今朝のニュースです(「優しさごっこ」の「小鳩」体制?) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

今朝のニュースです(「優しさごっこ」の「小鳩」体制?)

秘書です。脚本家・倉本聰さんが「経済力本位の社会」はもはや臨界点に達していると指摘(一番最後に引用してます)。でも同時に“優しさごっこ”“劣化のスパイラル”も指摘。鳩山首相の「人間のための経済」ははたして?

■「検察のリークは違法の塊」民主・山岡氏
(1月5日00時45分 読売新聞)
 民主党の山岡賢次国会対策委員長は4日、CS放送の番組で、同党の小沢幹事長をめぐる「政治とカネ」に関する報道が相次いでいることについて、「検察が調査したものをリークするのは違法の塊だ。そういう風にマスコミを使っていろいろ作っていくのは、まさにアジテーターだ」と述べ、検察当局を批判した。

(獅子16)法務大臣、検察が「違法の塊」といわれてしまいました!今日の閣議後記者会見で反論して、政治的重圧をはねかえしておかないと。

■5月にこだわる必要ない=普天間問題の結論-山岡氏
(1月5日-01:36時事通信)
 民主党の山岡賢次国対委員長は4日夜、CS放送の番組に出演し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で鳩山由紀夫首相が5月までに結論を出す意向を示したことについて「もっとゆっくり考えるというのも結論だ。慌てて決めて結果的にできなくなった時の政治問題の方が大きい」と述べ、必ずしも5月にこだわる必要はないとの考えを示した 
 一方、小沢一郎幹事長の土地取引をめぐる東京地検の捜査に関しては、「問題がないが故に、何か問題を起こさないと引っこみがつかないという感じで動いている」と指摘。「検察で調査したことを(報道機関に)リークするのは違法の塊だ」と批判した。

(獅子16)さすが日米中正三角形論者ですね。


(参考)民主・山岡氏の「日米中正三角形論」をめぐる上海での講演要旨 
(2009.12.14 19:51 産経新聞)

民主党の山岡賢次国対委員長 日中関係は戦後もっとも良好に進んでいるのではないか。小沢一郎幹事長と胡錦涛中国国家主席の会談でも確認されたが、日本と中国と米国の関係は正三角形の関係であるべきだ。

 米国と日本の関係は基地の問題で若干ぎくしゃくしているのは事実だ。まず日中関係を強固なものにし、正三角形を築けるよう、米国の問題を解決をしていくのが現実的プロセスだ。

 冷戦も終わったので、新たな日米関係を築いていかなければならない時期にきている。このまま進めば、長期的に見て難しい局面が(日米に)出てくる可能性は否定できない。日米同盟(の問題)を解決し、日中関係をしっかりと構築して、近い将来、健全な日米中の正三角形体制が築かれていくべきだ。

 東アジア共同体は、特に日中韓の共同体を強化して、米国も含めた世界平和の核にしていくべきではないか。

 小沢幹事長が梁光烈(りょう・こうれつ)国防部相と会談し、中国の軍事費の増大に対する懸念が、日本を含めた近隣諸国で強まっている事実を伝えた。この事実をよく認識してほしい。(上海 原川貴郎)

