(霞が関改革)省庁別設置法廃止と幹部公務員法の重要性 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(霞が関改革)省庁別設置法廃止と幹部公務員法の重要性

社説にある「時代の変化に応じて機敏に、柔軟に行政組織を見直すというのは、あって当然のことである」は、正論である。なぜ、柔軟に見直せないのか。

その根幹は、役所が省庁別の設置法によって規定されており、この法律を改正しなければ行政組織の見直しができないからだ。

私は、政府設置法一つにして、時の総理が自らの政策理念にそった行政組織にすればいいと思う。そもそも、福田総理が消費者庁設置を決断すればつくり、麻生総理が厚生労働省分割を決断するならば、すぐにできるようにすればよいのであって、そうなっていない法体系そのものが問題なのだ。

そうすることで、ときの行政の需要が増しているところに精鋭部隊を投入することができる。いまは、行政需要が増しても人員を満足に増員できず、行政需要がピークをすぎた役所も人員を減らせない。だから、国民の行政への不満がたまり、組織温存のための行政需要が発生しているのではないかとの疑念を持たれる。その根幹に、省庁別設置法がある。この法体系こそが縦割りの弊害の根っこにある。

また、社説の結語である「国民が望むのは、役所の姿はどうあれ、しっかり仕事をしてもらうことだ。そこを見誤らないでほしい」も、正論である。年金不祥事、薬害肝炎問題、事故米の見逃し、ヤミ専従、障害者団体向け割引制度の郵便不正等の一連の不祥事は、組織分割による治るものなのか。

省庁別設置法と一体となった閉鎖的な人事体系を開放的なものにすることで、「隠ぺい体質」を変えていかなければならない。その公務員制度改革の要諦は幹部公務員の人事に尽きる。

そのために、私と同志が準備している幹部公務員法案を今国会で成立せることが、必須条件となるのである。来週以降、我々は具体的行動をはじめる予定だ。

民主党が政権交代の錦の御旗に「脱官僚」「霞が関改革」「官主導を国民主導に」を掲げているが、その1丁目1番地が、幹部公務員法案の今国会の成立となる。幹部公務員法案に、民主党はどういう態度をとるのだろうか。(5月29日記)


(参照記事)朝日新聞社説「厚労省分割」「またしても政権の迷走」

「麻生政権が次の総選挙の目玉にと意気込んでいた厚生労働省の『分割・再編』の雲行きが怪しくなってきた。発端は、首相が将来の国家ビジョンを話し合うためにと作った安心社会実現会議で、渡辺恒雄・読売新聞グループ会長が分割論を提唱したことだった。これを受けて首相は先週、年金と医療、介護を担う社会保障省と雇用、少子化を担当する国民生活省の2つに分ける持論まで披露して、政府内での検討を指示した。

年金記録の問題や後期高齢者医療制度などをめぐって、国民の怒りや不信をかった厚労省にメスを入れ、改革姿勢をアピールしようという思惑もあったろう。しかし、関係閣僚の話し合いでは慎重論が続出し、与党内からも『拙速だ』という批判が噴出した。週内にもまとめるとしていた素案づくりのめどは吹き飛んでしまい、そもそも案をつくれるのかどうかさえ分からなくなってきた。

いいだしっぺの首相は昨夜、記者団に『国民の安心安全の側に立って、(組織のあり方を)一回精査したらどうか』と指示しただけだと述べ、分割についても『全然こだわらない』とあっさり語った。年金や雇用不安、新型インフルエンザなど、厚労省には次々と課題が押し寄せている。どれも国民生活に直結する問題ばかりだ。果たして今の役所の態勢できちんと対応できるのだろうか。この問題意識は正しい。

時代の変化に応じて機敏に、柔軟に行政組織を見直すというのは、あって当然のことである。実際、厚労行政をめぐっては今年3月、福田前内閣の時にできた有識者懇談会が、厚労省の取り組む課題が年々増えているのにそれに見合った人員や予算配分がされていないといった問題点を指摘していた。

しかし、『だから分割を』という論議がいきなり走り出した今回の進め方は、あまりに短絡的、場当たり的だった。新しくできる消費者庁を国民生活省にくっつけたらどうかという話が、まだ消費者庁設置法案が成立しないのに飛び出すありさまだ。

話は厚労省だけの問題にとどまるまい。たとえば医療であれば、医学教育は文部科学省の担当だし、公立病院は総務省や地方自治体の所管にもまたがっている。これらを再編し、行政がスムーズに無駄なく動くような体制を整えてもらいたいとは思う。だが、数カ月以内に確実に総選挙があるというこの時期に泥縄式の議論を進めて、まともな結論が生まれるのだろうか。疑問である。国民が望むのは、役所の姿はどうあれ、しっかり仕事をしてもらうことだ。そこを見誤らないでほしい」。