鳩山政権への警告(市場発) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

鳩山政権への警告(市場発)

秘書です。親子関係・家族関係の比喩を国家関係・国の問題に持ち込むと、悲劇が起きます。

■【デフレの恐怖】(上)市場発 鳩山政権への警告
12月5日フジサンケイビジネスアイ
 □ローン不安生む国債増発
 鳩山政権は4日、デフレや円高に対応した追加経済対策の策定作業を続けた。これが日本経済の回復につながるかどうか、カギを握るのは、企業への融資や住宅ローンの金利などにつながる金融市場の動きだ。市場が鳩山政権の経済運営に向けて発信しているシグナルを検証する。
 「どうせ当面は大きく上昇しないだろうから、変動金利タイプに借り換えようかな」。住宅ローンの返済サポートや金融機関との折衝などを行うモーゲージプランナー(MP)、藤野義直は最近、顧客からこんな相談をよく受ける。「ローン利用者の多くが、金利の先行きに関心を持っている」と藤野は言う。
 実際、国債市場と長期金利の動きは、家計にさまざまな角度から波及する。住宅ローンはその一例だ。デフレ不況の直撃で賞与が減り、それをきっかけに返済計画見直しの相談に訪れる会社員が増えているのだ。
 住宅金融支援機構が2日にまとめた民間住宅ローンの借り換え実態調査によると、昨年11月から今年10月までの1年間での借換先は変動金利タイプが30%と、1年前の18・8%から急増した。だが、変動金利は、長期金利の上昇につられて引き上げられる可能性が常にある。藤野は「借換先を紹介するときには、リスクもきちんと説明する」と話す。
 ファイナンシャルプランナーで経済エッセイストの井戸美枝には今年に入り、家計防衛をテーマとした講演の依頼が増えた。井戸が訴えるのは借金をなるべく避けた、収入の範囲内での生活だ。「変動金利の利用は、金利が上昇しても払えるだけの資産や収入がないと怖い。 『子ども手当をあてこんで住宅ローンを組みたい』という相談もあるが、言語道断。いつまでもらえるかわからないものはあてにしてはいけない」と話す。
 ■マニフェストを
 「国債市場が不安定になれば長期金利は上昇する。それを抑えるため『国債版マニフェスト(政権公約)』を導入すべきだ
 11月13日、副総理・国家戦略担当相の菅直人ら政府関係者や大学教授、シンクタンク研究員ら10人が参集した東京・永田町の内閣府特別会議室。みずほ証券金融市場調査部チーフストラテジストの高田創(たかた・はじめ)が説明を始めると、資料に目を落としていた参加者の視線が発言者に集中した。
 会議は「財政に対する市場の信認確保に関する検討会」。国債発行や長期金利がテーマだ。
 長期金利は、返済(償還)期限が10年と決められた新規国債の利率が指標になり、住宅ローン金利や金融機関が企業に貸し出す金利の目安となる。跳ね上がれば個人や企業の資金借り入れが難しくなり、景気を悪化させる。予算膨張に伴う国債の増発が金利を上昇させる圧力となり、日本経済全体を揺さぶるというメカニズムもここにある。
 高田は「国債市場は常に金利上昇につながる圧力を内包しており、不安感が広がれば圧力を抑えきれなくなる。国債発行額の上限を示す数値目標や財政健全化の道筋を示すロードマップ(行程表)など政府の方針をまとめ、市場に伝えることが重要だ」と訴えた。
 ■“懐事情”に反応
 検討会をこの時期に開催したのは、それだけ差し迫った事情があるためだ。
 デフレ対策を迫られる政府には政策を支える財源が必要だ。子ども手当など鳩山政権の目玉政策を盛り込む平成22年度予算も概算要求段階で95兆円に膨らんだ。一方で21年度の税収は昭和59年度以来25年ぶりの低水準となる37兆円にまで激減しそうだ。
 鳩山政権は国債の大量増発に頼るしかなくなる…。そんな不安を募らせた市場は、真っ先に反応した。
                   ◇
 □「最悪のシナリオ」現実味
 ■政権へアラーム
