(民主党)「残り10兆円」の財源はどこにあるのか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(民主党)「残り10兆円」の財源はどこにあるのか?

社説の主旨である「党首討論で論点を掘り下げよ」は、正論である。特に、「双方とも郵政民営化に関する基本論争には踏み込まなかった」からである。鳩山代表が、冒頭に明言した「政権を獲得したときには西川社長には辞めてもらうしかない」発言を堀り下げて、郵政民営化論争に踏み込むチャンスだったと思う。

「では郵政民営化はどうするのか」「来年のゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場はどうするのか」「郵政官営化に戻すのか」「かんぽの宿の職員を全員解雇にするのか」「官営のもとで組合員の雇用を守り、毎年40億円の赤字を垂れ流し続けるのか」と、問い質せば、鳩山氏は答えに窮したであろう。

政権を取ったら無駄使いをなくして、財源を確保し、4年間は消費増税はしないというが、「郵政完全民営化」を「郵政官営化」に戻すことは、無駄遣いそのものではないのか。ゆうちょ銀行、かんぽ生命を上場すれば、株式売却益で数兆円の財源が確保できる。この財源なくして、どのようにして増税なにし予算を組むのか。民間会社として税収数千億円も失うことになる。「郵政民営化」は4年間消費税増税封印の絶対条件なのである。

「官から民へ」の郵政完全民営化を、「民から官へ」の郵政官営化に戻すことは、鳩山氏の政権交代の大義名分である「官主導を政治主導、国民主導に」との論理矛盾でもある。「官主導を政治主導、国民主導に」は「官から民へ」と同義だからである。「政権を獲得した時には西川社長には辞めてもらうしかない」と「政権を獲得しても4年間は消費増税はしないと明言する」との矛盾こそ、民主党の政権交代への最大のアキレス腱なのである。

また、鳩山氏が財源問題で「政権を取れば事業の仕分けを徹底的に行って、どのくらい無駄があるのか点検しながら、財源を見出していく。無駄遣いを減らし、不要不急のものを後回しにすれば、今すぐ消費税論議に陥る必要はない。政権を取っても4年間は消費増税はしないことを明言しておく」と表明したが、鳩山氏が極めて曖昧な根拠をもって指摘したのは、必要予算20兆円のうち10兆円分にすぎない。残りの10兆円はどこにあるのか。「残りの10兆円」こそ、次の党首討論のテーマだ。

鳩山氏がところどころでいっていることを全部つなげると、完全な論理矛盾がある。たとえば、社会保障予算の毎年増額分のうちの2200億円の抑制について「人命を軽んじること」と非難し、診療報酬は2割も上げなければならないと指摘する一方で、政権交代後は、社会保障費についても削減できる、といった。民主党は何がしたいのか。

そして、民主党は、あたかも12兆円という無駄がすぐにあるというようなプロパガンダをしてきたが、下記の細田自民党幹事長の公開質問状を受けて、もはやこのようなプロパガンダはできなくなった。このことが確認できただけでも、昨日の党首討論には意義がある。

自民党も、民主党の敵失をたたくだけではダメで、次回の党首討論以降は、霞が関改革、無駄の削減についての改革競争を民主党にしかけていくべきことが期待される。(6月18日記)


