ロンドン・オリンピック開会式の日だ。

イギリスに来てからオリンピックに全く関心がない生活が長く、今回ロンドンで開催されるからと言って券を取ろうという時間的余裕もなく当日になってしまった。東ロンドンのハックニー地区住民の特典であるオリンピック公園内のビッグスクリーンでの観覧抽選会のために大家さんが同居人4人の名前とメールアドレスを持って区役所で並んで応募してくれたのだが、残念ながら落選してしまった。

ウワサでは、会場の芝生の小山がBBCの赤ちゃん番組『テレトビーズ』に似ているとか、開会式で羊などを使うので、動物保護団体が反対しているとか、マスコットの一つ目宇宙人(?)のデザインがあまりにひどくてキャラクター商品が売れないとか、いろいろ評判が悪かったが、さすがショービズが盛んな国、開会式ではイギリスの「売り」がすべて登場という勢いだった。初めは真剣に見ていなかったのだが、007のBGMと共にダニエル・クレイグが現れ、バッキンガム・パレスでウェルシュ・コーギー犬にまとわりつかれながら、女王に謁見、一緒にヘリコプターで会場に向かい、パラグライダーで会場に落下…という画面がテレビで流れてから、目が離せなくなってしまった。今年は在位60年のダイアモンド・ジュビリーといい女王陛下大活躍で86歳(!)とはとても思えない。

他にもハリー・ポッター、メアリー・ポピンズ、国民保険サービス(NHS)の看護婦さんたち(ナイチンゲールから発想か?)、ベッドがたくさん並んだ上に入院中の子供たちが歌い踊るという変わった嗜好。現在イーストエンドで『炎のランナー』のミュージカルがかかっているためか、ミスター・ビーンがランナーの一人として海岸を走っている場面があったり、デビッド・ベッカムがモーターボートでテームズ川をさかのぼってくる映像があったり。ベッカムはまさに東ロンドン出身なので、試合には出ないけれど、ロンドン五輪の中心人物の一人だそうだ。そういえば、一昨日、突然ウエストフィールド・ショッピングセンターのスピード写真コーナーにベッカムが現れ、60人がオリンピック会場写真を背景に彼と記念撮影をしたらしい。10歳くらいの少年はあこがれのベッカムが目の前にいると気が付いた途端感激のあまり泣き出してしまったところが、記念写真となってフリーペーパー・メトロの表紙の隅を飾っていた。

開会式の監督がインディペンデント系のダニー・ボイル(『トレイン・スポッティング』『スラムダンク・ミリオネア』)なので、一体どうなるのだろうと思ったけれど、さすがに見せるのは上手い。ただ、何かを紹介するときに、世界の人口から考えると割合が少ないはずのフランス語から始め、英語という順番はなぜ?イギリスのフランス・コンプレックスの表れか。少なくともフランス語から始めるのがかっこいいという感覚があることは間違いない。きっとイギリスのお偉方がフランスかぶれだからだ。先日もドクター時代の指導教授から「フランス(の別荘で)は快晴の青い空で、温かいですが、ロンドンはまだ冬のような曇天ですか?」などという困ったメールが来たばかり。ツィッターでも「フランス語が公式言語なのか!」というツィートがながれている・・・・各国入場は普段通りで日本の入場では吉田沙保里が如何に強いかと津波のことについて触れていた。以上で眠いから今日はここまで。