竹中教授vs菅副総理の政策論争に学ぼう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

竹中教授vs菅副総理の政策論争に学ぼう

秘書です。竹中教授vs菅副総理の政策論争で経済政策を学習しましょう。

■竹中氏「郵政の再国有化は大変残念」
12月16日17時48分配信 産経新聞

【菅vs竹中論争】(1)

 菅直人副総理・国家戦略担当相は16日、内閣府で行われた成長戦略策定会議の「検討チーム」に竹中平蔵元総務相を招き、成長戦略について約35分間にわたり議論を戦わせた。やりとりの詳細は以下の通り。

 【菅氏:経験を教えてほしい】

 「本当に突然のお願いにもかかわらず、お出ましただき、ありがとうございます。言うまでもありませんが、竹中教授は私の現在のポジションの先輩にあたられる経済財政担当相をやられて、骨太の方針を何度も中心的にまとめられた。まさにこれまでの政権における成長戦略の牽引(けんいん)役だったと認識しています。ざっくばらんに今の状況の中でどういうことをやるべきかというお考えなり、あるいはこの間の経験の中でここはこうやったらうまくいったと、ここはなかなかうまくいかなかったといったような経験談を含めて短い時間ですが、お話いただければと思います。よろしくお願いします」

 【竹中氏:改革で2%成長を実現した】

 「竹中平蔵でございます。菅副総理および先生方におかれましては、このような機会を与えていただきまして、誠にありがたく思っております。政権交代が実現しまして、新たに政府の中で中核を担われている皆様方は本当に大変な思いで日々でお過ごしだと思います。政権の中で何かやるというのは、外からの批判は簡単でありますけど、1つのことをなそうと思ったら本当に大変であると思います。その意味では本当に日本のためにですね、ぜひよい政策をやっていただきたいという思いで、忌憚(きたん)なく私の考え申し述べますので、コメント、ご批判をいただきたいと思います」

 「まず成長戦略ということに関連して申し上げますと、実は私自身は成長戦略をとりまとめたことが1度もございません。成長戦略というのは、例えば2006年に与謝野馨経済財政担当相の下に取りまとめられたものとかですね、その次の大田弘子大臣のときに取りまとめられたものとがありますが、私自身は骨太方針とかいうものは作らせていただきましたけれども、成長戦略を取りまとめたことはありません。なぜかというと、当時は成長戦略を取りまとめるところまでいってなかったということです。当時の課題は再生と活性化。経済の再生とか経済の活性化という言葉をしきりに使ったのを覚えています。何とか再生と活性化の糸口をつかんで、次に成長戦略というところで、私は経済財政担当を離れたものですから、その後の成長戦略、私もいろんな意見がありますし、そのことについては与謝野さんなり大田さんなりに聞いていただく方がよろしいのかと思います。成長戦略そのものについてどのように考えるべきかということについて、私の学者としての考えを申し述べたいと思います」

 「まず私の経験を踏まえてということでありますけども、ぜひ重要なポイントを最初に申し上げておきたいと思いますのは、私が担当していたのは成長に導くための改革をやった。具体的にやったことということは3点に集約されると思います。不良債権の処理、そして郵政の民営化、そして経済財政の一体運営。この3つであると申し上げてよいと思います。当時まだ金融危機でありまして、不良債権比率は8.4%ぐらいから、私のときに1.5%ぐらいまで下がりましたけれども、不良債権の処理の象徴であったところのりそな銀行に対する公的資金注入というのは2003年の5月11日でございます。そのころから経済がようやく反応してくれたということです。郵政民営化、これは2005年に行いました。経済財政の一体運営というのは、まさに経済財政諮問会議で、それまで経済企画庁がマクロ経済をやって、大蔵省が予算をやるということを一体的に運営するという仕組みを作ってなんとか軌道にのせたということだと思います

