菅エコノミクスを学ぼう:増税しても景気は良くなる論について | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

菅エコノミクスを学ぼう:増税しても景気は良くなる論について

秘書です。
菅さんの「増税しても景気は良くなる」路線は明日、代表選で論争になるのでしょうか。


■【激震2010 民主党政権下の日本】菅財務相「増税しても景気は良くなる」理論上は可能でも実行は困難2010.04.21
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100421/plt1004211609002-n2.htm

 菅直人副総理兼財務相が、最近「増税しても景気は良くなる」という興味深い発言をしている。財務相という財政の責任者の発言なので国民生活に重要であるから、よく検討してみたい。

 その発言の知恵袋とされているのが、2月26日付で内閣府参与に就任した小野善康大阪大学教授である。同ポストは、小野氏の前には、年越し派遣村村長の湯浅誠氏が就任していた。

 小野氏の経済理論は、精緻(せいち)な数学モデルもあり、その内容がなかなか論争的なこともあって、経済学者の間ではファンも多い。しかし、テクニカルな細部を除くと、オーソドックスなケインズ・タイプとさほどかわらない。

 1月29日付の本コラムで、菅財務相は大学初級で習う「乗数効果」がわからなかったと書いた。乗数効果とは、政府が公共投資などの政府支出で雇用を創出しようとするとき、投入額の《1÷(1-消費性向)》倍の効果が出ることだ。

 それを習うときに、一緒に「均衡予算乗数」というのも習う。それは、政府支出を増税で賄って予算を均衡させた場合にどうなるかという話だ。増税だけであれば、逆の乗数になって景気を悪化させるが、同時に政府支出をするとどうなるかというわけだ。

 増税の逆乗数は、《-消費性向÷(1-消費性向)》となる。上の乗数と組み合わせると、均衡予算乗数は1になる。つまり、増税で公共投資等の政府支出を行う場合、増税額だけ景気は良くなるのだ。これが、菅財務相のいう「増税しても使い方を間違わなければ景気は良くなる」という話につながる。

 実は、このロジックの裏にはいろいろな前提がある。例えば、政府支出先で雇用を確保するとき、民間雇用をクラウドアウト(圧迫)すると効果が薄れる。さらに、現実の政府支出乗数も税乗数も、これまでの実証分析によれば理論が期待しているほど高くなく、それを組み合わせて得られる均衡予算乗数は1より遙かに少ないか、場合によってはマイナスだ。

 菅財務相のように「使い方を間違わなければ」というのは、言葉では簡単だが、実行は難しいことを意味している

 増税して政府が国民の代わりに使い道を考えるのがいいのか、増税しないで国民が使い道を考えるのがいいのか、という2つの考え方がある。政府が国民より優れていれば均衡予算乗数は1に近づくが、逆に国民のほうが優れていればゼロに近づくか場合によってはマイナスだ

 そういえば、昨年12月、菅副総理は乗数効果が11のものがあるはずと発言したことがある。それを見せてもらえれば、政府が国民より賢いといっていいだろう。(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)


上記の記事の中で、高橋さんが最後にふれている「乗数効果11」については、下記の記事をご参照ください。

■【菅vs竹中論争】(2)菅氏「小泉・竹中路線は失敗」 (4/4ページ)
2009.12.16 17:25産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091216/plc0912161728015-n4.htm

そこで第三の道ということで今、この間の経済政策とか雇用政策で常に打ち出しているのは、雇用が新しい需要を生む。例えば介護などは雇用が増えることでイコール、サービスを増やすことになる。あるいは同じ費用でも1兆円で1兆円しか効果がないというのが今の経済財政の官僚のみなさんの計算なんですが、おかしいではないかと。1兆円でやっぱり11兆円ぐらい生み出すような知恵があるはずだ。それから規制について、抑圧されたと言われましたけど、私の言い方で言えば、社会ルールを変えることによって、規制を弱くする場合もあるし、強くする場合もありますが、それによって新しい需要なり、そういうものが特に環境分野で生まれてくる。


さて、「増税しても景気は良くなる」論を専門家のみなさんはどう思っているのでしょうか?

