憲法尊重擁護義務条項(99条)と憲法改正条項(96条)は矛盾しない | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

憲法尊重擁護義務条項(99条)と憲法改正条項(96条)は矛盾しない

秘書です。

民主党政権の解釈では、憲法尊重擁護義務(99条)と憲法改正条項(96条)は矛盾してるんですか?




■「三百代言」のそしり、免れないのはどちら
(2010年2月14日02時14分 読売新聞)
 鳩山首相の国会答弁に、法制局長官は、ハラハラし通しだった。
 「鳩山さんは政治的感覚のすぐれた方ではあったが、憲法論や法律論には素人であり、正直のところその補佐には相当骨が折れた。鳩山さんの国会出席の時間が終わるごとに『今日も無事にすんだ』とほっとした」
 鳩山首相は鳩山首相でも、由紀夫首相の祖父、一郎・元首相の話だ。1954年の第1次鳩山内閣以来9代の内閣で法制局長官を務めた林修三氏が、雑誌「時の法令」(517号)への寄稿で駆け出し長官時代をこう振り返っていた。
 時には野党から、詭弁(きべん)を意味する「三百代言」と揶揄(やゆ)されてきた内閣法制局長官。林氏から数えて14代後の梶田信一郎・現内閣法制局長官は、国会で鳩山首相の補佐に骨を折ることはない。
 「政治主導」の名の下、官僚答弁禁止を掲げた民主党の小沢幹事長の国会改革を先取りする形で、今国会から法制局長官は「政府特別補佐人」を外され、国会に出席し答弁することが許されていないからだ。それはそれで新政権としての一つの見識だろう。
 法制局長官が戦後、国会に出席するようになったのは、52年春の参院予算委員会で当時の吉田茂首相の憲法9条の解釈に関する答弁を巡り、国会が大混乱したことがきっかけだった。
 今回、党の方針で長官を政府特別補佐人から外したものの政府側は不安でたまらず、予算委員会に首相が出席する間は、内閣法制局ナンバー3の第1部長を秘書官席に座らせることにした。
 来年度予算案を審議する衆院予算委員会では、案の定、自民党から「集団的自衛権は憲法のどの条文で禁じられているのか」など憲法に関する質問が相次いだ。その都度、第1部長を兼務している内閣法制次長からメモを渡された平野官房長官が、下をむきメモを読みながら答弁する姿は、政治家同士の論戦とはほど遠い図柄だった。
 鳩山内閣は憲法問題の答弁担当を平野氏から弁護士出身の枝野行政刷新相に代えるというが、どれほどの違いがあるのかは疑問だ。民主党は、与党になったとたん党の憲法改正案を協議してきた憲法調査会を廃止した。首相は内閣の憲法擁護義務を繰り返し、衆参両院の憲法審査会も動かさない
 政治家の憲法論議の場を封じておいて、法制局長官が国会で答弁していないから「政治主導」の議論だというのなら、それこそ「三百代言の弁」のそしりを免れまい。(政治部次長 高木雅信)


まず、過去の政府の憲法解釈を確認しておきましょう。


[昭和29年3月29日 衆議院外務委員会]

○緒方竹虎国務大臣「憲法99条にありますように、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」この擁護するという意味とそれから改正するという意味、これは私は別に矛盾はないと考えます。憲法にすでに改正を期待しておる条項もありますので、別に矛盾はない。」

○緒方竹虎国務大臣「第99条の「擁護」という意味は、憲法のあらゆる場合の改正を否定しておるものではないと思います。そういうことはあり得ないと考えております。」



[昭和55年10月17日 憲法第99条と憲法改正との関係に関する答弁書]

「憲法改正については御質問のように憲法に手続きが定められているから、その手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することは憲法自体が認めていることは明らかであって、このような検討又は主張を行うことと、現在の憲法の規定を遵守し、その完全な実施に努力することとは別の問題である。したがって、国務大臣または国会議員がこのような検討又は主張を個人の立場で行っても国務大臣又は国会議員の立場で行っても、憲法第99条に違反するものではない」

(質問者:森清、答弁者:内閣総理大臣・鈴木善幸)




では、鳩山首相はどうお答えでしょうか。

[平成22年1月20日 参議院本会議]
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select00/main.html

憲法改正についての私の見解を問うお尋ねがございました。
 政治家である以上、一人一人が憲法はかくあるべきだという考え方を持つのは当然のことだと思っております。ただ、首相という立場においては、特に重い憲法尊重擁護義務というものが課せられていると、そのようにも考えております。したがいまして、今はその私の考え方について申し上げるときではない、そのようにも考えております。したがいまして、私の在任中になどと考えるべきものだとも思ってはおりません。




この鳩山首相の憲法99条と96条の考えは、歴代首相の考え方とだいぶ違うみたいですね。

ちなみに、鳩山一郎首相はどうだったでしょうか。




[昭和31年2月23日衆議院内閣委員会]

○受田新吉議員 憲法改正案を提出されるのに、内閣にも国会にも、両方に発議権があると申されたのでありますが、私は内閣法第5条を読むときに、憲法72条の規定は、内閣に憲法の改正議案を提出する機能なしと認めざるを得ないのです。この点「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、」とありますが、これはいかように解釈したらよろしいか御答弁を願いたいのです。

○鳩山一郎内閣総理大臣 その他の議案の中にこの憲法改正の議案を出してもいいと解釈しております。





鳩山一郎首相は、内閣が国会に対して憲法改正原案を提出することを、法律上できないということはない、とおっしゃっていたわけです。



現在の民主党政権は、社民党と連立を組んでいますし、参院選もありますし、憲法改正はしません、と正直にいうべきなのであって、憲法解釈論議を持ち出さないほうがいいのではないでしょうか。