(日本郵政)日本郵政の組合をバックとする民主党の選択はどれか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(日本郵政)日本郵政の組合をバックとする民主党の選択はどれか

【タイトル】(日本郵政)日本郵政の組合をバックとする民主党の選択肢は、雇用を犠牲にした黒字化、雇用を犠牲にした不動産売却、雇用と不動産を維持し続けた赤字垂れ流し(国民負担)のどれか

読売新聞社説(下記参照)は、「本紙調査では、今回の人事がこれほど混乱したのは、「首相の指導力不足」にあるとみている人が多い。首相が西川社長交代を模索しながら、ずるずると判断を先延ばしした責任は大きい。今回に限らず、首相の判断の遅れが政治の停滞に輪をかけているケースが目立つ。大いに反省してもらいたい」としているが、この点は大いに耳を傾けるべきである。

しかし、「問題の本質は、日本郵政とりわけ西川社長の経営責任にある」というのはどうなのか。社説が指摘する問題は、「民営化」が生んだ問題なのか、「官営体質」の問題なのか。

西川社長続投反対派は民営化反対派である。民主党をふくめて、すべてを官営に戻そうという力が働いている。「官営」にすれば問題が解決するのか。そうではないということが「脱・官僚」なのではないか。民営・民間を信用しない「脱・官僚」とは何なのか。

読売新聞社説は「なぜ、国民の共有財産といえる施設が二束三文で売られようとしたのか」という。2つ指摘したい。

第一に、読売社説の「二束三文」とは、何との比較の数字なのか。

70施設の土地取得代と建設費の総額約2400億円との差額をもって「二束三文」とするならば、鳩山前総務相の指示で行われた総務省独自の不動産鑑定結果が4月に明らかにされた資産価値推計約250億円は、「二束三文」ではないのか。

もしもこの250億円も「二束三文」であるならば、その原因は「官営」による無駄遣いである。つまり、郵政民営化をやめて「官営」に戻すということは、このような無駄遣い体質に戻すということを意味している。「二束三文」の乱造体質に戻すことを意味しているのではないか。

第二に、「かんぽの宿」の一括売却は、不動産売却でなく、事業売却なのである。年間40億円の赤字を垂れ流している「かんぽの宿」を従業員700人の雇用保障前提での売却なのである。

4月の総務省の推計額250億円は「不動産鑑定額」であり、譲渡額109億円は「事業評価額」である。「事業評価額」には従業員の雇用保証がついている。

4月の総務省の鑑定結果について鳩山前総務相は「(経営を)黒字化していけば、鑑定評価はさらに高まっていく」としたうえで「日本郵政には固定資産税評価額の840億円に近い数字での売却を求めていく」と述べている。これは雇用削減を前提としているのではないか。それは参院の付帯決議に反することになるのではないか。

日本郵政の不動産売却等に関する第三者検討委員会の報告書(平成21年5月29日)をみてみよう。
「雇用の維持を重視するか、処分価格の最大化を重視するかという処分方法の選択如何によって、かんぽの宿等の処分価格に差が出ることは明らかであったのであり、様々な処分方法の比較と選択は、日本郵政にとっての重要事項として、トップレベルでの協議と検討が行われるべきであった。元々かんぽの宿等は、簡易保険加入者のための福祉施設として同事業からの出資によって建築・運営され、それを日本郵政が承継した資産であるが、日本郵政の全株式を国が所有している以上、国民の共有財産として、処分の公正性・適切性が強く求められるようになることは当然である。雇用条件を課さない個別売却と、雇用条件をつけた個別売却では、想定される処分価格に少なからぬ差が出るものとされており、これを雇用条件付きで一括売却すれば、その差はさらに拡大することが予想されたのである。しかしまた一方、民営化法案の審議に際して参議院の附帯決議において、「民営化後の職員の雇用安定化に万全を期するよう配慮すること」とされているのである。雇用の維持を優先すれば処分価格の大幅な低下は避けられず、雇用より処分価格の最大化を優先すればそのことに対して強い批判がなされた可能性があった。したがって、この二つの相矛盾する要素について、どのような経営判断をするのかは、トップレベルでの慎重な討議検討を踏まえて決定されなければならない事項であり、経営会議においてその利害得失につき十分検討され協議されなければならなかったし、取締役会にも報告されるべきであった」