■陸山会不透明会計:石川議員「私の一存」 来週在宅起訴か
(1月5日 2時30分 毎日新聞)
 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の会計処理を巡る問題で、当時の事務担当者で小沢氏の私設秘書だった同党の石川知裕衆院議員(36)=北海道11区=が東京地検特捜部に「虚偽記載は私の一存でやった」と政治資金規正法違反容疑を事実上認め、小沢氏らの関与を否定していることが分かった。特捜部は一両日中にも当時の会計責任者で公設第1秘書、大久保隆規被告(48)=公判中=からも事情聴取し、来週中にも石川氏を同法違反で在宅起訴するとみられる。
 ◇小沢氏は関与否定
 この問題を巡っては陸山会が04年10月の土地購入(代金約3億4000万円)を同年の政治資金収支報告書に記載せず翌年に記載し、原資も不明として石川氏らが刑事告発されている。土地は現在、小沢氏の秘書らの寮として使われている。
 関係者によると、石川氏は「小沢氏の指示で(寮になる)土地取引を行った」と説明。土地購入前後に小沢氏関係の複数の政治団体を介在させるなどして陸山会に集約した約5億円について「うち4億円ほどは小沢氏から借り、残り1億数千万円は陸山会など政治団体が元々保有していた資金」と話しているという。一方で「小沢氏には(陸山会の)『運転資金が足りない』と言って借りた。小沢氏や大久保被告は(詳細を)知らなかったと思う」などと供述しているという。
 特捜部は、土地購入前後に動いた約5億円のうち、陸山会など政治団体の保有資金ではなかった約4億円について、小沢氏から陸山会への貸付金として収支報告書に記載すべきだったとして、同法違反容疑に当たるとみている模様だ
 石川氏はこれまで「運転資金が足りなくなったので幹事長(小沢氏)としての手持ち資金を使った。約5億円の中から土地購入費を出した。収支報告書を訂正せざるを得ない記載ミスがあったことは否定できない」などと説明していた。特捜部は、石川氏の供述が入出金状況などの客観証拠と合致するかどうか確認を進めるとともに、再聴取や資料提出などに応じることを前提に、強制捜査を回避して在宅のまま捜査を進めるとみられる。
 ◇ゼネコン各社を5日から聴取 東京地検
 一方、特捜部は、土地購入費に充てられた小沢氏の手持ち資金の原資などを解明するため、鹿島や水谷建設などゼネコン各社の役員や営業担当幹部らから5日以降、一斉に聴取する模様だ。関係者によると、特捜部は既に電話で出頭を要請したという。
 石川氏は土地購入前後に動いた約5億円について「小沢氏の手持ち資金からの貸し付けや陸山会など政治団体の資金」と説明しているが、資金の提供元については周辺に「知らない」などと語っている。このため特捜部は各社に献金の有無などを確認する方針。

(獅子16)この5億円はどこから来たのか?そして鳩山首相の8億円はどこへ行ったのか?

■ガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/4 屈服した農水次官
(1月5日毎日新聞)
◇財務省、小沢氏の要望「予告」
 来年度政府予算案の編成作業が進んでいた昨年12月13日に「予告」があった。
 農林水産省の井出道雄事務次官が財務省を訪ねたところ、稲垣光隆主計局次長からこう通告された。「農家への戸別所得補償は概算要求(5618億円)通りには認められませんよ。もし、どうしてもってことなら、土地改良は半分にしてもらわないといけないでしょうね」
 民主党の小沢一郎幹事長が、鳩山由紀夫首相らに予算案に関する党の要望書を提出したのは3日後の16日。その中には「土地改良事業費は要求額4889億円を半減することとし、所得補償制度等の財源とする」との一文があった。政府案は党の要望通りになった。
 稲垣氏は、小沢氏と親交が深い斎藤次郎・日本郵政社長(元大蔵事務次官)の娘婿だ。農水省の幹部は「3日前の話を聞いて、財務省と小沢さんとの間には特別なパイプがあると思ったよ」と振り返った。「ただ、実態を知ろうとしたら、僕がやけどしちゃう」
 所得補償は、小沢代表時代に採用された民主党の目玉政策だ。農産物の販売価格が生産コストを下回る部分について、政府が赤字分を直接補償する考え方が基本にある。
 長年、減反政策に縛られてきた農村部で歓迎され、都市型政党と言われてきた民主党が07年参院選や09年衆院選で大勝する一因になった。
 自民党政権下の農水省はこの制度に否定的だった。井出氏は昨年6月18日の記者会見で、民主党がコメ以外の農畜産物も所得補償の対象にしていることを理由に「現実的ではないのではないか」と批判。民主党はこれに猛反発し、政権交代後は事務次官による記者会見が禁止された。
 農水省は、農村部が主な選挙基盤だった自民党の政治的影響を最も強く受けてきた役所だ。自民党農林族、農水省、農協の3者は「農政トライアングル」と呼ばれた。
 その三角形が崩れ、新たなあるじとして赤松広隆農相が乗り込んできた。新内閣発足2日目の9月17日、赤松氏は大臣室に井出氏を呼び出し「所得補償についてどう考えているんだ」と迫った。井出氏は「民主党の政策を、献身的に徹底して支えます」と答えるしかなかった。
 赤松氏は翌日、「次官と歴史的な和解をした」と政務三役に紹介したが、山田正彦副農相は「大臣は許せても私は許せない」と明確な謝罪を要求。井出氏は幹部が居並ぶ前で「言葉足らずでした。前言を撤回します」と深々と頭を下げた。
 この時点で井出氏の抵抗力は消えた。土地改良費の半減という農政の大転換も、言われるがままだった。
◇戸別補償に石破氏の遺産
 2010年参院選での勝利に執念を燃やす民主党の小沢一郎幹事長は、農家への戸別所得補償制度の実現を農村票対策の柱として最重視している。政権交代前まで党の選対委員長を務め、農政とは無縁だった赤松広隆氏を農相に送り込んだのは、その布石だ。
 赤松農相は昨年10月6日、さっそくコメを念頭にモデル事業として10年度から所得補償を実施に移す考えを表明した。参院選前に何としても実績が必要と考えてのことだ。
 自民党政権時代は、コメ余りによる米価の下落を防ぐために、コメの作付けを減らして他の作物を生産する農家に補助金を出してきた。減反の延長だ。これに対し、民主党の所得補償制度は、政府の決めた生産数量目標の範囲でコメを作る農家に補償額を渡すことになる。
 考え方の異なる政策が比較的スムーズに出てきたのは、石破茂前農相時代に検討された農政改革の遺産があったためだ。
 赤松氏の実施表明に先立つ昨年10月初め、新制度の検討を指示された針原寿朗総括審議官は「全国一律の所得補償額だったら、コメを対象にモデル事業ができる」などと書いた資料を農相らに示した。赤松氏らはそれを見て、10年度からの実施が可能と確信した。
 針原氏は石破氏の目指した「減反選択制」の設計実務を担っていた。減反の縛り方を緩め、今や埼玉県とほぼ同じ面積に拡大した耕作放棄地を減少させることに主眼があった。石破案は自民党農林族の反発で葬られたが、減反を緩める点で所得補償制度と共通する部分があった。石破氏も「政策理念は異なるが、制度の形は似ている」と認める。
 所得補償という現金の配布にこだわる「政」と、自民党政権では不可能だった減反からの脱却を目指す「官」の利害がコメのモデル事業として一致した。
 所得補償はもともと世界貿易機関(WTO)合意や自由貿易協定(FTA)の締結で関税が下がり、農産物の価格が下落することを見越したものだ。モデル事業ではコメの値段は変わらないのに、コメ作りへの税金投入だけが拡大する結果になりかねない。
 農家の規模拡大に誘導できるかどうかも不透明だ。民主党の農水担当だった篠原孝衆院議員は、「農家が補償に期待しすぎて、コメの生産過剰にならないだろうか」と懸念するが、党内では少数意見だ。
 農業土木を所管する省内の幹部は「マニフェスト(政権公約)にある政策はバラマキでも認められる。ない政策は置いてけぼりだ」とぼやく。=つづく
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 ■ことば
 ◇農家への戸別所得補償制度
 対象となる農作物の販売価格が生産コスト以下になって赤字が出た場合、国がその差額を補てんする制度。国の定める品目別の生産目標に従うことが条件。コメは10アール以上の稲作農家が対象になり、補てん額は10アール当たり全国一律で1万5000円。米価が上がって赤字幅が少なくなっても交付される。

