(日銀)「はやきこと風のごとし」の対応を望む | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(日銀)「はやきこと風のごとし」の対応を望む


私が前から指摘しているように、日銀がもたもたしている間に、日本の金利の相対高になって円高が進展し、日本経済の悪化が進んでしまった。


アメリカのバーナンキの対応と、それへの市場の評価をみても分かるように、この危機的状況で「動かざること山のごとし」では、ダメだ。


下記参照記事の「日銀が常に米金融緩和を追い掛ける展開では、円高進行のリスクは消えない。今回の利下げ後も日銀は0・1%という、いわば徳俵で金利を残した。『金利面での景気刺激の効果と、短期金融市場の機能を保つバランスを考えた結果だった』と白川総裁は説明する。一理はあるものの、大胆な量的緩和も辞さずにデフレと向き合うFRBに比べ、及ぶ腰の印象は否めない」は正鵠を突いている。


市場も、結局、前日比1円安の88円台後半、日経平均株価も前日比78円安の8588円の反落に終わった。市場の反応は「想定内」として限定的なものとなった。


市場が及び腰と受けとめたのは、02年のゼロ金利と量的緩和政策に戻すとの覚悟を表明していない、だから、0・1%にとどめ、CP買取りは事実上の量的緩和政策なのに、量的緩和ではないと強弁しているように映っているのではないか。


100年に一度の危機なのだから、日銀には、当然、今後、REITの購入などをふくめた「非伝統的手法」を自主的にご検討いただけるものと思っている。日銀が「非伝統的手法」をとることで、政府が「政府紙幣」発行などを検討しないでも、日本経済が回復できるよう、しっかりと責任を果たしていただきたい。


なお、日銀は日本政策投資銀行からCPを買い入れる必要はない。日銀は日銀で、日本政策投資銀行は日本政策投資銀行でCPを買っていただきたい。二つの資金供給効果が出るようにしていただきたい。


いずれにしても、日銀には、「はやきこと風のごとし」の対応を望む。


なお、日銀の現執行部の選出には、民主党も大きな影響力を行使した。いまこそ、民主党の金融政策についての責任ある見識を示してほしい。(12月20日記)



(参照記事)日経新聞の菅野幹雄編集委員「危機打開へ迅速・柔軟性を」


「日本銀行は政策金利をゼロ目前の年0・1%に引き下げ、一般企業のコマーシャルペーパー(CP)を買い取る資金繰り支援にも乗り出す。景気悪化と米国による事実上のゼロ金利政策に背中を押された決定で、危機対応としては緩慢な印象も残る。政府の経済対策や予算案も実現へ曲折必至だ。難局打開には今後も柔軟でスピードを上げた政策対応が欠かせない。


政策金利の0・2%引き下げ。企業のCPを日銀自身が買う資金供給策。長期国債の買い入れ増額。日銀は予想されたカードを次々と切った。『今後も最大限の貢献をしていく』と、白川方明総裁は言明した。メニューは豊富だが、日銀の決定はいくつもの環境変化に突き動かされた結果でもある。


1つは米連邦準備理事会(FRB)による電光石火の金融緩和がある。16日の決定で最重要の政策金利は年0・0-0・25%とゼロの領域に初めて踏み込み、市場を巡るマネーを増やす量的緩和も宣言した。この影響で、相対的に金利が高くなった円が買われ、為替市場では約13年ぶりに1ドル=90円を突破する円高・ドル安が進んだ。頼みの輸出産業が大打撃を受けた日本経済にとって、一層の円高はまさに『弱り目にたたり目』である。


政府や市場の厳しい視線もあった。中川昭一財務相や与謝野馨経済財政担当相が『あるべき結論を』などと日銀の行動を公然と求めた。市場も決定会合前に日銀の利下げ実施を織り込んだ。12月の日銀企業短期経済観測調査(短観)で大企業製造業の景況感は石油危機直後の1975年に並ぶ大幅な悪化になった。だが11月から生産、消費、設備投資などの指標は軒並み悪化し、経営者の悲鳴が上がっていた。FRBや短観を待つまでもなく機動的に動く余地はなかったか。


事前には慎重論も根強かった利下げの議決は7対1の賛成多数。企業の倒産リスクを引き受けるため、難色を示していたCP購入も受け入れた。日銀はこれまで経済の先行きも見据えながら金融政策を運営するとしてきたが、この局面では外堀が埋まってようやく動いた感がある。


前回の10月末の利下げからは2カ月近く。その間に日銀は確かに企業金融の支援策を一部、具体化したが、景気急変に対して機動力を十分に発揮したとは言い難い。ゼロ金利へ一気に飛びこんだFRBに一歩遅れての利下げ決定。竹森俊平慶応大教授は『危機管理は指導力だ。バーナンキFRB議長が先に動き、一種のサプライズ(驚き)を狙ったのは明らかだ』と言う。日銀が常に米金融緩和を追い掛ける展開では、円高進行のリスクは消えない。


今回の利下げ後も日銀は0・1%という、いわば徳俵で金利を残した。『金利面の景気刺激の効果と、短期金融市場の機能を保つバランスを考えた結果だった』と白川総裁は説明する。一理はあるものの、大胆な量的緩和も辞さずにデフレと向き合うFRBに比べ、及び腰の印象は否めない。バーナンキ議長が米経済の悪化に対応して、金融緩和の歩を進める公算は大きい。日銀はさらにどんな手が打てるのか。疑問は多い。


日銀に注文を付ける政府・与党も指導力が欠けている。端的な例が自動車や電機をはじめ、至る所で雪崩を打つ雇用削減への対応だ。野党が参院委員会で関連法案を強引に採決し、与党と非難合戦を繰り広げるのにはあきれるほかない。


麻生太郎首相は『総額43兆円』の経済対策を掲げた。株式買い上げや信用保証の枠を合算して数字は積み上がったが、厳しい景気を乗り切る対策として十分に実効の上がる内容かどうか。不毛な駆け引きは脇に置き、必要な経済政策を迅速に柔軟に打っていく姿勢が政治にも日銀にも求められる」