 「結果的にはみなさんの中では当然いろんなご評価があると思いますが、不良債権処理が軌道にのった2003年から、そして小泉内閣から安倍内閣に引き継いだ2007年。2003年から2007年までの期間をみると、財政を健全化しながら2%強の成長をして、実はその7割が内需成長でありました。つまり不良債権処理というのは、要するに金融の目詰まりをなくすということ。郵政民営化というのは、民間でできることは民間でやれるという一つのシンボルの仕事。経済財政の一体運営というのは、まさに財政健全化と景気の維持という両方の狭い道を歩むためのバランスをちゃんと見る。内閣府の試算で、今日の新聞に出てますが、需給ギャップ35兆円。その35兆円をどのくらい財政の需要で埋めるのかと。埋めなければいけないけれども、一方で中長期的には財政健全化させなければいけない。そのシナリオを作るのが私の役目であった」

 【竹中氏:郵政の再国有化は残念】

 「繰り返し申し上げますが、こういう改革として経済を強くするというメッセージが出たときには2003年から2007年まで消費も投資も進んだし、2%強の成長で7割が内需であって、象徴的には2005年、郵政民営化をした年の株価は1年間で42%上がった。まず成長戦略に至る前に、私はぜひ、金融の正常化。今日は大塚耕平内閣府副大臣がいらっしゃいますけども、バーゼルII(新しい自己資本比率規制)がどの程度の期間で実施されるか知りませんけれども、実質的には日本の銀行は再び実質的な意味で資本不足に陥って、それが金融の目詰まりを招いていると私は思います。郵政民営化に関しては、みなさんのお立場があるとは思いますけども、私はやはり再国有化されたというのは大変残念なことであると思います。経済財政一体運営に関しては、経済財政諮問会議を廃止して国家戦略局で担うことになっているわけでありますけれども、準備がなかなか大変だということだと思いますが、一体運営の姿がなかなか見えてこないということも事実だと思いますので、そこはまず成長戦略に至る前に、金融の目詰まりの話、そして民間でできることは民間でというメッセージを出すこと、そして経済財政の一体運営についてまず体制を整えていただきたいと思うところでございます」

【竹中氏:成長の基礎は供給にある】

 「経済成長の基本的な考え方について申し上げます。まず私は経済成長の基礎は、経済の供給側、サプライサイドになければいけない。これは常にそのように考えています。もちろん需要側は重要なんです。しかし、需要というのは供給を上回って成長することは絶対できませんので、その天井を決めるのは供給側です。しかし、現実に日本の政策論議では供給側の議論というのはほとんどなされません。サプライサイドが決めるものは何かというと、資本を増やすこと、そして労働投入を増やすこと、そして技術を高めること。この3点しかありません。資本を増やすためにはどうしたらいいかというと、資本に対する、リターンに対する税金を安くする。投資減税とかですね、そういうものはやっぱり重要だ。投資減税は財政の制約であまり私が担当しているときもできませんでしたけど、それでも先行減税というのをやりました。それは効果があったと思います。労働の供給を増やすのは、これは学術分野でも非常に議論が分かれていて、難しいですけども、一例としてオーストラリアはものすごい政策を今とっているというのをみなさんご存じだと思います。2200万人の人口を2035年に3500万人にする。人口を1.5倍にするというわけです。約800万人の新規移民を受け入れて、その移民を受け入れるということを表明しているので、そのための新規のインフラ投資も始まって経済が活性化している。日本ではまだ不況に対する金融政策をどうするかということの決着がついておりませんが、オーストラリアでは過去数カ月の間にすでに3回金利を引き上げています。つまりそういう段階を通り越して次の成長段階にいっているわけです。これは分かりやすい政策ですが、日本の社会風土から移民の問題というのはそんなに簡単ではないということも事実だと思います。ただ、やはりそういう供給サイドを強化するということが、分かりやすい基本であると。で、後は技術。これは特にみなさん力を入れになると思いますのは、たぶん環境の話とか、そういうものだ。これは当然重要なことで、そのための技術開発をやっぱりやらなければいけない。もう1つは資本と労働と技術と申し上げましたが、同じ資本と労働を使ってもやはりそれが効率的に配分されているかどうかというのは、景気は空気を読むので、その意味では実は規制緩和、競争政策、民営化というのは私は大変重要なポイントになると思います。郵政に関してはそういう意味では、現時点では逆の方向に行こうとしているのが私にとっては繰り返し残念に思います」

