企業団体献金の「全面禁止」?(労組の政治団体からは「ダミー」でも「迂回」でもない?) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

企業団体献金の「全面禁止」?(労組の政治団体からは「ダミー」でも「迂回」でもない?)

秘書です。

民主党が「全面禁止」という表現を使うときは、気をつける必要があります。大きな抜け穴がある危険が高い。

「天下り根絶」のときもそうでしたね。

では、「企業団体献金の全面禁止」の抜け穴はどこにあるか?



■【党首討論】「民主党も設置に賛成」政治資金規正法改正の与野党協議機関で鳩山首相
(2月17日 16:24産経新聞)
党首討論で鳩山由紀夫首相(左)に質問する自民党の谷垣禎一総裁(右)=17日午後、国会・参院第一委員室(酒巻俊介撮影) 鳩山由紀夫首相は17日の党首討論で、企業団体献金の全面禁止に向けた政治資金規正法改正のための与野党協議機関設置について、「党代表として申し上げれば、民主党としても設置に賛成したい」と述べた。公明党の山口那津男代表に答えた。



衆院予算委員会では昨年11月9日に下記のようなやりとりがありました。

衆院議事録から、富田茂之先生の質疑より。



■平成21年11月4日衆議院予算委員会衆院議事録
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

○富田委員 ・・・原口大臣、民主党はマニフェストで、「政治不信を解消する。」という政策目的として、具体策として「政治資金規正法を改正し、その三年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する。」というふうにうたっていらっしゃいますね。

 さきの国会で民主党は、この趣旨に沿った政治資金規正法改正案を出されました。当時、原口大臣が総務委員会で趣旨説明をされた。法改正の理由として、政治に対する国民の信頼を回復するんだ、広く国民によって支えられる政治を実現するために、企業・団体献金は全面禁止だし、パーティー券も購入させないんだというふうに言われましたよね。原口さんらしい明快な趣旨説明だなと当時感心していました。

 その大臣が、今回大臣になったのに、アピール21という政治団体から五百万寄附を受けながら収支報告書に記載漏れがあったという報道がされたので、私は本当にがっかりしました。原口さんらしくない。

 でも、原口さんらしいなと思ったのは、その後すぐ弁護士さんと一緒に事務所の関係者の方が会見されて、訂正しますというふうに言われて、訂正もすぐされた。本当に原口さんらしいなと思うんですが、第一区総支部の方にある五百万の寄附をアピール21からだと訂正されたんですが、原口さん個人の後援会の方にもともとその総支部に寄附したという記載がないんですよ。これはやはりおかしいので、資金管理担当者をきちんと管理しないと今後問題になると思いますが、どうですか。

○原口国務大臣 富田議員にお答えをいたします。

 政治資金規正法というのはまさにその名前のとおり政治資金を、規制改革の規制ではなくて、正しく規(のり)に従ってそれを公表して、そしてきっちり国民の皆さんの御判断にゆだねるということがこの政治資金規正法の中身でございます。

 私たち、それを、富田議員がおっしゃってくださったとおり、即第三者の弁護士を入れて、会計帳簿も、それから預金通帳も全部調べました。そして、そこには正しい記載があったわけですけれども、それが、転記するときに会計責任者の記載ミスでこのようなことになって、政治資金規正法を所管する総務大臣として本当に恥じ入るばかりでございまして、再度、再発防止のためのシステムとさらなるチェックを今しているところでございまして、この場をかりておわびを申し上げたいと思います。

○富田委員 総理、今の原口さんのはすごく潔いと思うんですね。すぐやられた。弁護士も入って会計帳簿も調べた。総理もできるんですよ、午前中の質問の分。ぜひやっていただきたいなと思います、総理に答弁を求めませんが。

原口大臣、この献金の問題と絡んで、各紙報道で、大臣が就任後にNTTの再編問題についていろいろな発言をされています。

 アピール21というのはNTT労働組合がつくった政治団体。そこから五百万の献金を受けておいて、大臣に就任したらいきなりNTT再編問題にコメントするということで、NTT以外の情報通信会社から何なんだというようないろいろな声が出ていて、大臣もそれが耳に届いてきちんと御説明したいと言われているので、原口さんらしいなと思うんだけれども、このアピール21がわざわざ五百万を、去年、選挙があるんだということで寄附されているんですね。