この問題について、委員会は以下のように指摘している。

「日本郵政は参議院の附帯決議を尊重しなければならない立場にあったのであるから、雇用の安定を最も重要な要素としたことはある意味で当然の判断であったと言える。また価格の最大化のために雇用の継続の保障の十分でない処分方針を策定すれば、労働組合の激しい抵抗に直面することにならざるを得ず、早期に円滑な処分を実現することはできなかったであろうと判断され、早期の円滑な処分を優先したことが著しく不合理であるとは言えない。残るのは、雇用に配慮するにしても、一部を個別譲渡する、地域毎等にグルーピングする、あるいはそれらを組み合わせるといった方法により、買い取り希望者間の競争高度化を実現して処分価格をより高額にするという方法を検討するべきではなかったかという点であるが、本委員会が今回の企画提案に応募した社の一社から意見を聴取したところ、全国規模であることが魅力のひとつだったとのことであり、そのような投資家が複数存在していた以上、一括事業譲渡は雇用への配慮や処分期限の義務という優先課題を満足する方法である上、さらに、かんぽの宿等の事業には年間40億円以上の営業赤字が発生しており、今後も半期で20 億円以上の営業赤字が発生する見込みで、今後も経営改善の見通しは乏しかったこと、メンテナンス費用など相当高額の保有コストの発生が予想されていたことから早期の円滑な処分の実施が強く求められる状況であったことなどを考え併せれば、一括事業譲渡方式が持つメリットは譲渡価格の低下に匹敵するかそれを上回るという経営判断も、不合理あるいは不適切とは言えない」

なお、報告書は、個別物件が千円や一万円で売却されたかのごとき誤解について以下のように指摘する。

「(多数の物件を束にして一括売却する「バルク売却」)の場合の売却価格は多数の物件に対する総額としてしか存在しない。にもかかわらず、事業別損益の算定のためにみなし売却額として使用していたに過ぎない個別物件についての買い手による算定取得価額を、あたかも個別物件ごとに1千円や1万円等の売却価格が存在していたかのごとく誤解されるような方法で開示したことは、情報の開示方法として不適切であったし、また、その際の説明も誤解を与えても仕方がないものであり、きわめて不適切であった」

日本郵政の組合をバックとする民主党は、雇用を犠牲にした黒字化、雇用を犠牲にした不動産売却、雇用と不動産を維持し続けた赤字垂れ流し(国民負担)のどれを選択したいのか。

民主党がいう「郵政官営化」では問題は解決するどころか、さらなる二束三文物件の乱造につながるリスクが高い。ここは「郵政民営化」と「郵政官営化」をしっかりと対立軸にしようではないか。(6月17日記)


(参照記事)読売新聞社説「内閣支持率下落」「日本郵政人事で誤断したツケ」

「麻生首相も驚く数字だったのではないか。まさに進退窮まると言えるような状況だ。読売新聞の緊急世論調査で、麻生内閣の支持率が22・9%に下落した。1週間前の調査と比べて、6・6ポイントも低下した。他紙の世論調査でも、同様の傾向である。原因は明らかだ。日本郵政の西川善文社長の続投に異を唱えていた鳩山前総務相の更迭にある。

本紙の調査では、「更迭する必要はなかった」が65%に上った。とすれば、首相のこの窮地から脱するには、まず、日本郵政の経営責任について明確なけじめをつけることである。更迭の理由について首相は、政府と日本郵政との間に混乱が生じたこと、民間社会の人事に国が直接介入するのは避けるべきことを挙げていた。だが、世論はこれに納得していない。

本紙調査では、今回の人事がこれほど混乱したのは、「首相の指導力不足」にあるとみている人が多い。首相が西川社長交代を模索しながら、ずるずると判断を先延ばしした責任は大きい。今回に限らず、首相の判断の遅れが政治の停滞に輪をかけているケースが目立つ。大いに反省してもらいたい。

しかし混迷の原因を首相だけに帰すわけにはいかない。問題の本質は、日本郵政とりわけ西川社長の経営責任にあるからである。保養宿泊施設『かんぽの宿』売却問題はもとより、簡易生命保険の保険金不払い、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用した事件などが相次いでいる。国民の8割が『かんぽの宿』の一括売却には『問題があった』とみている。67%が西川社長の続投について『納得できない』と答えている。不祥事に対する責任が不問に付されていることに、釈然としないのだろう。

西川社長は、『厳しい反省の上に立って必要な改革を加速していくのが私の責務』と語っている。だが、ちょっと待ってほしい。なぜ、国民の共有財産といえる施設が二束三文で売られようとしたのか。現体制のままで、日本郵政は、国民の信頼を回復することができるのか。

西川社長には、何よりも、これに明確に答える責任がある。麻生首相は、西川社長の処遇に関し、総務相の業務改善命令に対する日本郵政の回答に基づいて、最終判断するといってきた。きちんと吟味して、この問題に決着をつけねばならない」

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