(獅子16)「選挙に勝つための農政」の所得補償は、農業を産業としてではなくセーフティネットに位置付けているところに根幹が。もはや、子ども手当と同じ扱いなのでしょう。そしてそれはFTAとも矛盾せず。セーフティネットとなった農業は、競争する必要はないのですから。

■私の政官論:/4 東大名誉教授・西尾勝氏(71)
(1月5日毎日新聞)
◇政治主導の意味、履き違えるな
 「政治主導」が看板の鳩山政権は、自分たちで言うほどうまくは動いていない。当初、各閣僚がマニフェスト(政権公約)で約束したことを花火のごとく打ち上げたので、政治家も官僚も収拾がつかなくなった。首相が主導権を握る政治体制には到底なっていない。
 国家戦略局構想も準備不足の一言に尽きる。経済財政諮問会議を廃止して、国家戦略を担う中核的な機関に作り変えるというなら、少なくとも(昨秋の)臨時国会に戦略局設置法案が出されるべきだった。民主党内で構想を十分煮詰め切れなかったんだと思う。
 政治主導に対する国会議員の理解は3通りある。一つは、国会議員が力を持って地元や支援団体の陳情を仲介し、省庁に働きかけて実現するということ。政治主導を履き違えた理解だ。二つ目は与党主導ということ。自民党の政治家の大半はこういう理解をしていて、与党が力を持つことだと考えていた。もう一つが内閣主導。僕はこれに切り替えなきゃいけないと考えているが、民主党の幹部がどこまで理解しているか疑問だ。
 戦前は議会の多数党がどこであろうと、首相は天皇の大権で任命するという仕組みだった。戦後は議院内閣制で、国会の多数党が内閣を組織する仕組みに変わり、自民党が政策決定を左右するようになった。それを象徴するものとして、自民党税調と党による生産者米価の決定があった。政官関係の「戦前戦後断絶論」はこうした事例を強調している。
 ただ、官僚主導で全体が動いてきたことは、戦前も戦後も変わっていないと思う。基本は官僚が決めて、与党は政治的な修正を加えるだけ。自民党総務会の了承を取れば、法案が国会で荷崩れすることはないから、官僚にとってこれが一番便利な政治形態だった。
 だからこそ、首相中心、内閣主導の政治体制に変えていくべきだが、役人の協力なしに政治はできっこない。鳩山政権の政務三役が超多忙なのは、自分たちがやらないと政治主導ではないと勘違いしているからだ。4、5人で一つの省庁を動かそうなんて無理だ。
 真の意味で政治主導にするには、まず省益中心の縦割り構造を廃止しないといけない。さらに本省の審議官、局長級以上の人事は内閣で一元管理すべきだ。財務省の審議官が国土交通省の局長になるもよいし、農林水産省の幹部が経済産業省に行くのもよい。人事の任用権は、首相という一点に集約されることが大事だ。【構成・中川佳昭】=つづく

(獅子16)だから去年の通常国会で、ボスが提唱している「幹部公務員法案」を成立させておけばよかったんですよ!民主党贔屓のバン記者さんたちは「民主党政権ができたらすぐやりますよ」と胸をはっていたけど、やらなかったじゃないですか。官僚との協調を優先したんでしょう。次の国会には出てくるそうですが、官僚の人事権を本当に掌握する覚悟、ありますか?衆院内閣委員会の審議が楽しみです。

