金融政策:中央銀行の目的に「雇用の最大化」がある国とない国の物語 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

金融政策:中央銀行の目的に「雇用の最大化」がある国とない国の物語

秘書です。
金融政策の目的に「雇用の最大化」が明記されていないからこういうことになるのではないでしょうか。


■政府・日銀の定期協議設置、金融政策かく乱要因の可能性も
2010年 03月 18日 09:03 JST
 [東京 18日 ロイター] 日銀が17日の金融政策決定会合で、資金供給額を引き上げて新型オペ拡充を決めたが、景気の確実な回復やデフレ脱却に向け、今後も政府・日銀間でさらなる政策対応をめぐる神経戦が続きそうだ。
 日銀の追加緩和を受け、政府内からは対応を歓迎するコメントが相次いだが、政府の本音は2011年度予算編成にあるとの指摘も聞かれる。菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は17日、日銀との定期協議に前向きな姿勢を示したが、景気刺激的な予算編成の継続が見込まれる中で、財源問題との関係を含めて定期協議自体が、金融政策のかく乱要因になる可能性も否定できない。
 追加緩和決定を受けて、鳩山由紀夫首相が「歓迎する」とコメントしたのをはじめ、平野博文官房長官、菅財務相らから評価する声が相次いだ。菅財務相は「さらなる努力をしてもらい評価する」と述べる一方で、「即効性ある政策手段は政府・日銀とも簡単にあるわけではない。デフレ脱却にはかなりの努力が必要」とし、一段の政策展開の必要性を訴えた。
 菅財務相のこうした発言について、ある政府関係者は「菅財務相の最大の関心事は、2011年度予算編成で国債を増発しないこと。そのために日銀には足を引っ張ってもらいたくないとの思いがすべて」(政府筋)と解説する。年内の物価プラス転化を目指すとする同相発言も「決意の表れ」(津村啓介内閣府政務官)という
 17日の会見で菅財務相は物価について「見通し通りで済ませるというよりは、それを超えた形でのデフレ脱却の努力に知恵を使い、より汗をかかなければならない」と年内のプラス転化にあらためて意欲を示した。
 しかし、日銀が2011年度の物価をマイナスと見通す中で、年内のプラス転化は容易ではない。さらに政府としては参院選前の景況感悪化はなんとしても避けたいところ。日銀による政府との共同歩調と、その成果に対する期待感は一段と強まりやすい情勢だ。
 注目は政府・日銀間での定期協議設置再燃の動き。菅財務相は17日の会見で政府・日銀の意思疎通について「コミュニケーションは取れている」としながらも「フォーマルな形の場を作るのが良いのか、もう一度考えたい」と定期協議設置を検討する考えを表明。さらなるコミュニケーションの必要性を指摘したと受け取れる
 定期協議の動きは鳩山政権発足直後から模索されてきた。自公政権下の経済財政諮問会議が廃止され、政府・日銀がマクロ経済について意見交換を行う場が月1回の月例経済報告関係閣僚会議だけになった。しかも菅財務相は国会出席のため2月、3月と続けて月例経済報告関係閣僚会議を欠席。政府の経済財政運営の司令塔である菅財務相と白川方明日銀総裁が直接意見交換する機会は確実に減っている。定期協議は、日銀の金融政策決定会合で政府代表が正式に打診したが、差し迫った金融政策をめぐる応酬の前に立ち消えとなっていた
 ただ、閣内からは2011年度予算編成を展望し、亀井静香郵政・金融担当相が、政府の追加財政出動と歩調を合わせて、日銀による国債の直接引き受けを提案するなど、金融政策強硬論も浮上している。これに対して菅財務相は財政法上禁止されており「念頭にはない」と日銀の国債引き受けには否定的な見解を示しているが、2011年度予算編成において、財源問題が再燃することは確実。定期協議の設置自体がメンバーの人選を含めて金融政策への新たなかく乱要因になる可能性も指摘されている。
 (ロイターニュース 吉川 裕子)

記事にもあるように、政権交代前には、経済財政諮問会議に日銀総裁がメンバーだったので、頻繁にあっていたわけです(年に何十回も会合してましたから)。そこでは日銀総裁がペーパーで問題提起することもありました。それを廃止したのは、民主党政権です。

また、小泉政権時代には年4回程度、政府首脳と日銀執行部との会合が行われていました。

「かく乱要因」などと言われないようにするためにも、政府・日銀がアコードでしっかりと時期を含めて「政策目標」を共有して、「政策手段」については独立性を尊重すべきではないでしょうか。

それを、「政策目標」をあいまいにして、協議しようとするから、結果的に、「政策手段」の独立性が危惧されるのでは?


