朝のニュースです(原敬内閣論に学ぶ、他) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

朝のニュースです(原敬内閣論に学ぶ、他)

秘書です。今日は3題ですが、日曜の朝ですので、2つはややアカデミックに。1つはいつも通りの「政治とカネ」です。

■日米首脳、同盟深化表明へ=防衛相
(1月9日-20:39時事通信)

 北沢俊美防衛相は9日、長野市内で開かれた会合であいさつし、日米安全保障条約改定50周年の節目となる今月19日に、日米両首脳が声明を出すことを明らかにした。北沢氏は「鳩山由紀夫首相とオバマ大統領が、日米同盟の50周年を祝しながら、さらにそれを深化させていくという、それぞれの立場での声明を発表する段取りに至った」と述べた。

(獅子16)声明の文案を考える前に、北岡伸一東大教授が今朝の読売新聞で述べている「政権発足4か月」「鳩山内閣は再出発を」を一度読んでいただけるといいのですが。下記は北岡先生のコメントの一部です。

(普天間基地移転問題で)「もし鳩山首相が、県外移転あるいは決定延期の立場だったのなら、その考え方で両大臣を背後から説得しておくべきである。両大臣がそのように発言し、相手に期待感を与え、あとで総理が否定するということが何度繰り返されたことか。首相に両大臣と協議する時間がなかったとは思えない。映画祭や歌舞伎や野球や相撲に行く時間を削れないだろうか

「首相は、大統領にトラスト・ミーと言い、信頼関係は深いといい、クリントン国務長官は理解してくれたというが、信頼とは、行動や決断の積み重ねで深められるもので、口先の約束をいくら繰り返してもダメである

「およそ一般国民の意識とかけ離れた金額の不適切な処理が、国民の納税意識や順法意識にどのような悪影響を持つか、少しは考え、反省してほしい。それなのに首相は、「違法性の認識は私にはございません」というような言い方をする。普通の日本語では、「私は違法ではないと考えます」というものである。首相の言葉からは、不愉快な事実を直視する勇気が感じられない。要するに他人事であるこうした認識と言葉における構造的な無責任さは、普天間関係の発言の軽さと同根ではないだろうか」

「国民に対し負担増を説得する、これこそが政治家の最大の仕事である。認識と言語において責任が希薄で、金銭感覚が一般国民とかけ離れ、問題の本質を直視しないリーダーにそれが可能だろうか。鳩山首相は、もっとも本質的な問題を直視し、それを率直な日本語で表現し、全閣僚をリードすることで、内閣を再出発させてほしい」

■ガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/8止 小沢氏に二つの顔
(1月10日 毎日新聞)
 政界一の実力者になった民主党の小沢一郎幹事長は、大正中期に首相を務めた原敬(はらたかし)を特別に尊敬している
 講演や著書でしばしば原の話が登場する。衆院選前の昨年8月16日には盛岡市にある原の菩提(ぼだい)寺を訪ね、「郷土の大先輩である原先生の志を受け継いでやりたい」と語った。
 評価しているのは、原が政党政治家として官僚機構を制御したことだ。昨年10月21日の「小沢政治塾」では「軍と官僚の頂点に立つ山県有朋(やまがたありとも)を丸め込んだ」と原をたたえ、独自の官僚論を展開した。
 「会社でも団体でも全部中央官庁の管理下に置かれている。日本人にとって政府とは何かというとお上、官僚だ。自分たちの内閣という意識が、与党の議員にすらない」
 徹底した「官僚支配」の認識だ。それゆえに小沢氏は英国をモデルとして、政治家チームを省庁に送り込む必要性や、官僚による国会答弁の禁止を訴えてきた。鳩山政権で実現しつつあるこれらの構想は93年の著書「日本改造計画」にすでに盛り込まれている。
 原は確かに「政治主導」を目指した。統治機構に「政」が参入するため、政敵の山県が「官」に独占させていた各省次官などのポストを議員に開放した。同時に原は、床次(とこなみ)竹二郎ら高級官僚を政友会に引き入れ、政党そのものの統治能力を高めようとした
 小沢氏が原と異なるのは、自分以外の政治家に対する期待度だ。07年11月。政界を揺るがした「大連立」協議でその一端がのぞいた。
 当時の福田康夫首相に小沢氏は「私は副総理になる。無任所でいい」と組閣構想に言及した後こう続けた。
 「まず連立を決めてほしい。それが決まれば政策はどうにでもなる。政治家は当てにならないから、双方で議員以外の2、3人を出して協議したい」
 自党の議員を信用せず、息のかかった側近に政策協議を任せるという提案だった。
 不発に終わった大連立には後日談がある。07年12月から08年1月にかけ、福田氏には斎藤次郎元大蔵事務次官(現日本郵政社長)を「日銀総裁にできないか」との相談が複数のルートから持ち込まれた。「斎藤氏を復権させてあげたい」という小沢氏の意向が背後から聞こえた。
 斎藤氏は細川内閣で国民福祉税の導入を図った小沢氏の盟友。このため、後に政権復帰した自民党から疎まれ続けた。天皇の特例会見問題で「官僚主義の最たるもの」と宮内庁長官をののしった小沢氏だが、斎藤氏への配慮に反官僚意識はうかがえない
 「政優位」「脱官僚」を唱える改革者の顔と、水面下で見せるまったく別の顔。実力者の持つその二面性が、新たな「政と官」の関係に影響を及ぼさずにはおかない。=おわり
    ◇
 編集委員・古賀攻、中川佳昭、木戸哲、宮川裕章、平元英治、永井大介、井上元宏、山田泰蔵、野口由紀が担当しました。

(獅子16)この記事でいうところの小沢幹事長の「二面性」を、原敬を特別に尊敬するところからくる「政優位」「脱官僚」を唱える改革者の顔と、水面下でみせる「反官僚意識がうかがえない」という点のニつにあるととらえましょう。しかし、これは実は二面性というよりも過渡期的性格からくるものであることが、「原敬」の歴史的評価から明らかになります。ヒントは、上記記事の中の、「同時に原は、床次(とこなみ)竹二郎ら高級官僚を政友会に引き入れ、政党そのものの統治能力を高めようとした」の部分、とくに「同時に」に隠されていることがわかります。

三谷太一郎先生は、原敬の狙いは、「官吏上がりの政党化」による憲政の発達だったと指摘されています(『増補 日本政党政治の形成』)。清水唯一朗さんは『政党と官僚の近代』でもっと詳しくみてみましょう。

清水さんは本の中で、原敬内閣を「疑似政党内閣」と称しています。

原敬内閣は、首相自らが官僚出身であり、閣僚では党人派は1名のみで残りはすべて官僚出身者。事務次官も現職官僚3名、政友会に参加している官僚出身者3名で構成されています。原内閣は「次官を自由任用としながらもここには生粋の党人ではなく、官僚出身の党員を置いた」のです。これで、上記記事にある「政敵の山県が「官」に独占させていた各省次官などのポストを議員に開放した。同時に原は、床次(とこなみ)竹二郎ら高級官僚を政友会に引き入れ、政党そのものの統治能力を高めようとした」の中の、「同時に」に重要な意味があることがわかります。

さて、このような原敬内閣のことを、清水さんは「原内閣自身がその実態においては政党内閣と称するより、明治ー大正ー昭和と続く政党の発達過程の過渡期における疑似的な政党内閣の形態であったと考えるべきであろう」としています。

本では、「過渡期」として注目されることとして、参事官への党人登用、そして、法制局長官に党人を登用が指摘されています。これは現在の内閣法制局長官の扱いの視点からも、おもしろいと思います。

以上からみても、現在の体制は、疑似的な政治主導体制であり、その疑似性こそが「二面性」にみえる要因を生んでいるといえるのではないでしょうか。

そして、もう一つ。原敬が政友会拡大の戦術として使ったのが「我田引鉄」といわれる鉄道建設による利益誘導政治です。政党の基盤強化と利益誘導政治の関係は、田中角栄首相というよりも原敬首相にはじまった、とも、よく指摘されているところですね。戦前の鉄道建設が戦後には道路建設、そして、ダム建設につながっていく・・・、「我田引ダム」?


