民主党的「運用論」「ガバナンス強化論」「削減が目的ではない論」 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

民主党的「運用論」「ガバナンス強化論」「削減が目的ではない論」

秘書です。

今朝は、民主党的な「運用論」「ガバナンス強化論」「削減が目的でない論」の問題点を学習しましょう。

(1)民主党的「改革的運用」論

法令解釈と運用を使い分けて改革しようとする鳩山政権の政治主導に一抹の不安。
「運用でなんとかなります」というのは官僚に判断の裁量の余地を与えること、これすなわち、官僚主導の源泉。
仮に、鳩山政権の閣僚が本気で改革したいと思っていたとしても、今の大臣は「改革的運用」したとしても、次の大臣に継承されず「法令解釈はそうなっていません」と官僚にいわれたら、「改革的運用」が終わってしまうのではないか。
大事なのはあくまで法令解釈であり、改革のためには法改正と法令解釈の修正が必要。
その点、おとといの衆議院内閣委員会で「法令解釈担当」の枝野大臣の「天下り」に関する答弁は、「法令解釈」に踏み込まず、すべて「運用上」で答弁したのは、とても残念でした。


■<仙谷担当相>独立行政法人の役員公募 閣僚の選考を念押し
3月12日2時30分配信 毎日新聞
 鳩山政権が昨年実施した独立行政法人の役員公募で、仙谷由人国家戦略担当相(当時は行政刷新担当相)が各閣僚に対し、事務方に任せずに閣僚自身が選考し「納得」した上で決定するよう念押しする通知を出していたことが分かった。政治主導の心構えを指南するもので、「天下り根絶」の徹底に腐心した様子がうかがえる。
 通知は昨年12月15日付。選考の際、「大臣自らが直接話を聞いて判断し、事務方に任せない」「複数の候補者から選定する。(各省に設置されている)選考委員会が1人に絞り込んだら、絞り込む前の候補者の情報も大臣に上げる」「行政勤務経験、行政機関との調整力、専門知識といった観点より、候補者の潜在力に広く着目して判断する」など5項目を要請。民間からの応募者の「潜在力」も考慮するよう細かく指導する内容だ。
 通知は、12月11日の閣僚懇談会で前原誠司国土交通相が「このまま推移したら結果的に天下りに陥りかねない」と危機感を表明したのを受けて出された。実績や成績をもとに選考すると多くのポストで公務員OBが採用される可能性があったという。また、元大蔵事務次官の斎藤次郎氏を日本郵政社長に起用したことが「天下り容認」と批判された時期でもあり、過剰反応した面もあるようだ。
 公募は昨年9月末の天下りあっせんの全面禁止の閣議決定を受け、10~12月にかけて行われたもので、49の独法役員ポストが対象。公務員OB122人を含む2386人が応募し、半数の24ポストで民間出身者が採用されたが、3分の1の16ポストには公務員OBが就いた。残り9ポストは再公募となった。【小山由宇】

これも、大臣による「改革的運用」にゆだねていることを意味しているのでしょう。大臣によって、「厳しいところ」と「緩いところ」がでてくる。ましてや、次の人事でマスコミや世論の関心が他にいっていたら「運用」はどうなるでしょうか。たとえば、日本開発銀行は初代総裁は民間人でしたがその後は一貫して特定の官庁の事務次官経験者の固定的ポストとなり、平成19年10月1日に、日本開発銀行後身の日本政策投資銀行総裁に民間企業出身者が就くまでの50年間に9人がそういう人事で行われていた。「運用」にゆだねるということは、そういう結果に終わるのではないか。

 (2)民主党的「ガバナンス強化論」 

気になるのが、おとといの衆議院内閣委員会で、ボスの質問に対して、枝野大臣が独立行政法人等の天下り先の「国の関与・ガバナンスを強化する」との趣旨の発言をしていること。これは、国の関与・ガバナンスの強化を口実として、
 ①国の機関化(=再国営化)する
 ②現役官僚を出向させる(定年延長で足りなくなるポストを現役出向の   形で補う)
 ③大臣自らの判断で現役官僚又は官僚OBを任命する

