■特別版■「政局だ」「役人叩きだ」との誤解に答える―いまなぜ「幹部公務員法」か | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

■特別版■「政局だ」「役人叩きだ」との誤解に答える―いまなぜ「幹部公務員法」か

今日、80人の自民党同僚議員の賛同を得て、議員立法「幹部公務員法案」など(参考1~3参照)について、早急に党内で議論する必要があり、党行政改革推進本部において早急に議論を進め、結論を得ていただくよう、申し入れたところである。

この議員立法について、「政局だ」「役人叩きだ」との誤解があるようなので、説明したい。

(1)これは「政局」ではない―議員立法は政府提出法案の「修正」ではなく「補完」

この議員立法を何としても阻止をしたい一部の人々は、私たちが3月31日に閣議決定した公務員改革関連法案を「修正」しようとしていて、それによって政権に叛旗をひるがえすのだとの、でまかせの話で政治家の分断を図り、身分特権の温存を図ろうとしている。

何度も警鐘を発しているように、政界関係者以外の人々が「政局」をもてあそび、政策を潰すような動きをしてはいけない。特に、公正中立のはずの官吏がそのような政治的な動きをするようなことは、あってはならない。

私は政府提出法案は最善の努力をした末の法案と評価している。本議員立法は、3月31日に閣議決定された政府提出法案を「補完」するものである。

(2)これは「役人叩き」ではない―やる気と能力のある人材にチャンスを

 国民は、やる気と能力のある公務員が活躍することに反対しているのではない。いわれなき官民格差を特権意識で守ろうとすることに反対しているのである。

今回の改革は、政治主導で、優秀な若手や政府外の民間人を積極的に幹部に登用できるようにすることが大事な目的である。

そのためには、現に幹部ポストに座っている人を「降任」することも必要である。ところが、「降任」ができないとなれば、

①天下りを従来どおり続けて、役所の外に押し出す

②幹部ポストの数を増やして、いったん幹部になったらそのまま居座れるようにする

のいずれかしかない。これは国民の目には「特権温存」にみえるのではないか。

民間企業ならば、取締役は、一般職員とは別個の人事制度で、社長と責任を共有するのが当たり前であろう。

プロ野球でも、監督とコーチは責任を共有する場合が多いではないか。

ところが、役所の場合、末端職員から事務次官まで同じ「一般職」扱いであり、「一般職」と同じ保護のもとに置かれている。幹部職までその保護の対象となっていることが、特権の温存につながり、若手諸君にとってはやる気や能力を発揮できないことにつながっているのではないか。

そこで、いわゆる政治任用の「特別職」と「一般職」との間に、中間的な新しい「幹部職」を創設、というのがわれわれの基本的考え方である。

(3)官僚出身議員も議員立法に賛成―新しい世代の価値観を大切にしよう

「政治が国民の代表として、正しく役人を使いこなすためにこそ、新制度が必要だ。」

今日の研究会で、多くの官僚出身議員が国民サイドに立ち、そして、若手官僚の立場にたって、議員立法に賛成してくれたことがうれしかった。

やる気と能力のある人材が若くてもやりがいのある仕事ができるチャンスを与えよう。それこそが、国民も、官僚も望んでいることではないか。

若い官僚のみなさんの時代には、「高級官僚の特権」「いわれなき官民格差」などは存続しえない。しかし、優秀な人材には大いに活躍し、それにみあった公正な処遇をすべきと考えている。私もそう思っている。

やる気のある優秀な人材には年齢にかかわらず活躍してもらうことは、国民の望みだ。そして、誇りを持てる職業としての新たな官僚像をつくろう。その制度をつくるのは立法府の使命である。

実は、「特権温存」のための仕組みは、官だけの話ではない。

日本のいたるところに似たような「特権構造」が残存し、若者に重苦しさを感じさせているのではないか。霞が関改革は、日本社会で真っ先に「やる気のある優秀な人材」が集う制度にして、この制度を日本中に普及させていこうではないか。これは、日本の長い長い社会変革の第一歩である。それは、私自身の、若い世代に対する責務である。(4月17日記)



