テレビで『Atonement(邦題:つぐない)』を久々に見た。と言っても前回は確か帰国のフライトで眠くてところどころしか見ていなかったので、主役であるブライオニーを演じたのが誰だったかさえ覚えていなかった。実際、最後まで見られなかったせいもあって、内容が気になり結局ペーパーバックを買ったのだが・・・何しろ読み初めの何章かは延々ブライオニーの独白というか、作り話(小説?)が続き、つまらなくてかなり大変だったことを覚えている。日本人の友人もたまたま同時期に読んでいたのだが、やはり同じことを言っていた。ついでに彼女は交換英会話の相手であるイギリス人にその話をしたところ、「あの小説の英語はかなり難しい部類に入るよ。ネイティブじゃないとわからないんじゃないか」と言われがっかりしたとのことだった。

しかし、最後の結末まで知っていたので小説の方はイヤイヤながら何とか読み終えていたらしい(それさえ覚えていないという不甲斐なさ)。老齢のブライオニー役がバネッサ・レッドグレイブであることを知ったのは今日なので、結末を映画で知ったのではなく、小説を読んだのだろう。100ページを超えるペーパーバックは途中で挫折することが多いので、私にとってはめずらしいことだ。

ただ、小説でも今回映画でも思ったのだが、どうも主役の迷惑小娘ブライオニーには全く共感できないし、その被害を被る姉のセシリア(キーラ・ナイトレイ)とその恋人のロビー(ジェームス・マカヴォイ)はあまりに気の毒である。特に、従姉妹のローラとチョコレート工場所有者ポール(なんとBBC『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチ)との結婚式の場面で、記憶が蘇ったのかもしれないが、確認もなしに真犯人はロビーじゃなくて、ポールだったと決めつけるところなど、またこの娘の嫉妬からくる妄想ではないか、とも思わせる。その上、原作には忠実なのだが最後のどんでん返しで映画が終わった後の失望もある。

途中、ブライオニーがロビーに振られる場面があり、結局「プライドの高い文学少女の嫉妬と仕返し?」とも受け取れるので、余計に後味が悪いのかもしれない。子供の持つ残酷さを垣間見せる話である。

撮影場所はロンドン南部のBalham周辺、St Thomas 病院の場面はロンドン大学UCLなのだそうだ―どこだか全然わからなかったが。ただ、映画の視覚効果のためだろうが、重症患者用に区切ったカーテンの色がエンジ(それとも史実にあるのだろうか?)なのはちょっと不自然な感じを受けた。一方、冒頭のセシリアが噴水池に飛び込む場面、ブライオニーがわざと川に飛び込んでロビーに助けてもらう場面(両者のロビーの反応の違いが強烈)、Balhamの洪水の場面と水の中での描写が印象的かつ効果的であった。本作で有名な「ダンケルクの長回し」は良く描けているとは思ったが、『バンド・オブ・ブラザーズ』などのノルマンディー上陸作戦とは根本的に状況が違い、撤退作戦なので、どこか冴えない感じがした。