郵政改悪:破たんへの道 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

郵政改悪:破たんへの道

秘書です。
金融社会主義・日本の破たんへの道、いよいよ明日決定?。


「再国有化」郵政が歩む破綻への道
限度額引き上げ、消費税減免どころではない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/388
3月29日 高橋洋一の「ニュースの深層」

郵政民営化が迷走している。3月30日には結論を出すというが、郵政見直しは連立政権の公約でもあったのに、政局優先で、政策的な詰めがまったくできていなかったことが原因だ。これを政局的にみれば、小泉憎しの亀井静香郵政相・金融相の一人劇だ。

 一般国民の支持率も低迷している国民新党にとって、数十万票ともいわれた全国郵便局長会(旧全特)や郵政の労働組合にたくすしかないのだから、なりふりかまわずの選挙対策でしかない。

 ただし、政局論と政策論は、横糸と縦糸のようにうまく連携しないと、大きな改革はできない。小泉改革の郵政民営化でも、政局論として郵政民営化は旧田中派の利権つぶしといわれていたが、政策論として、国営のままでは郵政の破綻が見えていた。

 そのために、2005年の法案提出までに政府内の経済財政諮問会議等と並行して、与党内の政調等での議論に2年程度の時間をかけている。

 それに比べて鳩山政権の議論は質・量ともに劣っている。その一方で、亀井郵政相は、全国郵便局長会の声にすぐ反応し、郵便局内に設けた間仕切り、監視カメラの撤去などを日本郵政に命じ、日本郵政は、適正な単価見積もりなしで緊急措置として10億円以上の経費をかけ作業を開始している。

 ここで、このような政局論による「滑った転んだ」という現実描写ではなく、政策論で郵政の行く末をみてみよう。マスコミは数字が出てくる政策論が苦手であるが、政局論だけで郵政をみるのは誤りだ。

鳩山政権が次々に進める「国有化」
 まず、鳩山政権による郵政の見直しは、正確にいえば、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ保険」の完全民営化ではなく、政府が株を持ち続けるのであるから、国際基準からみれば、再国有化である。こうした動きは、政権交代で鳩山政権になってから顕著である。例えば、政策金融機関である政策投資銀行や商工中金でも完全民営化が撤回されている。

 また、道路公団も民営化したが、高速道路無料化という方針で料金収入がなくなるわけだから、これも実質再国有化だ。

 さらに、民間企業であるJALの再建にも国家が介入しているので、これも再国有化といえる。また、独立行政法人であった印刷局は国の再機関化の方針だ。

 かつて印刷局は財務省内の一部局であったが、独立行政法人化したら、天下りがうるさくなった。そこで、再び国の機関とすることで、天下りも正々堂々と部内人事として行えるというわけだ。

ちなみに、2005年当時、郵政について、民主党は、(1)限度額の段階的引き下げ、(2)簡保の完全民営化、(3)特殊法人、独法の廃止、(4)天下り禁止を主張していた。しかし、政権交代してみると全部否定したことになる。

 こうして「官から民へ」は、「菅から眠へ」(国会における居眠りする菅直人副総理兼財務・経済財政相)と変わり、逆に「民から官へ」となっている。

500億円減免ではどうにもならない
 3月15日のこのコラム(「郵政改悪法案」で国民負担は1兆円増える)で指摘したが、郵政は民営化しないと、十数年で確実に破綻する。

 そのロジックは、国有のままでは業務拡大ができない(特に金融業務の場合、国有のままで業務拡大すると酷い民業圧迫になる)からだ。そして、これを回避するためには年間1兆円の国民負担が必要になる。

 これは、郵政民営化法案の提出前に政策論で議論した答えだ。消費税減免500億円程度ではいかんともしがたい数字だ。そのとき、実は、限度額を上下させた場合のシミュレーションもしている。

 例えば、今回の鳩山政権のように、限度額を引き上げると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命に資金が集まる。それでどうなるかといえば、(1)国債を買い増すか、(2)運用対象を拡大し株などを購入するかである。

 前者の国債を買い増すと、ますます郵政が国債買取の御用機関になるだけだ。皮肉って言えば、郵政天下り人事で財務省から人を持ってきたのはそうした理由なのかと疑える。

 ただ、限度額を引き上げて、国債を買い増ししても、国債金利が金融商品の中で最低利回り(今の低金利でなくても、国債の利回りは他の金融商品よりはいつも低い!)なので、郵政の収益は上がらず、結局「じり貧」から逃れられずに破綻する。せいぜい破綻までの時間が多少長くなるだけだ。

 では、運用対象を拡大するとどうなるか。国有で国の後ろ盾のある金融機関が、運用拡大すると、うまくいけば民業圧迫といわれる。これは不公正ということで、おそらくWTOからも提訴される。失敗すると、国有機関が潰れ国民負担増となって、どっちに転んでも不味いのだ。

 ちなみに、限度額を下げると、「じり貧」が強まり早く破綻するだけだ。

私が、こうしたシミュレーションを今でもできるのは民主党のおかげだ。2005年当時、民主党は当時の自公政権にしつこくシミュレーションするように要求し、それを受けて私が実務を担当したからだ。計算方法・データは民主党に提供したので、限度額を変更したらどうなるかは、民主党も知っているはずだ。

限度額は法案全体の欠陥を隠す目くらまし?
 大塚耕平副大臣(郵政担当)は、政策会議を10回やったといっているが、素人集団でその回数では少なすぎる。きちんとした政権内・政党内での政策論を怠ってきたから、こんな無様なことになる。しかし、限度額の話は政令マターであるので、法案には直接関係しないので、当面決める必要はない。

 ひょっとしたら、限度額は法案全体の欠陥を隠す目くらましかもしれない。政局論としては、政権のメンツにかけても、郵政法案は、郵政の再国有化という基本枠組のまま国会に提出されるだろう。

 政策論としては、国有のままであれば、民業圧迫になるか、年間1兆円の国民負担が避けられないという点は動かしがたい。郵政の非正規職員を正規化するとさらに2000億円が加わる。もし、鳩山政権がこの結論に異論があれば、国会に数字を出して国民にきちんと説明しなければいけない。それが政権与党の責任だ。

 このままであれば巨大な国有金融は必然だ。そのうち、郵政と完全民営化を撤回した政策投資銀行との合併もでてくるだろう。そこまでいえば思い出すであろう。15年ほど前の話だが、郵政が400兆円の資金を集めて、それを多数の特殊法人に流し込み無駄な事業を行いながら、天下りをどんどん受け入れた財政投融資である。

 それが金融社会主義と激しく批判され、1998年の財投改革、2005年の郵政民営化につながっていった。私は偶然にも世間広しといえども唯一の二つの改革の担当者だった。15年も時代逆行になってしまうと思うと愕然とする。


民主党のみなさん!
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