(参考1)申し入れの内容

行政改革推進本部長 中馬弘毅殿
行政改革推進本部公務員制度改革委員長 石原伸晃殿

平成21年4月17日

公務員制度改革の根幹は「真の議院内閣制の確立」であり、それにふさわしい「士気の高い霞が関の再構築」を実現しなければならない。
自民党が改革に後ろ向きであるかのごときプロパガンダを許さず、自民党こそが霞が関改革を立案・実行できることを明確にすべきときである。
このため、3月31日閣議決定した「国家公務員法等の一部を改正する法律案」を補完し、さらなる改革の姿を明らかにするために、議員立法「幹部公務員法案」等(別添:骨子素案を参照)について、早急に党内で議論する必要がある。
党行政改革推進本部において早急に議論を進め、結論を得ていただくよう、申し入れる。

士気の高い霞が関の再構築を実現するための研究会一同




(参考2)士気の高い霞が関の再構築を実現するための研究会の趣意

公務員制度改革の根幹は、真の議院内閣制の確立である。政治主導を強化し、国家公務員が誇りと責任感をもって内閣、内閣総理大臣及び各大臣を補佐する役割を適切に果たすこと、すなわち「士気の高い霞が関の再構築」を実現しなければならない。
例えば、民間企業で役員にあたる幹部公務員は、民間並みに、一般職員とは別の弾力的な制度の下におくなど、抜本的な改革が求められる。
民主党は、内閣提出の公務員制度改革関連法案を「完全に骨抜き」などと批判し、自民党が改革に後ろ向きであるかのごときプロパガンダを展開しようとしている。こうしたプロパガンダを許さず、先手をうって、さらなる改革の具体的プランを描き、自民党こそが霞が関改革を立案・実行できることを明確にすべきときと考える。



(参考3)議員立法提案骨子(素案)

1、「幹部公務員制度創設」

(1)幹部公務員は「幹部職」に
幹部公務員(本省審議官以上)は「一般職」とは別の「幹部職」とし、「国家公務員法」及び「一般職の職員の給与に関する法律」の適用対象外として、別途「幹部公務員法」を制定。
<国家公務員法改正、新法制定>

(2)幹部公務員制度の内容
<以下は新法>

①人事管理の原則
幹部公務員の任用、給与その他の人事管理は、内閣による行政遂行を最大限効果的に行うことを目的とし、能力・実績主義及び内閣との一体性確保の双方の観点から、弾力的に行われなければならない。
(注)一般職は、客観的評価に基づく能力・実績主義のみ(国家公務員法第27条の2、第33条)。

②任用
 幹部公務員の任用は、内閣人事局による適格性審査及び候補者名簿作成を経て、任命権者が内閣総理大臣及び内閣官房長官との協議に基づき行う。
 幹部公務員の公募は、内閣人事局が行う。
(注)政府提出法案で追加する規定と同内容。

③身分保障
任命権者は(総理・官房長官との協議に基づき)、内閣による行政遂行を最大限効果的に行う上で必要と判断する場合、幹部公務員を降任・降給できる。
なお、幹部公務員の免職は、一般職に準じ、特定の事由がない限り行うことができない。
(注)一般職は、特定の事由がない限り、免職・降任・降給できない(国家公務員法第75条、第78条)。

④給与
幹部公務員の給与については、以下の原則に基づき、施行までに別途定める。
・幹部公務員の給与は、任命権者が、行政遂行を最大限効果的に行う観点から、弾力的に設定できるような制度とすること。
・検討にあたって、民間企業の幹部職員の給与制度を参考にすること。
・幹部公務員の給与は、人事院勧告の対象外とすること。また、必要な規則は、人事院規則でなく、法律または政令で定めること。

⑤その他
以上の事項のほか、必要な定めについては、国家公務員法の規定を準用する(例えば天下り規制など)。

⑥施行
公布後2年以内に施行する。

2、「天下り根絶」

(1)各省あっせん禁止に刑事罰
各省あっせん禁止(国家公務員法第106条の2)違反に対して、刑事罰(罰金)を導入。
<国家公務員法改正>

(2)公益法人への再就職等に関する規制

関係府省出身者の常勤理事に占める比率、年齢制限など、党行革本部にて早急に結論を得る。