名目GDP470兆円と民主党と賃金デフレ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

名目GDP470兆円と民主党と賃金デフレ

秘書です。名目GDP470兆円は1991年並み。「失われた18年」になってしまうのか?

■COLUMN-〔インサイト〕政府・日銀を動かしたデフレへの危機感と市場の行方=Mスタンレー フェルドマン氏
2009年 12月 9日 13:31 JST ロイター
 デフレが久しぶりにマクロ経済政策の議論の中心になった。これは統計的、政策的、市場的に意味が大きい。
 <指標の動き>
 まず、物価指標を冷静に見る必要がある。しかし、「物価指標」と言った時には、総合消費者物価だけではない。変動性の高い項目を除く指標や、賃金指標、賃貸料、商品市況、国民の期待値も見る必要がある。
 物価指標の中でこわいものもある。まず、消費者物価のなかで、サービス価格が加速的に下落している。全国ベースでは、3月時点の前年比0.2%増が10月に0.5%減になった。東京ベースでは、同じく3月時点の前年比0.2%増が11月に0.8%減になった。
 生鮮食料品及びエネルギーを除く消費者物価(全国)は、昨年12月時点ではフラットであったが、今年10月に1.1%減という悪化に転じた
 物価以外の価格にも問題がある。労働の値段である賃金も悪化の兆しを示しているものが多い。現金給与総額(1人当たり、30人以上事業所、12カ月移動平均)は残業の縮小とボーナスの縮小から影響を受け、1990年5月の水準に戻った。1時間当たりの賃金の減り方が若干改善しているようだが、1人当たりの勤労時間がまた、不安定になっている。
 原油は確かに上がっている。最近の70ドル台後半は昨年12月の倍に2近い。ただ、これが日本にとってインフレ(全ての物価が上昇すること)につながるとは考えにくい。過去の統計もはっきりしている。
 これまでは、原油が上昇した場合、日本のGDPデフレーターあるいは賃金がむしろ減速、あるいは下がった例が多い。理由は簡単である。物価転嫁力が低い日本では、輸入コストが上昇するとその他のコスト(特に賃金)を抑えないといけないからである。原油上昇が消費者物価を上げるだろうが、同時に賃金を抑制する。賃金低下がいずれ消費者物価を抑制するので、ネットではインフレにならない。
 国民の物価期待もデフレへと動いている。7─8月が転換点であったが、その後、「物価が上がる」と思っている人の数は減り、「物価が下がる」と思う人の数は増加している
 このようなことを背景に、新政権と日銀が政策決定をしている。
 <政策変更>
 民主党のマニフェストにも、政策インデクスにも、「デフレ」という言葉は出てこない。しかし、ここ数週間、デフレが急に民主党の肝心なテーマになった。
 きっかけは11月発表された国民経済計算である。実質GDPは若干よい数字が出たが、デフレーターは大幅悪化であった。
 全体のGDPデフレーターは、4―6月期の前年同期比で0.5%増から7―9月期に0.1%減になっただけではない。大きく揺れる輸出及び輸入デフレーターを除くと、実態がもっと深刻である。消費デフレーターが同期間に1.5%減から2.4%減へ、住宅デフレーターが3.6%減から5.6%減へと悪化した。
 デフレが続く限り、雇用が改善に転じることは考え難い。加えて民主党政権が国民の審判を受ける2010年の参議院選はそう遠くない。早く対策を打たないと経済的にも政治的にも間に合わない。次の経済対策をとる理由として、デフレーターの悪化は充分なものだ
 GDP統計が発表された日、菅直人副総理兼国家戦略・経済財政担当相が実質GDPの改善よりデフレーターの悪化を強調したのは、民主党の政策転換といえるだろう。最初は、日銀が反発気味だった。ただ、日銀の「展望リポート」でも2011年にも物価の低下が続くということになっていたので、日銀が政府の見解と歩調を合わせてもおかしくない。
 この点は、民主党が果敢に動いたといえる。鳩山由紀夫首相が白川方明日銀総裁を呼び、金融政策の調整をお願いすることは極めて珍しいことだが、今回はそれがあった。いくら日銀の対策(期間3カ月の新型オペを10兆円規模で実施)が躊躇(ちゅうちょ)気味であっても、メッセージ性が非常に大きかった。
 <市場の反応>
 円相場も日本株も大きく反応した。しかし、日銀の実施した措置そのものよりも、日銀が起こした期待で動いた面が大きいであろう。すると、日銀の政策は1回限りのものである兆しが出れば、為替も株価も元に戻るだろう
 弊社は、ゆえに円相場が転換点に来たと思っている。来年末までは、1ドル=100円へ行くと思っている。これは株価にプラスであろう。ただ、この予測は、日銀がさらなる措置をとる、という前提に立っている。 
 ロバート フェルドマン モルガン・スタンレー証券 経済調査部長 (9日 東京)

