(消費増税)「平成23年度に消費税増税を実施する」は撤回された | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(消費増税)「平成23年度に消費税増税を実施する」は撤回された

今日の午前中の自民党財務金融部会と党政務調査会で、修正された09年度税制関連法案の付則案が了承された。


私は「平成23年度に消費税増税を実施する」という表記に反対してきたが、それは撤回された。修正の結果合意された付則は、23年度までに準備のための法制上の措置を講じる努力をするという趣旨である。失業率の悪い状況が続き、公務員制度改革や国会議員の歳費カットなども行われないなかで増税することには断固反対する、ということを私は部会でも述べた。


それにしても問題は、この解説記事が指摘する中期プログラムの前提である「経済財政の中長期方針と10年展望」にある。


18年度の潜在成長率を1・1%にし、10-18年度の実質成長率を平均で1・5%にとどめていることである。02-07年度の平均2%より低いのである。


この内閣府の試算には、改革による成長戦略が放棄されているとの批判にどうこたえるのか。潜在成長力を引き上げる成長戦略なくしての中長期展望は、今後の10年を「失われた10年」にすると同義なのである。


麻生総理は、日本は「中福祉・中負担」を目指すべきとして、中負担を裏付ける消費税率の引き上げを2011年度からとしたが、その前提は「低成長」ではなく、「中成長」が不可欠なのではないか。


「中成長」なしに増税したらどうなるか。


内閣府の「2010年世界経済順調回復シナリオ」によると、2011年度から2018年度にかけて、消費税率を5%引き上げると、潜在成長率は2008年1.3%から1.1%に低下する。


これは成長戦略が存在しないことを示しているとの批判にどう反論するのだろうか。


このシナリオでは名目成長率は-1.3%から2.9%に上昇するが、これは消費税増税による物価上昇でかさ上げされているのではないか。しかも、同シナリオでは、2008年度の完全失業率4.2%、2011年度の完全失業率4.5%である。


最悪期は2009年の4.7%でありそこよりはよくなっているとはいえ、今よりも失業者がいて、つまり、雇用不安の中で増税すれば、景気は二番底に向かうのではないか。試算ではなぜか、景気は加速するという姿が描かれているが、増税分の物価上昇が頼りの経済をつくっていくのか。


私は、国民が素朴におかしいと思うことはやめ、やるべきだと思うことはやる。そうした「当たり前」の政治を今後ともおこなっていく。(1月22日記)


(参照記事)日経新聞「進路なき経済再建」㊤「『中福祉』の裏付け見えず」「政府、成長戦略置き去り」「『改革放棄』の声」


「政府は2010年代の経済運営方針を示した『経済財政の中長期方針と10年展望』を決めた。『短期は大胆、中期は責任』と訴える麻生政権だが、10年後には日本経済の低成長が財政再建の足かせとなり、社会保障費の国民負担が増すという厳しい将来像しか描けていない。世界経済に訪れた『100年に1度の危機』で日本経済も再建の針路を見失いつつある。


昨年末、財政見通しについて報告を受けた内閣府首脳はため息をついた。『いつまでたっても黒字にならんじゃないか』。世界景気が順調な回復軌道に乗ったとしても基礎的財政収支のグラフが黒字になるのは、手元の資料では一番右端。10年後の18年度だった。


政府は06年の『骨太の方針』で、国の政策経費を税収や税外収入だけで賄う『基礎収支の黒字化』を11年度に実現することを財政再建の目標にした。だが今回の試算で黒字転換の時期は7年遅れた。しかも今年の高校1年生が大学を卒業する時には、10%の消費税を払うのが大前提だ。


厳しい見通しとなった最大の原因は、世界的な金融危機に伴う急激な景気後退だ。税収は大きく減り、09年度の基礎収支は昨夏の試算より15兆円も悪化する。今回の試算で消費税を上げない場合、基礎収支はほとんどのケースで10年代には黒字にならない。金融危機は日本の財政再建に『失われた10年』をもたらす可能性がある。


遅れを取り戻すための消費増税に耐えるには、企業が収益力を一段と高め賃金が増えるように経済構造を再建することが欠かせない。だが今回の試算で問題なのは政府が成長をあきらめたかのようにさえ見えることだ。


日本では女性や高齢者の働き手が増えて人口減を乗り切り、世界経済が順調に回復するシナリオでも、18年度の実質経済成長率は1・2%止まり。失業率は3・3%と今より低く、物価上昇率も2%台の『好景気』でもこの低成長だ。10-18年度の実質成長率は平均で1・5%にとどまり、実感なき回復と言われた02-07年度の平均2%より低い。


成長率が上がらないのは、経済の実力にあたる『潜在成長率』が18年度に1・1%にとどまるためだ。経済財政諮問会議関係者の1人は『内閣府試算は成長に向けた改革を放棄したかのような数字だ』と憤る。昨年1月の中期方針で示した11年度の潜在成長率は2・5%。内閣府は『昨年の試算は今回では<急回復シナリオ>に当たる』と半ばあきらめ顔だが、潜在成長率を引き上げる成長戦略なくして責任のある中長期の展望を示したとはいえない。


今回の試算で消費税率を上げる場合には、医療や介護などの社会保障を充実するとした。政府の社会保障国民会議が示した社会保障充実の費用は消費税換算で3・3-3・5%分。消費税を5%上げても大半は社会保障費の上積み分に回る。麻生太郎首相は日本は『中福祉・中負担』を目指すべきだと主張し、景気回復を前提に『中負担』を裏付ける消費税率の引き上げを3年後から始めると明言した。だが、中期的に日本の低成長を放置したままでは社会保障を充実する『中福祉』の重荷には耐えられない」