 10月16日、政府が95兆円にのぼる概算要求を公表すると、それまで1・2%台で落ち着いていた長期金利は上昇カーブを描きだした。11月中旬には一時、1・5%に迫るまでに急騰した。デフレ対策の財源に充てられるはずの国債増発が日本経済を傷つける。矛盾に満ちた恐怖が現実味を帯びた。
 このとき市場が落ち着きを取り戻したのは、財務相藤井裕久の発言がきっかけだ。「長期金利は最大の関心事。国債マーケットを注視しろと省内で口酸っぱく言っている」。この言葉が伝わると、市場は鳩山政権が長期金利に関心を持っているとみて好感した。
 この一幕について、みずほ証券のチーフストラテジスト、高田創は「市場は手厚く対応されていることを知れば安心する。友愛ならぬ  『市場への愛』  が大事だ。一方で市場が抱えている金利上昇の圧力も裏付けられた。政府は金利動向を経済運営へのアラーム(警報)と受け取るべきだ」と指摘する。
 しかし大蔵省(現財務省)時代に国債管理を担う理財局長を務めた自民党参院議員、中川雅治は「現政権に『市場への愛』はない」と断言する。「民主党は選挙期間中、予算編成で21年度当初予算に計上した33兆円を超える国債発行はしないと言っていた。しかし政権発足後は1次補正後の44兆円を超える増発はしないと言いかえた。市場への裏切りだ」と批判する。
 検討会は12月2日、それまでの論点を「基本5原則、5つのアクション」として整理した。高田が主張した数値目標やロードマップも盛り込まれた。
 だが、会見した内閣府副大臣の古川元久は、検討会の成果を「今後の経済運営に反映させる」とアピールする一方、「これはあくまでも検討会の論点」と、政府全体の方針でないことを何度も繰り返した。
 鳩山政権が市場に伝えるべきメッセージの内容は読み取れなかった。
 ■スウェーデンの悪夢
 政府が国債を無原則に増発し続けたら何が起きるのか-。関係者の間ではしばしば恐怖のシナリオが話題になる。
 引き合いに出されるのがスウェーデンだ。1991(平成3)年から3年連続でマイナス成長に陥り、欧州通貨危機では通貨クローナが売り浴びせられた。財政赤字が拡大し、政府は国債を増発。93年には国債発行残高が国内総生産(GDP)の92%に達した。当時の政権が財政再建に消極的だったことから国債不安が一気に台頭し、94年7月、大手生保が国債の引き受け拒否を宣言した。それ以来国債は買い手がなくなり長期金利は急騰、クローナが暴落し、金融市場は大混乱に陥った。
 その年の秋の選挙で政権をとった社民党が増税と福祉の切り下げを実施し、98年にようやく財政安定にめどがついた。
 日本の国債発行残高は今年9月末時点で694兆円。GDPの1・31倍にあたる。長期債務残高は地方も含めると816兆円だ。日本の財政状況は、GDP比でみると財政危機に陥った当時のスウェーデンよりも危機的にみえる。
 この状況で長期金利が急上昇すれば、景気悪化が加速して「最悪のシナリオ」につながりかねない。国民や金融機関が保有している国債がデフォルト(債務不履行)に陥れば、日本経済が受ける打撃は深刻だ。円は信頼を失い、資金の海外逃避や猛烈な物価上昇(ハイパーインフレ)が起こるかもしれない。
 みずほ証券チーフストラテジストの高田は「国債暴落やハイパーインフレなどの可能性は低い」と言う。
 最大の理由は、国債の大半が国内で消化されている日本経済の特殊性だ。「家庭内でお父さんとお母さんがお金の貸し借りをしているのと同じ状況で、家庭内の信認があれば資金の流れに支障はない
 その背景にあるのが、長期債務残高を大きく上回る1441兆円もの家計金融資産や、貯蓄と投資のバランスを示す経常収支の黒字だという。
 「それでも」と高田は言う。「国債が債務の先送りであることは事実だ。信認を裏切らない努力の重要性にかわりはない」。国内消化を前提とした国債の大量発行は「発行元である国の信用が大前提」なのだ。
 中央大学経済学部教授の井村進哉も高田と同様、「国民が国債に寄せる信頼に甘えて政府が対応を怠れば、信頼は不信にかわる」と指摘する。
 これに対する鳩山政権からの回答は、まだない。(敬称略)

(獅子16)足りなければ、親はいつまでもおカネを出してくれる、信頼してくれている・・・その「親子関係的経済学」が崩壊するとき・・・