 皆さんのお手元にこのアピール21の収支報告書をお配りしていますが、その四枚目、五枚目を見ていただきますと、すごいんですよ、この政治団体。二段目に、民主党千葉県第一区総支部に、十月三日、一千万。十月二十一日には、北海道第一区総支部に五百万。(発言する者あり)だれだとは言いませんが。民主党東京都十八区総支部、これはいらっしゃるから、菅副総理の支部ですよね、五百万。そして、原口大臣のところに五百万。そこに並んでいらっしゃる皆さんの中では、赤松農水大臣と仙谷行政刷新担当大臣、皆さん載っています。これはちょっとびっくりするような金額です、はっきり言って、一つの団体からの献金額という意味では。

 これを見ると、原口大臣は菅副総理並みですから、かなり評価が高いんですね。やはりこれは、原口さんはもともと平成十九年から民主党の次の内閣のネクスト総務相、衆議院の総務委員会の野党筆頭理事も十九年十月から解散のときまで務めている。こういったことでこのアピール21というのは寄附したんでしょうけれども、そういう、ちょっとこの寄附、問題になるんじゃないかなと言われていることに関して、大臣はどういうふうに今思われますか。

○原口国務大臣 富田議員にお答えを申し上げます。

 こういう献金によって政策を曲げるということは絶対にありません。それをまず申し上げたいと思います。

 それは、このアピール21というよりか、情報通信政策議員懇談会というのの、私、座長をしております。その中で、各キャリアあるいは各NTT以外の皆さんについてもお声を聞いて、そしてそれを政策集として提言をさせていただいています。

 特定の団体に偏ったことをやっているのではなくて、特定企業に偏ったことをやっているものではなくて、未来の情報通信政策、特に労働を中心とした福祉型社会に向かうためにどのようなことが必要かということを研究しているところでございまして、ぜひ御理解をいただきたい。

 しかも、これは総務大臣の任期中のものでございませんで、今富田議員が正確におっしゃってくださったとおり、野党時代のことでございまして、いずれにせよ、いささかの疑念も持たれることのないように注意をしていきたいと思います。ありがとうございます。

○富田委員 私は、原口さんのことをよく知っているので、原口さんはこういう政策を曲げるとは思いませんが、民主党出身の議員の皆さんにこれだけ大量の献金をしているとなると、この団体は一体何なんだろうと。

 ちょっとホームページを見てみました。おもしろい記載がありました。アピール21がなぜ、そこに「なぜNTT労組が「政治団体」を設立したのか」という欄があるんですね。

  労働組合として政治活動を行なうことは、憲法のもとで保障され、特定の政党や政治家に対する活動支援は自由です。しかし、資金的な支援については、「政治資金規正法」で規制されています。この法律では、例えば、労働組合から議員等への献金は禁止、政党への献金も総額規制となっています。つまり、いかに組織内議員であっても労働組合が直接、資金支援を行なうことは許されないのです。そこで、「政治資金規正法」に基づく「政治団体」を設立して、積極的な支援を行なっていく必要がありました

ということで、二〇〇五年一月にこのアピール21というのをつくったと。

  アピール21の設立によって、NTT労組の政策に理解を示す政党や議員の政治団体に対する資金援助が、推薦料や政治資金パーティ、勉強会の会費の支払、あるいは議員個人の政策資料の購入などとして可能となりました。

ああ、こんなことできるんだと。そして、一番びっくりしたのは、こんなことが書いてありました。

 「アピール21」は、NTT労働組合の政治活動を「政治団体」に移行したのではなく、NTT労働組合の政治方針をより強固なものにするために、「政治資金規正法」による「政治団体」という枠組みを活用するもので、いわば「アピール21」とNTT労組の基本理念や政治方針とは不離一体の関係なのです

これはちょっと読んでいてびっくりしました。

 原口さんが政治資金規正法改正案の提案の理由のいろいろな説明の中で、やはり、個人や個人の自由な意思により組織され、かつ運営されている政治団体は除く、こういう政治団体からはいいんだというふうに民主党は考えているんだというふうに言われていました。

 企業、団体の政治献金を禁止したとしても、その団体が政治連盟をつくれば全部抜け道になっちゃうじゃないですか。このアピール21の説明、何かおかしくないですか。何か西松建設事件の構造とそっくりですよ、これは。労働組合はそのままできないけれども政治団体をつくればできるんですよと、みずから宣伝しているようなものです。

 こういうところの、鳩山内閣としてはきちんと、企業・団体献金を禁止するならこういう抜け道になるような政治献金も禁止するべきだというふうに思いますけれども、もう時間がありませんから、最後、総理、どうですか、そういう法案を出すつもりはありますか。

