識者は語る:鳩山政権の教訓は民主党代表選で議論になるか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

識者は語る:鳩山政権の教訓は民主党代表選で議論になるか?

秘書です。
新聞各紙に、鳩山首相退陣を受けての緊急座談会。
これらの有識者の鳩山民主党政権の総括は、明日の民主党代表選でどこまで議論されるでしょうか。



まずは、毎日新聞の座談会より抜粋。


飯尾潤氏 鳩山さんの問題は、理想と現実の間に橋が懸かっていないことだった。新しい公共はものすごくいいことだが、その理想に橋が懸かっていない。理念と現実の両方を備えた議論を作っていかないといけない。

ジェラルド・カーティス氏 さっき、日本の政党政治の危機だと言ったが、小泉さん(純一郎元首相)が辞めてから、首相が4人というのは偶然ではない。誰がやっても構造的問題でリーダーシップを発揮できないという、深刻な問題が日本政治にある。日本が成功してきた構造の中で育った戦後の政党政治をやっている人たちは、この成功システムがもう成り立たない、完全に改めないといけないということに抵抗感が強い。だから、菅さんだろうと、仙谷由人さんだろうと、誰が首相になっても、日本が直面している問題に勇気を出して直接取り組まないと、また半年か1年で首相が代わって、だんだん日本という国が衰退していくという、非常に深刻な問題がある。だから、政局ばかり問題にして、根本的に日本はどういう針路を取るのかという話をしないのは非常に危険だと思う


岩見隆夫氏 小沢さんの密室性が問題だ。やはり透明性が高くないと国民はついていかない。もう一つは人材。本当に仕事ができる人材を党外からも集めたらいい。


飯尾氏 この問題(※普天間移設問題)を問題にしないのが一番大切なことで、沖縄の基地負担を軽減したいのなら、ひそかに交渉すればいい。アメリカと沖縄という交渉相手がある話を人前で問題にした段階で、もう失敗だった

岩見氏 政党政治の危機という話があったが、鳩山さんは首相の力量を欠いていた。民主党にも政権を担当する備えがあったか。首相を代えたから民主党に政権担当能力が備わるわけでもなく、依然として民主党政権の危機は続くと思う


岩見氏 鳩山さんは言葉で足をすくわれた。普天間問題で「最低県外」というのは逃げ場がない言葉だ。保証のない言葉を政治家は絶対に使っちゃいけない。彼はその失敗を何回も繰り返し、逃げようがなくなった。


飯尾氏 必要のない連立を組んで郵政や普天間問題の原因を作ったのが失敗の一つ。鳩山さんは小党にものすごく配慮する。さきがけの経験があるからだろうが、首相としては具合が悪かった。もう一つは、政府・与党一元化と言いながら二元体制を強化した。政策を内閣一元、選挙と国会は与党一元。二元体制ということだ。三つめは、政治家主導でみんな自分が目立ちたくて連絡調整が悪い。四つには脱官僚依存と言っていたのに、脱官僚で終わった。遠ざけてしまって使えていない。旧体制で邪魔する勢力を壊すことには成功したが、自分たちがちゃんとものを決める仕組みができなかったから成果を出せず、行き詰まった。


続いて、読売新聞の座談会より抜粋。


北岡伸一氏 首相の資質の問題は重要だったと思う。「最低でも県外に」と言ったらどうなるか、「5月末決着」と言ったらどうなるか、鳩山首相は考えてしゃべっているのか。目測能力が絶望的に欠如している。もうひとつは責任感だ。首相は心情倫理の人だ。「思い」という言葉をよく使っているが、首相は「私はこうしたい」ではなく「私はこうする」と話さないといけない。「思い」の連発を聞くとちょっと責任感が希薄だった気がする。

曽根泰教氏 ・・・システムの問題でいえば、民主党が外交、安全保障が弱い。知恵はあるが、統合するメカニズムがないからだ。鳩山首相個人にできないなら、それを補佐するシステムがんあければいけないが、それがなくて、官房長官が処理できないとなると、事態はさらに悪くなる。

曽根氏 民主党はできもしないことを、あたかもできるように思いこむ。企業・団体献金の禁止というのも抜け道みたいなものがたくさんある。民主党だけではないが、過去の例を見ているとルール違反が起きるとルールを変えて、しのごうとする。ルールを守れない側に問題があるはずなのにルールを変えていく。ここがわからない。

北岡氏 ポピュリズムとは、つまるところ国民をバカにしている。エサを出せばついてくるだろう、有名人を出せば当選するだろうというのは、ひどい態度だ。国民はそんなにバカじゃない。こんな子ども手当なんていらいないという人も多い。それよりもっと大事なことがあるだろうと感じている人が多い。こういう感覚はそのうち強いしっぺ返しを食らうと思う。


北岡氏 吉田茂・元首相が昭和10年代に書いた手紙を思い出す。今、みんな誰がいいとか、誰と誰をくっつければうまくいくという話ばかりだが、それがまちがいだと。大事なことは、芝居は筋書きだと言っている。・・・



そうなんですねえ。「誰と誰をくっつけて」という話ばかりで、システム論的なアプローチがない。そして、増税路線のシナリオライターが、次の政権では、たぶん、霞が関になることでしょう。その意味では、とてもガバナンスが効いた政権になることでしょう。

「誰と誰をくっつけて」というのは究極的に「英雄待望論」になってしまう。しかし、システム論的なアプローチがない英雄待望論では、1年以内に支持率20%の繰り返しになります。

拒否権の塊のいまの政策決定システムで、一人の英雄が何かできるなどということはありません。

実は、この悪しき英雄待望論は、小泉政権のステレオタイプな評価に起因しているように思われます。

小泉さんの資質、ポピュリズム、市場原理主義、首相指導体制・・・

アカデミックな世界では、小泉政権は歴史的評価の対象としては、近すぎるし、客観的なデータがないということで、研究の対象になりにくいんですね。

でも、この評価の浅さ(評価の誤り)が、鳩山政権にまでいたるその後の歴代政権の短命の遠因になっているような気がしてなりません。

もっと、あのときの総括をステレオタイプ、紋切り型の思考停止をやめて、システム論的にやらないと、今後も、「英雄待望論」と「誰と誰をくっつけて」が永遠と続くことでしょう。

ちなみに、あの東条英機首相ですら、さまざまな役職を「兼任」しなければ縦割りの弊害を除去できなかった。その歴史的教訓も忘れずに。