民主党がマクロ経済政策を語ることから逃げるのは許されないでしょう?(秘書ひしょ) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

民主党がマクロ経済政策を語ることから逃げるのは許されないでしょう?(秘書ひしょ)

朝日新聞夕刊に「二十歳の選択」というコーナーがあります。

昨日5日はフリーターの方が「正社員で働ける人増やして」という題で語っています。


「仕事をもらえれば、ちゃんとこなせる自信はあるし、やる気もあります」

「政治家は、多くの人がもっと正社員として働ける仕組みをつくってほしい」

「ぼくの周りには、同じ仕事を続けていても、何年も給料が上がらないという人もいます」

「景気が悪い影響だと思いますが、自分が働いている店の売り上げも、最近は芳しくありません」

「もうちょっと、がんばっている人が、「やればできる」と思えるような、そんな社会にしてほしいと願っています」


このフリーターの方の希望にこたえるためにも、昨日のトゥデイズアイでボスがいっているように、まともなマクロ経済政策論争と雇用政策論争を展開すべきです。

なぜ、日本に正規雇用と非正規雇用の2種類がある雇用形態があるのかといえば、不況になったときにでも正社員の終身雇用・年功賃金を継続するために、非正規雇用を「調整弁」にする、というのが側面があった現実を直視すべきです。正社員の労働組合を支持基盤とする民主党も、そのことを直視することから議論をはじめていただきたいと思います。

小泉政権末期から安倍政権期にかけて、人手不足で非正規雇用の正社員化が進むという記事がみられる時期がありました。これは景気回復こそ、非正規社員の正社員化につながることを示すのだったといえると思います。

ですから、小泉政権期の景気回復基調がなぜその後失速したのか、そのことをしっかりと総括することが、雇用問題の視点からも大事なのだと思います。


ボスは正規・非正規雇用の「格差」に関連して、2つのことを主張しています。

第一に、正規・非正規の雇用の「壁」をなくして、職務給1本の雇用形態にすべきだ、ということです。

ボスはよく、オランダの例をあげます。たしかに、正社員だって、子育てなど、ライフサイクルの中で短時間労働の時期があったほうがいいといえます。もはや、「子育て即退社、子育て後はパート」という時代ではない。もっと、柔軟な雇用形態の中に全員が加わればいいと思います。

第二に、経済成長です。

いまみたいに、潜在成長率1%前後で物価はマイナスのまま、ということは、景気後退期には必ず縮小再生産になるということ。雇用でいえば、定期的に正社員をリストラせざるをえず、定期的に新規学卒者の正社員雇用はとりやめる、ということでしょう。たまたま、景気後退期に新規学卒者となり正社員になれなかった人と、景気拡大期に新規学卒者となり正社員になれた人の「人生格差」はアンフェアそのものです。だから、景気後退期でもプラス成長が維持できるような潜在成長率の高い経済にしなければならないはず(多くの反上げ潮派=反成長主義者は、景気後退期にマイナス成長になって正社員になれない新卒者に対してどういう言葉をかけるのでしょう?自分の身内がコネで正社員になれればいい、と思っているとは思いませんが)

景気変動に伴い、周期的にマイナス成長期がやってくる社会こそ恐ろしい「弱肉強食」社会の元凶でしょう。よくボスがいってますが、それは一家のお父さんの正社員の雇用を守るために、パートのお母さんのクビが切られ、景気後退期に学卒期が重なった息子さんは正社員になれずにフリーターになる、という社会です。

「弱肉強食」社会を批判する人は、同時に反成長派が多いようです。不思議なことです。マイナス成長経済こそ、ある人が得を得るには別の人が損しなければならない「弱肉強食」社会の基礎条件ではないですか。

小泉政権期に経済が成長しても豊かさが実感できなかった、という印象論が根づよいようです。小泉政権期はデフレ時代であり、統計上、実質成長率がプラスになっても、国民の実感ベースである名目成長率がマイナスの時代が長く続きました。国民が実感できる名目成長率がプラスになったのは小泉政権の最後の時期です。

所得が反映する名目成長率がプラスにならなければ成長の恩恵を実感できません。だからデフレ脱却が重要なのであり、雇用の観点から、小泉政権期の経済政策の総括としてもっとも重要な点は、デフレが脱却できなかったことなのではないでしょうか。そこで政府とともに日銀の責任が検証されなければいけないと思います。

小泉政権以後の景気後退における日銀の責任について、民主党はどう考えているのでしょうか。党の正式見解として、雇用政策とデフレの関係、そして雇用に対する日銀の責任についてどう考えているのでしょうか。

ボスが昨日のトゥデイズアイで指摘しているように、民主党は、やはり「高金利政策こそ景気対策」と本気でお考えなのでしょうか。それは、金融資産をもっている金利生活者が潤い、借金をしている事業者や住宅ローンを組む勤労者が泣く、「弱肉強食」経済なのではないでしょうか。

正社員の労働組合を支持基盤にする民主党は、正社員の権益を守りつつ、非正規雇用者の利益を図るには、経済のパイを拡大するしかないはず。働く者の給料は名目成長率に比例します。

民主党は、

①低成長時代には、非正規雇用を「調整弁」としてのみ持続可能な終身雇用・年功序列体制をどうするのでしょうか。
②経済成長は2%成長程度でいいのでしょうか。
③デフレのままで、働く者の利益を守れるのでしょうか。
④「高金利政策こそ景気対策」という経済政策をとるのでしょうか。

マクロ経済政策は雇用や国民生活に直結します。民主党が「生活第一」というなら、「直接給付」だけを語って、マクロ経済政策を語ることから逃げるのは許されることではありません。民主党には、マクロ経済と雇用の安定の関係について、まじめに政策を語っていただきたいと思います。


(BY 鉄の男)