(鳩山連立政権)金融・経済・財政政策のパッケージの提示を求める | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(鳩山連立政権)金融・経済・財政政策のパッケージの提示を求める

読売社説に書いている「経済実態は短観より悪いのではないか」という疑念は、市場のみならず、国民の間にも広がっていると思う。

確かに、日銀短観での大企業の製造業の業況判断指数はマイナス33と前回6月調査より15ポイント改善している。

大企業製造業では、在庫調整の進展、輸出の持ち直し、エコポイント効果による内需の持ち直しが見られる。

麻生政権による景気対策により、景気は一時的に下げ止まったものの、依然としてダウンサイド圧力がかかり続けていると思われる。

ダウンサイドリスクの第一は、需要不足(GDPギャップ)の存在である。

大企業での景況感が改善している一方で、非製造業や中小企業での改善が、きわめて弱くなっている理由は、需要不足(GDPギャップ)があまりに大きく、設備と雇用の抑制が続いていることが原因だと考えられる。中堅・中小企業の雇用過剰感は過去最悪水準に近い。設備の抑制や、雇用抑制、賃下げが続けば経済は良くならない。6月時点でのギャップは40兆円以上だったが、9月になってもほとんど縮小していないのではないか。物価面では8月の消費者物価は過去最大のマイナス幅を記録し、今後もデフレ傾向が続く可能性が高いのではないか。

 中小企業を苦しめているのは、需要不足を背景とした売り上げの低迷や、単価の下落などが主因であり、モラトリアムは問題の先送りにしか過ぎないのではないか。金融システムへの打撃を考えると、適切な政策ではないと考えられる。

ダウンサイドリスクの第二は、円高である。日銀短観への回答時点で企業側が想定した今年度の円相場は今より5円安程度だったのではないか。この5円高が、自動車、電機の輸出企業および下請関連企業とそこの働くみなさんに悪影響を与えるリスクがある。

いま、鳩山連立政権の個別政策に注目が集まっている。しかし、そのような個別政策が全体としてどのような日本経済をつくりあげ、国民生活はどうなるかの議論が欠けているのではないか。鳩山連立政権には日本経済の現状を冷静に分析し、有効な対策を金融・経済・財政のパッケージとして提示することを求めたい。(10月2日記)


(参照記事)読売新聞社説「日銀短観」「改善に水を差す円高が心配だ」

「企業の景況感は上向いたとはいえ、深い谷底から少し上がっただけだ。景気が腰折れしないように、政策支援の手を緩めてはならない。日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景気認識を示す業況判断指数が、大企業の製造業でマイナス33と、前回の6月調査より15ポイント改善した。2期連続のことで、改善幅は6月調査より5ポイント拡大した。

アジアなど海外経済の回復による輸出増加が追い風となった。ただし、指数自体は大幅なマイナスで、企業心理は冷え込んでいる。このため、景気が今後、着実に回復するか予断を許さない。

まず、円高が心配だ。9月上旬までに7~8割の企業が回答を終えていたため、その時点で企業側が想定した今年度の円相場は、平均1ドル=94円50銭と、現在よりも5円ほど円安だった。自動車や電機など、円高が輸出に打撃となる主力産業では、実際の景気認識は短観の数字より、かなり悪化しているだろう。雇用や設備の過剰感は強く、今年度の製造業の設備投資計画は、過去最大の落ち込みを示している。

経済実態は短観より悪いのではないか。そんな疑念から、1日の東京市場で、平均株価の終値が約2カ月ぶりに1万円を割った。景気を冷やす円高が一気に加速するようなら、円高阻止のための市場介入も必要となろう。

非製造業の回復の鈍さも気がかりだ。大企業・非製造業の業況指数の改善幅は5ポイントと、製造業の3分の1にとどまった。非製造業は小売りやサービスなど内需関連が多く、内需の弱さは否めない。エコカー減税などの消費拡大策も息切れが懸念される。補正予算の組み替えで公共事業を削れば、建設業などに悪影響が出よう。緊縮政策は避けねばならない。中小企業の指数は、製造業、非製造業とも改善に転じたが、底ばいに近い。非製造業は次回調査で悪化に逆戻りする見込みだ。

サラリーマンの4分の3が働く中小企業が元気にならないと、雇用も消費も、本格回復はおぼつかない。特に、中小企業の資金繰りは、1990年代後半の金融不況に匹敵するほど厳しい。亀井金融相の言う返済猶予制度(モラトリアム)では、金融機関が融資に尻込みして、かえって貸し渋りが増える恐れもある。焦げ付いた返済を公的資金で肩代わりする「緊急保証制度」の拡充など、効果的な金融支援の追加策を急ぐべきだ」