■日銀の追加緩和に政府は歓迎、市場はそっぽ-圧力受けて一段の緩和も
3月18日(ブルームバーグ):日本銀行は17日、新型オペによる資金供給量を10兆円から20兆円に引き上げる追加緩和を行った。鳩山由紀夫首相が「政府が期待をしている方向だ」と述べるなど、政府は歓迎一色だ。しかし、市場関係者からは、効果は限定的で、さらなる金融緩和圧力を招くだけ、という厳しい声が日銀に向けられている。
  日銀は同日開いた金融政策決定会合で「企業金融支援特別オペの残高が漸次減少していくことを踏まえ、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充する」と表明。昨年12月1日の臨時金融政策決定会合で導入した期間3カ月、0.1%の固定金利による資金供給額を拡大することを決めた。
  菅直人副総理兼財務相は同日夕、「デフレ脱却の方向に向けてさらなる一歩を踏み出す政策決定をしていただいた」と評価した。しかし、東海東京証券の斎藤満チーフエコノミストは「政府の圧力が強い中、効果も副作用も何もない技術的な追加措置を講じることで、国債引き受けやインフレターゲット論から政府の目をそらせたかったのだろうが、むしろ民主党はこれからも圧力を高めてくる」と予想する。
  追加緩和観測が高まる布石となったのは1日の衆院財務金融委員会でのやり取りだ。菅直人副総理兼財務相は「消費者物価は今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べ、日銀には「より努力をお願いしたい」と要請。亀井静香金融・郵政担当相も「直接国債を引き受けて財源を作ることをやったら良い」と発言した。

量的緩和ではないが、追加緩和

  日銀に風圧が強まる中、5日の一部報道をきっかけに追加緩和観測が浮上し、日経平均株価は1週間あまりで600円強も上昇。為替も円安方向に振れ、日銀は外堀を埋められる格好となった。高まる追加緩和観測に対し、日銀が出した答えは、白川方明総裁が「量的緩和ではないが、追加緩和」というあいまいな決定だった。
  白川総裁は会見で「当座預金残高を目標に金融政策を運営していくという方式はとっていない。そういう意味で量的緩和政策の拡充ではない」とする一方で、「やや長めの金利の低下を促す措置を拡充するという意味で追加緩和措置だ」と述べた。昨年12月1日は声明で「金融緩和の強化」としたことに比べると、今回は「当面の金融政策運営について」としかしておらず、かなり苦しい説明と言わざるを得ない。
  3月末で終了する企業金融支援特別オペの残高は足元で5.4兆円。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「特別オペ終了分の補てんが半分以上という計算になる今回の10兆円上積みは、半ば技術的な措置であり、明示的に『金融緩和の強化』だと宣言することに、日銀としてもためらいがあったのかもしれない」とみる。

肝心の量は執行部が決定

  そのためらいは採決方法にも表れている。新型オペの拡充には須田美矢子委員と野田忠男委員が反対。白川総裁はその理由について「議事要旨等で公表するのでご容赦いただきたい」と口を濁したが、むしろ市場参加者の注意を引いたのは、採決されたのがオペの大幅な増額だけで、具体的な資金供給額は執行部の判断に委ねられたことだ。
  市場が注目した増額の規模を政策委員ではなく、執行部が決めるという形式をとらざるを得なかった背景として、量的緩和政策に対する日銀の拒否感に加え、情勢判断の裏付けが乏しかったことを挙げる向きもある。バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミストは「今回の決定はオペという技術的な問題への配慮が前面に出ており、ファンダメンタルズに基づく理由付けは難しい」と指摘する。
  白川総裁は「金融政策の判断に当たっては、あくまで中長期的な経済、物価の姿を点検して政策運営していく姿勢が大事」で、「金融市場の短期的な動きに過度に引きずられて政策運営をしていくことは中央銀行としての仕事をしっかり果たすことにはならない」と述べた。しかし、日銀は中長期的な見通しを変えていないばかりか、総裁自身、足元ではむしろ「上振れ気味に推移している」と述べている。

