仮説:民主党の「閣法・議員立法2本立て」改革の狙い=官主導体制温存 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

仮説:民主党の「閣法・議員立法2本立て」改革の狙い=官主導体制温存

秘書です。
民主党は、なぜ、公務員制度改革について、内閣法と議員立法の2本立てにしているのでしょう?
下記は、あくまで仮説です。

「仮説」:民主党の政治主導のスローガンの証としての大臣・副大臣・政務官の政務3役の増員と、霞が関の実態としての官主導の証としての事務次官をトップにするピラミッド組織体系は、本来的に両立不可能であり、副大臣・政務官を増員するとすると、いよいよ官主導のピラミッド体制を崩さなければならない。しかし、副大臣・政務官の増員を「国会審議活性化」という立法府の問題の中に位置付けることにより、行政組織の中での副大臣・政務官の増員の意味をはっきりさせないようにして、盲腸的存在にできるようにした。結果、官主導体制は温存する



では、この「仮説」にそって最近の報道を見てみましょう。


■次官から部長級横並び、異動・給与など運用困難
(2010年2月16日23時01分 読売新聞)
 閣内で足並みが乱れていた国家公務員法等改正案は15日に一応の決着を見た。
 だが、各省庁の官僚トップの次官から局長、部長級まで計約600人を横並びにした「幹部候補者名簿」の運用の難しさを指摘する声もある。
 改正案では、次官から部長級までを「同一の職制」と位置づけ、次官・局長の部長級への異動は「降任」ではなく通常人事の一環である「転任」として扱う。
 これについて鳩山首相は15日夜、首相官邸で記者団に「やる気のある人たちは抜てきする。やる気がない方には厳しいことも考えなくてはいかんぞというメッセージだ」と「信賞必罰」の姿勢を強調した。
 対象となる職員は〈1〉次官級(次官や外局長官など約50ポスト)〈2〉局長級(官房長や局長など約170ポスト)〈3〉部長級(部長や局付審議官など約380ポスト)の約600ポスト。
 年収では、次官級の2293万円に対し、局長級は最大で約1880万円、部長級は最大で約1600万円。次官から部長に異動させると約700万円減給となる。
 国家公務員は「給与に不満がある」場合などに人事院に不服申し立てが出来る制度がある。このため、不服申し立てが起きた場合に備え「新たな法的な整理が必要だ」(政府関係者)との指摘がある。
 政府は今回、次官・局長級を部長級に異動させるための3要件を法案から削除した。政治任用ではない官僚の異動、特に事実上の降任にあたっては、公正な新基準を提示するよう野党などから求められそうだ



ですから、幹部公務員については、スト権制限の代償としての身分保障体系の中で身分・給与ががちがちに保護されている「一般職」とは別の政治任用的な体系にしなければ、抜擢人事や降格人事はできないのです。

民主党が幹部人事について、ボスが主張している「一般職」とは別の人事体系をつくらなければ、実際には人事権を発動できなくなるのではないでしょうか。


事務次官をはじめとする幹部公務員まで、「一般職」として保護されているという問題。実際には政治的根回しをしたり、一定の政治的目的をもっての活動をしている人々までもが「一般職」としての手厚い保護を受けていることの問題。ここを突破しなければ、民主党のいう政治主導はできません。



■公務員法改正案、次官廃止は継続協議 政府、週内に閣議決定へ
(2月17日7:00日経新聞)
 政府は16日、今国会に提出する予定の国家公務員法改正案の付則に、法案成立後も事務次官の扱いを含めた制度改革の継続を盛り込む方針を決めた。仙谷由人国家戦略相や原口一博総務相が官僚のトップである事務次官制度の廃止を検討すると表明していることを踏まえた。今秋の決定をメドとする公務員制度の抜本改革時に向け「事務次官その他の幹部の位置付け、役割について検討する」と明記する
 政府は改正案を12日に閣議決定する予定だったが、次官や局長から部長級への降格を巡って閣内の調整がつかず、修正案を今週中に決定する段取りとなっている。




これは、事務次官をはじめとする幹部公務員の位置づけをあいまいのまま先送りすることを意味します。それは同時に、副大臣・政務官の位置づけをあいまいのまま先送りすることを意味します。

この「問題先送り」のための国会対応こそ、今国会の民主党の基本戦略である内閣法と議員立法の分離による「政治主導」体制の確立戦術ではないでしょうか。




■政治主導の確立に向けた法改正に積極的に取り組んでいく 内閣府政策会議で
2010/01/13民主党ニュース
http://www.dpj.or.jp/news/?num=17519