■財政審:消費税増税、景気にマイナスにならず…委員ら一致
毎日新聞 2010年5月18日 21時30分
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関、会長・吉川洋東京大教授)は18日、財政制度分科会を開き、消費税増税の影響について論議。委員らは「消費税増税は必ずしも景気にマイナスにはならない」との認識で一致した
 この日は、委員の井堀利宏・東京大大学院教授が、97年に消費税率を3%から5%に引き上げた当時の財政・経済状況について報告。97年4月以降の景気後退の主因は増税ではなく、同時期に起きたアジア通貨危機や金融危機の影響が大きかったとの考えを示し、委員の間で意見の一致をみた
 井堀委員はさらに、増税分を財政健全化に回すことなどで、将来に対する安心感が生まれ、「景気にプラスになる」と主張した。菅直人財務相は「正しい使い方をすれば増税で景気がよくなる」との持論を展開しており、今回の財政審の議論は菅氏の持論を下支えすることになりそうだ。【久田宏】


このように菅エコノミクスは、財政審の「お墨付き」を得たようです。

しかし、「98年度経済白書」の下記の分析は、否定されたのでしょうか?
http://wp.cao.go.jp/zenbun/keizai/wp-je98/wp-je98-00101.html

「1997年度年次経済報告で指摘したように,日本経済は96年半ばから景気回復が本格化し,景気回復期にみられる好循環が現れて,それまでの景気刺激策に支えられた不安定な回復過程から,民間需要中心の自律的回復過程に移行しつつあった。97年度に入ってからの消費税率の引き上げ,特別減税終了などによる国民負担増,およびある程度の駆け込み需要の反動減については,政府経済見通しでも織り込んでいたが,89年の消費税導入時と比べて所得増加期待が小さくなったなかで消費者の反応は大きく,駆け込み需要とその反動減は予想以上に大きく,消費支出や住宅投資の動きに大幅な振れをもたらした。」


財政審の歴史観は、全会一致で支持されたようですが、専門家の主流の見解ですか?


では、参議院財務金融委員会議事録より、「菅エコノミクス」の詳細を学習しましょう!
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/174/0060/main.html


第6号 平成22年3月24日
○国務大臣(菅直人君) かなり難しい御質問で、私もどのように答えていいのか考えながらお聞きをいたしておりました。
 今の国民負担率が他の先進国に比べてやや低いので、まだ負担の余力があるから、そういう意味で国債発行が今日まで低い金利で可能であったという、そういう認識は私も共通にいたしております。その上で、これからの問題として、まさに成長と財政規律という問題をトレードオフ的にどちらかを取るという考え方で考えると、これはどうしても矛盾の拡大になろうかと思っております。
 私は思い切って、表現はちょっと気を付けなきゃいけませんが、国民負担率、時々峰崎副大臣とも話をしているんですが、負担という言葉をやめてシェアだと、分担だと。つまりは、負担と言うと何かマイナスのイメージが非常に強いんですが、そうではなくて分担なんだと。
 今の時代のデフレ状況というのは、個人がお金を持っていても、お金のままで持っていたいと、物に変えたくないというのが、つまり血流で言えば血液が流れない状況、お金が流れない状況、それがデフレの根底的な言わば原因だと思いますので、それを強制的に血液を流す。ペースメーカーとか、場合によったら人工心臓で血液を流すように、税でいただく、分担していただく代わりに、その分でちゃんと雇用をつくる。その分でちゃんと仕事をつくって、雇用をつくって、そこで新しいサービスであったり物であったりというものを供給して、それが新しい需要につながってくる。特に、そういう需要につながってくる分野に仕事をつくっていく。こうすれば、従来は税を上げるということは景気にマイナスだというのが一般的な常識として語られてきたわけですが、そうではなくて、今のようなデフレ状況では、お金を循環させるためには、税と財政出動がリンクしたときに初めてお金が流れると
 問題は、その流す中身が時代に合って、特に国民にとって幸せになる、あるいは安心できるものになるかと、こういうふうに考えていいのではないかと。
 そういう意味では、今日予算が成立する見通しに皆さんのおかげでなっておりますが、そういう中で、思い切ってそういう新しい財政出動と税の関係を成長と規律を共に両立させる形でつくり上げていけないかという、まあ難しい課題ではありますが、そんなことを今のお話を聞きながら考えたところであります。


「負担でよいう言葉をやめてシェアだと、分担だと」「強制的に血液を流す」「分担していただく代わりに、その分でちゃんと雇用をつくる」→ここが菅エコノミクスの核心部分ですね。