■菅氏「小泉・竹中路線は失敗だった」
12月16日17時56分配信 産経新聞
 
【竹中氏:メッセージが重要だ】

 「もちろん供給に加えて需要側の対応がいります。これは需要には2つあると思います。抑圧された需要を掘り起こす。これは規制されている分野というのは抑圧された需要があります。教育、社会、福祉さらには通信と放送の融合の話があるが、これは規制によって抑圧された需要がありますから、それを解き放ってやる。供給サイドを高めるとともに今言った抑圧された需要を高めてやって需要と供給がバランスよく成長していくという形を作らなければいけない。将来需要の先取りも必要だろうし、そのための政策は考えなければならないと思います」

 「提言として申し上げたいと思いますが、今までの成長戦略で、私は成長戦略を作っておりませんので、適切ではないかもしれませんが、実はやはりこれをやるんだというメッセージのようなものが非常に見えにくかったということだと思います。これは先生方、いま大変悩んでおられると思いますけども、各省庁にいろいろ出すといろいろこう玉をもってきますけども、玉を積み重ねるだけでは、やっぱりメッセージになりません。その意味では日本は都市環境立国になるんだという宣言を高らかに首相からしていただいて、そのための技術、そのための資本蓄積、そのための労働投入をやる。都市環境立国。特に都市に関しては、地方の方々の意見がいろいろあるかもしれませんけども、実はこれから30年間の間に3大都市圏で大地震が起こる確率は87%。これはやっぱり安全な都市をつくると。安全な都市をつくる過程で世界に通用する強い都市をつくる。前原誠司国土交通相が大臣に就任して、オープンスカイをやられました。これは典型的な規制緩和です。これは要するに私たちがやろうと思っても何度言っても当時の族議員と官僚にはね返された。政権交代したからできていることでありますから、そのようなことも都市を強くする。そしてそれはまさに規制緩和でありますから、それはぜひやっていただきたいと思います。さらに言えば、これは首相が東アジア共同体の話を言っていますけども、日本は欧米とアジアのゲートウェイになる。そのゲートウェイというのは通過点でありますから、情報のゲートウェイとしては改革を当然しなきゃいけない。お金のゲートウェイとしては、金融センターをつくる。そのための資本強化、労働強化、技術強化をやる。そういうまさに戦略的アジェンダをお立ての上でサプライサイドを強化して、そして隠された需要を掘り起こしていく。そのようなことをやっていただきたいと思います」

 「その意味では結論から言いますと、やはり税制改革と規制改革、民営化を伴わない成長戦略は私はあり得ないと思います。最後に研究開発なんかですね。各省庁がいろんな玉を持ってくると思いますが、実は経済産業省にある新産業創出の予算とういのは、だいたいアメリカと同じぐらいだというリサーチがあります。GDP(国内総生産)サイズでみると、したがって日本は新産業創出のためにすでにアメリカの2倍のGDP比で予算を使っている。しかし、それがほとんど霞が関で使われています。民間に使わせる仕組みになっていない。そういう点は新政権においてぜひ今までできなかったことをやっていただければ大変国民の高い評価になると思います。ぜひいろんなご意見をたまわりたいと思います」

 【菅氏:供給よりも需要が重要だ】

 「久しぶりに竹中さんの歯切れのいい話を聞かしていただいてありがとうございます。いくつかの点で私も最近、竹中さんが書かれた規制緩和なくして成長戦略はとないという今の話を読んできたんですが、まず若干、私は経済学者ではありませんが、根本的なことをちょっとお尋ねをしたい。供給を超える需要はないということを今言われました。しかしアダム・スミスの時代は供給が需要を決めたんだと思うんですが、少なくとも1929年以降は需要がなくて供給過剰になるという中での不況が多く起きたわけで、今まさにデフレという状況が生まれておりますが、私たちが考えている実は経済政策、あるいは成長戦略もそうですが、先ほど抑圧された需要という、表現は別として、そこはやや共通なんですけども、まず需要をつくることが重要ではないかと。つまり供給サイドを効率化する、競争で勝てるような供給サイドを作る。しかし需要がなければ競争に勝った企業は、それは企業としては成り立つけれども、負けたところからどんどん失業者が出ますから。完全雇用じゃない状況の中で私は需要サイドのことを、どちらかというとですよ、両方考えないといけないというのは共通です。需要サイドをいかにして新たな需要を生み出すかということがより重要だと思いますがその点はいかがですか」

