事業仕分けにみる「官公労」の影(2)印刷局国の機関化要求の怪 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

事業仕分けにみる「官公労」の影(2)印刷局国の機関化要求の怪

秘書です。独立行政法人をもう一度国の機関にする(官業化、大きな政府化)が事業仕分け結果ということで、びっくりしました。しかも、だれもおかしいといってませんね。びっくりです。

■印刷・造幣局見直し 仕分け最終日 サービス企業支援廃止
11月27日15時36分配信 産経新聞
 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は27日、平成22年度予算の概算要求の無駄を削減する事業仕分けの最終日の作業に入った。財務省が所管する独立行政法人の国立印刷局と造幣局について、国の組織に戻すことを含めて法人の在り方を抜本的に見直し、業務の効率化と不要資産の売却も進めるよう求めた。

 印刷局、造幣局はそれぞれ20年度末時点で345億円、104億円の利益剰余金を保有。仕分け人は「利益剰余金を国庫に戻す努力が足りない」、「独法化したことで、かえって高額報酬の役員が増えている」などと指摘した。

 また印刷局は、仕分け作業の実施会場となっている体育館=廃止予定=を保有しており、関係者から「東京の一等地に職員の保養施設があること自体が無駄だ」と批判が出ている。同日の議論で印刷局側は「体育館は廃止予定だ」と強調した。・・・

(獅子16)びっくりしました。事業仕分けのどさくさにまぎれて国の機関化ですか?なんで、民主党は「官業焼け太り」の国立印刷局の国の機関化なんていいはじめたんでしょう。

行政改革会議第2回企画・制度問題及び機構問題合同小委員会議事概要(平成9年10月1日)に以下のような記述がありました。

「独立行政法人の職員は強制解雇されることがなく、また、公務員より給与が低くなることはないという程度の条件では労組は納得しないのかとの指摘があった。これに対し、例えば印刷局の労組が最も国家公務員であることに固執しており、固執するのは郵政、印刷、造幣などではないかとの発言があった。関連して、公務員というのは一つの名誉であるが、意識は世代によって変わってくるものであり、本日のヒアリングの説明のように、身分が変わってしまえば何のことはなかったということになるのではないかとの発言があった」

なるほど、日本郵政官業化と印刷・造幣の官業化、国家公務員身分の保証は一体なんですね。全印刷局労働組合(全印刷)という4600人の組合があるんですね。この組合員の利益と財務省の利益は一致するのでしょうね。きっと。

(獅子16)体育館の「廃止予定」ですが、ちょっと気になる表現ですね。廃止と売却はちがうかも?体育館は廃止して、土地を「有効活用」いたしますとか。だって、「不要資産の売却」でしょ。不要じゃないといえば売却しないでいい、有効活用すればいいとなりませんか。疑いすぎかな?それと、大手町の遊休地。ずっと前から売却方針はあるでしょう。しかも売却益の2分の1しか国庫に入らない(全額国庫納付のための法案を渡辺行革大臣がだしたけど民主党の反対で廃案)。では、そのことを学習するために最後にAERAの引用で締めくくりましょう。

