(政治不信の発端)「命を捨てる覚悟」の改革力が継続していないことこそが、政治不信の発端 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(政治不信の発端)「命を捨てる覚悟」の改革力が継続していないことこそが、政治不信の発端

氏の結語にある「未曾有の経済危機と政権の求心力低下、そして相も変わらぬ政治とカネを巡るスキャンダル。政治の閉塞状況を転換するには、自民、民主両党が思い切って態勢を立て直し、再生しなければならない。それが党首の交代なのか、執行部の刷新なのか、それとも政治資金の見直しや景気対策の独自政策なのか。いずれにしても『再生力』を発揮した方が総選挙を勝ち抜く」は、正論である。

しかし、「確かに、かつてない政治不信である。私なりに理由を考えてみた。発端は小泉政治だ」の部分には異論がある。

再生力とは何か。それは党の体質を一変させる改革力である。その改革力が、自民党、民主党のいずれが強いかの勝負になる。05年の郵政総選挙がまさにそうであった。小泉総理は、「郵政民営化の是非を国民に聞いてみたい」として、自民党をぶっ壊したのである。一方、民主党の岡田代表は、「郵政民営化以外にやるべきことがある」として、民主党をぶっ壊さなかったのである。

民意は、郵政民営化をアジェンダにして、自民党の既得権益型政治をぶっ壊した小泉総理に1票を入れるつもりで、自民党に1票を投じたのである。具体的には、比例得票数で、自民党は04年の参院選の1680万票から909万票増の2589万票、民主党は04年の参院選の2114万票から10万票減の2104万票で、485万票差で、自民党は圧勝し、与党全体で衆院の3分2以上の議席を得たのである。勝因は、04年の参院選から自民党が909万票を増やしたことにある。大都市部を中心にした無党派層が、小泉総理の「捨て身の覚悟」に改革力を見て、自民党への投票行動をしたからである。

しかし、07年の参院選では、自民党は935万票減の1654万票、民主党は222万票増の2362万票で、民主党に672万票差で大敗、与党の参院過半数割れとなりねじれ国会となったのである。自民党の敗因は、935万票を減らしたことにある。05年の衆院選で増やした909万票を、そっくりそのまま減らしたことがである。理由は、大都市部を中心とした無党派層が、郵政造反組の復党、社保庁問題、政治とカネ問題で、自民党の改革力に疑念を持ち、自民党から離反したからである。

以降、1年半、この大都市部を中心とした無党派層900万票は離反したままである。昨日のHPにも引用したが、首都圏限定の新報道2001の「次期衆院選の投票先」で、自民党18・0%、民主党24・4%、未定47・6%となっている。この意味は、大都市部を中心とした無党派層900万票は、自民党にも、民主党にも投票せずに、様子見をしていることを示している。無党派層900万票を自民党に回帰させることが、自民党の喫緊の課題なのである。

この900万票のコアは、小泉構造改革支持層なのだから、自民党は再度05年郵政総選挙の原点である、小泉元総理の「命を捨てる覚悟」の改革力に立ち帰るべきなのである。

改革力抜きの追加経済対策をどれだけ提示しても、900万票の無党派層は動かないであろう。自民党をぶっ壊す覚悟の追加経済対策であれば900万票の無党派層は動くであろう。

だから、政治不信の発端を「小泉政治」に求めるのは誤りである。劇場型政治とは、小泉元総理の「命を捨てる覚悟」の改革力への共感と参加だったのである。このことを否定的に評価するマスコミの2005年総選挙の総括は、誤りであると思う。「命を捨てる覚悟」の改革力が継続していないことこそが、政治不信の発端なのである。(3月17日記)



(参照記事)朝日新聞「政態拝見」 星浩・編集委員「政治は沈むか」「自民・民主、再生力の勝負」

「『あまり経験したことがない政治不信だ。どうにかしないと……』とある首相経験者が嘆いていた。麻生首相の度重なる失言などは責められてしかるべきだが、いまは低支持率のなか、どんな立派な政策を打ち出しても評価されない。小沢民主党代表の公設第1秘書が逮捕されたが、政治資金の虚偽記載という形式犯で野党第1党の党首に決定的なダメージを与えるのが妥当なのかどうか。捜査の先行きが見えないまま疑惑報道が連日、相次いで、政治が薄汚れた印象を持たれている。政治全体が沈みかねない――。そんな心配をしているという。

確かに、かつてない政治不信である。私なりに理由を考えてみた。発端は小泉政治だ。05年の郵政総選挙で自民党は圧勝したが、その劇場型政治には負の部分も多かった。安倍元首相は小泉改革を手直ししようとしたが、うまく進まず参院選で惨敗、退陣に追い込まれた。福田前首相はアジア外交などで成果を上げたが、衆院解散による政局打開に踏み切れないまま政権を放り出した。自民党は小泉政治の総括もできず、統治能力に疑問符がついた。

続く麻生首相は解散を先送りし、景気対策も遅れた。多くの国民は定額給付金を評価しないまま受け取るという苦渋の判断を強いられている。さらに中川昭一前財務相の酩酊会見を見せつけられれば政治に不信感を抱くなという方が無理だろう。

閉塞打破の期待は民主党に向かったが、そこに小沢氏の政治資金問題である。総選挙を控えたこの時期の捜査には賛否両論があるだろう。それでも、自民党に代わる新しい政治を掲げる小沢氏と、ゼネコン側からの巨額献金という旧態依然の体質との「落差」に、国民の戸惑いが広がるのも当然だ。

政治不信について、政治家に話を聞いた。東京佐川急便事件後に自民党を離れて新党さきがけを結成、その後復党した経験を持つ園田博之自民党政調会長代理は『小沢氏の事件で自民党の追い風が吹き始めたと喜ぶのは大きな間違いだ。国民は政治を冷静に見ている。自民党が国民に厳しいことでも訴えていく責任感を取り戻さない限り、不信は解消しない。結局は何回かの総選挙を経て政界を再編しないと、政治の信頼は回復しないのではないか』と語る。

ロッキード事件以来、多くのスキャンダルを身近に見てきた渡部恒三民主党最高顧問も、政治の現状を憂えている。『中川氏の酩酊会見も、小沢氏の資金問題も、国民の目には政治家は皆同じだと映る。これまでにない政治不信だ。人気のない麻生首相のままで総選挙になればいいと期待している民主党議員が多いが、そんな風頼みではいけない。自力で政治を刷新する気概がほしい』。

未曾有の経済危機と政権の求心力低下、そして相も変わらぬ政治とカネをめぐるスキャンダル。政治の閉塞状況を転換するには、自民、民主両党が思い切って態勢を立て直し、再生しなければならない。それが党首の交代なのか、執行部の刷新なのか、それとも政治資金の見直しや景気対策などの独自政策なのか。いずれにしても『再生力』を発揮した方が総選挙を勝ち抜く。そう考えれば政治不信も少しは和らぐように思えるのだが……」