 【竹中氏:成長には供給が重要だ】

 「副総理が言ってくださいましたように、私は需要を無視しているわけではまったくありません。ただ、ちょっとわかりやすく言うためにあえて申し上げますけれども、今35兆円の需給ギャップがありますから、いわゆる不況対策としてはそこに需要をつけてやることは絶対重要です。これはまさに公共事業であれ、いろんな意味での移転支出であれ、必要なわけですけれども、それでその瞬間の需要は高まります。需要の高まりがGDPですから、GDPは高まります。しかし、成長戦略というのはそこからどれだけ伸びていくかというのが成長戦略です。したがって、不況対策として需要をつけるということは重要ですけれども、その後どれだけ伸び率を高めるかということに関しては、実は供給側が伴っていないとだめなわけです。で、実はまさに90年代の失われた10年というのは、これはやっぱり公共事業をやって需要をつけると。それが当時必要ではあったけれども、それで終わってしまうわけですよね。そこから供給、つまりGDPが傾きとして上昇していくようなものがその中になかった。だから結局失われた10年になってしまったわけで、需要をつけるということは重要なんですけれども、その需要が将来の供給の、つまり成長の傾きを高くするように回さなければいけません。私が申し上げているのはそういうことです」

 【菅氏:小泉・竹中路線は失敗した】

 「最近私はですね、やや大胆にですね、経済における第三の道というのを内部で少しずつ言っているんです。つまり、今、需給ギャップを財政を埋めるのに一時的に効果があると言われました。私は80年代後半以降の公共事業は、投資効果はなかったとみています。つまりどちらかというと田舎に仕事を持っていくことによって格差是正にはつながったけれども、投資効果がなかった。典型で言えば私が高校時代、東京・大阪の新幹線、ご存じのように4000億円です。たぶん何十兆円の投資効果があったけど、本州・四国の橋は多分3兆円以上かかっていますが、ほとんど投資効果はゼロです。ですから、そういう第一の道は破綻(はたん)したと。次に率直に申し上げて小泉・竹中路線といわれているのは、今言われたように、例えばカルロス・ゴーンが来て、日産、正確な数字は別として1万人の労働者をですね、半分ほどリストラすると。確かに5000人の日産は高い生産性になったかもしれないけど、リストラされた5000人が新たな、完全雇用で新たなところで同じような効率高いところで仕事ができればいいんですが、結果として失業状態になり、低賃金であえぐようなことになれば、マクロとしては成長はしていないわけです。ですから私は一企業の日産はリストラできても、国は国民をリストラできないんだから、必ずしも個別の企業が競争力を高めることが、それを全部やったら、イコール、マクロ的な成長になるとはかぎらない。それは完全雇用の下ではなるかもしれません。そこで第三の道ということで今、この間の経済政策とか雇用政策で常に打ち出しているのは、雇用が新しい需要を生む。例えば介護などは雇用が増えることでイコール、サービスを増やすことになる。あるいは同じ費用でも1兆円で1兆円しか効果がないというのが今の経済財政の官僚のみなさんの計算なんですが、おかしいではないかと。1兆円でやっぱり11兆円ぐらい生み出すような知恵があるはずだ。それから規制について、抑圧されたと言われましたけど、私の言い方で言えば、社会ルールを変えることによって、規制を弱くする場合もあるし、強くする場合もありますが、それによって新しい需要なり、そういうものが特に環境分野で生まれてくる。ですから私はどうも竹中さんが言われるですね、供給サイドを強めればそれでマクロ的にもよくなるという考えは第二の道として失敗したというのが私の見方ですが、いかがですか」

