(財政再建)「悪魔の増税」には断固反対する | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(財政再建)「悪魔の増税」には断固反対する


日経新聞社説に書いている「目標の修正は避けられないが、増税頼みでは国民の理解は得られない。米国をはじめ先進各国は、財政健全化と同時に経済を強じんにする『出口戦略』をもっと明確に打ち出している。歳出の絞り込みや、日本経済の持続的な成長に向けた構造改革や規制改革で、より説得力のある行動方針を盛り込むべきだ」は、正論である。

私は誰よりも財政再建に真剣だ。消費税導入のときも、私は先頭に立って国民にお願いをした。次に増税が必要なときも、私はその先頭に立つ覚悟だ。しかし、失業者が増え、デフレが続いている今ではない。

私の基本認識は、「デフレ下で増税して財政再建に成功した国はない」ということである。増税論者のみなさんは、日本のインフレ時代の成功体験にとらわれたまま、デフレ時代に対応しようとしている。私にいわせれば、日露戦争の戦法でミサイル戦争の時代に対応しようとしているような時代錯誤だ。しかも、デフレ下の増税でどれだけ経済が悪くなっても自分だけは関係ない地位にいる人がいっているのではないか。犠牲になるのは国民だ。

100年に一度の経済危機の中で、経済成長の軌道にのる前に「増税」を語っている国があるのだろうか。デフレを放置したままで増税するような試算をしている国があるのだろうか。

昨日、経済財政諮問会議に出された資料では、試算上増税が始まることになる2011年度は、「世界経済順調回復シナリオ」でも実質成長率2.2%、名目成長率1.5%であり、デフレが続いていることを示している。そんなときに増税をはじめるという試算なのである。

デフレ下で増税する国は、世界経済に対して全く無責任であり、完全な「KY国家」とみなされるだろう。

外需依存経済の悪い癖だ。ちなみに、以前、経済財政を我々が議論するときには、「基本(改革進展)ケース」と「非改革・停滞ケース」の比較を示していた。ところがいまは世界経済が順調かどうかでケースを分けるようになっている。改革によって経済を良くしようという気概がみられなくなった影響があるのではないだろうか。

私は、財政再建のための増税の条件は、「雇用の最大化」と「物価の安定」であると考える。雇用の最大化とは完全失業率が3%台前半程度のことであり、物価の安定とは消費者物価上昇率が1~2%程度で安定している状況のことである。この条件を充たさない増税は「悪魔の増税」だと考える。なぜなら、経済も、財政も、家計も、結果的にみんな破たんするからだ。そして、日本はアジアの黄昏国家になるだろう

今回の骨太の方針は、財政再建目的に増税する、と踏み切るのかどうか。

社会保障と消費税を含む税制抜本改革の道筋を示した「中期プログラム」(08年12月23日閣議決定)では、消費税増税は社会保障費の増大への対応に限る、ということだったはずである。

「中期プログラム」には下記のような税制抜本改革の原則が書かれている。

「消費税収は、確立・制度化した社会保障の費用に充てることにより、すべて国民に還元し、官の肥大化には使わない」

この原則は、消費税収は社会保障財源に限られ、財政再建目的には使われないことを意味するものと思うが、この原則は「骨太の方針2009」で反故にされるのだろうか。

さて、昨日の諮問会議の与謝野大臣のペーパーには、「「骨太の方針2006」の基本的考え方の重要性はいささかも変わらず、むしろ一層高まっている」とあるが、「骨太の方針2006」の「成長戦略と財政再建の両立」はどこにいったのか。

民間議員ペーパーの試算によれば、日本は中長期的に実質1%成長国家であることを宣言している。これは自然態で衰退していくというシナリオであり、何らの成長戦略も存在しないということではないか。
 
社会保障の機能強化によるコスト縮減・給付重点化の効果の具体的数字はどこにあるのか。

公務員人件費を含む歳出削減努力はどこに消えたのか。昨日の諮問会議の民間議員ペーパーでは、歳出改革の考え方について、「非社会保障部門では、規模を拡大しないことを基本とすべきである」とあるが、これは霞が関文学では歳出削減しないという意味か。

政府資産の圧縮はしないのか。

行政の「質の改革」は結構だが、コスト改革をめざす「量の改革」はどこにいったのか。消費税増税前に、どの程度の「量の改革」をするのか。「質の改革」でごまかしてはいけない。

増税前になすべきことがある。増税前に達成すべき雇用と物価の基準がある。それらを無視した増税は、日本経済も、国家財政も、家計も、そして多くの人の人生設計に、破滅的な打撃を与えるだろう。これは「悪魔の増税」である。私は「悪魔の増税」には断固反対する。(6月10日記)

(参照記事)日経新聞社説「麻生版『骨太』は構造改革から逃げるな」

「政府の経済財政諮問会議が2009年度の『骨太方針』素案で、新たな財政健全化目標を示した。11年度に基礎的財政収支を黒字にする従来目標をあきらめ、19年度に時期を先送りした。20年代初めに国・地方が抱える債務残高の対国内総生産(GDP)比率の引き下げを目指す。

目標の修正は避けられないが、増税頼みでは国民の理解は得られない。米国をはじめ先進各国は、財政の健全化と同時に経済を強じんにする『出口戦略』をもっと明確に打ち出している。歳出の絞り込みや、日本経済の持続的な成長に向けた構造改革や規制改革で、より説得力のある行動方針を盛り込むべきだ。

『骨太方針』は政府の経済・財政運営の基本設計書に当たり、麻生政権では初めて。原案は、当面は危機対応に全力を挙げ、その後は財政健全化と「安心社会」の実現に取り組むという二段構えの内容になる。

急激な不況に伴う景気対策や税収の落ち込みで、従来の財政健全化目標の達成は絶望的となった。規律維持の確たる姿勢を示さないと、財政に対する市場の信認が失われて国債金利が急上昇する事態も懸念される。新しい目標の設定は必要だ。

基礎的収支が黒字になるというのは、行政の経費がその年の税収などで賄える状態を示す。現在は大幅な赤字で、景気対策分を除いても09年度時点でGDPの5・7%に上る。新目標では赤字の比率を『5年を待たず』に13年度中に半減、10年後の19年度までに黒字転換させる。

一方で、170%程度まで上がった債務残高の対GDP比率を10年代半ばにかけて安定させ、その後は安定的に引き下げる。長期金利や世界経済の状況次第で道筋は変わるから、まさに綱渡りの健全化路線だ。

諮問会議の参考資料で示された財政試算は、11年度から消費税率を段階的に3~7%引き上げ、ようやく目標達成に近づく姿を描く。骨太素案は社会保障の規制強化に主眼を置き、将来の増税を前提に給付増の政策を実現させようとしている印象が濃い。安易な負担増に走るのは問題だ。緩んだ歳出のタガを締め直すとともに、社会保障制度の抜本改革も逃げずに直視すべきである。

骨太方針の素案は規制改革の記述がわずか半ページにすぎない。成長戦略も太陽光発電、介護雇用の強化など限定的なメニューにとどまり、自由貿易協定(FTA)の推進も重要だが新味はない。中長期で日本経済をどう強くするか、もっと踏み込んだ方針を示す必要がある。それが財政健全化にも寄与するはずだ」

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