■気になる2人:/1 鳩山由紀夫首相/小沢一郎幹事長
(1月5日毎日新聞)
 ◇微妙に揺らぐ「小鳩」の均衡--鳩山由紀夫首相(62)/小沢一郎幹事長(67)
 日本にはトップリーダーが2人いる。民主党代表にして最高権力者の座に就く鳩山由紀夫首相、62歳。党ナンバー2ながら権勢をふるう小沢一郎幹事長、67歳。「双頭」の「小鳩」体制は微妙なバランスを保っている。
 「正念場の年です。夏には参院選があり、小沢幹事長の指導の下で勝利を果たさなければなりません」。4日、党本部での年頭あいさつで鳩山首相は隣に立つ小沢氏の名に触れ、「小沢頼み」を改めて印象付けた。
 ここではあいさつを固辞した小沢氏だが、元日には圧倒的な存在感を見せた。東京都内の私邸での新年会には党所属国会議員の4割に上る166人が参加。絶頂の時を印象付けた。あいさつで首相の名こそ出さなかったが、迷走する首相の政権運営を「100%何でもかんでもうまくいくはずがない。魔法使いでもあるまいし」と擁護した。
 多弁と無口、調整型とトップダウン、理想家肌と現実主義派。ニューリベラルと新保守の両極に分かれたこともある鳩山、小沢両氏。多くの違いを乗り越えた「小鳩」関係の基礎は激動の政界再編の中で形成された。
 17年前の93年、ともに「政治改革」を求めて自民党を離党、新党を結成した。小沢氏は自ら主導して発足させた細川政権の旗艦・新生党代表幹事、鳩山氏は内閣の要、官房副長官に就任。しかし、当時当選3回で閣僚経験のない鳩山氏に対し、小沢氏は当選9回で自民党幹事長も経験した練達の士。鳩山氏は細川政権8党派との調整役として政府を代表していたが、後に「小沢さんに呼ばれては怒られていた」と振り返った。
 翌94年には自社さ政権発足で小沢氏が野党に転じ、2人の距離は遠のいた。再び接点ができたのは8年後。小泉政権に対抗するため鳩山氏率いる民主党と小沢氏の自由党の合併話だった。小泉内閣打倒で意気投合したが、「小沢アレルギー」が強い民主党内の反発で頓挫、鳩山氏は辞任に追い込まれた。「信頼関係はこのときにできた」と周辺は語り、党幹部は「小沢氏は鳩山氏を決して悪く言わない」と明かす。
 2人はともに都立小石川高卒だが、刎頸(ふんけい)の友といえる間柄ではない。首相にとっては小沢氏の剛腕が政権運営の活力になり、小沢氏にとっては世論の鳩山氏への期待感が参院選の追い風となる。政権維持へと互いに利用し合うクールな関係。極端な対立もなければ過剰なもたれ合いもない。
 そんな権力バランスが、政権発足100日を前に微妙にゆらいだ。米軍普天間飛行場移設問題は混迷の末、首相が決着を当面見送り、10年度予算編成は小沢氏の主導で決着。首相官邸のもたつきと反比例し、表舞台へと出た小沢氏の存在が際立つ。首相は先月下旬、「小鳩内閣と揶揄(やゆ)されるが、やりにくさは感じるか」とのメディアの取材に「まったくないわけではありません」と認めた。
 一方、小沢氏の足もとには火種がくすぶっている。予算編成での「強権発動」には首相官邸にも反発がある。資金管理団体の会計処理をめぐる問題で元私設秘書の立件が不可避との報道が相次ぎ、小沢氏は親しい議員に「何でこんなことになるのかなあ」と漏らした。
 権力闘争の兆しはまだない。が、小沢氏は将来的な首相就任を否定しない。 「幹事長は参院選までは首相を支える。ただ、今後の内閣支持率が大きな指標になる」 「小鳩関係」がいつまで続くか。小沢氏に近い党幹部はこう解説した。=つづく
   ◇  ◇
 政権交代の熱狂が去り、正念場を迎える鳩山政権。「ポスト鳩山」の胎動も響き始める中、政界の「気になる2人」にスポットライトをあてる。

(獅子16)「双頭」の「小鳩」体制。首相の権力基盤は世論調査の数字?