【竹中氏:雇用を100万人増やした】

 竹中氏「いや、今副総理がですね、投資効果がゼロだとおっしゃいました。それはまさに供給サイドを考えているということです。つまり無駄な工事をやってもですね、それはそのときの需要と言いますか、お金をばらまくことにはなるけれども、それが新たな生産力を生み出すなり、全体の効率を高めることになっていないと」

 菅氏「それは第一の道です」

 竹中氏「第一の道。だから、副総理自身はまさに供給サイドを考えておられるんです。で、そういうことを考えてくださいということを私は申し上げているわけで。例えばですね、リストラ型とおっしゃいましたけれども、それはやっぱり違うんだと思います。なぜならば、リストラ型でどうして2003年から2007年までの間に100万人の雇用が増えますか。100万人雇用が増えたんですよ。これは。で、その間に、要するにリストラされた人もいます。しかし、新たな、例えば成長期待が高まることによって企業は投資をしました。企業の設備投資は当時は6%、7%、年々増えました。そしてそこで新しい需要が起こってきて、100万人雇用が増えているんですから。例えば小泉改革がリストラ型だというのは、これは私は違うと思います。で、繰り返し申し上げたいのは、なぜあのときああいうことが起こったかというと、これはやはり日本は技術を持っているわけだし、資本を持っているわけだし、きちっと不良な資産をなくして、そして民間にできることは民間でやるという態勢を作れば、日本経済はまだまだ伸びるぞというふうに国内の人も思ったし、海外の人も思った。だから2005年に株は42%上がった。そして設備投資、期待成長率が高まったから設備投資が増えて、そしてまさに効果が出てきた。私は、菅副総理が一緒だということは、やっぱり供給側に効果のあることをやりましょうと言っていることですから、私は何ら違わないと思う。で、そのために何をやったらいいかということに関しては、私は例えば福祉関係のまだ抑えられた需要のところでですね、いろいろやると。ただし、それを単に需要の振り替えだけでは実は供給サイドは全然強くなりませんから、つまり所得が増えないと、福祉に対するお金が増えたら、たくさん使ったら他の消費はなんか減らすしかなくなります。そこで所得全体が上がっていくような、まさに供給力が上がっていく、稼ぐ力が上がっていくようなことを中に入れていかないといけないということを申し上げているわけです。私は福祉を重点に置いて、環境を重点に置いて、技術立国を重点に置いて、アジアのゲートウェイを重点に置いて、そういうことを今まで十分にできていないわけですから、それをおやりになって、そこに供給側もうまく作るようなことをやれば成長戦略としては私は成功したものが作れると思います」

 【菅氏:構造的な成長ではなかった】

 「もう1点だけ。今の説明で共通な部分もかなりあるというご指摘なんですが、確かにある時期、株が上がったりしたことは私もよく記憶しています。ただ、この10年、20年という長さで見ると、先ほど80年代後半からはいわゆる財政出動による景気刺激というものが効果がなかった。で、私は小泉・竹中路線といわれた時代において、数字的なことはもちろん外需があったからとか、いろんな分析がありますけど、本当に構造的に成長的な線に乗っていたのかというと、必ずしもそう思わないんですね。確かにその規制緩和で、特に労働分野は非常に激しい規制緩和が行われて、ちょうど第一の道と逆に、第二の道で何が起きたかというと、格差が拡大したんです。第一の道はある意味で都市と農村の格差を是正する効果は確かにあったんです。投資効果はないけど是正効果なんです。第二の道は、より自由化することによって、ある種の企業が元気を取り戻して株価が上がったことは事実ですが、やはりそれが格差になると同時に、私はマクロ的にはそれで経済が成長する路線に乗っていたのか、一義的な外需の拡大によって保たれたという見方も結構強いんです。別に水掛け論をしようというんじゃないですよ。それを含めて今後のまさに昨日から始まったのが鳩山由紀夫首相を議長とする成長戦略策定会議なんですけども、共通の部分でも結構なんですが、私は言葉尻ではなくてですね、需要サイドから考えた方が供給の方向性も見えてくるんじゃないか。それから先ほど言われた規制緩和を競争力を強める規制緩和という見方よりも、まさに需要を高めるための規制緩和。あるいは規制強化。たとえば小宮山宏前東大教授のお家におじゃましましたが、エコハウスで、例えばガラス窓は二重サッシを、極端に言えば建築基準法を強化してですね、強制するなんて道も逆にあるかもしれません。ですから、まあ、水掛け論になってはあれですが、私はどうもですね、供給サイド、サプライサイドというのは少なくともこの10年、20年、場合によってはこの100年ぐらいの経済としては確かにある時期流行したことはよく知っていますけども、やや違ってきたんじゃないか。需要サイドから物事を見た方が的確な政策が打てるんじゃないかと思って今、そういう方向で今、いろんな案を作らせています」