■胆沢ダム受注で裏金か 小沢氏側の土地取引との関連捜査
2010年1月10日3時2分(朝日新聞)
 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」による土地取引問題で、 「胆沢(いさわ)ダム」 (岩手県奥州市)の受注に絡みゼネコン側が裏金を作っていた疑いが浮上し、東京地検特捜部が、土地の購入原資と関連性がないか集中捜査していることがわかった。購入と近い時期などに裏金の計1億円を小沢氏側に渡したとの供述も出ており、その解明が焦点となっている。
 胆沢ダムをめぐっては、ゼネコン各社がこれまでに、工事受注で談合し、調整に小沢事務所の意向が反映されていたと供述。特捜部は、ゼネコン各社の役員級や東北支店関係者の聴取を続けている。
 陸山会の事務担当者だった元秘書・石川知裕衆院議員(36)=同党、北海道11区=は任意の事情聴取で、2004年に取得した土地の購入原資4億円を陸山会の政治資金収支報告書に記載しなかったことを認めたが、ゼネコン資金の受領は否定。だが、特捜部はゼネコン側への捜査結果を踏まえ、近く石川氏を再聴取する方針だ。
 関係者によると、石川氏は04年10月、小沢氏が拠出した4億円を陸山会の複数の口座に数千万円ずつ分散入金したうえで、同会の一つの口座に集約。この4億円で東京都世田谷区の宅地を約3億4千万円で購入したが、収支報告書には4億円を収入として記載しなかったとされる。
 特捜部が注目するのが、この4億円と、胆沢ダムの利権の関係だ
 胆沢ダムは、小沢氏の地元で2013年完成を目指し建設中の日本最大級のダムで、総事業費は約2440億円。西松建設から陸山会への違法献金事件では、同社関係者が献金の理由としてあげていた胆沢ダムの工事受注に絡んで談合があったことを、複数のゼネコン関係者が特捜部の調べに認めた。また、その仕切り役が大手ゼネコン・鹿島の東北支店元幹部だったことや、談合の際に元幹部から「小沢事務所の意向が反映されている」と説明を受けたとも供述していた。
さらに、その後の捜査で、主要工事の下請けに入った中堅ゼネコン関係者が「元請け大手の指示で、受注時期と重なる04年10月と05年4月に5千万円ずつ、計1億円の現金を小沢氏側に渡した」と供述。「1億円は工事費に上乗せして元請けから補填(ほてん)された」と説明したという。
 特捜部は、1回目の5千万円は土地購入と時期が重なることから、陸山会に分散入金された4億円の一部である可能性もあるとみて、この供述の真偽の確認を含めて調べている。
 2回目の5千万円と重なる05年3~4月にも、小沢氏の別の4億円が陸山会に分散入金され、翌5月に出金されていることから、特捜部は関連性がないか注目している。
 これに対し、石川氏は任意の事情聴取で、土地購入にあてた4億円は「小沢氏の個人資産で、紙袋で受け取った」と供述。中堅ゼネコン関係者が供述する1億円の資金提供についても、石川氏は「(関係者と)会ったこともないし、現金も見たことがない」と否定した。だが4億円を分散入金した理由について明快な説明をしておらず、特捜部は一連の供述が真実かどうかについて疑問も残している。
 また、陸山会の会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規(たかのり)被告(48)も事情聴取で、ゼネコンからの資金提供について、「知らないものは知らない」と否定。胆沢ダム工事の元請けとなった複数の大手ゼネコン側もこれまでの調べで、小沢氏側への資金提供を否定しているという。

(獅子16)胆沢ダムは日本最大級のダムだったんですね。