(参考)鳩山民主党代表への細田幹事長らの質問状
質問事項
1. 貴殿は、「4500の天下り団体に2万5000人が天下っていて、そこに国の予算が12兆1000億円流されている」と発言されましたが、貴党作成依頼の資料を精査すると、実際に国の支出があるのは4504法人のうち、1606法人であり、そこにいる天下りOBの数は1万4665人となっています。貴殿の発言は、国民を欺くため、意図的に数字を大きく膨らませたものなのでしょうか。見解を明らかに願います。
2. 貴殿の発言は、事情を知らない国民が聞けば、天下り団体に天下っている官庁OBの人件費として国から12兆1000億円が流れているかとの誤解を与えかねません。しかし、現実的に試算すれば、平均給与を年収700万円とした場合、1万4665人の給与総額は1026億円、12兆1000億円の0.8%にすぎません。しかも、これは人件費がすべて国費で賄われていると仮定した場合の数字です。つまり、残る12兆円は政策目的をもった支出であるという事実が、今回、貴党作成依頼の資料によって明らかになったわけですが、この事実について、見解をお示しください。
3. 12兆1000億円の内訳(わが党が支出の性格や支出先等に応じて分類したもの)は、
財政融資資金貸付 4.2兆円
国公・私立大学等 1.2兆円
防衛関係 1.5兆円
独立行政法人 3.7兆円
その他 1.5兆円
4. となります。以下、この内容について伺います。
a. 「財政融資資金貸付」とは、国民生活金融公庫(零細企業・自営業等の資金繰り1.8兆円)、中小企業金融公庫(小規模企業の資金繰り0.6兆円)、国際協力銀行(途上国支援0.4兆円)、日本政策投資銀行(企業の資金繰り0.4兆円)、日本学生支援機構(奨学金など0.4兆円)、農林漁業金融公庫(農林漁業者の経営支援0.2兆円)などへの貸付です。これらの政策目的に対する必要性の有無を含めた貴党の見解、また天下り批判との関係について明らかに願います。
b. 「国公・私立大学等」とは、私学助成(0.4兆円)、国公立大学の運営費(0.7兆円)などです。これらの政策目的に対する必要性の有無を含めた貴党の見解、また天下り批判との関係について明らかに願います。
c. 「防衛関係」とは、防衛関係装備等の調達金(1.5兆円)ですが、貴党はこれを「随意契約」として批判していますが、現実問題として、事柄の性質上随意契約とならざるを得ない(防衛機密、ライセンス生産等)支出であるとわが党は考えます。したがって、いたずらに大きい数字をあげつらうのではなく、これは「随意契約で仕方のないもの」と注釈をつけるのが、政党・政治家としての矜持であると考えますが、この点についての貴党の見解を明らかに願います。
d. 「独立行政法人」とは、住宅金融支援機構(住宅取得者の資金支援0.3兆円)、宇宙航空研究開発機構(0.2兆円)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(0.2兆円)、JICA(国際協力機構0.2兆円)日本原子力研究開発機構(0.2兆円)など、そもそも国の政策を実施する機関であった旧公社・公団、事業団等に対する支出である。これらの政策目的に対する必要性の有無を含めた貴党の見解、また天下り批判との関係について明らかに願います。
5. 国家基本政策委員会合同審査会において、貴殿は「半分が随意契約」と指摘されましたが、その内訳(費目等)および金額を明らかに願います。例えば、貴党は財政融資資金貸付も随意契約として集計していますが、日本学生支援機構等への貸付が「随意契約」とは、首をかしげざるを得ません。前回の平成18年度予算の調査も、今回の調査も貴党の集計は、随意契約の金額を大きく見せ、あたかも官僚が勝手放題にふるまっている、との印象を国民に与えるための詐術ではないのでしょうか。見解を明らかに願います。

平成21年6月9日
自由民主党
幹事長 細田 博之
担当 筆頭副幹事長 原田 義昭

(参照記事)日経新聞社説「党首討論で論点掘り下げよ」

「内閣支持率が再び低下して政局の不透明感が増すなか、麻生太郎首相と民主党の鳩山由紀夫代表の2度目の党首討論が開かれた。次期衆院選に向け対立軸を明らかにしたいという意欲は感じられたが、なお一方通行の主張が目立つ。両党首はさらに掘り下げた論争をしてほしい。

鳩山氏は冒頭、日本郵政の西川善文社長の再任問題を取り上げた。首相の判断の遅れブレ、間違いが支持率低下を招いたと批判、『政権を獲得した時には西川社長には辞めてもらうしかない』と言い切った。ただ社長退任を迫る理由は『かんぽの宿』の売却を巡り『不祥事に極めて近い状況だ』とするだけで、説得力を欠いた。首相は『民営化された会社に対する政府の介入は最小限にとどめるのが当然だ』と反論し、双方とも郵政民営化に関する基本論争には踏み込まなかった。

首相は社会保障関係費などについて民主党の財源が不明確である点に絞って逆質問し、『3年後、経済が好転した段階で消費税を含む税制の抜本改革をやらせていただく』との立場を強調した。鳩山氏は行政のムダ削減を優先し『我々が政権を取っても4年間、消費税増税はしないことを明言しておく』と表明した。だが、財源の具体的な裏付けは示さなかった。

相手が嫌がるテーマを追求するのはディベートの基本だとしても、自らの政策があいまいなままでは論争は深まらない。両党ともマニフェスト(政権公約)作りは遅れており、政権交代の可能性をはらむ衆院選に向け、有権者に十分な判断材料が提供されているとは言い難い。

前進があったとすれば、2回目の核実験を強行した北朝鮮への制裁に関するやり取りだ。首相は北朝鮮に出入りする船舶などの貨物検査のための法案を今国会に提出する方針を示した。鳩山氏も『早く法案を準備してもらえれば、できるだけ早く結論を出すと約束する』と応じた。両党首が論争の締めくくりに、財源問題や安全保障に絞って次回の党首討論を開く方向を核にしたのは評価できる。自民党内には『麻生おろし』などの動きもあるが、与野党とも政策論争を通じて有権者の支持を広げていくのが本来の姿だ」

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