(獅子16)民主党はデフレに対する危機感が薄かった。しかし、政策転換した。今後、日銀がさらなる措置をとるかどうかが注目だ、という趣旨と受け止めました。

■焦点:縮む日本経済、デフレで名目GDPが18年前に逆戻り
2009年 12月 9日 15:22 JST
 [東京 9日 ロイター] 9日発表された7─9月期国内総生産(GDP)2次速報で、名目GDPが470兆円に減少、リーマンショック前のピークだった2008年1─3月期から1割程度の落ち込みとなり、18年前の水準に低下したことが明らかとなった
 生産水準が回復しない中、雇用をある程度維持しながら賃金抑制でカバーする日本企業の体質も影響し、デフレ深刻化によって経済規模が大きく萎縮している姿が鮮明となった。
 <慢性デフレ構造、賃金抑制が主因>
 7─9月期GDPは成長率の下方修正幅も大きかったが、さらにショックが走ったのは水準自体の低下だ。金額ベースで名目GDPをみると、470兆円となり、4─6月期からさらに5兆円程度縮小、1991年の469兆円に迫るレベルに低下した。国内需要デフレータは1次速報ですでに51年ぶりの低下幅となっていたが、2次速報でさらにマイナス幅を拡大させた。需要の落ち込みだけでなく、物価の下落が日本経済の縮小に拍車をかけている。 
 みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、日本は慢性的なデフレ構造にあると指摘。日本の生産年齢人口の減少で国内総生産の規模が閉塞感の強い足取りとなっているとし、そこに米国過剰消費の崩壊の影響も加わり、名目GDPの厳しさが度合いを増した、と分析している。
 JPモルガン証券・チーフエコノミストの菅野雅明氏は、生産水準が未曾有の落ち込みからの回復途上にある中で、過剰雇用を抱える企業が収益を削って雇用を維持しながら賃金を抑制するという、日本特有の構造が強く影響しているとみている。米国では企業は過剰な雇用は解雇で対応し、失業対策という社会的コストは政府が受け持つ。
 日興コーディアル証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏も「賃金デフレが終息しないとデフレ脱却は難しい」と指摘する。
 <デフレの罠の可能性も>
デフレが需要自体を萎縮させている可能性が出てきた。今回の2次速報で設備投資が悪化した背景として、デフレ状況の下で企業の期待成長率が低下した可能性があるとすれば、日本がデフレスパイラルに陥りかけているとの見方もできる。12月2日公表のロイター企業調査でも、6割の企業が販売価格の低下が業績を圧迫していると回答。業績低下がさらに賃金抑制につながるのは時間の問題との指摘もある
 経済規模の縮小とデフレは、従来ならば需要回復を起点に解消するはずだが、今回は需要の落ち込みが急激で、生産の回復が緩慢であるとともに賃金抑制も長期化すると見られ、脱出には相当の時間を要しそうだ。
 <対症療法でデフレ脱却は困難に>
 このため、日銀がいくら流動性を供給しても、政府が経済対策で一時的に需要をつけても、対症療法ではデフレ脱却は難しい。
 政府は8日に09年度第2次補正予算を閣議決定したが、その内容は、津村啓介内閣府政務官が説明したように「株安、あるいは円高、いわゆるドバイショックと呼ばれる構造的な問題、そのほか高水準が続く失業率、こういったいくつかのネガティブな経済事象を視野にいれながら、デフレ宣言なども含めて総合的な視野に立って策定した」と総花的な感は否めない。
 日本経済が萎縮から方向転換するためには、企業も個人も活発な支出活動を行えるような環境を整える抜本的な政策が必要となる。政府にとっても名目GDPの低下は税収減に直結する深刻な問題であり、一刻も早くデフレを解消しなければ財政規律が危うくなることは、今回の予算編成過程をみても明らかだ。
 菅野氏は「政府はまずデフレ脱却に優先順位を置くべき」と主張する。そのためには3年程度の時間をかけて、財政規律を後回しにしてでも対応すべきとしている。ただ、財政支出効果の高い「ワイズ・スペンディング」に失敗すれば、デフレ脱却もままならず、財政規律も破たんしかねない瀬戸際に来ていると指摘する。
 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 伊藤純夫)

(獅子16)賃金デフレ、民主党はどうしますか?