○原口国務大臣 富田議員にお答えをいたします。

 政治団体を結成する自由というのはどこにもあるわけです。そして、政治資金規正法の中には、いやしくもこの法律が政治資金に対するさまざまな抑制になってはならないということも書いてあるわけです。

 私たち、富田議員、原則は自由なんです。その自由の中での活動だということを御理解いただければ、幸いでございます。

○鳩山内閣総理大臣 原口大臣が申されたとおりであります。

 あらゆる組織、団体に、必ずしも直接できないものですから、政治団体というものをつくって、そこで寄附を行っているというのは、これは御案内のとおりでございます。それを、当然のことながら、すべて今禁止をするという状況ではありません

 しかし、いやしくも疑われないように政治家一人一人が努力をするということは当然だと思っておりますので、その意味でも透明性というものが求められていくのではないか、そのように考えております。

 以上です。

○富田委員 ぜひ、抜け道をつくらないような政治資金改正法案を一緒につくっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。



企業団体献金を全面禁止しても、労組がつくる政治団体からの献金は禁止されません。これは労組という団体からの献金の「抜け穴」になりませんか?


この予算委員会で話題になった「アピール21」という政治団体のホームページをみてみました。
http://www.apr21.gr.jp/mezasu.html

「会長からのメッセージ」には以下のように書かれていました。
http://www.apr21.gr.jp/message.html

昨年は、NTT労組の政治活動、特に第45回総選挙での皆さまのご理解・ご協力をいただき、大変ありがとうございました。・・・

私たちはNTT労組・組織内候補「石橋みちひろ」君の必勝を最大戦略に置くとともに、重点候補をはじめ、全推薦候補の必勝に向け全力をあげて戦うこととします。「アピール21」会員の皆さまには、ぜひともご理解とご協力をいただきますようよろしくお願いいたします




明らかに、「アピール21」とNTT労組の基本理念や政治方針とは不離一体の関係ですね。

これは「ダミー」ではないという解釈でしょう。では労組の政治団体における「ダミー」団体と「迂回」献金の基準は何でしょう。

そして、スタッフ紹介。お名前のとなりに以下のような肩書きがでております。



会 長=中央本部 副中央執行委員長
副会長=中央本部 企画組織部長
事務局長=中央本部 政治部長
常任幹事=東日本本部 副執行委員長・西日本本部 副執行委員長・コミュニケーションズ本部 副執行委員長・データ本部 副執行委員長・コムウェア本部 副執行委員長・ドコモ本部 副執行委員長・ファシリティーズ本部 副執行委員長・持株本部 副執行委員長・中央本部 財政総務部長




まさに、「アピール21」とNTT労組の基本理念や政治方針とは不離一体の関係ですね。

NTT労組東日本本部は「アピール21」について、以下のように説明しています。
http://www.east-hq.ntt-union.or.jp/2009/11/4811.html

「NTT労働組合の政治方針をより一層推進」

「政党や政治家を支援する場合、『政治資金規正法』に基づく対応が必要なんだ。この法律では、労働組合が行なう 支援について一定の制限が設けられている一方、「政治団体」は、労働組合より自由な活動ができるんだよ。そのため2005年に設立したのが「アピール 21」なんだ」


そして、NTT労組持株本部は「アピール21」について、以下のように説明しています。
http://www.mochikabu-ntt-union.jp/planning/politics/081101.html

「アピール21」は、NTT労働組合の方針に基づき、
NTTグループに働く仲間・退職者とその家族の安心と安定・社会的地位の向上
情報通信の発展と豊かな社会づくり
自由で公正な社会の実現
 ---等につながるいろいろな課題を前進させるために2005年に設立した、政治団体

「アピール21」でも会費を徴収し、NTT労組が推薦する議員を支援しているんだよ。



西松建設問題は、ダミーの政治団体の迂回政治献金。

では、労組の政治団体の献金が、「ダミー」で「迂回」といわれる場合があるとしたら、どんなときなのでしょう?企業と労組とで定義は違うのでしょうか?

民主党がいう「企業・団体献金の全面禁止」は、労組の政治団体を規制対象外とするならば、ここのところをしっかりと議論する必要があります。

与野党で議論するならば、ここが最大の焦点の一つです。


なお、「アピール21」の支援議員リストには、鳩山政権閣僚6名、衆参両院議長、官房副長官1名の名前が出ておりました。