『ダークナイト・ライジング』をドルストン・キングスランドの古めかしい映画館、リオ・シネマで見た。クリストファー・ノーラン監督のバットマン3部作完結編にふさわしく、正味3時間近いの作品なのに、飽きさせない展開で面白かった。バットマン映画は演じる俳優によってかなり印象が異なる。特に可笑しかったのは、ジョージ・クルーニー版で、ロビン役のクリス・オドネルともに見ているこちらが恥ずかしくなる映画だった。クリスチャン・ベール版は正反対でトレーニングが多い求道的なバットマンなのでつい引き込まれて応援してしまう。

昔はアメコミ原作のハリウッド映画は興味がなく、敢えて見なかったのだが、修士のアーバン・デザインコースで未来都市の設計課題を与えられて以来、映画の中の未来の可視化が実際に将来の都市デザインに影響することに気づいて、こういう映画も見るようになった。特にノーランの描くゴッサムシティと毎回異なるブルース・ウェイン邸のデザインは秀逸で見逃すことはできない。また、ノーランはロンドン大学UCL出身で、アメリカの一都市ゴッサムシティを描いているのにイギリスティスト満載なのが、余計気になる原因だと思う。キャスティングもイギリス人が多い。

『インセプション』(2010)の時も夢の中の都市の崩壊シーンに度肝を抜かれたが、今回も予告編でみられたフットボールスタジアムの崩壊、都市の地下施設の映し方、バットマンのアジトや空飛ぶカブトムシ型飛行機(?)、キャットウーマンのバイク(特に曲がり角での動き)などが見どころだ。ストーリー的には若干ご都合主義というか強引なところもあるが、展開が早いので巻き込まれてしまう。ただ、前々作『バットマン・ビギンズ』、前作『ダークナイト』とのつながりが強いのに、一度見ただけなので内容を覚えていなかったのが、ツラかった。せめて、テレビで放映でもしてくれれば話は別なのだが、日本のようにジブリの新作の前にジブリ映画の再放送などという、気の利いたことをイギリスのテレビ局はしてくれないのだ。

また、最後の方で見落としをしたため、イタリアのリビエラの場面を誤解してしまった。注意深く見ておかないと、私のように誤解してがっかりする人もいるだろう。他の見落としとしては、名前が違うので、聞き落したらしくロビンに気が付かなかったのは痛かった。家に帰ってからこの映画についてよく調べて納得したが、このロビンの使い方のせいで、バットマン映画のもつ妙な怪しさがなく、カッコいいヒーロー映画に仕上がっている。

映画が始まるときは「ここで銃乱射があったらどうなるだろうか」、という想像をしてしまったが、映画が始まってからは、引き込まれてすっかり忘れ去っていた。犯人はPhD(ドクターコース)の学生だと新聞に書いてあったが、なにもよりによってそんな悲惨な方向を選ばなくても良かったのにと思う。