■財務省の「資産隠し場所」
2009年11月24日 AERA
無駄遣いを切り捨てた、政府・行政刷新会議の「事業仕分け」。
仕分け外になっているものに目を凝らすと、「彼ら」の狙いが見えてくる。
 いま最も有名な体育館だろう。「事業仕分け」の会場となった体育館の正式名称は、国立印刷局市ケ谷センター。11月17日までの第1ラウンドで46事業を議論し、約1兆円分が「無駄遣い」と判断された。
 民主党議員ら「仕分け人」の容赦ない質問攻撃が連日伝えられる中、官僚OBたちが同じ感想を漏らしていた。
「あそこで無駄の見直しをするなんて、まるでブラックジョークだ」
 なにがジョークなのか。
 市ケ谷センターと持ち主の国立印刷局自体が、無駄の見直しを指摘され続けてきた存在だからだ。
無償提供の国有地
 紙幣や切手、官報などを印刷する国立印刷局はもともと、財務省の一部局だった。2003年、行政のスリム化を目指す改革にともない、独立行政法人(独法)となった。職員約4700人の大半は、財務省(旧大蔵省)に入省した公務員だ。
 印刷局は、
「独法化で国からの補助金がなくなり、独立運営をしている」 というが、実際の業務は従来通り、日本銀行や官公庁が相手で、ライバル会社はない。紙幣や切手など公共性の高い印刷物は理解できる。だが、国会本会議の速記録など、すでに公開情報のため民間企業で印刷してもよさそうなものも、ほぼ独占的に霞が関から受注している。
 事業だけでなく、資産も霞が関に依存している。
 印刷局が持っていた工場や土地など大量の資産はすべてが国有財産だったが、独法化の際、国から印刷局に無償譲渡された。
 印刷局の独法化に前後して、政府は、「国有財産」の処分を進めていて、他省庁の資産の処分が相次いだ。そんななか、財務省が所管する印刷局は手つかずのまま独法化され、その後の処分もほとんど進んでいない。
 官僚OBの一人は言う。
印刷局は財務省の資産の隠し場所になっている
 市ケ谷センターには、一般公開されている「お札と切手の博物館」と、印刷局職員の研修施設として体育館、プールがある。事業仕分けの会場に使われている体育館は、独法化の前年に5億円かけて建てられたもの。単純計算で、利用者は1日20人。収益も出ない研修施設だ。
 ほかにもある。
利益剰余金は345億
 JR東京駅を丸の内側に出る。右を向いて線路沿いに5分も歩くと、広い空き地に突きあたる。ここも、印刷局が国から無償提供された土地だ。
 空き地に並ぶ敷地には、日本郵政、NTT東日本、NHKが共同運営する逓信総合博物館などがある。印刷局が08年度、この3者などから受け取った賃料は年間約25億円で、税金分を除いた利益20億円は経常利益の4分の1を占めた。
 無償でもらった元国有地で稼いだ利益などが積み上がり、09年3月現在、印刷局の利益剰余金は345億円になった。
 原口一博総務相は10日の記者会見で印刷局を名指しし、批判した。
「本予算はばんばん細る中で、(独法や特別会計が)剰余金をたくさんため込んでいることはあってはならない」
 独法と特別会計は、各省庁の裁量が大きく、天下りや無駄遣いの温床となっていて、実態が見えにくい。民主党はマニフェストのトップでこれを取り上げ、「無駄削減の本丸」と位置づけてきた。原口総務相は、印刷局の利益剰余金がこの「本丸」にあたる、と指摘したのだ。
 当然の主張に思えるが、印刷局の神田勝俊経営企画部参事の言い分は少し違う。
「積み重なった剰余金は職員の退職金に充てている。経営基盤の安定のために必要な収入だ」
 さらに罪深いのは、逓信総合博物館とならぶ空き地が、3年間、手つかずのままだということだ。東京駅にほど近い超一等地だから、転売すれば、巨額の金になるはずだ。東京都内の不動産鑑定士は言う。
「税制の優遇を受ける独法は、空き地で持っていても固定資産税がかからないから、活用するインセンティブがない。民間企業に譲れば、税収が入るが、その機会も逃している」
国庫返納は半分だけ
 印刷局が持つ莫大な資産はここだけではない。霞が関にほど近い東京・虎ノ門。アメリカ大使館やホテルオークラのある一等地に、印刷局の本部機能と印刷工場がある。東京を中心に、印刷局職員のための宿舎も多く持っている。
 政府は07年末、独法の整理合理化計画をまとめ、市ケ谷センター、大手町の敷地、虎の門工場などの資産も売却を検討され、会計検査院も印刷局に対して資産の無駄遣いを何度も指摘している
 本誌の取材に対し、印刷局は当初、資産の売却について、
売却益を国庫に返すための仕組みが、まだできていない
 と説明を繰り返した。しかし、本誌がさらに取材すると、職員宿舎の一部を売却していた。9カ所の宿舎の売価は3億5千万円。簿価と同じ値段のため、売却益はないという。
 それでは、売却益が出ていたらどうしたのか。聞くと、答えはこうだった。
「独法通則法の定めにしたがって、売却益の半分は国庫に返納し、残り半分は印刷局の収入にする。全額を国庫に返納するには新たな法整備を待つほかない」
 タダで譲り受けた国有財産から賃料収入を得て、売却したら利益の半分は自分のものにするという。利益剰余金345億円のほか、時価とはけた違いに低く算出される「簿価ベース」でも3700億円にも上る印刷局の資産は「埋蔵金」として眠ったまま、今回の事業仕分けの対象にもならなかった。
財務省は「以蔵」だ
 官僚OBの一人は、
「今回の事業仕分けの主導権を握った財務省が身内には甘く査定した結果だ」
 と言う。
 50を超す事業が仕分け対象となった役所がある一方で、財務省の事業はたった八つ。
 仕分け作業でも、各省の官僚が事業の必要性を説明した後に、財務省の担当者が「論点の説明」として無駄と見られるポイントについて解説する。メディアでは民主党議員の容赦ない質問ばかりが映し出されるが、議論の流れを作っているのは財務官僚だ。
 自分たちの無駄には切り込まず、他省庁の無駄減らしのために、仕分け作業を仕切る財務省に対し、他官庁の不満は強い。
 原口総務相は前出の記者会見でこう不快感をあらわにした。
「あなた方だけが査定をして、どこか雲の上から人をたたき切る、『人斬り以蔵』のようなのんきな話だ。財務省も聖域ではありませんよ」
「ノーパンしゃぶしゃぶ」で有名になった大蔵スキャンダル以降、財務省はこの10年、存在感を高めきれずにいた。
 自民党政権時の「改革」をリードした経済財政諮問会議で、専門委員を務めた中央大学の野村修也教授は言う。
「様々な問題に大なたをふるう事業仕分けは、評価すべき点は多いが、それを利用して財務省が『復権』するのはおかしい」
 事業仕分けの第2ラウンドは24日、国立印刷局市ケ谷センターの体育館で始まる。

(獅子16)この記事を読んでいただいておわかりのように、「売却検討」なんていうのは以前からあって、まさか「見直し」が「売却検討」の見直しなんてことはありませんよね。もっとつめないということは、現状維持のまま推移する可能性がかなり高いということでは。