■【話の肖像画】臨界の日本(上)脚本家・倉本聰
(1月5日 03:02 産経新聞)

 ■日本は劣化スパイラル
 「北の住人」は怒っていた。いまだ経済中心の発想から抜け出せない社会、幼児性を強める現代の若者たち、そして、ホームグラウンドだったテレビ界にも…。“劣化のスパイラル”に陥っているという日本。それは従来のシステムがもはや「臨界点」に達しているからではないのか。(喜多由浩)
                   ◇
 --26年間続けた「富良野塾」を3月いっぱいで閉めるそうですね。理由はなんでしょう
 倉本 まず僕の非力がひとつ。塾生を教えること、(脚本などを)書くことを個人でやる限界を感じていました。教えるにはエネルギーを使うし、いらついて爆発することもある。イヤな気分を引きずったまま、また書く…の繰り返し。かといって、僕が書くことをやめると、塾生は来ない。この26年、どれほど精神安定剤を飲んだか分からないですよ(苦笑)。自分なりにやれることはやったけれど、「結果」はあまり出なかったような気がしますね。
 --閉塾を残念がっている若者たちも多いのでは?
 倉本 どうですかね。昔と今とでは入ってくる塾生が違う。 「プロになる覚悟」が欠けているのです。シェークスピアもイプセンもチェーホフも読んでいない。演劇を志す常識も知らない…まるでカルチャーセンターに入るような感覚ですよ。  せめて「大学生」なら教えられるけど、「幼稚園」から教えるのはつらい。今の若者に一番足りないのは「想像力」じゃないかな。情報はネットから入ってくるから自分で考えない。1次情報から類推して考えたり、新しいものを編み出したりすることがないのです。
 --では、2つめの理由は「若者たちへの失望」ですか
 倉本 多分にありますね。今どきの若者はみんな優しいんだけど、本当の優しさじゃない。“優しさごっこ”です。人間関係が希薄なんですねしかられたことがないヤツも多い。塾生に、ちょっと声を荒らげると頭の中が真っ白になってしまう。これは親が悪い。家庭の中で煩わしいことを起こしたくないから、しからないし、殴りもしない。甘やかすだけです。この国に軍隊を作れば、きっと“世界最弱の軍隊”ができるでしょうね(苦笑)。今の日本は親がダメ、教師もダメ、だから子供もダメになる。“劣化のスパイラル” ですよ。
 --その図式は日本の社会全体にも当てはまる
 倉本 戦後60年も続いた「経済力本位の社会」も、いろんなほころびが出て来て、もはや臨界点に達している気がします。僕は物質文明と真逆の生き方をしてきましたから、そもそもなぜ、そんなに経済に頼らなければならないのか、理解ができませんけどね
 --政治はどうです? 民主党政権をどう見ていますか
 倉本 国民には自民も民主もない。「政治」を見ているんです。良いものは良いし、悪いものは悪い。例えば、「事業仕分け」は、いろいろ批判もあるけれど、これまでの政治ができなかったことでしょう。「脱官僚」だって、重箱の隅をつつくようなことはよくない。確かに、天下りで年収2千万円ももらうヤツが何人もいちゃあ困るけど、役所を定年になって、従来の給与の3分の2や1で雇うならば、目くじらを立てることもない。そういう意味じゃ、政治やメディアの報道の方こそ古い構造から抜け出せていない。むしろ国民の意識に置いていかれている感じがしますね。
 --最近のテレビをどう見ていますか。バラエティー、お笑い番組全盛で、いつも同じ顔ぶればかり…
 倉本 全く同感ですね。こうした番組は「数字(視聴率)が取れるから」というけど、視聴率調査はそもそもCMがどれぐらい見られているか、の調査ですよ。つまり「経済ベース」でモノを見ている本当にどんな番組が見られているのかを調べるなら国(総務省)が主導して録画率まで調べるべきでしょう。
 --ドラマはどうですか
 倉本 まったく見ませんね(苦笑)。見ると、どうしても批評家になっちゃうんですよ。「こうすりゃいいのに」ってね。テレビも視聴率(つまり経済本位)ばかりに目が行って“劣化のスパイラル”に陥っている気がします。こっちも視聴者の方が、ずっと先を行ってますよ。

(獅子16)参院選は、耳に優しい“優しさごっこ”の党が勝つのか。それとも、どこか厳しい“劣化のスパイラル”を止めるビジョンを打ち出す党が勝つのか。