ということにつながっていくのではないか。「国の関与・ガバナンスを強化する」というキーワードが、どうも、気になりますね。


■仕分け第2弾、歳出の大幅削減は期待薄
3月12日2時8分配信 読売新聞
 政府が4月下旬から独立行政法人と政府系公益法人を対象に事業仕分け第2弾を実施するのは、官僚の天下り法人に多額の税金が投入されている実態にメスを入れることで、政権浮揚につなげる狙いがある。
 ただ、財源確保の面で大きな効果は期待できないうえ、公務員が定年まで働ける環境も整えないまま、参院選を意識した「政治ショー」に走れば、官僚のさらなる士気低下を招きかねないと懸念する声もある。
 「率直に申し上げて、私には荷が重いが、しっかりと頑張って参りたい」
 首相官邸で11日夜行われた行政刷新会議に就任後初めて出席した枝野行政刷新相は、鳩山首相から「国民の注目が大きい」と期待を寄せられると、やや戸惑いながら、決意を語った。
 事業仕分けについて政府・与党内には「国民から大きな喝采(かっさい)を与えていただけるものと思っている」(首相)と期待感が高まっている。
 しかし、今回は大きな歳出削減は期待できないとの見方が強い。昨年の事業仕分けは、95兆円の2010年度予算概算要求を対象に行い、約7000億円の予算を削減した。だが、今回対象とする独立行政法人向け支出は10年度予算案で3兆1626億円、公益法人向け支出は2046億円に過ぎない。しかも、第1弾ですでに削りやすい事業には手を着けている。
 枝野氏自身、記者会見などで「予算削減が目的ではない」と語り、独立行政法人などの制度改革が狙いだと強調している。
 独立行政法人と政府系公益法人の多くは官僚の天下りの受け皿となっている。08年12月現在、100独立行政法人の役員ポスト640のうち、退職公務員は189人を占める。国所管の公益法人6625のうち、国家公務員出身理事は3305法人に8519人いる。このため「官僚の天下り構造によって生み出された無駄な事業や予算を洗い出す」ことが、今回の事業仕分けの主眼となる見通しだ。
 ただ、昨年の事業仕分けで、「仕分け人」が官僚を厳しく追及し、次々と事業「廃止」などの判定を下す場面が国民の注目を集め、「内閣支持率を支えた」(首相周辺)とされた。今回は参院選を控えているだけに、「官僚がやり玉に挙げられるだけだろう」(内閣府幹部)との声も出ている。

(3)民主党的「予算削減が目的でない」論 

「予算削減が目的ではない」という予防線はおかしいですね。鳩山総理は平成21年5月27日の国会国家基本政策委員会合同審査会において、「4500の天下り団体に2万5000人の天下った方々がおられて、そこにですよ、国の予算がどのぐらい出ていると思います、12兆1000億円のお金がそこに流されているわけです」と発言しています。

選挙のときに、民主党の方はみんなこの話されたでしょう?

民主党が政権をとったら、すぐに財源が出てくるといったでしょう?

このことを自民党の谷公一議員が質問主意書を出しておられます(平成21年11月24日)。


「公務員の天下りに関する質問主意書」(提出者 谷公一)

 政府は、平成二十一年十一月六日に閣議決定した衆議院議員山内康一君提出日本郵政に関する質問に対する答弁書において、「天下りとは、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう」と定義し、「公務員が、法令に違反することなく、府省庁によるあっせんを受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない」としている。
 鳩山由紀夫内閣総理大臣は、第百七十一回国会国家基本政策委員会合同審査会(平成二十一年五月二十七日)において、「四千五百の天下り団体に二万五千人の天下った方々がおられて、そこにですよ、国の予算がどのぐらい出ていると思います、十二兆一千億円のお金がそこに流されているわけです」と発言している。
 これらに関連して、次の事項について質問する。

一 公務員の天下り者数について
 政府が定義した公務員の「天下り」に該当する者の数は、鳩山内閣総理大臣の発言における二万五千人と一致するのか。一致しない場合は、政府の定義による「天下り」の該当者は何名となるのか明らかにされたい。また、一致しない理由について政府の見解を問う。