国会内で13日午前、内閣府政策会議が開催され、政府側から次期通常国会提出予定法案の「政府の政策決定過程における政治主導の確立のための内閣法等の一部を改正する法律案(仮称)」、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(仮称)」、「国と地方の協議の場に関する法律案(仮称)」、「国家公務員法等の一部を改正する法律案(仮称)」等の概要についての説明があった。

 会議の冒頭、田中慶秋・衆議院内閣委員長が「それぞれ、地域の行事等々がまだまだ沢山あろうかと思うが、是非、ご協力いただいて、これから与党として、問題にしっかりと対応していかなければならない」とかねてから党として主張している政治主導の確立に向けて積極的に取り組んでいく決意を述べると共に、出席議員への協力を要請した。
 
 「政府の政策決定過程における政治主導の確立のための内閣法等の一部を改正する法律案(仮称)」に関して松井孝治内閣官房副長官は、「国会審議の活性化で、議員立法の方(国会法等改正案)と内閣の閣法が役割分担し、連携しながらやらなければならない。与党と内閣が一体となって国会審議のあり方を変えていくという観点から、他の重要法案とはひと味違う重要法案であるという特徴がある」と法案を説明し、政府と与党との二人三脚での取り組みへの協力を要請した。

 なお、同法律案は、内閣法の一部改正で「内閣官房に国家戦略局を設置」「内閣総理補佐官を増員(民間人に限定)」「内閣官房に内閣政務参事、内閣政務調査官を設置」することとし、内閣府設置法の一部改正では「内閣府に行政刷新会議を設置」「内閣府に税制調査会を設置」「内閣府の経済財政諮問会議を廃止、国会議員の兼職禁止の解除等を行う」などとするもの。11日に官邸で開かれた政府・民主党首脳会議でも、党主導で進めている国会審議の活性化に向けた国会法改正と住み分けしながら法案提出時期等の調整を行い、成立を図っていくとの考えで一致している(下記関連記事参照=略)。
 
 政策会議には、党側から田中衆議院内閣委員長のほか、松本大輔同委員会筆頭理事、柳澤光美参議院内閣委員会筆頭理事が、政府・内閣府側からは松井官房副長官のほか、大島敦、大塚耕平両副大臣、津村啓介、泉健太、階猛各大臣政務官、逢坂誠二内閣総理大臣補佐官が出席した。 




副大臣・政務官増員が、なんで国会審議活性化のためなんでしょう?なんで内閣法で政府提出しないのでしょう。政府の意思決定のラインから外して、盲腸的存在として増員する証拠ではないのでしょうか?



■国会法等の一部改正について(骨子案)を了承 与党幹事長・国対委員長会談で
(2009/12/28民主党ニュース)
http://www.dpj.or.jp/news/?num=17482

 民主党はじめ社民、国民新の与党3党は28日午後、国会内で幹事長・国対委員長会談を開き、「国会審議の活性化のための国会法等の一部改正について(骨子案)」を了承した。民主党からは小沢一郎幹事長、山岡賢次国会対策委員長が出席した。

 会談後、山岡賢次国対委員長は記者団に対し、会談では国会法等の一部改正について政治改革推進本部事務局長の海江田万里衆議院議員から説明があり、3党として骨子案を決定したと報告。今後の日程については、最終的には法案及び規則の改定を目指すが、まずは通常国会開会前に与党間で協議して要綱をとりまとめる考えを明示、その後衆議院では議会制度協議会、参議院では改革協議会において野党も含め検討するよう要請していくとした。

 国会審議の活性化のための骨子は、(1)国会法、内閣府設置法・国家行政組織法の一部改正、(2)衆議員規則・参議院規則の一部改正、(3)施行期日――を明記。

 (1)では内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から除外、副大臣及び大臣政務官の定数の増員、(2)では政府参考人制度を廃止する一方、各委員会で官僚らから意見を聞く必要がある場合には意見聴取会を開催するとしている。

 そのほか、質問通告の厳格化も併せて決定。国会審議の活性化のための国会法等の一部改正を与党3党として提案するにあたり、今後詳細な制度設計や現場における運用に際して、少数政党・会派や無所属議員への特段の配慮を行うことも確認した。



副大臣・政務官の増員が、事務次官をはじめとする幹部公務員のこれまでの意思決定システムに何ら影響を与えないこと、単なる国会審議活性化のためであること、これこそが公務員制度改革の「閣法と議員立法分離」の真の狙いなのではないでしょうか?

以上、「仮説」に基づくコメントでした。

この「仮説」が正しいかどうか、国会審議で明らかになるでしょう。