(党首討論)「官僚主導VS国民主導」との対立軸は、望むところだ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(党首討論)「官僚主導VS国民主導」との対立軸は、望むところだ

社説に書いている「政権選択の手がかりを求める有権者には、はなはだ物足りない約45分間だった」は、正論である。

民意がいま、政権に求めているのは、「現実問題を解決しえる理念」なのであり、それこそが政権担当能力であると民意が重視しているのである。問題は、民意が自民党には、その「理念がないから現実問題を解決できないのではないか」との疑念を、民主党には、「理念はあるが、それが現実問題を解決できる政権担当能力足りうるか」との不安を持っていることである。

その疑念と不安の解消を目指して、毎週でも党首討論をすべきである。

鳩山氏が提起した「官僚主導VS国民主導」との対立軸は、望むところだ。郵政民営化を逆行させる党の何が脱官僚なのか、官公労に選挙を依存している党の何が国民主導なのか、おおいに論戦すればいい。

「官僚主導VS国民主導」との対立軸で、自民党こそ国民主導であることを明らかにするためにも、今国会で「幹部公務員法」を成立させなければいけない。

ところで、一部報道に、私が「幹部公務員法」を諦めたかのごとき記事があった。いかなる勢力の利益を代表した何の意図をもった報道かは謎だ。それが霞が関で回覧されていたらしい。喜んだ人々も多かったようだ。しかし、この報道が事実ではないことがいずれ明らかになるだろう。

また、私が次の選挙について敗北主義であるかのような報道も流れている。だったら、「幹部公務員法」にそんなにこだわりを持つはずがない。私が単なる敗北主義者ではないことがいずれ分かるだろう。

誤った情報に基づき誤った戦略をとると、思いがけない結果を生むことになるだろう。それがミスパーセプションの怖いところだ。

たとえば、2005年、抵抗勢力は何の根拠もなく「小泉総理は解散できるはずはない」と思いこみ、このミスパーセプションが、結果的に、小泉総理を解散せざる立場に追い込んだのである。「根拠のない楽観主義」こそが、予期しない事態を生むことになるだろう。

私に反対するみなさんに警告する。私に関する誤った情報に基づき、「根拠のない楽観主義」で政局戦略をとらないことだ。そのような政局は、誰にとっても不幸である。(5月28日記)


(参照記事)朝日新聞社説「党首討論」「論点を絞って毎週でも」

「麻生首相と民主党の鳩山新代表が初めての党首討論に臨んだ。間近に迫った総選挙で党首力を競う『次の首相』候補同士の初顔合わせである。民主党の代表が小沢一郎氏だったころにはめったに行われなかったが、代表交代を機にすんなり実現した。大いに歓迎したい。

冒頭、鳩山氏が力を入れたのは『友愛社会の建設』という自らの政治理念を説くことだった。『官僚任せの自公政権に対して、私たちは生活者に起点を置く。中央主権でなく地域主権、業界中心のタテ社会でなく、市民を大事にするヨコ社会をつくりたい』。鳩山氏の持論である『友愛』には意味不明、古臭いといったイメージがつきまとっていた。それをかみ砕いて説明し、格差や貧困が深刻になっている今こそ、人々のきずなに根ざした社会づくりが求められると主張した。

これに対し、首相は『時の政権にとって重要なのは、理念や抽象論ではなく、経済危機や朝鮮半島の脅威など現実問題』と切り返した。政権交代に込める理念を訴える鳩山氏と、政権担当能力を強調する麻生氏。力点の違いが見えてきた。

もうひとつ、両氏が鋭くぶつかったのはやはり『小沢問題』だった。『反省の中から、企業・団体献金を3年後に禁止したい』と、法制化に同調を求める鳩山氏に対し、首相は『企業にも社会の一構成員としての存在意義がある。現在の法律すら守っていない疑惑があるのに、制度が悪いというのは論理のすり替えだ』と批判した。小沢氏が事件についての説明責任を果たしていないことが問題なのであって、企業献金が悪いわけではないということだろう。

だが、小沢問題の説明責任や、他方で少なからぬ自民党議員たちが同じように『西松献金』を受け取っていたことについてのやりとりは、それぞれに都合のいい応酬で終わった。納得できない思いの国民は多かろう。

気になったのは、鳩山氏が『一方は秘書が逮捕され、他方はおとがめなし。これが検察官僚のやることなのか。官僚国家に歯止めをかけなきゃいけない』と声を強めたことだ。そこに力点を置きすぎれば、自民党政治に突きつけた『官僚主導VS.国民主導』という肝心の対立軸がぼやけてしまう。

政権選択の手がかりを求める有権者には、はなはだ物足りない約45分間だった。政策の財源論や安全保障、憲法など聞きたいテーマは山ほどある。論争を逃げないという両党首なのだから、総選挙への第一声と心得て、毎週でも討論を重ねてほしい。論点を掘り下げるためにも、交代で事前に大きな議題を設定しあう、といった工夫をしてもいい」