二 公務員の天下り先の企業・団体等に対する金銭の交付について
 政府が定義した公務員の「天下り」に該当する者を受け入れている企業・団体等に対して国から支出された金銭の交付の総額は、鳩山内閣総理大臣の発言における十二兆一千億円と一致するのか。一致しない場合は、政府の定義による「天下り」に該当する者を受け入れた企業・団体等の数、それらの企業・団体等に対して国から支出された金銭の交付の総額を明らかにされたい。また、一致しない理由について政府の見解を問う。
 なお、前記二における「金銭の交付」の定義については、「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査についての報告書」(衆議院調査局)と同様のこととする。

 右質問する。

これに対する「政府答弁書」は下記の通りです(平成21年12月4日)

「衆議院議員谷公一君提出公務員の天下りに関する質問に対する答弁書」

一及び二について

 御指摘の「二万五千人」及び「十二兆一千億円」は、平成二十一年五月に衆議院調査局が取りまとめた「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」(長妻昭君外百十一名提出、平成二十年衆予調第三号)についての報告書において公表された、調査対象法人における国家公務員再就職者数及び国家公務員再就職者がいる調査対象法人に対して行った金銭の交付の合計金額を指すものと考えられる。
 お尋ねの「「天下り」に該当する者の数」及び「金銭の交付の総額」については、これらの再就職のすべてについて府省庁によるあっせんの有無を確認する必要があり、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。


民主党があれだけ選挙までプロパガンダで使っていた数字を「調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である」!!!

あれだけ、メディアで、天下り「2万5000人」、ムダなおカネが「12兆1000億円」という民主党のプロパガンダをやっておいて、政権をとったら「「調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である」!「予算削減が目的ではない」!

こういう「変化」を見過ごしていいのでしょうか。


(4)鳩山総理の「揺らぎ」論

■鳩山首相「自分が変わりつつある」
3月11日23時1分配信 産経新聞

・・・  

 【就任半年】

 --半年たって、首相自身で一番変わったところはどんなところか

 「自分で変わったところですか」

 --自分で診断してみて

 「かなり決断、意思決定が求められるときが多い。また、今まで私は野党に多くおりましたから、野党時代に比べて、やはり意思決定における責任感の大きさを強く感じるようになりました。それに対しての重要さを、即断がかなり求められるということも含めてですね。変わらなければいかんなと思いますし、徐々に自分自身が変わりつつあるなと思います」

 --野党時代と比べて責任は重いですか?

 「責任はやはり重いですよね」

 --想像していた以上か?

 「あまり想像もしていなかったものですから、しかし想像以上のものだと、そのようには感じています」

 【過去の講演の発言】

 --旧民主党代表当時、講演などで「民主主義の本質はゆらぎ」と言っていた。国民の声を取り入れて主義主張を変化することがあるという考えを示していたが、今でも民主主義の本質はゆらぎだと考えるか

 「物質の本質はゆらぎなんですよね。そういう意味であらゆる、地球も宇宙というものも本質はゆらぎだと思っています。人の心も人間そのものもですね。さらにいえば民主主義自体もゆらぎだと。ひとつのものにすべてが何か確信的に決まっているということではなくて、ある意味で民主主義は多くの皆さま方の意見を聞かせていただきながら、その思いを大事にしていく過程のなかで、ゆらぎ、まったく人の意見を聞かなければ、ゆらがないかもしれませんが、色んな意見を聞きながら、ゆらぎのなかで本質を見極めていくのが宇宙の真理ではないかな。そのように思っていたわけで、そのことを申し上げた時期があるということであります」

 --今もですか?

 「いまでも、そのゆらぎのの本質は事実だと思います」

民主主義がゆらぎだとおっしゃるなら、民主党の政務調査会を復活させて、全党的議論を復活させてはいかがですか。党中央に意思決定を一元化する「民主集中制」はゆらぎでもなんでもないでしょう。「討議」こそが民主主義の本質としての「ゆらぎ」の源泉でしょう。その「討議」を封殺していることはこのゆらぎ論と矛盾しています。決断の先送り・優柔不断、世論調査の数字をみて「みなさんがそうおっしゃるなら」的なマニフェストの見直しなどは、民主主義の本質と何ら関係ないでしょう。