(鳩山政権)協力すべきは協力するが「マクロ経済無策=市場放任主義」が心配だ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(鳩山政権)協力すべきは協力するが「マクロ経済無策=市場放任主義」が心配だ

 鳩山首相は政権交代への期待に応える使命がある。同時に、自民党にも、いままでのような何でも反対の野党とは一味違う野党となることへの期待に応える使命がある。

野党・自民党は、国民の立場に立って、鳩山政権に「協力すべきは協力」しなければならない。

まずは、「政治主導体制の確立」だ。政治主導確立のための法改正には積極的に協力していこうではないか。しかし、財務省主導を政治主導と言い換えるような「妥協」には厳しくチェックしていかなければならない。国家戦略局については、必要な法案について、民主党が政府提出しにくいことがあれば、民主党議員といっしょに議員立法で政治主導体制を固めるぐらいの協力が自民党には必要だ。

次に、無駄の削減だ。「無駄の削減競争」は望むところである。自民党は予算委員会審議の中で、無駄の削減を具体的に追求できる精鋭議員で質問や討論をしていくべきだ。もちろん、民主党が弱者をもばっさり切り捨てるようなことをしてきたら、自民党は堂々と弱者の側に立たなければならない。

しかし、野党・自民党は、国民の立場に立って、鳩山政権の誤りは正し、常に代案を提示していかなければならない。心配なのは「マクロ経済無策=市場放任主義」である。(9月17日記)


(参照記事)日経新聞社説「鳩山首相は政権交代への期待に応えよ」

「民主党の鳩山由紀夫代表が第93代首相に選ばれ、民主、社民、国民新3党による連立政権が発足した。衆院選で民主党が308議席を獲得した歴史的な大勝を受けての、新政権の船出だ。鳩山首相は政権交代への有権者の期待に応え、着実にその成果を示してもらいたい。

民主党はマニフェスト(政権公約)で『政権党が責任を持つ政治家主導の政治』を実現すると約束した。長く続いた自民党政権下での政治家と官僚の関係や、政策決定の仕組みを変える新たな試みが始まった。

鳩山首相は内閣の要の官房長官に側近の平野博文氏を起用し、政策決定の司令塔になる国家戦略局の担当相には菅直人氏を充てた。菅氏は副総理も兼ねる閣内ナンバー2だ。蔵相経験のあるベテランの藤井裕久氏が財務相に、政策通の仙谷由人氏は新設する行政刷新会議の担当相に就いた。年金問題などを所管する厚生労働相に中堅の長妻昭氏を登用した目玉人事以外は、党内バランスに配慮した手堅い布陣という印象が強い。民間人の起用は見送った。

予算編成の基本方針などを策定する国家戦略局の創設は法改正が要る。当面は国家戦略室を立ち上げて対応するが、その権限は不明確で、混乱が生じる恐れもある。省庁間の調整役の官房長官と、菅担当相との役割分担も大きな課題になる。首相と菅担当相、平野長官が日々緊密に連絡を取り、政策のすりあわせをすることが肝要だ。

鳩山政権は今後4年間、経済の立て直しや新たな成長戦略の策定、少子高齢化に対応した社会保障制度の改革などに取り組まねばならない。郵政民営化に反対する国民新党の亀井静香代表を郵政・金融担当相に起用したことで、民営化路線の後退が懸念される。規制改革などの構造改革は経済の再生に不可欠であり、停滞は許されない。

新政権にとって2010年度の予算編成が最初の正念場だ。政権交代はしがらみを断ちきる好機であり、無駄遣いの排除や硬直的な予算配分の見直しは大胆に進めてほしい。ただ子ども手当の半額支給など来年度に予定している新規施策だけでも7・1兆円の財源が必要になる。無駄遣いの排除などで工面できるかは不透明だ。不足分を国債増発で補うことになれば、金利上昇を招くリスクがある。景気動向にも目配りしながら、柔軟な姿勢で予算編成に取り組むよう要望したい。景気への悪影響を避けるために、予算案は確実に年内編成すべきである。

鳩山政権は政治主導の象徴として事務次官会議を廃止した。新設する閣僚委員会を実質的な政策決定の場にできるかどうかは、閣僚の力量にかかっている。定期的な内閣改造はやめて、1人の閣僚がなるべく長く務めることが望ましい。

内閣の下に政策決定を一元化するためには、党との関係も重要になる。民主党は国会運営の最高意思決定機関として鳩山首相や小沢一郎幹事長らで構成する党首脳会議を新設する方針だ。首脳会議の運営を透明にして、小沢氏との二重権力を招かぬようにしなければならない。

下旬に開催される気候変動サミットや核不拡散・核軍縮に関する国連安保理首脳級会合、20カ国・地域(G20)首脳会議(ピッツバーグ・サミット)などに出席するため、鳩山首相は就任早々に訪米する。

鳩山氏は首相就任に先立ち、温暖化ガスの排出を1990年比で25%削減する中期目標を設ける方針を表明した。90年比で8%削減という麻生前内閣の方針を転換するもので、国際社会にも日本の政権交代を印象づけた。大きく踏み込んだ中期目標を生かして、中国やインドを温暖化ガス削減の国際的な枠組みに取り込んでいく手腕が問われる。

鳩山政権で懸念されるのは対米関係だ。鳩山首相は訪米中にオバマ大統領との初の首相会談に臨む予定になっている。民主党は来年1月に期限が切れるインド洋上での給油活動を延長しない方針だが、米政府は再検討を求めている。普天間基地の移設など在日米軍の再編問題でも、政府間合意の履行を求める米側と新政権の姿勢には差がある。

首相は就任記者会見で『大統領との信頼関係構築が第一歩だ』と語った。そのためには良好な日米同盟関係を維持する行動が欠かせない。参院で過半数を確保するため、外交・安保政策などで開きがある社民、国民新両党と連立を組んだことが新政権の不安材料になっている。選挙結果を踏まえれば、民主党を中心とする政権運営が当然であり、社民、国民新両党は党の政策に固執するのではなく、自制が必要である。外交・安保政策で社民党などと対立したときに、鳩山首相は野党の自民、公明両党に協力を求めるぐらいのしたたかさが要る」