議論できる場を作ることを探りたい」と語った。

 各会有識者に一般市民を加えた新たな議論の場を設けることをテコに国会運営を乗り切りたい考えとみられるが、「国会軽視」「場当たり対応」との批判も出そうだ。

 会食には古川元久、福山哲郎両官房副長官、寺田学首相補佐官が同席した。


菅総理のことですから篠原一さんの『市民の政治学』(岩波書店)は読まれていることでしょう。この中のどれをやろうとされているのでしょう?

討議型意見調査(=熟議型意見調査)
コンセンサス会議
計画細胞
市民陪審制

どれでしょう?

菅総理は、「市民」を何かの組織から選ぶのでしょうか?
それとも裁判員制度のように「無作為抽出」=くじで選ぶのでしょうか。無作為抽出こそ、古代ギリシャ以来のもう一つの民主主義の在り方です。


菅総理は、「市民」にコンセンサスをもとめるのでしょうか、意見表明をもとめるのでしょうか?
意見表明をもとめるものとは、熟議の結果、意見が変わることを前提に、無作為抽出した人に熟議する機会を与えて世論調査する、というものです。これは世論調査の延長です。

菅総理は、間接民主制と市民参加をどうつなぐのでしょうか?
ある専門家は、無作為抽出の会議を、司法、立法、行政の3権につぐ第4の権力にしてはどうかと提案します。また、上下両院のうち、上院を無作為抽出の院にしてはどうかという専門家もいます。

間接民主制と市民参加をつなぐやり方として、国会の公聴会に「熟議型意見調査」の方法を入れることが考えられます。

この問題は、利害関係者と利害のない第三者は公共的な判断を下せるのではないか(利益の集積が正義ではない、利益集積型民主主義から熟議型民主主義への転換)、ある領域の専門領域を超える問題については市民と専門家の能力は等しいのではないか、熟議をするのは間接民主制の代表者なのか市民なのか両方なのか、といった民主主義の根幹にかかわるものです。

米国のフィシュキン氏らによると、ミシガン州での熟議型意見調査では無作為抽出の市民が熟議した結果、増税支持が増えたそうです。(日本では神奈川県が2009年に実験をしています)


日本で増税についてのコンセンサスをつくりたい、とお考えの人は、この熟議型意見調査しかできないのではないでしょうか。

しかし、このやり方は、市民は熟議すれば賢い判断を下せるという前提に立ちます。そんなことは許されないと在来型のエリーティズムのみなさんには耐えられないことでしょう。そして、熟議型意見調査をすれば、ムダ削減は徹底的にやることになるでしょう。増税だけのつまみぐいはできないでしょう。既得権益はなくなっていくことでしょう。エリートと市民はフラットになるでしょう。その覚悟のある人だけが増税の合意形成ができるということです。

市民派としてやってきたはずの総理は、明治維新後の一部の自由民権勢力のように、権力をとったら既成勢力に妥協・迎合して権力の長期化だけを考えるのか、それとも体制内で市民の政治を貫徹する覚悟があるか、注視しましょう。