(全政策の動員)市場は日銀の覚悟の明示を待っている | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(全政策の動員)市場は日銀の覚悟の明示を待っている

FRBが「全手段の動員」を明言したことは、ルビコン川を渡ったことを意味する。


日銀も同じく、後に続いて「全手段の動員」をして、ルビコン川を渡るか。


円高はその督促とも受け止める。この催促が、「失望」に終らないことを期待したい。


バーナンキFRB議長は、「世界大恐慌研究の第1人者」であり、「日本の90年代デフレ研究の第1人者」でもある。そのバーナンキ議長が、腹をくくって、未踏のゼロ金利と量的緩和に踏み切ったのである。


特に「量的緩和」は、日銀の量的緩和の先を行くものであり、まさに未踏であるが踏み込んだのである。金融政策としての非伝統的手段総動員である。


理由は世界的デフレの未然防止阻止であるが、日本経済はデフレが未だ脱却できていない周回遅れである。日本のほうがより深刻と受け止めるべきだ。


06年に、日銀がゼロ金利解除、量的緩和政策解除をし、デフレが脱却できていないところに、米国発の金融危機が直撃し、今、世界的デフレに飲み込まれようとしているのである。日銀こそ「全手段の動員」をして、バーナンキ議長に倣うべきなのである。市場は、その覚悟の明示を待っているのである。(12月18日記)



(参照記事)日経新聞記事・滝田洋一・ニューヨーク=編集委員の「デフレに宣戦布告」「米、即決のゼロ金利」


米国が末踏の金融緩和に乗り出した。ゼロ金利に踏み込むと同時に、世の中に流通するマネーを増やす金融の量的緩和をも実施する。深刻な景気悪化と金融不安に、金融政策を文字通り総動員する。世界が同時不況の様相を強めるなか、欧州や日本にも次の一手を促す市場の圧力が高まりつつある。


『米連邦準備理事会(FRB)が利下げただけでなく量的緩和に言及すれば、市場は喜ぶ』。米連邦公開市場委員会(FOMC)の発表を米調査会社ISIグループのエド・ハイマン会長はこんな気持で待った。市場の期待を十分意識するかのように、FOMCは小雪舞うウォール街に『一足早いクリスマスプレゼントを届けた』とエコノミストのマリア・ラミレス氏。16日の米国株は反発し、長期金利は低下した。


雇用の悪化に続き、住宅着工が一段と落ち込み、消費者物価は前月比で大幅なマイナスとなった。米経済がデフレの瀬戸際にあるなか、『FRBはデフレに対し宣戦布告した』と元FRB幹部は言い切る。


ゼロ金利政策の導入。ゼロ金利維持を約束する時間軸政策。FRBの保有資産の膨張継続。政府機関債や住宅ローン担保証券の購入拡大。長期国債の買い入れ検討――。FOMC声明で『全手段の動員』を明言したFRBは、ルビコンの川を渡った。


6カ月物の借入金利は年22%――。先週、中西部を訪ねた金融関係者は、中小企業経営者から資金繰りの窮状を聞かされた。『事態を放置すれば、倒産の津波が米国を襲う』。そんな危機感がFRBを突き動かした。


量的緩和では、日銀は銀行から無利息で預かる当座預金の残高を目安とした。潤沢に資金を持たせて銀行からあふれ出ることを狙った。これに対しFRBは、銀行経由より市場へ資金を直接供給することに主眼を置く。すでに企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)を購入。さらに市場から買い取る資産の対象と量を拡大する。


銀行が貸し渋っている。ローン債権を転用しようにも投資家が証券化商品を敬遠したままでは、お金は流れない。量的緩和はマネーの目詰まり解消が狙いだ。ただ景気悪化と金融危機が負の連鎖を起こすなか、末踏の金融政策が狙い通りの効果を発揮する保証はない。オバマ次期政権が財政面から景気をテコ入れし、住宅問題に取り組むなど、総合的な対策が欠かせない。FRBは長期国債購入を示唆しており、将来は積極財政に伴って発行が増える国債の引き受けに道を開く可能性がある。


急速に世界同時不況の様相が強まっている。にもかかわらず、米国と日欧では危機感に温度差がある。欧州中央銀行(ECB)関係者は、FRBが実施したCPなどの買い切りは定款上、問題と難色を示す。公的資金による銀行の不良資産買い取りについても、財布を握る各国間で調整がつかない。財政出動には欧州連合(EU)の中核国であるドイツが消極的と、ないない尽しだ。


日本の事情も似ている。『資本不足の銀行に公的資金を注入するのが先決』。CP買い切りの必要性を訴えた金融関係者に、日銀首脳はこう答えた。『米欧に比べ邦銀は健全』と繰り返すのを尻目に、信用逼迫の波は日本を襲いだした。企業の景況感もつるべ落としだ。


しかもゼロ金利や量的緩和への回帰を嫌っているうちに、FRBが先を行ってしまった。日米の政策金利が逆転したことで、いきおい円相場には上昇圧力がかかっている。追加的な金融緩和を迫られている。今必要なのは先手を打って企業や家計の不安を取り除く政策であり、世界経済を立て直す青写真だ。不況とデフレのリスクに対する「全手段の動員」が待ったなしの課題となっている」