経済財政:先行きは景気の足踏み懸念の中・・・ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

経済財政:先行きは景気の足踏み懸念の中・・・

秘書です。
足もとの経済は?


(1)2年ぶりのDIのプラスは「バックミラー」で判断か

6月調査の日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIが+1と、08年6月以来、2年ぶりにプラスに転じました。これは、「輸出⇒生産」の好循環が内需や雇用に波及してきたバックミラーに映る景気(これまでの景気回復の姿)の良さを判断根拠にしたものと思われます。

(2)先行きは「足踏み判断」

見るべきは、先行きの判断です。大企業・製造業の場合、現況判断DIは前回から15ポイントも改善していますが、先行きは2ポイントしか改善していません。経営者は、先行きに関して、景気回復は継続するが、改善テンポはこれまでに比べ大幅にペースダウンし、足踏みすると見ているということでしょう。企業は「バックミラー」を見て回復判断を下したものの、先行きはグローバル景気のかげりや交易条件の悪化、円高を背景に、「景気の足踏み」を懸念しているのではないかと思われます。

(3)「足踏み判断」の背景

①「輸出⇒生産」の減速
「足踏み判断」の第一の理由はバックミラーに映る「輸出⇒生産」の好循環が弱まりつつあることでしょう。

②グローバル景気
6月以降も「輸出⇒生産」の動きは弱まる可能性が高い。グローバル景気にかげりが出てきたからです。
欧州はこれまでのバランスシート調整に加え、今後の財政再建が景気に悪影響を及ぼしかねません。
6月の米国の失業率は前月から0.2ポイント改善しましたが、労働参加率が低下したことによるものと考えられ、労働参加率が低下しなければ10.2%でした。時間当たり給与も同▲0.1%であり、米景気の回復のモメンタムは鈍化している可能性があります。消費者信頼感指数の急低下や製造業ISM指数の悪化などを総合すれば、過度な悲観は不要ですが、景気刺激策の一巡などから米景気はやや減速しているのではないかとみられます。
中国でも景気に変化が見られます。輸出受注などが急減速しており、完成品在庫が増加しています。固定資産投資の抑制や金融引き締めなどの影響に加えグローバル景気が鈍化すれば中国で在庫調整が始まるリスクが出てきたと見ることが出来ます。

③交易条件の悪化と円高
デフレ圧力は弱まっていますが、仕入れ価格判断DIの上昇幅は6ポイントと、販売価格を上回っています。交易条件は悪化しており、収益改善の頭を抑えかねません。そして、円高です。円の対ドル対ユーロでの上昇は進んでおり、人民元が対ドルで上昇しても、実効レートの上昇は景気にとってのダウンサイドリスクです。


6月の短観では、民間の資金需要の弱さが指摘できます。企業業績は大幅に改善しているものの、設備投資計画は、全産業で+0.5%。過去2年連続の2桁減の投資の抑制の後にしては、資金需要は極めて弱いという証左です。


以上のような足元の経済の中の財政政策。

「増税して使う道を間違わなければ景気が良くなる」という方向に行くのでしょうか?

まず、この論理(日本流第3の道)の大前提は、増税の全額が新規事業で雇用を生む、ということでしょう?

ところが、いま議論されているのは、赤字国債でまかなわれいる社会保障財源を増税して税に切り替えることがメイン。いつのまにか日本流第3の道の前提条件をなしていない財政再建論にすりかえられていませんか。一体、増税のうち、新規雇用増につながるのはどれだけで、マクロ経済にどういう波及があるのでしょうか。

そして、増税で、デフレ圧力はどうなるのでしょうか。

このような議論もないなか、イギリスが増税した、ギリシャは大変だ、スウェーデンは・・・。というつまみぐいの論理で、「デフレ下では増税すれば景気は良くなる」という世界的な実験に日本は突入していくのでしょうか?

記者さんの中にも、世界恐慌の中で金解禁をした浜口内閣のときのような、何か全くベクトルが間違えた方向に向かおうとしているのではないか、と悪い予感を感じはじめている人がいます・・・

しかし、エコノミスト主流派のみなさんは「デフレ下では増税すれば景気がよくなる」論で一致されたかの様相です。このロジックは世界の政策コミュニティやアカデミズムの評価に耐えうるのでしょうか?それとも日本国内でしか通用しない「ガラパゴス経済学」なのでしょうか?