 【竹中氏:改革すれば格差拡大は止まる】

 「えっと、結論から言いますと、需要サイドからいろいろな説明をしていかないと国民のみなさんは分からないと思います。分かってくれないと思います。資本と労働供給を増やすんだと言ってもそれはもう学者の議論でありますから、ですからそのために福祉を充実するとかですね、環境をやるとか、その説明で私はまったくよろしいと思います。ただし、その政策の個別の中身を考えるときに、実はその供給側が強くなるような仕組みを入れておいてくださいと。そうしないと空振りしますよということを私は繰り返し申し上げているわけで、説明の仕方として、私も政治的な立場に立たされたことがありますから、それは非常によく理解いたします。ただし、繰り返します。需要だけをつけることになってはいけませんと。で、そこの私はよく『ポリシー・トゥ・ヘルプ』と『ポリシー・トゥ・ソルブ』は違うという言い方をするんですが、そこを是非ですね、立案の過程で考えておいてくださいということを申し上げております」

 「それで前半のお話でですね、日本の経済構造が十分強くなかったのではないかということに関しては、それはその通りだと思います。だから改革の手がちょっと緩むとですね、実は日本の経済、非常に弱くなってしまっているわけです。繰り返しますけれども、2004年、2003年、2007年の成長の7割は内需だったんです。しかし、その後改革期待がしぼむと極端に内需がなくなってしまって外需依存になっている。日本の体質が不十分だということはですね、これは大企業の話をすると反発があるということは承知であえて言いますけれども、世界のトップ100社の中にですね、日本の企業というのは数社しか入りません。日本の大きな新日鉄という鉄の会社は今やミタルという世界最大の製鉄会社の半分なんです。規模は。パナソニックとソニーを合わせてもサムソンに届くか届かないかなんです。この10年間にですね、やはり日本のそういう企業体制はものすごく弱くなっている。よく企業がもうけていても、国民が大変だと。私は国民は大変だと思いますけれども、実は日本の企業が世界の中でどんどん弱くなっていることこそが、私は今のやはり実は最大の問題だと思います政治的にそれを表面に出すかどうかはともかくとして、そういう配慮がないと私はいけないと思う。で、格差に関してはですね、これはまさに内閣府でお出しになっている経済財政白書の一番最新のものを見ていただくと、格差は拡大しているんですけども、2000年の前半、つまり私が申し上げたように経済が成長している間は格差の拡大は緩くなるんです。だから、改革をしたから格差が拡大したというのはまったく逆で、改革して経済がよくなったとき格差の拡大はむしろ止まる。先般、長妻昭厚生労働相のところで出された相対的貧困率で見ると、相対的貧困率はあの時代減るんです。むしろ。だからそこは是非ですね、東京と地方の格差はあります。しかし、全体で見る格差というのは、今ワイドショーなんかで言われていることとは違う。これは内閣府の報告書自身に書かれていることですので、ここはぜひ、うまくいっていただきたいと思う」

(獅子16)菅副総理のいう経済効果が「11」という成長戦略、ぜひ、国会で論争したいですね。経済効果「1」に対して「ばか」といった菅副総理です。期待してます。それにしても、日本の大企業自体が弱くなっている。そして、東京もこれから弱くなっていく。大企業けしからん、東京けしからんといっているうちに、世界の中で日本がどんどん世界最高水準から落ちて行っている。この格差是正。それをしなければ、国民は幸せになれないでしょうね。