公約が互いに矛盾することを知っていた人々の歴史 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

公約が互いに矛盾することを知っていた人々の歴史

秘書です。連休中に、ピーター・ドラッカーの「経済人の終わり」(ダイヤモンド社)という本を読みました。ドラッカーが1939年に書いた本で当時チャーチルも絶賛した本。日本語訳は2007年出版です。

「新しい秩序を生み出せず、さりとて秩序の代わりにつくり出した組織も役に立たないという宿命から、ファシズム全体主義の最も矛盾し、かつ最も当惑させられる最も重要な特性が生ずる。すなわち、ファシズム全体主義に対する大衆の態度である。
 一方において、ドイツとイタリアでは、大衆の圧倒的多数が現政権を支持しているという。ところがその一方において、彼らの圧倒的多数が現政権に対して極めて不満であるという。いずれかが間違っているはずである。だが実際にはいずれも正しい。大衆は不満であればあるほど政権への支持を強める。
 この矛盾を解く鍵は、大衆には現政権以外に選択肢がないことにある。ブルジョワ資本主義やマルクス主義に戻ることは、耐えがたい魔物たちの住む意味のない崩壊した世界に立ち戻ることである。」(ドラッカー)

(獅子16)鳩山政権には個別政策には不満が高いが内閣支持率が高いという世論調査結果が出ていますね。ちなみに、ドラッカーによると、ファシズム全体主義に特有の新しい症状は、①積極的な信条をもたず、もっぱら他の信条を攻撃し、排斥し、否定する、②すべての古い考え方を攻撃するだけでなく、政治と社会の基盤としての権力を否定する、③ファシズム全体主義への参加は、それを信じないがゆえに行われる、だそうです。「大衆は、ヒトラーの公約の一つひとつが互いに矛盾することを知っていた」のだそうです。ここもいまの民主党マニフェスト議論と似ていますね。だとすると、民主党マニフェストの矛盾を指摘しても何の解決策にもなりません。なんで当時、それでも支持されたのか。当時は、旧秩序の崩壊と新秩序の欠落による純なる絶望こそがそのカギだったようです。自民党は、前方に進む道を示さないと。
「戻るべき過去への道は洪水で閉ざされ、前方には超えるすべのない絶望の壁が立ち塞がっているとき、そこから脱しうる方法は魔術と奇跡だけだからである」
歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として、とならないように。