第6号 平成22年3月24日
○国務大臣(菅直人君) ・・・また、今御指摘のあった中以外でいいますと、やはり成長戦略というものをどのような形で肉付けをし、また実現可能性を高めていくか。この中で、若干私の考え方を申し上げますと、従来は、消費税にしろ、場合によっては所得税にしろ、税負担という言い方が言葉として使われているわけですけれども、考えようによれば負担というよりもある意味ではシェアだと、分担だと。つまりは、今デフレ状態の中でお金が流れにくくなっている、そういう中においては、場合によっては税の形でお金をいただいて、そして国民にプラスになる方向でそれを使う、それによってお金が流れることによって仕事が生まれ、雇用が生まれる。そういう形に使うことができれば、逆に、負担ではなくて、ある意味で税という形でお金を回すことが、税と財政出動で回すことが経済成長にもつながってくると、こういう考え方、こういう形の成長戦略の絵がかけないか、いろいろと専門家の皆さんにも知恵を借りる形で検討をしていきたいと考えております


そして、財政審の専門家のみなさんが、菅エコノミクスを支持した!着々とすすんでますね!


第5号 平成22年3月23日
○国務大臣(菅直人君) ・・・この間、景気が多少良くなったところで何か消費税をかつて上げたりしたら、それで景気が逆に腰折れしたという見方が強いわけですけれども、本当にそうだったのか。単に、駆け込み需要とその後の一時的な冷え込みをそれが景気の腰折れというふうに見たのか
 更に言えば、問題はそうしたときに何に使うかという問題でもあろうと。そういう意味では、単に税項目がどうだということだけではなくて、景気を良くするために逆に、私たちが言う言い方で言えば、雇用とか仕事をつくって雇用を生み出すところに税収を振り向けると。そういう、つまり景気を回復するために税をお願いするということもあり得るのかと、その辺りのマクロ的な検討も今それぞれのところで少し検討してみてくれと
 また、専門家の皆さんにも、これまでは税というと負担という考えでしたけれども、逆に言うと、デフレというのは金が循環しない状況ですから、ある意味で血液が循環しないときにはペースメーカーを入れて循環させると、極端に言えば人工心臓を入れて循環させると。そういうことを考えると、日本でお金が流れていない状況では、ある程度はちゃんと使い道を国民の皆さんに示して、それが雇用とか仕事につながるのであれば、逆にそのお金をいただいて、それを使ってまた国民に戻していくと。
 そういう循環を、ある意味で税と財政の、何といいましょうか、組合せによってそれをきちんと透明な形で国民の皆さんに示すことによって、逆に、まあちょっと言い方を気を付けなきゃいけませんが、税の負担をお願いすることが景気を悪くするんじゃなくて逆に良くすることにつながるんだという、そういう絵がかけないかということを今それぞれの部署に検討をさせているところです。


この御下問についても、財政審は結論を出しました。


第3号 平成22年3月18日
○国務大臣(菅直人君) ・・・それから、今私が、林議員も経済財政担当大臣をやられましたが、いろいろと宿題を出しております。例えば、これは中川秀直さんなんかの議論でよく出てくるわけですが、経済成長がかなり回復したときに、金利上昇と国債費の関係がどうなるんだと。先日の衆議院の議論では、四%を超えるGDP上昇があれば、成長があれば金利よりも上を行くからGDP比は下がってくるので、何としても四%を超える成長にデフレ脱却を含めてやるのがまず先だという議論を展開されておられまして、それも一つの考え方だと思いますが、基本的にどういう関係にあるのかということをマクロ経済的に少し研究してみてくれということを今事務方に言っております
 それから、過去の増税と景気に与える影響、一般的には三パーから五パーに上がるときも、それによってせっかく上昇過程にあった景気が頭打ちになって下がったという見方がされていますが、本当にそうだったのか。もうよくお分かりだと思いますが、消費税を引き上げるときは当然駆け込み需要があってその後どんと下がるわけですね。しかし、それがある長さで見たときに、中立ではなかったかという見方もあります。
 これは他の税制の場合もどうなってくるのか。これは、かなり私は政治的にそういうことを考えなければならなくなったときのその理論立てでは非常に重要で、つまりは、場合によっては税を上げてもその使い方が間違わなければ、雇用と需要の方向に投入すれば、逆にそのことは景気には税そのものは中立的で、投入することによってつまりは個人が蓄えているお金を使う、それも雇用から需要が生まれるものに使うことによってはそれは景気にプラスになるんだと。端的に言えば、増税は景気にプラスになる増税もあるんだということがちゃんとマクロ的に証明されれば、そのことも非常に大きな要素になると思っています。
 ですから、お答えになったかどうか分かりませんが、フローというのはどうやるかということと並行しないと、どのくらいの金額だということだけ考えれば、これまでのいろんな計画もそうでしたけれども、私は残念ながらそれだけでは無理だろうと。ですから、そこは表裏一体に考えてフローも出さなければならないと、こんなふうに思っています。


