(「新しい共同体」・「新しい公共」)鳩山首相に「官が担う公共領域の縮小」・「民が担う公共領域の拡 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(「新しい共同体」・「新しい公共」)鳩山首相に「官が担う公共領域の縮小」・「民が担う公共領域の拡


昨日の所信表明演説で、鳩山首相は「人間のための経済」への転換を唱え「経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめようということだ」と力説した。

このことがマクロ経済政策の方針を提示しない理由のようである。では、どのような評価軸で経済政策を運営しようというのだろうか。

例えば、「環境・経済統合勘定」という考え方がある。そういう評価軸で経済をとらえようというのは一つの見識である。しかし、高速道路無料化やガソリン減税という政策はこの考え方からは否定されるであろう。

「人間のための経済」政策で「日本経済を自律的な民需による回復軌道に乗せる」というなら、その目標の評価軸を示すべきではないだろうか。

鳩山首相は「誰もが尊厳をもって、生き生きと暮らせる社会を実現することが、私の進める友愛政治の目標」と述べたが、その友愛社会の具体的数値目標を提示すべきではないか。

私は、デフレのままで、鳩山首相のいう「人間のための経済」や「友愛政治」は不可能だと思うのだが、昨日の鳩山首相の演説では、「経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめようということだ」ということで、デフレ問題への言及はなかった。これは誤りだ。

さて、鳩山首相の「新しい共同体」「新しい公共」という概念の提起には、自民党も受けて立つべきであろう。公共分野において税金から報酬を得る官の領域を維持したまま、これを民間のボランティア(無償)で補完する、というものは決して、「新しい共同体」でも「新しい公共」でもないと私は考える。

「小さな政府」の旗のもと、「官が担う公共領域の縮小」と「民が担う公共領域の拡大」こそが「新しい共同体」と「新しい公共」の鍵である。

鳩山首相に問われなければならないのは以下の2点である。

第一に、「官が担う公共領域の縮小」をやる覚悟はあるのか。それは官公労の既得権益の縮小と、公共サービスの民営化を意味する。

第二に、「民が担う公共領域の拡大」をやる覚悟はあるのか。民間が公共領域を担うのはボランティアのみで生業とすることは許されないと考えるのか。これは郵政民営化見直しにかかわる哲学問題である。そして、公共的性格を持つ機関トップの人事に官僚OBを指名するかどうかの哲学問題にもつながる。日本郵政社長人事に官僚OBしかふさわしい人がいないというのは「民には公共は不可能である」という「古い公共」としか思えない。

「人間のための経済」は公共的サービスの民間開放によってこそ可能になると思う。公共的サービスを官の独占に戻そうとする政権には実現不可能である。このことを国会論戦で鮮明にしていこうではないか。(10月27日記)

(参照記事)日経新聞社説「意欲見えても中身あいまいな首相演説」

「鳩山由紀夫首相が就任後初の所信表明演説に臨み、政治主導で『戦後行政の大掃除』に取り組む決意を示した。首相は『誰もが尊厳をもって、生き生きと暮らせる社会を実現することが、私の進める友愛政治の目標』と述べ、自らの政治理念である『友愛』へのこだわりもみせた。

自分の言葉でわかりやすく語ろうという意欲は感じられた。各省の重点施策をたばねた従来型の所信表明演説のスタイルを排し、演説内容は『脱官僚依存』を印象づけた。ただ50分を超える長い演説を聞いても、政権が目指す国の姿が明確になったとは言い難い。

首相は『人間のための経済』への転換を唱え『経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめようということだ』と説明した。そのうえで雇用や人材育成の安全網の整備、食品の安全、消費者の視点重視などを強調し『国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済、社会への転換』を訴えた。

一方で『日本経済を自律的な民需による回復軌道に乗せる』ことを最重要課題に掲げた。低炭素型産業を成長の柱に据えることや、規制の全面的な見直し、羽田の24時間国際拠点空港化などにも言及している。

しかし演説全体の基調は、成長戦略を通じて国を豊かにするというメッセージ性が乏しい。首相は成長戦略をはじめとするマクロの経済運営の方針を早急に示す必要がある。

沖縄・普天間基地の移設などの在日米軍再編問題では『地元の皆さまの思いをしっかり受け止めながら、真剣に取り組んでいく』と述べるにとどまった。普天間移設問題で米側は11月のオバマ米大統領の来日前の決着を求めており、安保摩擦は深刻だ。展望のないまま結論を先送りする首相の姿勢には危惧を抱かざるを得ない。

インド洋上での海上自衛隊による給油活動は、今国会に延長法案を提出しないため、来年1月に中断することが確実な情勢だ。にもかかわらず『単純な延長は行わない』と繰り返すだけでは、アフガニスタン支援への本気度は伝わらない。

日本郵政の西川善文社長の辞任を受け、鳩山政権は斎藤次郎元大蔵次官を後任に起用した。大物官僚の天下りであるのは明白だ。首相が天下りや渡りのあっせんの全面禁止を訴えても、これでは説得力がない。自身の個人献金の虚偽記載問題では『政治への不信を持たれ、誠に申し訳ない』と陳謝したが、今後の国会論戦では首相の説明責任が厳しく問われることになる」。