(子ども手当)出生率改善効果・景気回復効果・所得制限なしの根拠を聞きたい | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(子ども手当)出生率改善効果・景気回復効果・所得制限なしの根拠を聞きたい

岩見隆夫さんのコラムの結語にある「要は党益ではなく国民益だ」は、正論である。

岩見さんは、「子ども手当も高速道路無料化も、このままで危険だ。子育てで参考にしたフランスの政策には、手当だけでなく、総合的な支援戦略があった。だから出生率がアップしたのだ。日本には戦略がない」という民主党幹部が語ったとする言葉を引用している。

自民党が国民に対して納得感のある大胆な戦略を打ち出せなかったことが、民主党の「子ども手当」支持につながってしまったことは反省しなければならない。しかし、民主党にも戦略がない。

参議院選挙までに、本当に出生率アップにつながる少子化対策の戦略が出てくるのだろうか。それとも参議院選挙対策として、子ども手当だけ出せばいいと考えるのだろうか。

子ども手当は、防衛費を上回る巨費である5・3兆円である。

そもそも、子ども手当でどれだけの出生率改善効果があり、世界に宣伝するような景気回復効果があり、また、所得制限なしとする根拠は何なのか、国会の場で大いに議論しなければならない。

岩見さんが指摘するように、所得制限すれば兆円単位で削減できる。高額所得者への子ども手当が「無駄」ではないのか、どのような発想でそうなるのか国会で大いに議論したいと思う。

もちろん、自民党も批判するだけではなく、これまでの政策を根本的に見直さなければならない。現実的、かつ、根本的な見直しが必要である。そのための自民党新体制でなければならない。(9月26日記)



(参照記事)毎日新聞「近聞遠見」岩見隆夫氏の「新たな『無駄』を生むな」

「<始動>の語感はなかなかいい。歴代自民党政権の発足時、この表現はなかった気がする。だが、始動に伴う危うさも随所にある。鳩山新政権の看板政策である<子ども手当>論争を聞きながら、考え込むことが多い。子育て政策について、民主党は深い論議をしてきたのか。

連立を組む社民党党首の福島瑞穂少子化担当相はテレビ画面でにこやかに、『新政権は子どもにお金を使います』と約束してみせた。お金を投じることが子育ての最優先課題のように聞こえるが、そんなに単純なことだろうか。少子化問題はお金で片づく話だろうか。そうではない、と反論がありそうだ。しかし、<子ども手当>政策の底に流れる思想は、まずお金、である。<家貧しくして孝子顕る>という古い諺をいま口にする人はいない。現代社会とは無縁のことかもしれない。

だが、子育てを考える時、時代を超えて教訓的だ。家が貧乏だと、子どもも家のために働く。その善行が孝行な子として人に知られる。逆境のなかからこそ立派な人物が現れる、といった意味だ。それだけではない。親も、子どもが貧しさに耐え1人前に育つように、せめて教育だけは身につけさせたいと懸念になる。私たちの世代はそんな雰囲気だった。貧乏の奨励などではもちろんない。だが、この諺は、子育てがお金第一ではないことを教えている。

さて、<子ども手当>は批判もあるが、人気が高い。中学卒業までの15年間、1人月額2・6万円、年額31・2万円、15年トータルで468万円、2人っ子だと936万円、大きな額である。若い両親には朗報だ。

しかし、民主党が主張する一律支給は賛成できない。社民、国民新両党が所得制限を求めたのは当然で(社民は方針を変えたらしいが)、バラマキは下策である。<家豊かにして>のところ、つまり子育てできる経済的余裕がある家庭にまで支給する理由を聞きたい。所得制限すれば上限額によるが、年間財源5・3兆円のうち兆単位で減額できる。それを一律で押し通すのは新たな無駄遣いではないか。

今春、民主党が麻生政権の定額給付金に強く反対した理由の1つは、高額所得者にも支給する一律バラマキの愚策にあった。それをこんどは民主党がやろうとしている。藤井裕久財務相は、『豊かな家庭とか、貧しい家庭とかは何の関係もない。子どもは社会からの預かりものという前提に立っている。民主党のマニフェスト(政権公約)には<所得制限なし>と書いてある。マニフェストは断固守るということだ』と言うが、マニフェスト至上主義は危うい。公約を貫く構えは貴重だが、批判封じになりかねない。

防衛費(09年度当初予算で4・8兆円)を上回る巨費を、現金支給することが、子育てにどんな形で役立つのかも不安である。何となく消費されてしまう恐れはないか。民主党幹部の1人は、『子ども手当も高速道路無料化も、このままでは危険だ。子育てで参考にしたフランスの政策には、手当だけでなく、総合的な支援戦略があった。だから出生率がアップしたのだ。日本には戦略がない』と明かした。選挙用のバラマキ型マニフェストにこだわりすぎると、民主党は墓穴を掘る。肉付けし、現実的に練り直すのは期待を裏切ることにならない。言わずもがなのことだが、要は党益でなく国民益だ」