(中期プログラム)「デフレで増税」をやるのか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(中期プログラム)「デフレで増税」をやるのか


これでは「3年後の消費増税」が次期衆院選の争点となるだろう。


麻生総理は、昨日の経済財政諮問会議後に記者団に「経済の動向を見て、3年後には消費税の引き上げをお願いした。是非、政府として実行していきたい」と述べた。これは、「3年後の消費増税の是非を聞いてみたい」というのと同義であろう。4年任期を前提に選択する衆院選であるからだ。


最大のポイントは「経済の動向」をどう見るか、にある。


昨日の経済財政諮問会議の「中期プログラム」の原案をみて驚いた。


決して、「経済回復するまで増税しません」とはなっていない。


「デフレで増税」ができるようになっている。こういうカラクリだ。


昨日、経済財政諮問会議に提出された「中期プログラム」には、冒頭に、


「経済状況の好転後に消費税を含む税制抜本改革を2011年度(3年後)より
実施し、2015年度までに段階的に行って持続可能な財政構造を確立する」


と書いてある。誰しも、これをみれば、「経済回復して安心できるまで増税しません」といっているのだと思うだろう。しかし、諮問会議の考えは違うようだ。


「経済状況の好転」の判断条件が問題なのだ。


「中期プログラム」(下記アドレス参照)の「経済状況の好転後に実施する税制抜本改革の3原則」の2つめに、こんな原則が書いてある。


「潜在成長率の発揮が見込まれるかなどを判断基準とし、予期せざる経済変動にも柔軟に対応でき る仕組みとする」


「潜在成長率の発揮が見込まれる」とは何か。


昨日の諮問会議で配布された「中期プログラム関連経済財政諮問会議有識者議員提出資料等」(下記アドレス参照)の26ページをみると、


  「潜在成長率の発揮が見込まれる時点から、(税制抜本改革を)速やかに実施できるようにすることが望ましい。この段階に達した後には、成長率上昇に弾み・勢いがつき、GDPギャップも縮小・解消に転じていくことになる」


という記述がある。28ページにそのイメージ図がある。


これによると、「潜在成長率達成点」とは、景気のどん底(景気の谷)の約1年後、GDPギャップが最大のときである。GDPギャップは縮小していくことが見込まれてはいても、決して解消されてはいない。


すなわち、「デフレでも増税する」ということである。


いまは、内閣府は潜在成長率を1%台半ば程度とみているはずだ(私はこれですら過小評価だといい続けている)が、今後の不況期を入れた平均値で出す2011年度の潜在成長率の試算は、1%台半ばをさらに低い数値になるだろう。その程度の、世間からみて不況のどん底で、「潜在成長率の発揮が見込まれる」と政府が判断して増税することが可能になるということだ。


潜在成長率で判断すれば、景気が悪くなればなるほど潜在成長率は低くなり、増税しやすくなるというトリックがある。


潜在成長率は国民の実感とは関係ない。


国民目線での「景気回復」とは、「デフレリスクが確実になくなり、物価の安定が予想され、持続的な経済発展が予想される」ことだ。そのことを素直に原則にすべきだ。


せめて、名目3%成長(物価上昇1%)を目安にすべきである。


経済財政政策担当大臣が、マクロ経済の姿を見せずに、増税だけ語ったことに「失望」する。


「中期プログラム」は3年後の消費増税ありきであり、何ら景気回復についての前提条件はないといっていいだろう。


100年に一度の世界金融危機下にあって、3年後の消費増税を打ちだす日本を世界はどうみているだろうか。(12月18日記)


「中期プログラム」
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/1216/item1.pdf


「中期プログラム関連経済財政諮問会議有識者議員提出資料等」
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/1216/item3.pdf


(参照記事)日経新聞「無駄排除、増税の前提」「中期プログラム、法人税下げも明記」「歳出改革、具体像乏しく」


「政府の経済財政諮問会議は16日、税制抜本改革に向けた『中期プログラム』の原案をまとめ、2011年度からの消費税を含めた税制改革の大まかな道筋を示した。その前提として『無駄が多い』と批判の多い歳出面での改革を徹底する方針も示し、将来の税負担増への理解を求めた。ただ原案では、どんな改革をするのかはっきりせず、具体性に欠ける内容となった。


原案は歳出改革について①行政改革の推進と無駄排除の徹底②経済好転までは、財政規律を維持しつつ、果断な対応を機動的に行う③経済好転後は厳格な財政規律を確保――という3原則を明示した。とはいえ、歳出改革についての記述は1ページにとどまり、具体的な歳出の無駄の削減や行革の内容についてはほとんど触れていない。


例えば社会保障部門では『コスト削減、給付の重点化等の効率化を進める』としているが、具体的にどんなコストを減らすかについては言及しなかった。社会保障以外の分野についても『規模を拡大しないことを基本とし、効果的・効率的な公共サービスの提供を進める』としただけ。競争性の乏しい『随意契約』の多さや過度の補助金などへの指摘はなく、具体的な歳出削減への道のりも明示できなかった。


一方、税制改革では法人税について、国と地方を合わせた実効税率(約40%)の引き下げを盛り込んだ。民間調査によると、日本の法人実効税率は経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中で最も高い。国際競争が激化する中で欧州・アジア諸国は法人税下げに動いており、日本の経済界からも引き下げを求める声は多い。日本では全企業のうち6割超が税務上の赤字で法人税を支払っていないことから、課税対象を広げることも言及した。


ガソリン税(揮発油税など)、自動車取得税など自動関係諸税については『税制の簡素化を図るとともに、暫定税率を含む税率のあり方を見直し、負担の軽減を検討する』と明記。税制改革時に税率下げを含めた見直しを行う考えを示唆した。所得税は最高税率の引き上げや所得控除の見直しで、高所得者の税負担を引き上げる考えを示した。


原案では景気が後退局面を迎えたこともあって、各税目ともに具体的な税率には言及できなかった。与謝野馨経済財政担当相は同日の記者会見で、税制改革の開始時期について『経済が上向き始めたときに実施することが望ましい』と語ったが、今後は中期プログラムで示す理念をどう具体化するかが課題となる」