(3つの大きな構造変化)自民・民主両党に迫られている課題 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(3つの大きな構造変化)自民・民主両党に迫られている課題

日経新聞「核心」は、「対処療法では、済まない、改革が必要な大きな構造変化」として、「①世界が1つの市場に統合される『グローバル化』②『少子高齢化』という人口構造の変化③地球温暖化を抑える社会・経済の『低炭素化』」の3つをあげ、「この3つへの対応は誰が政権が担おうと避けて通れない」と指摘する。正論である。

「グローバル化」「少子高齢化」「低炭素化」について、「核心」はそれぞれ以下のように指摘する。

「新政権に必要なのは今年の経済財政白書が指摘する『グローバル化に背を向けず、そのメリットを取り込んで成長する戦略』だ。白書には、こんな分析もある。非正規雇用はこの四半世紀増え続け、労働所得の格差も1987年から一貫して拡大したが、02~07年(小泉政権下で始まった景気回復期)にはそのテンポが緩んでいる。
『小泉改革が格差を広げた』は、誤りだ」

「消費税の約2%分にあたる年5・5兆円をつぎ込む子ども手当の効果は定かではない。手厚い児童手当を持つフランスは合計特殊出生率が1・9近くまで上がったが、やはり児童手当が充実したドイツや日本より少し高いだけの1・3台で低迷している。年金制度も、持続可能性に確信を持てないと国民の財布のヒモは緩まない。消費税を4年間据え置いて、人々を納得させる制度設計ができるだろうか」

「20年までに温暖化ガスを(90年比)25%削減する』と、現政権よりも野心的な目標を掲げながら、足元では、ガソリンの値下げ(揮発油税などの暫定税率廃止)や高速道路無料化など二酸化炭素(CO²)を増やす政策が並ぶ。遠いゴールを示しながら反対方向に走り出すかのようだ。
日本のガソリン価格は、米国を除いた先進国では高い方ではない。ドイツのアウトバーンはトラックを有料にしたし、英国の野党の保守党は高速道路の有料化を公約に掲げるという。『1000円高速』ですらお盆の渋滞をひどくし、CO²が少ない鉄道やフェリーの客を奪っている」

この3つの歴史的、世界的構造変化に対応すべく、日本をどういう風につくりかえていくのか。民主党だけでなく、自民党にも迫られている課題である。(9月7日記)


(参照記事)日経新聞「核心」の土谷英夫氏が「民主党流の構造改革を」「全球化、高齢化、グリーン化に」

「『小泉改革』は規制緩和で日本を格差社会にした。構造改革のUターンこそ民意にかなう――来週発足する民主党の鳩山由紀夫政権が、こんな考えでいたら、日本の先行きは暗い。なぜなら、対症療法では済まない、改革が必要な大きな構造変化が国の内外で進んでいるからだ。

①世界が1つの市場に統合される「グローバル化」②「少子高齢化」という人口構造の変化③地球温暖化を抑える社会・経済の「低炭素化」――この3つへの対応は、だれが政権を担おうと避けて通れない。

『冷戦後の日本は、アメリカ発のグローバリズムという名の市場原理主義に翻弄されつづけた』『グローバルエコノミーが国民経済を破壊し、市場至上主義が社会を破壊してきた』――鳩山氏の“問題の論文”(Voice9月号)の一節だ。グローバル化は米国が世界にふりまいた災厄と言わんばかり。鳩山氏にIMF(国際通貨基金)のホームページの『Data Mapper』をクリックするよう勧めたい。

世界地図とグラフが、グローバル化の別の顔を映し出す。2000年ごろを境に世界の成長が高まるなか、新興・途上国の成長率が、先進国のそれを大きく上回るようになった。最貧国が多いアフリカとて例外でないこともわかる。

影を伴うにしても、光も地球大に及ぶ。ちなみにグローバル化は中国語で『全球化』という。世界経済危機で足踏みしても流れは変わるまい。中国の1人当たりGDP(国内総生産)は日本の約10分の1、インドは約40分の1。まだまだ成長の余地も意欲もある。

新政権に必要なのは今年の経済財政白書が指摘する『グローバル化に背を向けず、そのメリットを取り込んで成長する戦略』だ。白書には、こんな分析もある。非正規雇用はこの四半世紀増え続け、労働所得の格差も1987年から一貫して拡大したが、02~07年(小泉政権下で始まった景気回復期)にはそのテンポが緩んでいる。

『小泉改革が格差を広げた』は、誤りだ。新政権も霞が関の権力基盤でもある規制を見直してほしい。少なくとも全球化に適応しようとする企業の足を引っ張るような規制は避けたい。

自民党の大敗は、格差よりも、少子高齢化社会のマネジメントで無能ぶりを露呈したからだろう。『消えた年金記録』での後手後手の対応や、後期高齢者医療制度の導入をめぐる混乱などで、有権者に愛想をつかされたのだ。

この分野で民主党は新機軸を打ち出した。1人あたり年31・2万円の子ども手当の創設、税による最低保障年金を備えた年金制度の一元化などだ。税金を直接家計に入れて可処分所得を増やし、安心を高めて消費主導の内需拡大を目指すのは悪くないシナリオだ。

ただ、消費税の約2%分にあたる年5・5兆円をつぎ込む子ども手当の効果は定かではない。手厚い児童手当を持つフランスは合計特殊出生率が1・9近くまで上がったが、やはり児童手当が充実したドイツや日本より少し高いだけの1・3台で低迷している。年金制度も、持続可能性に確信を持てないと国民の財布のヒモは緩まない。消費税を4年間据え置いて、人々を納得させる制度設計ができるだろうか。

12月にコペンハーゲンで開く国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で『ポスト京都(議定書)』の温暖化ガス削減の目標と道筋が決まる。『京都』はパスした米国も、オバマ政権がハンドルを切り『グリーン・ニューディール』を成長戦略に据える。環境技術を得意とする日本には好機でもある。ところがグリーン化(低炭素化)で、民主党のマニフェストは支離滅裂だ。

『20年までに温暖化ガスを(90年比)25%削減する』と、現政権よりも野心的な目標を掲げながら、足元では、ガソリンの値下げ(揮発油税などの暫定税率廃止)や高速道路無料化など二酸化炭素(CO²)を増やす政策が並ぶ。遠いゴールを示しながら反対方向に走り出すかのようだ。

日本のガソリン価格は、米国を除いた先進国では高い方ではない。ドイツのアウトバーンはトラックを有料にしたし、英国の野党の保守党は高速道路の有料化を公約に掲げるという。『1000円高速』ですらお盆の渋滞をひどくし、CO²が少ない鉄道やフェリーの客を奪っている。

新政権に気の毒なのは、自公政権が積み上げた巨額の赤字を背負うことだ。今年度は借金(国債発行)が税収を上回りかねず、公的債務の残高は800兆円を超す。もっとも『負の遺産』が野党時代の甘い公約を鍛え直すかもしれない。30兆円を超す高速道路の債務を国の借金に加え、年2・5兆円の暫定税率の税収をみすみす捨てるのか。無料化の再考や、税率は据え置き一種の環境税への衣替えなどの知恵が絞れないか。民主党流の構造改革が見たい」