自民党は名目4%成長実現を参院選の公約に掲げます。ここは菅エコノミクスとの対立軸ですね。


第2号 平成22年3月16日
○国務大臣(菅直人君) 私も考えながらいろいろなものを進めているんですが、今のことに一〇〇%マッチした議論になるかどうか分かりませんが、やはり私は一つのキーは雇用にあると思っております。需要あるいは供給を生み出す雇用。やはり雇用というところが、つまりは五パーとか六パーといった失業状態、あるいは潜在失業率がもっと日本は高いとも言われていますが、そういう状態の中でやらなければいけない経済対策というのは、雇用を生み出してそこから新たな生産、それはサービスかもしれません、サービス的な生産、そういうものにつながる分野だと思っております。ですから、介護については共通認識だと言われましたけれども、介護のところにお金を投じることは雇用を生み出すと同時にサービスを生み出すわけですから
 それで、もう少し言いますと、私、今旧経企庁のいわゆるスタッフの皆さんによく聞くんですよね。一つは、そういう福祉分野にお金を投じることと他の分野に投じることでどちらの経済成長が高くなるのか、マクロ的にちょっと計算してみてもらえないかということを一つ聞いています
 もう一つは、これまでは景気が良くなりかけたときに消費税とか何かを上げると、景気に水を差してそれでストップしてマイナスになるという分析が一般的でしたけれども、果たして本当にそうなのかと。つまりは、場合によったら思い切って何らかの項目で増税して、その費用を介護とかなんとかに振り向けた方がマクロ的には経済の成長にもつながるんではないかと、そういう過去の消費税を引き上げたときの影響についてもう一回マクロ的に分析をし直してみてくれということも今指示をいたしております
 そういう意味で、まさにマクロ的な成長に戻すために、今の日本の状況からいえば、雇用を生んで需要、供給につながる分野が最も効果的ではないかと、お答えになったかどうか分かりませんが、そういう考え方でこの第三の道ということを提唱しております。

○国務大臣(菅直人君) その問題のちょっと前に戻って一点だけ申し上げますと、先ほど林さんが、同じ大臣をやっておられるころに安心あるいは安定という形に言われたというのは、それはある部分共通なんですが、もうちょっと積極的に考えているんです。つまり、安心、安定するから消費が増えるというワンクッション置いたんじゃなくて、直接に医療とか介護という分野そのものが経済成長の分野ではないかと思っているんです。もちろん費用は場合によったら混合診療のような形で個人負担もあるかもしれません。あるいは保険料なり税で投入する。そうすると足らないときはどうするかという問題は当然出ます
 しかし、逆に、時々私はほかの委員会でも申し上げるんですが、何か道路や橋を造ると投資で、この福祉の分野は負担という言い方をされるんですが、私は、どちらも政府支出なり個人支出なんですから、それが投資につながるのか、つまりは後の経済成長につながるのか、それとも後の経済成長の足を引っ張るのかであって、そういう意味ではこの分野は後の経済成長につながる分野ではないかというふうに見ているという意味で、より積極的な見方をしているということをちょっと申し上げておきたいと思います。
 それから、今おっしゃったことは、枝野新大臣が事業仕分を含めてこれから取り組んでくれることでもありますし、仙谷戦略大臣も公務員制度の問題でまた取り組んでくれるということで努力していただいていますので、そこにはそれなりの期待を持っております。と同時に、おっしゃるように、今想定されるいろいろな歳出というものを考えたときに、それが今見えてくる歳入の中でどう実現できるかというのは、率直に申し上げて大変高いハードルだと思っております。
 ですから、そういうことも含めて、税制の議論も本格的に始めてもらわなければならないということで、今、まずは専門家委員会の方に所得税の方から議論を始めていただいていますが、そう遠くない時期には、法人税は、これは先日、総理からは引下げの方向を少し示唆したような発言もありましたけれども、法人税の在り方、さらには消費税の在り方、これは年金財源ということも以前我が党言っておりましたので、年金の制度の根本改革についてもそういう場をつくりました。そういった中で議論することが必要だと、このように思っております。


さあ、この菅エコノミクスの試算が、増税の論拠として出てくることでしょう。「個人的な試算」ではなく、政府提出の試算ででてくることでしょう!増税すればするほど経済がよくなる」ことを立証できたら、すごいことになりそうな感じがしますけど。ノーベル経済賞もの?