本当の不幸は

  第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「今回の意思決定は政府からの要請があったことが理由だ」とした上で、日銀がこうした形で追加緩和を行うことの本当の不幸は「政府自身が今後、物価指標を日銀が自由に動かせると信じ込んでしまうことだ」という。
  その兆しは既にある。平野博文官房長官は17日の会見で、日銀の対応を「評価し歓迎する」と述べるとともに、「政府と日銀が一体となってデフレを解消していかなければならない」と念を押した。東海東京証券の斎藤氏は「このタイミングで追加手段を講じることで政府のデフレ対策に組み込まれた印象で、物価が下がり続ける中で日銀への圧力は高まることはあっても弱まることはないだろう」とみている。
-- --取材協力:関泰彦、下土井京子、伊藤辰雄、広川高史


マーケットが「効果も副作用も何もない技術的な追加措置」とみている措置を、政府がデフレ脱却の観点から「歓迎」してしまうのも、また、政府の信認を落とす結果になってしまいますね。

景気が「上振れ気味に推移している」のかどうか、足元の景気認識と今後の予測、そして政策目標について、しっかり合意しないから、「政治的圧力」と受け止められてしまうのではないでしょうか。

そして、政治的圧力批判をかわすために、ポーズだけの「効果も副作用も何もない技術的な追加措置」と「歓迎」が繰り返されて時間が浪費されていく・・・

この間、就職期を迎える新卒者の人生はどうなるのでしょう?


■米FRB、異例の低金利解除は雇用回復待ちへ-景気の強さ確信できず
3月17日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)は16日開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、米景気の回復がインフレ再燃や失業率の急低下、過去最低水準の政策金利引き上げを招くほど強くはないことを示唆した。

FOMCは声明で、「長期にわたって」フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標の「異例な低水準を正当化する」との1年前に使い始めた表現を踏襲。景気は回復しているものの、雇用主は採用に依然として消極的で、住宅着工は「抑制」、インフレは「当面、抑制された状態が続く」との見通しを示した。

元ニューヨーク連銀のエコノミスト、チャールズ・リーバーマン氏は、バーナンキFRB議長をはじめとするFOMCのメンバーは雇用の持続的な拡大を待ってから過去最大の資金供給策の解除を始める方針だとみている。FOMC後に向こう1年の利上げ期待は後退し、米国株と債券相場は上げ幅を拡大した。

リーバーマン氏は>「雇用が伸びるまでは、経済が自律的な回復局面にあるとの強い根拠を示すのは非常に難しい」と指摘する。

  FOMCは、FF金利の誘導目標を2008年12月以来のゼロから0.25%のレンジに据え置いた。昨年3月に使い始めた「長期にわたって」という文言は、これまで毎回の会合の声明で繰り返し使用されている。シカゴ連銀のエバンス総裁は先週、この文言は3-4回分の会合が開かれる期間を意味すると述べている。FRBは今年、8回のFOMCを予定している。


米国では金融政策判断に、「雇用の拡大」がはいっている!それが独立性の前提なんですよ。

■FRBの独立性を確認 米財務省と共同声明
(2009年3月24日日経新聞)
 米連邦準備理事会(FRB)と米財務省は23日、共同声明を発表し、金融危機の克服へ引き続きあらゆる手段を動員することで合意するとともに、雇用の拡大と物価の安定を目的とするFRBの金融政策の独立性を確認した。金融危機対応でFRBの役割が拡大、大量の資金供給でバランスシート(貸借対照表)が膨張するなか、ドルの信認にも影響する中央銀行の独立性への懸念が生じるのを防ぐ狙い。
 共同声明は「金融と通貨安定の維持におけるFRBの役割」と題し、中央銀行であるFRBと政府との合意事項を整理。特別融資や証券買い取りなどを挙げ「異常で差し迫った状況でFRBの取った行動が、雇用の拡大や物価の安定など金融政策の本来の目的を阻害してはならない」と明記。金融政策の独立性を明確化した。

「雇用の拡大と物価の安定を目的とするFRBの金融政策の独立性を確認」というところがキーポイントです。このようにいえるのは、法律で中央銀行に雇用の最大化が目的として明記されているからです。

■連邦準備制度法 セクション2A 金融政策の目的
http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/section2a.htm

Federal Reserve Act
Section 2a. Monetary Policy Objectives

The Board of Governors of the Federal Reserve System and the Federal Open Market Committee shall maintain long run growth of the monetary and credit aggregates commensurate with the economy's long run potential to increase production, so as to promote effectively the goals of maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.


連邦準備制度理事会と連邦公開市場委員会(FOMC)の目的(goals)として、「雇用の最大化」が「安定した物価」と「モデレートな長期金利」と並立して明記されている(それもトップに!)、そして、「長期的な潜在能力」ということも明記されている!

さて、我が国の「日本銀行法」ですが、


第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

雇用の拡大が、明示的には、ない!